日本泌尿器科学会雑誌
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100 巻, 3 号
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原著
  • 古田 希, 小出 晴久, 佐々木 裕, 三木 淳, 木村 高弘, 頴川 晋
    2009 年 100 巻 3 号 p. 479-485
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/02/01
    ジャーナル フリー
    (目的)1996年にプレクリニカルクッシング症候群の診断基準が作成され,手術数も増加しているが,術後のステロイド補充について一定の見解はない.今回,本症の術後ステロイド補充の現状を検討するため,最近の手術症例のretrospectiveな検討を行った.
    (対象と方法)対象は1997年から2007年までに手術を施行された本症の18例で,ステロイド補充は5例が未施行,13例に施行されていた.これらの術前副腎皮質シンチと術前ACTHの面から,補充の適応を検討した.
    (結果)術前ACTH基礎値の抑制例を18例中10例(56%)に認めた.副腎皮質シンチで健側の集積抑制が13例にみられ,この群にACTH抑制例も多くみられた.補充期間は平均19.8週で,術前ACTH値が低値なほど,離脱に時間がかかる傾向がみられた.また,補充開始量が少ないほど補充期間は有意に短かった.
    (結論)本症は,コルチゾールの自律性分泌による健側副腎や下垂体機能の抑制があると,術後に副腎不全をきたす可能性がある.補充の指標として副腎シンチおよび術前ACTH値が重要であり,両者ともに抑制所見がなければ補充は必要ないと考えられた.ステロイド補充量は,最近では腹腔鏡下手術の低侵襲を考慮し減量しているが副腎不全兆候はみられていない.症例を選択し,補充開始量を少なくすることで安全に離脱期間を短縮することが可能と考えられた.
  • 鷲野 聡, 平井 勝, 寺内 文人, 松崎 敦, 小林 裕, 松浦 克彦
    2009 年 100 巻 3 号 p. 486-494
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/02/01
    ジャーナル フリー
    (目的)局所浸潤性膀胱癌に対して膀胱温存を目的として動注化学療法を行い, その治療成績を検討した.
    (対象·方法)局所浸潤性膀胱癌の34例(T2=25例, T3=9例)に対して, 動注化学療法を行った.化学療法は, シスプラチン(100mg/body)とアドリアマイシンもしくはピラルビシン(50mg/body)の動脈内注入を用いて, 4週間毎に2サイクル施行した.治療効果判定はTUR, 尿細胞診, CT, MRIを用いて行った.4例は動注化学療法と放射線療法を併用した.
    (結果)34例中, 12例(35%)がcomplete response, 24例(70%)がobjective responseであった.平均観察期間28.7カ月の間に, 5例が局所浸潤癌の再発, 1例が遠隔転移を来たした.5年癌特異的生存率は69.3%であった.膀胱温存症例は19例(56%)であった.grade 3以上の副作用は, 血液毒性が 5 例(15%), 消化器毒性が 3 例(9%)であった.治療成績に影響を及ぼすrisk factorは, 腫瘍径>20mm, 多発腫瘍, 臨床病期≥cT3であり, Risk factorが1個以下の症例の治療成績は, 奏効率=75~100%, 膀胱温存率=71~75%, 5年癌特異的生存率=83%であった.Risk factorを2個以上有する症例の治療成績は, 奏効率=50~58%, 膀胱温存率=25~42%, 3年癌特異的生存率=0~69%であった.
    (結論)局所浸潤性膀胱癌に対する動注化学療法は, risk factor(腫瘍径>20mm, 多発腫瘍, 臨床病期≥cT3)が少ない症例に対しては有効な治療と思われたが, risk factorが多い症例は治療成績が不良であり他の治療法を選択するべきと思われた.また, 高度の副作用は少なく比較的安全な治療法と思われた.
症例報告
  • 佐竹 直哉, 大野 芳正, 吉岡 邦彦, 坂本 昇, 竹内 尚史, 橘 政昭
    2009 年 100 巻 3 号 p. 495-499
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/02/01
    ジャーナル フリー
    症例は69歳女性.平成6年右腎癌にて右腎全摘術を施行した.病理診断は腎細胞癌clear cell carcinoma, grade 2, pT1であった.以後外来にて経過観察されていたが平成18年CTにて右腸腰筋内に淡い造影効果を伴う3×3cm大の腫瘤を指摘された.CTガイド下針生検では腎細胞癌の転移が疑われたが確定診断には至らず, 術後12年を経過していることも考慮し, 腫瘍摘除術を施行した.病理組織学的に腎癌の腸腰筋への転移と診断された.術後放射線療法とインターロイキン2による免疫療法を行った.腎細胞癌の骨格筋への転移は稀であり, これまでに海外での報告を含め32例が報告されている.他の臓器に転移を認めない骨格筋のみへの転移例が自験例を含め17例と多く, 術後転移が出現した24例では, 14例が腎摘後5年以上経過していた.また10年以上の遅発性転移が11例あった.
  • 山本 圭介, 松岡 庸洋, 高尾 徹也, 辻村 晃, 奥山 明彦, 久保 盾貴, 細川 亙, 角田 洋一, 山口 誓司
    2009 年 100 巻 3 号 p. 500-503
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/02/01
    ジャーナル フリー
    41歳, 男性.家族歴・往歴に特記すべきことなし.以前より陰茎腫大を自覚し, 排尿時痛も出現したため前医受診.陰茎の著明な腫大を認めた.MRIにて, 陰茎皮膚および皮下組織の著明な肥厚を認めた.自排尿困難のため, 尿道カテーテル留置の上, 当科紹介.病的な皮膚・皮下組織を切除し, 左大腿部より採取した分層皮弁を陰茎に巻きつけて植皮を行った.病理診断では悪性所見を認めず, 非特異的炎症性変化であった.植皮の生着は良好で, 痛みは減少し尿道カテーテル抜去後も排尿可能であった.術後6カ月現在, 明らかな再発を認めず, 排尿・性機能についても特に問題ない.象皮病はリンパ浮腫の終末像であり, フィラリア感染や外傷・治療・腫瘍・液状異物自己注入などが原因で生じる.自験例ではフィラリア感染は否定的であり, 特発性と考えられた.
  • 中山 貴之, 横山 みなと, 齋藤 一隆, 竹中 俊介, 久保 雄一, 飯村 康正, 沼尾 昇, 酒井 康之, 古賀 文隆, 藤井 靖久, ...
    2009 年 100 巻 3 号 p. 504-507
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/02/01
    ジャーナル フリー
    症例は46歳, 女性.右側腹部痛を主訴に他院を受診し,造影CTで右腎梗塞と診断され,当院に救急搬送された.心臓超音波検査にて僧帽弁後尖に浮動性の疣贅を認め, 感染心内膜炎による腎動脈塞栓症と診断し,僧帽弁形成術を施行した.感染性心内膜炎は診断が必ずしも容易ではなく,適切な治療が行われなければ致死的となりえる.さらに,感染性心内膜炎は様々な合併症を引き起こし, 腎梗塞を合併することも決してまれではない.腎梗塞の成因が感染性心内膜炎である場合,速やかかつ適切な治療が求められるため,腎梗塞の症例に対してはその原因疾患として感染性心内膜炎も念頭におき,診断·治療を進めることが重要であると思われる.
手技の開発
  • 皆川 倫範, 村田 靖, 関 聡
    2009 年 100 巻 3 号 p. 508-512
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/02/01
    ジャーナル フリー
    尿道ステントは重篤な合併症を持つ高齢前立腺肥大症患者に有効な治療法である.通常X線透視のみを用いて留置を行うが,X線透視のみでの前立腺部尿道長測定と適切な留置位置の決定は容易でない場合がある.特に著明な中葉肥大症例では困難で,報告によって中葉肥大症例は尿道ステントの適応外とされる.我々は経直腸超音波検査とX線透視を用いて形状記憶合金製尿道ステント(MEMOKATH®)留置を試みたところ,中葉肥大を伴う症例でも容易で正確に尿道ステントを留置することができたので報告する.
    留置は2%リドカインゼリーによる尿道浸潤麻酔下,仰臥位で行う.経直腸超音波検査とX線透視の両方を用いて膀胱頚部と前立腺尖部,前立腺部尿道を観察する.超音波検査を用いると,それらをX線透視よりも鮮明に描出することができる.経直腸超音波検査は,正確な前立腺部尿道長測定と適切なMEMOKATH®の留置位置決定に於いてX線透視よりも適当であり,特に中葉肥大症例で有効であった.
    我々はMEMOKATH®を前立腺肥大7症例に留置した.6症例は尿閉で尿道カテーテルを留置されており,残りの症例も多量の残尿を認めた.うち3症例には著明な中葉肥大を認めた.全ての症例は多量の残尿を認めることなく自排尿可能になり,重篤な合併症は認めなかった.
    経直腸超音波検査を用いると,X線透視よりも解剖学的所見が客観的で詳細であるので,正確なMEMOKATH®留置が可能である.
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