目 的:2018 年に腎疾患対策検討会報告書(以下,報告書)が発出され,達成すべき成果目標(key performance indicator:KPI)の一つとして,2028 年までに年間新規透析導入患者数を3 万5 千人以下に減少させることが掲げられた。そこで,2021年までの透析導入率の経年変化を評価し,報告書発出後の4年間で透析導入率の低下により透析導入を防げたと考えられる人数,そして透析導入率が変化しない場合に予測される透析導入患者数を推計した。
方 法:2006 ~2021 年の日本透析医学会統計調査,人口統計を用いて,性年齢階級別に透析導入率を算出した。透析導入率が報告書の発出前2 年間(2016~2017 年)の平均のまま不変と仮定した場合,予測される透析導入数をその後の4 年間(2018~2021 年)の各年人口から求め,実際の導入数との差を求め,透析導入率低下により透析導入を防げたと考えられる人数を推計した。将来推計人口を用いて,2021 年の透析導入率のまま不変であった場合に,予測される2025 年ならびに2030 年の透析導入患者数を推計した。
結 果:性年齢階級別透析導入率のグラフは,年々,全体的に高齢の方へシフトしており,透析導入が先送りされていることが示唆された。報告書発出後の4 年間で,透析導入率の低下により3,725 人の透析導入を防ぐことができたと推計された。透析導入率が現状のままなら,透析導入患者数は 2025 年 39,319 人,2030 年 40,213 人と,目標の3 万5 千人以下には達しないことが推計された。
総 括:報告書発出後も透析導入率は低下しており,対策の効果と考えられた。しかし,現状(2021 年時点)での透析導入率のままでは,KPI は達成されないと推計され,目標達成のためには,透析導入率をさらに下げることが必要である。
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