(目的)当院で実施した外科的切除例における腎良性腫瘍の頻度と臨床的特徴を検討する.
(対象と方法)腎細胞癌と術前に診断し, 2002年10月から2007年7月までに157例の外科的切除術を施行した.今回, 腫瘍径が5cm以下で画像情報に不足のない81例を評価の対象とした.悪性腫瘍と良性腫瘍を比較するにあたって, 年齢, 性差, 腫瘍径, CTにおける腫瘍の造影効果と均一性に着目した.
(結果)患者年齢の中央値は67歳(平均値は63歳), 腫瘍径の中央値は3.0cm(平均値は3.2cm)であった.摘出標本の組織学的検討の結果, 81例中10例(12%)に腎良性腫瘍を認めた.腎良性腫瘍の内訳は7例がオンコサイトーマ, 3例が脂肪成分の少ない腎血管筋脂肪腫であった.腎良性腫瘍と悪性腫瘍を比較すると, 造影CTでの均一性, 性差(女性優位), 腫瘍径(小さなもの)に有意差を認め, CTにおける造影効果は有意な差を認めなかった(p=0.344).
(結論)均一な造影効果を有する小さな腎腫瘍で, ことに女性に発症した場合は良性腫瘍の可能性がある.過大な治療侵襲を避けるべく慎重な治療選択が必要である.
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