日本泌尿器科学会雑誌
Online ISSN : 1884-7110
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103 巻, 5 号
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原著
  • 伊藤 寿樹, 栗田 豊, 新保 斉, 永田 仁夫, 高山 達也, 古瀬 洋, 麦谷 荘一, 大園 誠一郎, 牛山 知己, 鶴 信雄, 鈴木 ...
    2012 年 103 巻 5 号 p. 655-659
    発行日: 2012/09/20
    公開日: 2013/09/28
    ジャーナル フリー
    (目的) 褐色細胞腫に対する腹腔鏡下副腎摘除術において手術時間と術中の最高収縮期血圧に影響する術前の臨床的なパラメーターが存在するかどうかを解析した. (対象と方法) 1992年1月から2010年9月までに浜松医科大学泌尿器科で褐色細胞腫に対して腹腔鏡下副腎摘除術を施行した28例を対象とした.これら28例について術前の背景因子としてBody Mass Index(BMI),患側,腫瘍径,高血圧の既往,術直前の血圧,血中カテコラミン濃度および24時間尿中カテコラミン代謝物の値について分類し,これらが手術時間および術中の最高収縮期血圧に相関するかどうかレトロスペクティブに解析した. (結果) 全症例において重篤な合併症は認めず,輸血や開腹手術は必要としなかった.手術時間は中央値203分であり,13例(46%)に200 mmHg以上の術中高血圧を認めた.退院可能日は中央値で術後5日目であった.手術時間には腫瘍径,術中収縮期血圧には血中カテコラミン濃度および24時間尿中カテコラミン代謝物の値がそれぞれ有意な正の相関を示した(p<0.05). (結論) 褐色細胞腫に対する腹腔鏡手術では腫瘍径が大きい場合は手術時間が長く,術前のカテコラミン活性が高い場合は術中高血圧をきたすため慎重な周術期管理が必要である.
症例報告
  • 小林 裕章, 芦刈 明日香, 波止 亮, 矢木 康人, 香野 友帆, 西山 徹, 斉藤 史郎
    2012 年 103 巻 5 号 p. 660-664
    発行日: 2012/09/20
    公開日: 2013/09/28
    ジャーナル フリー
    (症例1) 患者は82歳,男性.2000年に根治的腎摘除術を施行し経過を見ていたが,2005年に肺転移が出現し免疫療法を実施した.2008年6月に膵,骨転移を認めソラフェニブ400 mg/日,NSAIDsを開始した.2009年10月,癌性疼痛が増悪し第4腰椎に放射線照射30 Gyを施行したが著効しなかった.同年12月,疼痛管理目的に入院中に嘔吐,腹痛を認めCT施行し,腹腔内にfree airを認め消化管穿孔と診断した.経鼻胃管留置及び抗生剤投与にて保存的に軽快した. (症例2) 患者は62歳,男性.術前に肺転移を認めた腎細胞癌に対し2006年12月に根治的腎摘除術施行し,直後より免疫療法を開始した.2008年7月にソラフェニブ800 mg/日を開始し一旦は転移巣縮小したが,2010年1月より転移巣が増大しスニチニブ50 mg/日に変更した.10月に胸水貯留を認め入院した.胸水ドレナージにて加療中,突然の上腹部痛を認めCT施行,腹腔内にfree airを認め消化管穿孔と診断した.緊急に大網被覆術施行し,軽快した.ソラフェニブ,スニチニブ等の分子標的治療薬において,稀であるが重篤な副作用の1つに消化管穿孔が挙げられる.今回報告した2例の分子標的治療薬と消化管穿孔の因果関係は明らかではないが,分子標的治療薬の長期使用,NSAIDsや放射線療法との併用時等には注意が必要であると考えられた.
  • 米虫 良允, 永田 政義, 西松 寛明, 新美 文彩, 高澤 豊, 鈴木 基文, 藤村 哲也, 福原 浩, 榎本 裕, 石川 晃, 久米 春 ...
    2012 年 103 巻 5 号 p. 665-670
    発行日: 2012/09/20
    公開日: 2013/09/28
    ジャーナル フリー
    64歳男性.2005年11月,健診で右腎に径2.5 cm大の腫瘍を指摘され,当院紹介初診となった.画像診断にて,右腎に嫌色素性腎癌などの乏血管性の腫瘍が疑われたため,2006年1月に右腎部分切除術施行した.切除組織はクロモグラニンAおよびシナプトフィジン陽性であり,病理組織学的に非定型カルチノイド(断端陰性)を認め,腎原発カルチノイドと診断された.追加治療なく,外来にて定期的経過観察していたが,2010年8月,腹部超音波検査にて右腎切除部分に突出する腫瘍性病変を認め,精査目的のCT検査にて腎カルチノイドの右腎局所再発および下大静脈周囲の多発リンパ節転移が疑われた.2011年3月に右腎摘除術および右腎門部・傍大動脈リンパ節郭清術を施行した.病理組織学的には,非定型カルチノイド局所再発と多発リンパ節転移を認め,また偶発微小腎細胞癌も認めた.腎原発カルチノイドとしては本邦43例目と考えられる.腎カルチノイドの部分切除後に局所再発し,リンパ節転移を呈した症例は稀であり,文献的考察を含め報告する.
  • 平松 香苗, 津坂 恭央, 金子 智之, 松島 常, 本間 之夫
    2012 年 103 巻 5 号 p. 671-674
    発行日: 2012/09/20
    公開日: 2013/09/28
    ジャーナル フリー
    前立腺導管癌は,高円柱状の異型細胞からなり,乳頭状あるいは篩板状構造を示す比較的稀な前立腺癌の一亜型である.当院泌尿器科にて前立腺導管癌と診断された7症例の臨床的検討を行った.平均年齢は69歳(58~82歳),平均初診時PSAは22.8 ng/ml(2.1~102 ng/ml)であった.2例が排尿困難,2例が肉眼的血尿,1例が肺の異常陰影を契機に受診した.5例が前立腺針生検,1例がTUR-P,1例が前立腺全摘除術にて導管癌と診断された.2例がpure ductal adenocarcinoma,5例が腺房癌との混在を示すmixed ductal adenocarcinomaであった.4例は初診時に遠隔転移を認め,肺転移3例,肝転移1例,リンパ節転移1例であり,骨転移は認められなかった.転移を認めない3例のうち2例が前立腺全摘除術,1例が内分泌療法併用放射線外照射を施行された.前立腺全摘除術を施行された2例は術後放射線外照射療法を要した.これら3例は,現在明らかな転移再発を認めていない.転移を認めた4例は内分泌療法を施行され,1例が再燃なく経過しており,1例が新規病変の出現を認め,1例はドセタキセル療法が導入され現在経過観察中である.
  • 山田 雄太, 髙橋 淳子, 金村 三樹郎, 簔和田 滋, 本間 之夫
    2012 年 103 巻 5 号 p. 675-680
    発行日: 2012/09/20
    公開日: 2013/09/28
    ジャーナル フリー
    1998~2011年に当科で原発性女子尿道癌を4例経験した.腫瘍生検,膀胱尿道鏡,CTもしくはMRIの画像検査で診断を行った.患者の年齢は66歳から92歳,主訴は,肉眼的血尿が1例,尿閉が1例,外陰部出血が2例.病理組織診断は,移行上皮癌が2例,腺癌と扁平上皮癌がそれぞれ1例であった.病期はGrabstald分類を用い,stage BとC例が各々1例,stageDが2例であった.また,治療は,3例で膀胱全摘除術+回腸導管造設術を施行し,1例で放射線外照射を行った.予後は,2例が経過中に癌死しており,1例が12カ月再発なく経過,1例が経過中lost followとなった.
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