日本泌尿器科学会雑誌
Online ISSN : 1884-7110
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100 巻, 7 号
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原著
  • 井上 啓史, 久野 貴平, 福原 秀雄, 濱口 卓也, 深田 聡, 辛島 尚, 鎌田 雅行, 執印 太郎, 阪倉 直樹, 笠原 高太郎, 渡 ...
    2009 年 100 巻 7 号 p. 661-670
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/02/01
    ジャーナル フリー
    (目的)5—アミノレブリン酸(ALA)による光力学診断(PDD)補助下経尿道的膀胱腫瘍切除術(PDD-TUR-Bt)の有用性の検討.
    (対象と方法)対象は筋層非浸潤性膀胱癌57例.術前にALA溶解液を膀胱内注入し, 青色光及び従来の白色光の両モードを用いて膀胱生検およびPDD-TUR-Btを行った.青色光で赤色蛍光励起を認めた部位及び従来の白色光で異常所見を認めた部位を採取, 切除した.PDDの有用性は各生検部位の赤色蛍光の程度と生検検体の病理診断との対応で診断精度を求め評価した.PDD-TUR-Btの有用性は膀胱内再発に関して従来のTUR-Bt施行症例との比較検討を行った.更に膀胱内再発に寄与する因子を多変量解析にて同定した.
    (結果)57症例全420生検検体でのPDDの診断精度は, 感度92.5%, 特異度60.1%であった.またPDD-TUR-Bt 57例の無再発生存率は88.2±0.1%(12カ月), 76.2±0.1%(24~48カ月)で, 従来のTUR-Bt 149例の無再発生存率60.3±0.0%(12カ月), 31.6±0.0%(48カ月)を有意に上回った(p<0.001).更に多変量解析では唯一PDD-TUR-Btの施行が膀胱内再発に関係する独立した予後改善因子であった(ハザード比0.279, p=0.001).
    (結論)PDD-TUR-Btは術後早期の膀胱内再発率を低下させると考えた.
  • 波多野 浩士, 木内 利郎, 木下 竜弥, 小林 正雄, 井上 均, 高田 剛, 原 恒男
    2009 年 100 巻 7 号 p. 671-678
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/02/01
    ジャーナル フリー
    (目的)前立腺全摘術後にPSA再発を来した症例に対する外照射を用いた救済放射線治療の治療効果についてretrospectiveに検討した.
    (対象・方法)前立腺全摘術後にPSA再発を来し救済放射線治療を行った28例を対象とした.28例中16例に内分泌療法を併用した.放射線は前立腺床に対して照射し, 線量の中央値は60Gyであった.放射線治療後のPSA2次再発をPSA 0.1ng/ml以上と定義し, その危険因子について検討を行った.
    (結果)救済放射線治療後の観察期間の中央値は42カ月であった.PSA非再発生存率は, 救済放射線治療後 3 年で81%, 5年で74%であった.内分泌療法の併用はPSA2次再発には影響しなかった(P=0.56).単変量解析では, Gleason score 8以上(P=0.026), 救済治療前PSA 0.24ng/ml以上(P=0.0016)が再発の危険因子であった.多変量解析では, 救済治療前PSA 0.24ng/ml以上のみが有意な再発の危険因子であった(P=0.017).晩期有害事象として28例中 3 例(11%)にGrade 3の血尿を認めた.
    (結論)前立腺全摘術後にPSA再発を来した症例に対して, 早期に救済放射線治療を行うことで良好な治療効果を得られる可能性が示唆された.
  • 山下  亮, 中村 昌史, 松嵜 理登, 松井 隆史, 山口 雷藏, 庭川 要, 鳶巣 賢一, 朝倉 弘郁, 伊藤 以知郎
    2009 年 100 巻 7 号 p. 679-685
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/02/01
    ジャーナル フリー
    (目的)当院で実施した外科的切除例における腎良性腫瘍の頻度と臨床的特徴を検討する.
    (対象と方法)腎細胞癌と術前に診断し, 2002年10月から2007年7月までに157例の外科的切除術を施行した.今回, 腫瘍径が5cm以下で画像情報に不足のない81例を評価の対象とした.悪性腫瘍と良性腫瘍を比較するにあたって, 年齢, 性差, 腫瘍径, CTにおける腫瘍の造影効果と均一性に着目した.
    (結果)患者年齢の中央値は67歳(平均値は63歳), 腫瘍径の中央値は3.0cm(平均値は3.2cm)であった.摘出標本の組織学的検討の結果, 81例中10例(12%)に腎良性腫瘍を認めた.腎良性腫瘍の内訳は7例がオンコサイトーマ, 3例が脂肪成分の少ない腎血管筋脂肪腫であった.腎良性腫瘍と悪性腫瘍を比較すると, 造影CTでの均一性, 性差(女性優位), 腫瘍径(小さなもの)に有意差を認め, CTにおける造影効果は有意な差を認めなかった(p=0.344).
    (結論)均一な造影効果を有する小さな腎腫瘍で, ことに女性に発症した場合は良性腫瘍の可能性がある.過大な治療侵襲を避けるべく慎重な治療選択が必要である.
  • 辻村 晃, 高尾 徹也, 内田 欽也, 山本 圭介, 福原 慎一郎, 中山 治郎, 植田 知博, 平井 利明, 木内 寛, 宮川 康, 高橋 ...
    2009 年 100 巻 7 号 p. 686-692
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/02/01
    ジャーナル フリー
    (目的)過活動膀胱(OAB)を合併する前立腺肥大症(BPH)患者に対する抗コリン剤の位置づけは未だ明確ではない.今回, 我々はα1受容体遮断薬単独療法では十分な効果が得られなかったOABを合併したBPH患者に対して, 酒石酸トルテロジンを追加することによる治療効果を検討した.
    (対象と方法)対象は 4 週間以上のα1受容体遮断薬の内服でもOAB症状が持続したBPH患者47例.平均年齢は72.9歳, 平均前立腺体積は29.8mlであった.すでに服用中のα1受容体遮断薬とともに酒石酸トルテロジン4mgを 8 週間服用させ, 併用療法前後での排尿状態を各種質問紙と残尿測定で評価した.
    (結果)8週間の併用療法を完結できたのは41例であった.IPSS, QOL-index, OABSSはいずれも有意に改善し, IPSSの蓄尿症状も有意に改善した(P<0.01).KHQについては, 生活への影響, 仕事・家事への制限, および身体的活動の制限において, 有意な改善を認めた(P<0.05).残尿量は変化せず, 尿閉を含めた重篤な副作用は全く認めなかった.
    (結論)α1受容体遮断薬単独療法ではOAB症状が改善されなかったOABが合併したBPH患者に対して, α1受容体遮断薬と酒石酸トルテロジンの併用療法は効果的かつ安全な治療法であった.
症例報告
  • 樋口 和女, 三上 洋, 田中 正利, 二村 聡, 城田 京子
    2009 年 100 巻 7 号 p. 693-697
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/02/01
    ジャーナル フリー
    要旨:56歳女性.肉眼的血尿の精査で右尿管腫瘍と診断され, 治療目的にて当科紹介受診した.経尿道的右尿管腫瘍切除術を行い, 病理組織診断は尿路の子宮内膜症であった.術後精査の結果, 更年期障害に対し処方されているエストロゲン剤が通常の 5 倍量であり, 血中エストロゲン濃度が高値であった.エストロゲン過剰状態が, 閉経女性の尿管子宮内膜症発病に関与した可能性が示唆される症例を経験した.
  • 陳 憲生, 藤村 正亮, 関田 信之, 三上 和男, 上島 修一, 鈴木 啓悦, 市川 智彦
    2009 年 100 巻 7 号 p. 698-702
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/02/01
    ジャーナル フリー
    前立腺悪性リンパ腫は非ホジキンリンパ腫の中でも稀な腫瘍であるが, 前立腺癌を合併した症例は報告がない.68歳男性が, 動悸・吐下血を主訴とし受診.胃内視鏡検査にて巨大潰瘍を認め, その部位の生検により, びまん性大細胞型B細胞リンパ腫と診断された.骨盤部CTでは, 前立腺の腫大と左外腸骨リンパ節の腫脹が認められた.また, PSA値が13.0ng/mlと高値であったことから, 前立腺針生検を施行した.生検組織には, 胃と類似した異型リンパ球の浸潤と, 中分化型腺癌が認められ, 前立腺癌を合併した前立腺悪性リンパ腫と診断された.B細胞型悪性リンパ腫に対しては, リツキサンを使用した多剤併用化学療法(R-CHOP)により, 画像上完全寛解が得られた.前立腺癌に対しては, アンドロゲン除去療法を行い, 現在PSA値は0.2以下である.悪性リンパ腫に対する治療は, 抗CD20抗体であるリツキサンの併用により, 予後の改善が期待されている.今回われわれは, 自験例を含め, 24例の前立腺悪性リンパ腫を集計し考察を行った.
  • 鈴木 龍弘, 原林 透, 安部 崇重, 佐澤 陽, 篠原 信雄, 野々村 克也
    2009 年 100 巻 7 号 p. 703-706
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/02/01
    ジャーナル フリー
    精嚢原発の悪性腫瘍はその大部分が癌腫であり, 肉腫は大変まれである.症例は72歳男性, 会陰部の疼痛と排尿痛を主訴とし当院を受診した.直腸診で前立腺頭側に弾性硬の腫瘤を触知した.CT, MRIで腫瘤は右精嚢の位置に存在していた.経直腸的針生検で平滑筋肉腫と診断された.北海道大学病院泌尿器科にて膀胱前立腺全摘, 骨盤リンパ節郭清と回腸導管による尿路変更が行われた.切除標本で膀胱, 前立腺は正常, 腫瘍は精嚢原発と診断された.術後3カ月で肺と骨盤内リンパ節に再発, 10カ月で腫瘍死した.病理解剖で多発転移巣を認めたが局所再発は認めなかった.精嚢原発平滑筋肉腫はこれまでに9例が文献的に報告されている.自験例を含め, 針生検による組織学的診断は5例に行われ, このうち平滑筋肉腫と診断されたものはわずか2例であった.自験例では免疫組織学的検討が有用であった.
  • 野原 隆弘, 酒井 晨秀, 布施 春樹, 今村 好章
    2009 年 100 巻 7 号 p. 707-711
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/02/01
    ジャーナル フリー
    患者は62歳男性.2006年, 左側胸部悪性黒色腫にて腫瘤摘除術施行.2007年, 左腋窩リンパ節転移が出現し, 左腋窩リンパ節廓清後, DAV-feron療法を5クール施行した.2008年6月, 右頸部リンパ節転移が出現し, 同じ頃肉眼的血尿が出現したため当科紹介.膀胱鏡では非乳頭状腫瘍を2つ認め, CT・MRIでは左鼠径リンパ節・傍大動脈リンパ節転移を認めた.尿細胞診で悪性黒色腫細胞が認められ, 悪性黒色腫膀胱転移と診断した.多発リンパ節転移が存在し, 腫瘍切除は予後の改善に寄与しないと考えられたため, 腫瘍切除を行わなかった.現在, 当院皮膚科にて化学療法中である.悪性黒色腫膀胱転移は過去10例の報告しかなく稀である.尿細胞診のみで診断し得た症例は過去に見られなかった.
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