(目的)我々は利根中央病院における前立腺癌の臨床的検討を報告する.
(対象・方法)1987年から2006年の間に利根中央病院泌尿器科で病理組織学的に診断された前立腺癌532症例を対象とした.1999年以降に診断された362症例については, PSAスクリーニングで発見された症例群(SC群)とそれ以外の方法で発見された症例群(NSC群)とで生存率を比較検討した.
(結果)1987年からの年間新規診断患者数は徐々に増加しており, 臨床病期の年次推移は年経過とともにstage AおよびDは減少傾向に, stage Bは増加傾向にあり, 病期の偏移を認めた.1999年以降の症例数はSC群(223例)とNSC群(139例)でそれぞれstage Aは 1 例(0.4%), 13例(9.4%)(p=0.0011), stage Bは159例(71.3%), 44例(31.7%)(p<0.0001), stage Cは54例(24.2%), 33例(23.7%), stage Dは 9 例(4.0%), 48例(34.6%)(p<0.0001)であった.SC・NSC両群間で 3 年・5年・7年の全生存率を比較するとSC群では95.6%・92.7%・84.1%, NSC群では83.2%・74.3%・60.8%(p<0.0001)であった.さらに 3 年・5年・7年の疾患特異的生存率を比較するとSC群では98.8%・97.3%・95.9%, NSC群では90.2%・87.7%・79.4%(p<0.0001)であった.
(結論)1987年以降の臨床病期分布に変化が認められた.また, スクリーニングにより発見された前立腺癌症例群では早期がんが増加し, それ以外の方法で発見された症例群に比較し良好な生存率が得られた.
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