日本泌尿器科学会雑誌
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100 巻, 4 号
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原著
  • 近藤 宣幸, 邱 君, 上田 康生, 鈴木 透, 樋口 喜英, 丸山 琢雄, 野島 道生, 山本 新吾, 島 博基
    2009 年 100 巻 4 号 p. 519-524
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/02/01
    ジャーナル フリー
    (目的)成人例での顕微鏡下精索静脈瘤手術は, 再発率, 術後精巣水瘤合併率などがすぐれた術式として知られている.今回, 小児例における当科での同術式の初期成績を報告する.
    (対象と方法)当科において手術時年齢が15歳以下で顕微鏡下鼠径管下ないし鼠径管内到達法を受けた左精索静脈瘤9例(平均12.7歳)を対象とした.また手術前後で触診や超音波断層法にて精巣容積を測定した.
    (結果)小児例の鼠径部到達法は緻密な剥離操作が必要であり手術時間も平均170.4±45.6分であったが, 全例に精巣動脈の温存が可能であった.Catch-up growthは手術前後ともに超音波断層法で精巣容積を測定した2例中1例に認められた.平均観察期間24.6カ月において術後の再発や精巣水瘤の発生は認めなかった.
    (結論)小児例においても精索静脈瘤に対する顕微鏡下鼠径部到達法は安全で効果的であり, 今後選択術式の一つに成り得るものと考えられた.
  • 田村 芳美, 小屋 智子, 森田 崇弘, 久保田 裕, 高橋 修, 藤塚 勲, 伊藤 一人, 鈴木 和浩
    2009 年 100 巻 4 号 p. 525-533
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/02/01
    ジャーナル フリー
    (目的)我々は利根中央病院における前立腺癌の臨床的検討を報告する.
    (対象・方法)1987年から2006年の間に利根中央病院泌尿器科で病理組織学的に診断された前立腺癌532症例を対象とした.1999年以降に診断された362症例については, PSAスクリーニングで発見された症例群(SC群)とそれ以外の方法で発見された症例群(NSC群)とで生存率を比較検討した.
    (結果)1987年からの年間新規診断患者数は徐々に増加しており, 臨床病期の年次推移は年経過とともにstage AおよびDは減少傾向に, stage Bは増加傾向にあり, 病期の偏移を認めた.1999年以降の症例数はSC群(223例)とNSC群(139例)でそれぞれstage Aは 1 例(0.4%), 13例(9.4%)(p=0.0011), stage Bは159例(71.3%), 44例(31.7%)(p<0.0001), stage Cは54例(24.2%), 33例(23.7%), stage Dは 9 例(4.0%), 48例(34.6%)(p<0.0001)であった.SC・NSC両群間で 3 年・5年・7年の全生存率を比較するとSC群では95.6%・92.7%・84.1%, NSC群では83.2%・74.3%・60.8%(p<0.0001)であった.さらに 3 年・5年・7年の疾患特異的生存率を比較するとSC群では98.8%・97.3%・95.9%, NSC群では90.2%・87.7%・79.4%(p<0.0001)であった.
    (結論)1987年以降の臨床病期分布に変化が認められた.また, スクリーニングにより発見された前立腺癌症例群では早期がんが増加し, それ以外の方法で発見された症例群に比較し良好な生存率が得られた.
症例報告
  • 泉 和良, 井崎 博文, 中西 良一, 岸本 大輝, 小泉 貴裕, 高橋 正幸, 福森 知治, 金山 博臣
    2009 年 100 巻 4 号 p. 534-539
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/02/01
    ジャーナル フリー
    症例は41歳男性.2007年 8 月, 糖尿病のスクリーニングCTにて左腎中部前面に径3cmの腫瘤性病変を指摘された.左腎癌, 臨床病期T1aN0M0の診断で11月19日に体腔鏡下左腎部分切除術を施行した.病理結果はrenal cell carcinoma, G2>G1, pT1aであった.第12病日に肉眼的血尿が出現し, 膀胱タンポナーデによる排尿困難と貧血のため再入院した.受診時CTにて左腎仮性動脈瘤が疑われ, 第14病日にコイルにて選択的左腎動脈塞栓術を施行した.その後も肉眼的血尿を繰り返し, 再度膀胱タンポナーデとなり, 第65病日に 2 回目のコイルにて選択的左腎動脈塞栓術を施行した.その後は経過良好である.
  • 八木橋 祐亮, 沖波 武, 福澤 重樹
    2009 年 100 巻 4 号 p. 540-544
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/02/01
    ジャーナル フリー
    要旨:76歳女性の右腎盂癌患者に対して後腹膜到達法による腹腔鏡下腎尿管全摘除術を施行した.二酸化炭素による気腹をした300分間, 血圧, 体温, 酸素飽和度は安定していたが終末呼気二酸化炭素分圧(ETCO2)は徐々に上昇し55mmHgのピークに達した.血液ガスは急性呼吸性アシドーシスの所見であった.ETCO2の上昇に伴って調節呼吸の換気回数を増加させたがPCO2の上昇を防ぎ得なかった.手術部位から頚部, 顔面にかけて皮下気腫を認めた.手術終了後のポータブル胸部撮影により, 縦隔気腫および頚部から胸壁に広がる広範囲な皮下気腫を認めた.喉頭鏡による観察を行ったところ喉頭浮腫のための声帯が直視できない状態であった.患者の気道は著明な喉頭浮腫のため閉塞していることが強く疑われた.挿管チューブのカフ注入物を抜いてリーク音を聴取したが確認できなかったため, 喉頭浮腫が高度であると推定され, 即日抜管を見合わせた.我々は術中に顔面頚部に皮下気腫がある場合には, 喉頭浮腫に伴う気道閉塞を回避するため抜管前に喉頭鏡検査を行うべきであると推奨する.
  • 島本 憲司, 丹司 望, 尾澤 彰, 佐々木 豊和, 池田 哲大, 伊勢田 徳宏, 横山 雅好
    2009 年 100 巻 4 号 p. 545-549
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/02/01
    ジャーナル フリー
    要旨:症例は34歳男性.右陰嚢内容の無痛性腫瘤を主訴に近医を受診し, 右陰嚢内腫瘍の診断の下, 右高位精巣摘除術を施行された.病理組織学的に横紋筋肉腫で, 多形型と診断された.CTで, 傍大静脈リンパ節転移を認めたため, 追加治療目的で当科を紹介され, 入院した.Intergroup Rhabdomyosarcoma Study(IRS)における治療前TNM分類によるとT2bN1M0, Stage I, また術後グループ分類ではGroup IIBと診断され, VAC療法(vincristine, actinomycin D, cyclophosphamide)を2コース, さらにEP療法(etoposide, cisplatin)を1コース施行したが, その効果を認めず, 後腹膜リンパ節摘除術を施行した.摘除標本から横紋筋肉腫の転移と診断された.追加治療を施行しなかったところ3カ月後に, 回盲部と右尿管, 右外腸骨動脈を巻き込む形で腫瘍の再発を認めた.これも摘除し, 同時に腫瘍床に15Gyの術中照射も加えた.adjuvant療法として, VIE療法(vincristine, ifosphamide, etoposide)を6コース施行した.最終の化学療法終了後42カ月経った現在, 再発の兆候なく, 経過観察中である.
  • 城武 卓, 堀口 明男, 梅田 俊, 大槻 英男, 戸邉 武蔵, 高橋 正博, 早川 正道, 浅野 友彦, 栃本 真人, 高瀬 通汪
    2009 年 100 巻 4 号 p. 550-554
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/02/01
    ジャーナル フリー
    要旨:症例は66 歳男性, 左下腹部痛を主訴に近医を受診した.腹部CT で膀胱左側壁から左精嚢外側に広範囲に接する骨盤内腫瘤を認めた.左尿管は腫瘤に巻き込まれ, 水腎, 水尿管を呈した.精査加療目的で当科を受診した.組織学的診断のためCT ガイド下経皮的針生検を施行したところ, 悪性所見は認めず, 特発性後腹膜線維症と診断された.しかし, 悪性腫瘍に続発した二次的な線維化を否定し得なかったため, 閉塞した下部尿管を含めた腫瘤の開放生検を施行した.開放生検の術中迅速病理診断は経皮的生検の診断と同様に, リンパ球の巣状浸潤を伴う膠原線維と線維芽細胞の増生のみで, 悪性所見を認めなかった.尿管欠損部はBoari flap 法により再建した.本症例は骨盤部に限局した腫瘤形成型の後腹膜線維症であり, 骨盤内腫瘍の鑑別診断として念頭に置くべきと考えられた.
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