(目的) 小さな腎腫瘍に対する腎部分切除術は腎摘術と比較し制癌性に関しては同等であり,腎機能保持の面では優れた成績を示しており
1)2),選択されるケースが増えてきている.更に,その低侵襲性から腹腔鏡下腎部分切除術(LPN)が行われるようになった
3)~5).しかしLPNは高度な技術が必要で合併症の割合も開腹腎部分切除術(OPN)に比べて多い
6).合併症を減らすための工夫の1つが局所止血材の使用である.今回我々はLPNにおいて,新しい局所止血材microporous polysaccharide hemispheres(MPH)と従来のフィブリン糊止血材の使用効果を比較検討した. (対象と方法) 2007年1月から2011年3月までに横浜市立大学附属病院でLPNを施行した55症例を対象とした.LPNを施行した55症例のうちMPH使用群12例(A群:41~77歳,平均59.7歳,男女比10:2)とフィブリン糊使用群43症例(B群:22~79歳,平均60.3歳,男女比31:12)の2群に分けて,手術成績と術後成績について後方視的に解析し比較検討をおこなった.止血材(MPHもしくはフィブリン糊)は,腎実質縫合時に縫合糸を締める前と腎門部をデクランプ後に腎切離面に適量噴霧して行った. (結果) 平均術中出血量はA群25.6 ml(少量~100 ml),B群86.3 ml(少量~400 ml)でMPH群で有意に少なかった.手術時間,阻血時間,尿路解放の有無に両群で有意差は認めなかった.術後合併症はB群で2例認めたがA群では認めなかった. (結論) MPHはLPNの止血材として問題なく使用でき従来のフィブリン糊と比較し術後合併症に差は認められなかった.
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