日本臨床歯科学会雑誌
Online ISSN : 2759-1883
Print ISSN : 2435-8517
7 巻, 1 号
日本臨床歯科学会雑誌
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 小濱 忠一
    2021 年7 巻1 号 p. 6-23
    発行日: 2021/07/01
    公開日: 2025/09/15
    ジャーナル フリー
    インプラント治療の基礎的研究とそれに基づいた臨床応用の蓄積によって,多くの症例で審美的,機能的に満足した理想 的な治療ゴールを達成することが可能である一方で,術後に外科的・補綴的トラブルを惹起することも決して少なくはない.そ の中でも,10年以上前から危惧されているインプラント周囲炎への対応は,現時点においても明確なガイドラインが立案されて いるとは言い難い.そこで本稿では,インプラント周囲炎に対するリスクファクター/インディケーターの変遷と現時点における 捉え方,そして臨床対応について考察も交えて解説したい.
  • 日髙 豊彦, 日髙 亨彦, 田井 康晴, 清水 英城, 高橋 和也
    2021 年7 巻1 号 p. 24-35
    発行日: 2021/07/01
    公開日: 2025/09/15
    ジャーナル フリー
    審美領域におけるインプラント治療で患者の満足を得るためには,歯冠修復と同様に辺縁歯肉と歯間乳頭の位置,および その長期的安定が求められる.これらを確立するためにはインプラント埋入部位に必要な骨 (硬組織) と軟組織を確保することが 重要である.生体には固有差があるが一般的にはインプラントとアバットメントが同径の場合はインプラントの頬舌 (唇口蓋) 側 で 2 mm 以上,プラットフォーム・スイッチングの場合は1.5mm 以上の骨を確保し,どちらのデザインのものでもインプラント- 天然歯間には1.5mm 以上,インプラント-インプラント間には 3 mm 以上の骨を確保すべきであろう.インプラント周囲の軟組織 の高さは 4 mm 程度必要と思われるため,インプラント埋入の深さはインプラントとアバットメントが同径の場合は辺縁歯肉よ り 3 mm 程度根尖側方向に,プラットフォーム・スイッチングの場合は 4 mm 程度根尖側方向に埋入すべきではないかと多くの 文献で示唆されている.頬舌 (唇口蓋) 的軟組織の厚みは 2 mm 程度必要だと思われる.上部構造の形態は頬舌 (唇口蓋) 軟組織の厚 みを確保するため,歯肉縁下で凹状に,隣接形態は歯の修復と同様にハーフ・ポンティック・テクニックが応用できる.
  • 大河 雅之, 上野 博司, 山本 恒一, 白鳥 沙久良, 新谷 明一
    2021 年7 巻1 号 p. 36-41
    発行日: 2021年
    公開日: 2025/09/15
    ジャーナル フリー
    フッ化水素酸処理はシリカ系セラミックスへの接着前処理として高い信頼性が認められている.しかしながら,フッ化水 素酸処理後の経過時間が接着強さに及ぼす影響について検討した研究は少ない.本研究では,フッ化水素酸処理を行うタイミン グがせん断接着強さに及ぼす影響について検討した.被着体はCAD/CAM 用ポーセレンブロックを使用し,ポーセレンブロック 被着面に対して, 1 )60秒間フッ化水素酸処理+ 5 分間のエタノールによる超音波洗浄 (CON) ,口腔内試適後,装着直前に酸処理 を行うことを想定した 2 )唾液60秒間浸漬+60秒間リン酸処理+流水による水洗 (PA) と 3 )唾液60秒間浸漬+60秒間のフッ化水素 酸処理+ 5 分間エタノール超音波洗浄 (HF) ,院外歯科技工所でのフッ化水素酸処理を想定した 4 ) 24時間前に60秒間フッ化水素 酸処理+唾液60秒間浸漬+60秒間リン酸処理+流水による水洗 (24HF) と 5 )72時間前に60秒間フッ化水素酸処理+唾液60秒間浸漬 +60秒間リン酸処理+流水による水洗 (72HF) の 5 条件を設定した.装着材料は光重合型レジン系装着材料を用い,牛歯エナメル 質へメーカー指示の術式にて接着した.結果はせん断接着強さ (MPa) として算出し,各条件間で統計処理を行った.結果からHF (37.1MPa) と24HF (37.4MPa) はPA (22.3MPa) と72HF (23.1MPa) と比較して有意に高いせん断接着強さを示した.HF,24HFとCON (37.2MPa) 間に有意な差は認められず,PA,72HF 間でも同様であった.
  • 名取 徹, 小濱 忠一, 高田 浩行, 高橋 聡, 菊池 大輔, 中島 圭治, 松浦 明
    2021 年7 巻1 号 p. 42-47
    発行日: 2021/07/01
    公開日: 2025/09/15
    ジャーナル フリー
    近年,欠損補綴の治療オプションとして義歯やブリッジなどの従来から存在する治療に加え,インプラントを用いる治療 が確立されてきた.現在では補綴主導型のインプラント治療の概念が浸透し,審美性をともなう治療結果を得ることもできるよ うになってきている.しかしながらその反面,長期的にインプラント治療の経過を追っていく過程で,われわれ歯科医師がもっ とも頭を悩ませるトラブルがインプラント周囲炎である.今回,その発症要因として考えられている歯周病の既往,口腔衛生状 態,メインテナンス頻度,角化粘膜の幅,埋入ポジション,セメント残留(上部構造の連結様式)について,評価検討を行った.そ の結果,インプラント周囲炎罹患患者は非罹患患者に比較して,歯周病の既往があるもの,口腔衛生状態不良なもの,メインテ ナンス頻度が少ないもの,角化粘膜幅が2mm未満のものの割合が多かった.一方,埋入のポジションと上部構造の連結様式で は差が認められなかった.このことから,歯周病の既往がある患者には,術前に徹底した歯周病のコントロールを行い,最終補 綴装置装着後も,歯科医師が歯科衛生士と連携し適切なタイミングでPMTCを行ってプラークコントロールをし,さらにインプ ラント周囲に2mm以上の角化粘膜を温存・造成することがインプラント周囲炎の予防に重要であるということが示唆された.
  • 初期吸収特性,バリア性に関するin vitro試験
    榊原 亨, 岡崎 伸一, 加藤 大輔, 村上 弘
    2021 年7 巻1 号 p. 48-54
    発行日: 2021/07/01
    公開日: 2025/09/15
    ジャーナル フリー
    本研究は,L-ラクチド・ε -カプロラクトン共重合体を主原料としたメンブレンを使用し,オープンバリアメンブレンでの 使用可能性について検証した. 分解吸収挙動確認試験としてメンブレンを遠沈管中で疑似体液に浸漬し,浸漬開始後 1 ,4 ,8 週後に回収した試料を浸漬前の 重量を100とした場合に対する重量として残存重量率 (%) を算出した.その結果,加水分解により徐々に分解吸収は進むが 4 週と 8 週では統計学的有意差はなく緩やかであった.また分解吸収進行後の試料を引張試験にて破断距離を調べた結果, 0 週から 4 週, 8 週へと破断距離は有意差をもって低下していた.しかしながらSEM 像やマイクロCT 像からメンブレンの構造体自体は維持 し,穴が空いたりなどの構造が破綻することはなかった.このことからL-ラクチド・ε -カプロラクトン共重合体を主原料とした メンブレンは吸収性でありながらオープンバリアメンブレンとしての応用の可能性が示唆された.
  • 植松 厚夫
    2021 年7 巻1 号 p. 56-63
    発行日: 2021/07/01
    公開日: 2025/09/15
    ジャーナル フリー
    近年,Intra-Oral Scanner (IOS) が小型軽量化され,スキャン速度が向上し,さらにデザインソフトウェアが使用しやすく なったことも要因となり,数々のデジタルシステムが登場してきている.そこで,咬合再構成をともなうような広範囲に補綴装 置を製作する症例において,補綴治療計画を立案するために検査と診断を行う段階で,その診断基準を明確にする目的でデジタ ルシステムが応用される.より正確な治療結果を引き出すことを目的として,以前は視認できなかった診断基準を三次元的にデ ジタル上で可視化して補綴治療に適用することで咬合再構成を行った.咬合再構成を行う基準には,下顎位の参考点である中心 位,上顎咬合平面の基準であるカンペル平面,またほかにも視認不可能な診断基準が存在しており,それらを可視化することで より精度の高い治療結果が導き出せることを症例を用いて報告する.
  • 皆川 仁
    2021 年7 巻1 号 p. 64-69
    発行日: 2021/07/01
    公開日: 2025/09/15
    ジャーナル フリー
    細菌感染により炎症が波及した上顎洞粘膜肥厚において,サイナスリフトの外科手術およびインプラント埋入は禁忌であ る.臨床で定説となっている治療法および治療術式は慢性および難治性の上顎洞炎が完治した状態でないとインプラント埋入は 不可能である.診断のポイントは上顎洞自然口であり自然口の開存の有無が一連の術式の成否を決める.今回,ケースレポート として抗菌薬投薬での感染肥厚部除去の限界についてと,耳鼻咽喉科における内視鏡下鼻内副鼻腔手術に頼らない歯科口腔外科 医が行うインプラント埋入のためのラテラルウィンドウテクニックによる粘膜肥厚切除術の新たな術式を紹介する.
  • 川畑 正樹, 下田 徹
    2021 年7 巻1 号 p. 70-76
    発行日: 2021/07/01
    公開日: 2025/09/15
    ジャーナル フリー
    欠損補綴における可撤性義歯では,咀嚼能力の回復が得られても,長期的に顎堤粘膜への負担過重により顎堤吸収が進行 する場合が多い.とくに著しい顎堤吸収による上顎のフラビーガムや下顎の遊離端欠損では,その対応が困難となる.今回,少 数歯残存の症例において,上顎は顎堤の保全を考慮したオーバーデンチャーにて,下顎は臼歯部の高度顎堤吸収に対して腸骨ブ ロック骨移植後,インプラント補綴を行った長期の経過症例について報告する.
  • 松永 健嗣
    2021 年7 巻1 号 p. 78-85
    発行日: 2021/07/01
    公開日: 2025/09/15
    ジャーナル フリー
    歯内療法にかぎらず,すべての歯科分野において治療法や器具・機材の進歩は続いている.根管処置が確実にできてこそ の「健全歯質の確保」であるため,治療する根管の湾曲,狭窄の程度,患者の開口量,術者の技量,使用する器具・機材の特性を 理解した上で,開口窩洞の大きさ,外形,方向を決定していくべきである.近年発売されたマルテンサイト相で作られたNiTi 製 ファイルは柔軟性に富み,超弾性が少ないことから湾曲根管内でファイルがスプリングバックしにくいためトランスポーテー ションを起こしにくく,形状記憶効果で優れた根管追従性を有する.現在,「このファイルシステムを使えばすべての症例に対応 できる」といえるシステムは存在しない.新しいファイルシステムなどへの継続的な情報収集を行い,それらのファイルシステム の特徴を理解した上で使い分けていくことが重要である.
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