症例は69歳, 女性。10年前より尿潜血, 3年前より間質性肺炎のため近医にて経過観察されていた。尿蛋白, 腎機能障害を指摘されたことはなかったが, 2004年7月に初めて腎機能障害を指摘された (Cr 2.1mg/d
l). 同年11月中旬より発熱, 全身倦怠感, 紫斑が出現したため近医を受診したところ, WBC 19,540/μ
l, BUN 115.9mg/d
l, Cr 7.5mg/d
l, CRP 26.3mg/d
lであり, ■当院緊急入院となった。入院時, 体温39.5℃, 背部叩打痛を認め, 尿所見では尿蛋白2+, 尿潜血3+(RBC 30~39/HPF), WBC多数/HPFを認めていた. 尿・血液培養からは
E. coli が検出され, 尿路感染症による敗血症と診断し, 直ちに meropenem trihydrate (MEPM) 投与を行った。また, 腎不全に対しては血液透析を開始した。間質性肺炎の合併, 腎機能の経過, MPO-ANCA高値 (112 EU) より microscopic polyangitis (MPA) と診断した。感染軽快後の腎組織所見では, 半月体形成ほか腎盂腎炎の所見もあり, ステロイド投与による感染再燃が懸念された。そのため, ガンマグロブリン製剤を5g/日×5日間投与後にメチルプレドニゾロン500mg点滴静注を3日間, その後, 経ロプレドニゾロン20mg投与を行い, MPO-ANCA値, 肺病変, Cr値は改善, CRP陰性で経過し, 尿路感染の再燃もみられなかった。重篤な感染症を合併しているANCA関連血管炎でステロイド薬などの免疫抑制治療を行う際の感染死に対するリスクを回避する対策が重要である。ガンマグロブリン製剤投与により, 続いて行われた免疫抑制療法施行中も感染再燃をきたすことなく, 安全に MPO-ANCA を陰性化させることができたと考えられた。
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