(症例1) 患者は82歳,男性.2000年に根治的腎摘除術を施行し経過を見ていたが,2005年に肺転移が出現し免疫療法を実施した.2008年6月に膵,骨転移を認めソラフェニブ400 mg/日,NSAIDsを開始した.2009年10月,癌性疼痛が増悪し第4腰椎に放射線照射30 Gyを施行したが著効しなかった.同年12月,疼痛管理目的に入院中に嘔吐,腹痛を認めCT施行し,腹腔内にfree airを認め消化管穿孔と診断した.経鼻胃管留置及び抗生剤投与にて保存的に軽快した. (症例2) 患者は62歳,男性.術前に肺転移を認めた腎細胞癌に対し2006年12月に根治的腎摘除術施行し,直後より免疫療法を開始した.2008年7月にソラフェニブ800 mg/日を開始し一旦は転移巣縮小したが,2010年1月より転移巣が増大しスニチニブ50 mg/日に変更した.10月に胸水貯留を認め入院した.胸水ドレナージにて加療中,突然の上腹部痛を認めCT施行,腹腔内にfree airを認め消化管穿孔と診断した.緊急に大網被覆術施行し,軽快した.ソラフェニブ,スニチニブ等の分子標的治療薬において,稀であるが重篤な副作用の1つに消化管穿孔が挙げられる.今回報告した2例の分子標的治療薬と消化管穿孔の因果関係は明らかではないが,分子標的治療薬の長期使用,NSAIDsや放射線療法との併用時等には注意が必要であると考えられた.
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