日本泌尿器科学会雑誌
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103 巻, 1 号
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原著
  • 青木 裕章, 宋 成浩, 小川 一栄, 佐藤 両, 小堀 善友, 芦沢 好夫, 八木 宏, 新井 学, 川羽田 秀幸, 岡田 弘, 藤目 真
    2012 年 103 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2012/01/20
    公開日: 2013/02/07
    ジャーナル フリー
    (目的) 排尿異常を訴える患者の仮想内視鏡像を作成することで,形態の外観からの観察と内腔からの観察を行い,病態をより正確に評価する検査法について検討し報告する. (対象と方法) 対象は2009年3月から2010年10月までに排尿異常で当科受診した男児のうち排尿時膀胱尿道造影(VCUG)で下部尿路閉塞が疑われた22例(5~13歳,中央値9歳).22例中11例を無作為に抽出し排尿時コンピュータ断層撮影(VCT)を施行した.脱落した1例を除く21例をVCT・VCUG併用群,VCUG単独群に分け画像所見と膀胱尿道鏡(CS)所見の一致率,内視鏡手術後の奏功率を比較した. (結果) 術前診断とCS所見との一致率はVCT・VCUG併用群では72.7%,VCUG単独群では33.3%であった.尿道病変部に対して経尿道的内尿道切開(TUI)を施行しVCT・VCUG併用群では著効2例,軽快6例で,奏功率は72.7%,VCUG単独群では軽快5例,奏功率50%であった. (結語) 小児の下部尿路閉塞疾患に対して仮想内視鏡検査の方法を提示し,その有効性を検討した.結果は有効な検査であり,十分臨床に応用可能であった.今後機器の発達に伴い,膀胱尿道鏡や排尿機能を補完する検査へ発展する可能性が示唆された.
  • 坂田 綾子, 槙山 和秀, 野口 剛, 佐野 太, 中井川 昇, 矢尾 正祐, 窪田 吉信
    2012 年 103 巻 1 号 p. 8-13
    発行日: 2012/01/20
    公開日: 2013/02/07
    ジャーナル フリー
    (目的) 小さな腎腫瘍に対する腎部分切除術は腎摘術と比較し制癌性に関しては同等であり,腎機能保持の面では優れた成績を示しており1)2),選択されるケースが増えてきている.更に,その低侵襲性から腹腔鏡下腎部分切除術(LPN)が行われるようになった3)~5).しかしLPNは高度な技術が必要で合併症の割合も開腹腎部分切除術(OPN)に比べて多い6).合併症を減らすための工夫の1つが局所止血材の使用である.今回我々はLPNにおいて,新しい局所止血材microporous polysaccharide hemispheres(MPH)と従来のフィブリン糊止血材の使用効果を比較検討した. (対象と方法) 2007年1月から2011年3月までに横浜市立大学附属病院でLPNを施行した55症例を対象とした.LPNを施行した55症例のうちMPH使用群12例(A群:41~77歳,平均59.7歳,男女比10:2)とフィブリン糊使用群43症例(B群:22~79歳,平均60.3歳,男女比31:12)の2群に分けて,手術成績と術後成績について後方視的に解析し比較検討をおこなった.止血材(MPHもしくはフィブリン糊)は,腎実質縫合時に縫合糸を締める前と腎門部をデクランプ後に腎切離面に適量噴霧して行った. (結果) 平均術中出血量はA群25.6 ml(少量~100 ml),B群86.3 ml(少量~400 ml)でMPH群で有意に少なかった.手術時間,阻血時間,尿路解放の有無に両群で有意差は認めなかった.術後合併症はB群で2例認めたがA群では認めなかった. (結論) MPHはLPNの止血材として問題なく使用でき従来のフィブリン糊と比較し術後合併症に差は認められなかった.
症例報告
  • 鈴木 孝尚, 栗田 豊, 新保 斉, 今西 武志, 牛山 知己, 麦谷 荘一, 大園 誠一郎
    2012 年 103 巻 1 号 p. 14-17
    発行日: 2012/01/20
    公開日: 2013/02/07
    ジャーナル フリー
    症例は48歳女性.主訴は肉眼的血尿および右腰背部痛.近医婦人科を受診し,腹部超音波検査で骨盤内腫瘍が疑われ,当院婦人科を受診した.凝血塊により尿閉をきたしており,同日,当科へ紹介となった.腹部超音波検査・CT・MRIで,腎実質に近接した径5 cmの右腎動脈瘤を認めた.早期相で造影剤の腎盂への溢流を認めたため,右腎動脈瘤の腎盂内破裂と診断した.貧血の進行を認め,保存的加療は困難であると考え,右腎摘除術を行った.腎動脈瘤の腎盂内破裂についての詳細な報告例は本邦では過去に2例のみであり,極めて稀な症例であると考えられた.
  • 亀井 潤, 久米 春喜, 鈴木 基文, 藤村 哲也, 福原 浩, 榎本 裕, 西松 寛明, 石川 晃, 井川 靖彦, 本間 之夫
    2012 年 103 巻 1 号 p. 18-21
    発行日: 2012/01/20
    公開日: 2013/02/07
    ジャーナル フリー
    76歳男性.8年前に左鼠径部の無痛性腫大を主訴に当科受診.左高位精巣摘除術を施行し,精索悪性線維性組織球腫(MFH)と診断された.断端陽性のため追加切除および後腹膜リンパ節郭清を施行し断端陰性を得たので,追加治療は行わなかった.術後8年後に左鼠径部に有痛性の皮下腫瘤が出現し入院した.CTにてMFHの局所再発,肝・副腎転移を認めた.その後,局所再発巣,転移巣は急速な増大を認め,入院28日目に死亡した.剖検にて,MFHの再発,肺・肝・左副腎・椎体骨・リンパ節転移が確認された.MFHの再発・転移のほとんどは早期に出現する.8年後に再発・転移した本症例は,極めて稀であると考えられる.
  • 伊藤 悠城, 荒尾 正亨, 石垣 華子, 白井 明, 山坂 友美, 平井 耕太郎
    2012 年 103 巻 1 号 p. 22-26
    発行日: 2012/01/20
    公開日: 2013/02/07
    ジャーナル フリー
    今回,我々は陰茎癌鼠径リンパ節転移に対する鼠径リンパ節郭清術後の皮膚壊死・リンパ漏を経験した.皮膚壊死による左鼠径部の皮膚欠損範囲は広汎であり連日の包交や軟膏処置では改善がみられず,リンパ漏も日に日に悪化していった.術後18日目より明らかな感染兆候がないことを確認したうえでV.A.C.(Vacuum Assisted Closure)ATS®治療システム(米KCI株式会社)を用いた局所陰圧閉鎖療法を施行した.同治療により良性肉芽の盛り上がりや創環境の改善が認められたほか,術後リンパ漏も著明な改善も確認された.局所陰圧閉鎖療法がリンパ漏に対して有効であったという報告は我々の調べうる限り過去に7例の報告があった.今後リンパ漏に対する有効な手段として同治療の可能性を検討していく必要があると思われた.
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