小児の急性糸球体腎炎(acute glomerulonephritis: 以下A.G.N.)および血管性紫斑病性腎炎(anaphyla-ctoid purpura nephritis:A.P.N.)の病初期の腎生検材料を用いて,一般に行われているようなIgG,IgA,IgM,Fibrinogenそして補体(β
1C/β
1A)の螢光染色を行うと共に,溶連菌抗原(type 12 group A strepto-coccus)の抗血清およびFITC標識患者血清を用いて組織内抗原の証明を試みた。A.G.N.においては,IgGおよび補体は主に糸球体基底膜にそってfine granularなdepositとして認められた。またIgAと溶連菌抗原ならびにFITC標識患者血清による三者の染色像パターンは非常によく似ており,各糸球体の5~20ヵ所のmesangial areaにfine granularなdepositの集合として見られた。一方,A.P.N.の場合には,これまでの報告とは異なりIgAおよびFibrinogenが主として糸球体基底膜にそってnodularなdepositとして認められ,またFITC標識患者血清による抗原の検索をも併せて試みてみたが,これでは残念ながら螢光染色を認めることが出来なかった。以上の事実より,A.G.N.の場合には,何らかの抗原(溶連菌の菌体成分)とその抗体の一つと考えられるIgAとの関係がこの腎炎発症の上で重要な役割を果していると考えられた。また一方A.P.N.の場合はで抗原の証明は困難であったがために,IgAをもってそのimmune complexと結びつけることはむずかしいが,先のA.G.N.の場合のIgAのdistributionとは全く異ったパターンであり,さらに両者の臨床経過の相違を併せて考えると,この病初期に認められたIgAは腎炎発症のみならず,その後の経過をも決定するような働きを持つ一因子となるのではないかと考えられた。
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