日本泌尿器科学会雑誌
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104 巻, 6 号
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原著
  • 高山 達也, 杉山 貴之, 古瀬 洋, 谷島 崇史, 鈴木 孝尚, 甲斐 文丈, 永田 仁夫, 大塚 篤史, 石井 保夫, 大園 誠一郎
    2013 年 104 巻 6 号 p. 681-687
    発行日: 2013/11/20
    公開日: 2014/12/11
    ジャーナル フリー
    (目的) ドセタキセル(DTX)治療後の去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)に対して行った薬物療法について後方視的に検討する. (対象と方法) 2004年1月から2012年7月までにDTX(70~75 mg/m2)を使用した45例のうち,DTX治療後の19例に新たな治療を追加した.治験薬を用いた5例を除く14例を対象とし,その臨床経過について検討した. (結果) DTX後治療開始時年齢およびPSAの中央値はそれぞれ71歳(45~79),241.1 ng/ml(3.1~1,643.0).13例がLH-RHアゴニストを継続し,1例はcastrationを受けた.使用薬剤は,DTX(30 mg/m2)+シスプラチン(CDDP)/カルボプラチン,エトポシド+CDDP,パクリタキセル+CDDP,シクロファスファミド,S-1,テガフール―ウラシルであった.DTX中止理由は,病勢進行が12例,有害事象が2例であった.治療によるPSA値の低下を8例に認め,そのうち50%以上の低下は3例であった.DTX治療後の追加治療による全生存期間中央値は,11.4カ月(4.1~27.3)であった.13例が癌死した.Grade 3の有害事象は4例に認め,白血球減少2例と貧血2例であった. (結語) いずれの治療もGrade 4以上の有害事象はなく,効果は限定的であるが有効な症例もあり試みる価値はあると考えられた.
  • 柳 雅人, 近藤 幸尋, 遠藤 勇気, 西村 泰司, 水沼 仁孝, 新井 正徳, 横田 裕行, 中澤 賢, 村田 智, 汲田 伸一郎
    2013 年 104 巻 6 号 p. 688-696
    発行日: 2013/11/20
    公開日: 2014/12/11
    ジャーナル フリー
    (目的) 今回我々はTAEが深在性腎損傷に対し有用であるか,またその有用性が病院の規模で差があるか否かを検討した. (対象と方法) 2001年4月から2011年4月までの日本医科大学付属病院の腎損傷42例,2001年4月から2009年4月までの大田原赤十字病院の腎損傷33例を対象とした.腎損傷分類はCTと術中所見をもとに2008年の日本外傷学会分類に準じ,主に治療法について検討した. (結果) 日本医科大学付属病院42例は平均41.6歳,男性36例,女性6例,分類はI型16例,II型11例,III型15例であった.治療は保存的30例,TAE 7例,手術5例で,TAE・手術はIII型に対し行われた.42例中5例死亡したが腎損傷単独の死亡例はなかった.一方大田原赤十字病院33例は平均46.6歳,男性25例,女性8例,分類はI型9例,II型12例,III型12例であった.治療は保存的24例,TAE 9例,手術症例はなく,TAEはII型1例とIII型8例に行われた.33例中8例死亡したが,腎損傷単独の死亡例はなかった.両施設でTAEは16例行われ,15例はIII型でありTAEが得られなければ腎摘をした可能性があり,TAEの有用性が確認された. (結論) 病院規模によらずIII型に対してTAEが多く行われており手術症例を減らす上でもTAEは有用である.
  • 羽田 真郎, 井上 享, 山崎 六志, 安藤 忠助, 秦 聡孝, 住野 泰弘, 野村 威雄, 佐藤 文憲, 三股 浩光
    2013 年 104 巻 6 号 p. 697-701
    発行日: 2013/11/20
    公開日: 2014/12/11
    ジャーナル フリー
    (目的) 当科で施行した尿膜管疾患に対する単孔式腹腔鏡下尿膜管摘除術の臨床的検討を行い,有用性を検証する. (対象と方法) 2011年8月から2012年7月までに施行した男性3人,女性2人の計5例で,平均年齢は30.8歳(25~36歳)である.臍周囲を長径2 cmの楕円形に皮膚切開し,Access platformとしてSILSTM port(Covidien)またはOCTOTM port(Surgical Network Systems)を使用した.尿膜管を膀胱まで剥離,bladder cuffとともに摘出した.術創を臍に形成した. (結果) 手術時間は中央値で220分(156~460分),出血量10 ml(10~70 ml)であった.周術期合併症は認めず,術後中央値6日(5~14日)で退院となった. (結論) 当科での単孔式腹腔鏡下尿膜管摘除術は術創を臍形成するため,非常に整容性に優れている.特に若年者には利点の大きい術式であると考えられた.また従来からの腹腔鏡手術手技に熟達した術者であれば,問題なく施行可能と思われた.
症例報告
  • 奥村 昌央, 釣谷 晋二, 高川 清, 布施 秀樹
    2013 年 104 巻 6 号 p. 702-705
    発行日: 2013/11/20
    公開日: 2014/12/11
    ジャーナル フリー
    異時性の泌尿器系三重複癌を経験したので報告する.1998年にPSA高値(7.0 ng/ml)を指摘され当科受診.前立腺生検で右葉より前立腺癌が検出され前立腺全摘除施行.病理診断は中分化腺癌,T1cNoM0であった.2002年に顕微鏡的血尿の精査で筋層非浸潤性膀胱癌が見つかり経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)施行.病理診断は尿路上皮癌,grade(G)2,pTaであった.2008年の尿路上皮癌に対する定期検査でのCTで右腎腫瘤を指摘されその後増大したため2009年右腎腫瘍核出術施行.病理診断はclear cell renal cell carcinoma,G2,pT1aNXM0であった.2011年に筋層非浸潤性膀胱癌を認め経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)施行.病理診断は,尿路上皮癌,G2,pTaであった.泌尿器系癌に於いては原発癌の再発だけでなく,異時性に発生する重複癌も念頭に経過観察する必要があると思われた.
  • 杉浦 晋平, 蓼沼 知之, 坂田 綾子, 田尻 雄大, 北見 一夫, 権藤 俊一, 亀田 陽一
    2013 年 104 巻 6 号 p. 706-711
    発行日: 2013/11/20
    公開日: 2014/12/11
    ジャーナル フリー
    我々は,前立腺癌で手術治療及び放射線外照射治療を受けたのちに,陰茎原発悪性線維性組織球症/未分化多形細胞肉腫malingnant fibrous histiocytoma/undifferentiated pleomorphic sarcoma(MFH/UPS)が出現した78歳男性を報告する.9 cm大の弾性硬の腫瘍が陰茎根部に出現した.病理組織標本では悪性紡錘形細胞が束状や花むしろ状に配列していた.免疫染色ではvimentin,α-smooth muscle actin,S-100は陽性であったが,keratin,desmin,Melan A,PSAは陰性であった.陰茎全切断術を施行したが,術後4カ月で局所再発し,6カ月後に転移により死亡した.本症例は陰茎原発MFH/UPSでは8例目の報告となった.
  • 金田 真実, 伊藤 秀明, 堀江 直世, 多賀 峰克, 渡邉 望, 大越 忠和, 今村 好章, 横山 修
    2013 年 104 巻 6 号 p. 712-715
    発行日: 2013/11/20
    公開日: 2014/12/11
    ジャーナル フリー
    症例1は62歳,女性.腹部CT検査にて左腎腫瘍を指摘され受診した.腎細胞癌を疑い腹腔鏡下左腎部分切除術を施行した.腫瘍は類上皮細胞からなり,類上皮型腎血管筋脂肪腫と診断された.症例2は35歳,女性.背部痛精査のCT検査にて右腎腫瘍を指摘された.腎細胞癌の術前診断のもと,腹腔鏡下右腎摘除術を施行した.免疫組織化学検査にてHMB-45, MelanAなどが陽性で類上皮型腎血管筋脂肪腫と診断された.類上皮型腎血管筋脂肪腫は腎血管筋脂肪腫の一亜型であり,腎細胞癌や他の悪性疾患との鑑別が困難な,比較的稀な疾患である.悪性の経過を辿る例が報告されており,悪性腫瘍と捉えて腎細胞癌と同様の経過観察が必要と考える.
  • 岡 了, 神谷 直人, 杉浦 恵子, 遠藤 匠, 矢野 仁, 直井 牧人, 西見 大輔, 高波 眞佐治, 長谷部 光泉, 鈴木 啓悦
    2013 年 104 巻 6 号 p. 716-719
    発行日: 2013/11/20
    公開日: 2014/12/11
    ジャーナル フリー
    強い血尿を伴うナットクラッカー症候群に対して,左腎静脈ステント留置術を行い,良好な結果を得た症例を報告する.症例は26歳女性.2009年1月から肉眼的血尿および左背部痛を認め,近医受診.ナットクラッカー症候群の診断の下,経過観察されていた.その後も高度な血尿が持続し,精査加療目的にて2010年8月当科紹介受診.CTにて上腸間膜動脈と大動脈間の左腎静脈狭窄所見を認めた.膀胱鏡検査では左尿管口からの出血,尿管鏡検査では左腎盂粘膜からのびまん性出血が確認された.尿細胞診はClass IIであった.その後も経過観察されていたが,高度な肉眼的血尿と左側腹部痛の改善を認めなかったため,当院倫理委員会の承認および本人の同意を得て,2011年7月左腎静脈内ステント留置術目的で入院となった.術中所見では,左腎静脈から下大静脈への返血の遅れと拡張した多数の側副血行路を認めた.ステント留置術は,Bard社製自己拡張型(径12×40 mm)血管ステントを左腎静脈内に2本留置することで,狭窄は改善し,側副血行路も消失した.術後の有意な有害事象は認めず,術後第4病日にて退院.術後3カ月のCTでは,左腎静脈の再狭窄を認めず,術後6カ月で血尿および腰背部痛は消失した.
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