日本泌尿器科学会雑誌
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101 巻, 3 号
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原著
  • 石岡 淳一郎, 影山 幸雄, 井上 雅晴, 福井 直隆, 沼尾 昇, 齋藤 一隆, 一柳 暢孝, 田中 将樹, 兵地 信彦, 福田 博志, ...
    2010 年 101 巻 3 号 p. 539-546
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/03/16
    ジャーナル フリー
    (目的) 進行性胚細胞腫瘍に対する治療成績を振り返り,胚細胞腫瘍治療の現状と展望について考察検討を加える.
    (対象・方法) 1997年4月より2007年8月の間に,当科で治療を行った初発の進行性胚細胞腫瘍51症例を対象とした.原発巣は精巣:41例(80%),後腹膜:6例(12%),縦隔4例(8%),組織型はセミノーマ:14例(27%),非セミノーマ:30例(59%),不明が7例(14%)であった.IGCCC分類は,good:20例(39%),intermediate:14例(27%),poor:17例(33%)であった.初回治療は,good riskにはBEP療法を3コース,intermediate以上にはVIP療法,VIPVB療法,BEP療法と変遷がみられた.一次救済化学療法は,大量化学療法からTIP療法へ変更した.
    (結果) 全体の5年総生存率は86%,good:100%,intermediate:74%,poor:76%であった.初回化学療法2クール後のマーカー半減期不良症例は14例で,Intermediate,poor prognosis群の5年総生存率は半減期良好症例が88%,不良症例が71%であった.
    (結論) リスク分類とマーカー半減期に基づいた救済化学療法の早期導入により,poor risk症例の治療成績は改善した.一次救済化学療法への反応不良群に対する有効な治療の開発が課題である.
  • 堀口 明男, 住友 誠, 神原 太樹, 辻田 裕二郎, 吉井 貴彦, 吉井 秀彦, 佐藤 全伯, 朝隈 純一, 伊藤 敬一, 早川 正道, ...
    2010 年 101 巻 3 号 p. 547-553
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/03/16
    ジャーナル フリー
    (目的) 狭窄の長い尿道狭窄症に対する口腔粘膜を用いた一期的尿道形成術の有用性を検討した.
    (患者と方法) 内尿道切開術または尿道拡張施行後に再狭窄を認めた尿道狭窄症7例(うち6例は自排尿不能)を対象とした.狭窄部位は球部4例,振子部2例,前部尿道全長狭窄が1例,原因は外傷3例,医源性狭窄2例,尿道炎1例,尿道下裂術後狭窄1例であった.狭窄部を全周切除して筒状の口腔粘膜で置き換えるtube graft法を3例,縦切開した尿道に口腔粘膜をパッチとして縫着するonlay graft法を4例(ventral onlay3例,dorsal onlay1例)に施行した.口腔粘膜採取は左頬裏面より行い,必要に応じて下口唇裏面を越えて右頬部へ延長した.グラフト長は2.5~12cm(平均4.6cm)であった.術後3週間尿道カテーテルを留置した.術後観察期間は3カ月から55カ月(平均14カ月)であった.
    (結果) 開口障害などの口腔粘膜採取に関連した重篤な合併症は認めなかった.Tube graft法を行った2例に吻合部狭窄を認め,内尿道切開術を追加した.また,ventral onlay法を施行した1例にろう孔形成を認めたが保存的に軽快した.現在,全例とも追加処置を要することなく,自排尿可能である.
    (結語) さらなる術式の改良が必要ではあるが,本術式は狭窄の長い難治性尿道狭窄症に対する優れた術式であると考えられた.
  • 田中 吉則, 舛森 直哉, 塚本 泰司, 古屋 亮兒, 小椋 啓, 古屋 聖兒
    2010 年 101 巻 3 号 p. 554-557
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/03/16
    ジャーナル フリー
    (緒言) 経尿道的前立腺切除術(transurethral resection of the prostate:TURP)後の排尿後尿滴下(post micturition dribble:PMD)の実態を調査した.
    (対象と方法) TURPを施行した388例に対して術後1年目に尿失禁の有無,頻度,程度,および種類(腹圧性尿失禁,切迫性尿失禁,PMD)を問うアンケート調査を行った.
    (結果) 有効回答270例中,78例(29%)が尿失禁ありと回答した.60例(77%)は週に1回か2回の尿失禁,72例(92%)はパンツにしみがつく程度の軽度の尿失禁であったが,毎日あるいはズボンを汚すとの重症例も少数に存在した.尿失禁の種類はPMDが48例(62%)と半数以上を占めていた.
    (結論) TURP後の尿失禁の半数以上にPMDが関与していた.
  • 辻本 裕一, 小林 憲市, 藤田 昌弘, 新井 康之, 高田 剛, 高田 晋吾, 本多 正人, 藤岡 秀樹, 松宮 清美
    2010 年 101 巻 3 号 p. 558-564
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/03/16
    ジャーナル フリー
    (目的) 大阪警察病院において1990年から2006年の17年間に経験した193例の腎細胞癌について臨床的検討を行った.
    (対象と方法) 男性が140名,女性53名で,年齢は26歳から88歳,中央値は62歳であった.観察期間の中央値は53カ月であった.
    (結果・結論) 全体の疾患特異的3年,5年,10年,15年生存率は,それぞれ92.6%,91.1%,86.1%,72.2%であった.単変量解析では年齢,主訴,PS,腫瘍径,貧血,CRP,進展度,異型度,浸潤様式,静脈浸潤,リンパ節転移,遠隔転移,病期が有意な予後因子であった.さらにそれらの因子についてCoxの比例ハザードモデルによる多変量解析を行うと高齢(60歳以上),CRP陽性,T4が疾患特異的生存率へ影響を及ぼす独立した予後不良因子であった.これら3つの予後不良因子のうち症例毎に有する因子数で0~3と分類した.5・10年疾患特異的生存率は因子数0群で100%,100%,因子数1群で90.8%,83.8%,因子数2群で71.6%,34.1%,因子数3群で0%,0%であった.特に因子数が2個以上になると5・10年疾患特異的生存率は69.2,33.0%と1個以下(94.8,91.9%)に比べて有意(p<0.0001)に予後不良であった.このようなhigh risk群では厳重な経過観察や術後補助療法などの必要があると考えられた.
症例報告
  • 山下 高久, 諸角 誠人, 高木 大輔, 吉永 敦史, 石井 信行, 松田 隆晴, 寺尾 俊哉, 山田 拓己
    2010 年 101 巻 3 号 p. 565-569
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/03/16
    ジャーナル フリー
    症例は37歳男性,発熱および腰痛を主訴に受診.血液検査では,AFP,hCG,LDHが著明に上昇していた.CT検査では,多発肺腫瘍,左鎖骨上リンパ節腫脹,左腋窩リンパ節腫脹および巨大な後腹膜腫瘍を認めた.多発転移を伴う精巣腫瘍を疑ったが,精巣内には腫瘍や微小石灰化といった明らかな異常を認めなかった.以上より,多発転移と血中hCG異常高値を伴った予後不良群の後腹膜性腺外胚細胞腫瘍と診断した.
    導入化学療法として,BEP療法(ブレオマシシン,エトポシド,シスプラチン)を3コース施行したところ腫瘍マーカー低下の鈍化を認め陰性化もしなかったため,救済化学療法であるTIP療法(パクリタキセル,イフォスファマイド,シスプラチン)へ変更した.末梢血幹細胞移植を併用しほぼ遅延することなく4コース施行され,化学療法終了後,すべての腫瘍マーカーは陰性化した.しかし,後腹膜腫瘍,左鎖骨上および左腋窩リンパ節が残存していたため,後腹膜リンパ節郭清,左鎖骨上リンパ節郭清,腋窩リンパ節郭清を施行した.摘出した標本には明らかなviable cellは認めなかった.現在術後24カ月経過しているが,再発を認めていない.
    著しく進行した予後不良群の性腺外胚細胞腫瘍症例でも,われわれの症例のように末梢血幹細胞移植併用による化学療法を施行し残存腫瘍を摘出する集学的治療により,予後が期待できるものと考えられた.
  • 遠藤 勇気, 鈴木 康友, 松沢 一郎, 濱崎 務, 木村 剛, 近藤 幸尋
    2010 年 101 巻 3 号 p. 570-573
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/03/16
    ジャーナル フリー
    50歳,男性.2カ月前より疼痛を伴った両側陰嚢内腫瘤を認めたため当科受診.両側精巣上体炎を疑い,2週間抗生剤と鎮痛剤を投与したが無効であった.陰嚢エコーにて陰嚢内の悪性腫瘍も否定できないため高位左精巣摘除術施行.病理組織学的所見にて壊死性血管炎を認め,結節性多発動脈炎の診断となり,当院リウマチ科において精査施行.結節性多発動脈炎における全身症状や血液免疫学的検査に異常を認めないことより,精巣上体発症の局所性結節性多発動脈炎と診断された.対側に対してはステロイド療法を勧めたが,陰嚢内の疼痛が強いため患者が強く外科的治療による早急な症状改善を希望したため,対側に対しても高位精巣摘除術を施行.病理組織学的所見は左側同様に結節性多発動脈炎であった.術後自覚症状は消失し,術後2年経過した現在再発等は認めていない.文献的検索では,両側陰嚢内発症の局所性結節性多発動脈炎は第一例である.
  • 柳原 豊, 沢田 雄一郎, 尾澤 彰, 西田 智保, 菊川 忠彦, 池田 哲大, 島本 憲司, 青木 克徳, 丹司 望, 飯尾 昭三, 横山 ...
    2010 年 101 巻 3 号 p. 574-578
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/03/16
    ジャーナル フリー
    症例は,29歳男性.陰嚢腫大を主訴に前医を受診し,両側精巣腫瘍の診断のため当科に紹介された.精子を凍結温存後,両側高位精巣摘除術を施行した.右精巣はセミノーマ+未熟奇形腫の混在で,左精巣はセミノーマであった.腫瘍マーカーも速やかに低下し,CTにて転移を認めなかったため,ステージI期の診断で外来にて経過観察することとした.術後3カ月目のCTにて両肺野に腫瘤影を認め,精巣腫瘍の再発が疑われたが,炎症の可能性も否定できず,FDG PET-CT検査を施行した.PET-CT検査では肺だけでなく,後腹膜リンパ節(傍下大静脈リンパ節)にも集積を認めた.精巣腫瘍再発,肺および後腹膜リンパ節転移の診断にて,BEP療法を3コース施行した.肺転移は消失したが,後腹膜リンパ節転移は縮小したものの残存していた.PET-CT検査では,肺にもリンパ節にもFDGの集積を認めなかった.原発巣の組織に,未熟奇形腫が混在していたこともあって,後腹膜リンパ節郭清(射精神経温存)を施行した.病理学的にviable cellや奇形腫の組織は認めなかった.現在まで腫瘍の再発なく経過観察中である.また,テストステロンを補充しながら十分な勃起を得て性行為も可能である.
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