同種造血幹細胞移植後に発生した腎障害に対し,当院にて2008 年1 月から2021 年12 月の間に腎生検を行った15症例から得られた臨床知見を,治療経験を踏まえて報告する。同期間に633例の同種造血幹細胞移植が行われていた。原疾患は急性リンパ性白血病5 例,急性骨髄性白F 血病4 例,慢性骨髄性白血病2 例,骨髄異形成症候群2 例,慢性EB ウイルス感染症1 例,ホジキンリンパ腫1 例で,男性10 例,女性5 例,腎生検時の平均年齢は43.1(±14.1)歳だった。同種造血幹細胞移植から腎生検までの期間は約3カ月半~3年と症例によってばらつきがあり,腎生検結果は造血幹細胞移植後血栓性微小血管症(hematopoietic stem cell transplantation-associated throm-botic microangiopathy:TA-TMA) 8 例,膜性腎症6 例,微小変化型ネフローゼ症候群1 例だった。膜性腎症の6 例はすべて,移植片対宿主病(graft versus host disease:GVHD)の予防または治療目的のカルシニューリン阻害薬の終了後にネフローゼ症候群を発症していた。同種造血幹細胞移植後ネフローゼ症候群の免疫抑制治療への反応性は良好で,5 例はプレドニゾロン(PSL)単剤またはシクロスポリン(CyA)併用で寛解に至り,1 症例は未治療経過観察で自然寛解を得た。寛解に至らなかった膜性腎症の1 例でも,利尿薬などの保存的治療で不完全寛解Ⅱ型となり,臨床的には安定していた。TA-TMA の症例については移植後3 カ月半~1 年半以内と比較的移植後早期に腎機能低下のため腎生検を行っており,尿蛋白や尿潜血は認めても軽度であった。TA-TMA は,腎特異的な治療法がなく,また他臓器も障害を受けていることも多く,経過観察期間中に8 例中5 例で死亡転帰となり,残る3例のうち生検時から腎不全が顕在化していた2 例において生検後も腎不全の進行を認めていた。
本検討結果では,同種造血幹細胞移植後の腎障害に関して,TA-TMA による進行性の腎機能障害とGVHD の関与するネフローゼ症候群の2つに大別し,具体的な臨床経過や病理所見を交えて報告する。
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