日本泌尿器科学会雑誌
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104 巻, 3 号
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原著
  • 小林 博仁, 北村 香介, 水上 斉之助, 花澤 喜三郎, 坂本 善郎
    2013 年 104 巻 3 号 p. 489-495
    発行日: 2013/05/20
    公開日: 2014/06/16
    ジャーナル フリー
    (目的)前立腺全摘出標本とMRIを比較し,拡散強調画像(DWI)およびApparent diffusion coefficient(ADC)値の前立腺癌の局在診断能を評価した.(対象・方法)前立腺全摘を行った44例を対象とした.病理標本で得られた74の癌病変とMRIを比較し,癌の局在診断能を評価した.また,前立腺癌部と非癌部のADC値を測定した.(結果)所見陽性率は,直腸診,経直腸的超音波検査は9病変(12.2%),T2強調画像(T2WI)で26病変(35.1%),DWIは30病変(40.5%),T2WI+DWIでは48病変(64.9%)であった.ADC値は前立腺癌部が非癌部に比べ低かった(0.86±0.15 vs 1.24±0.16×10-3 mm2/s).辺縁域のADC値は前立腺癌部と非癌部で0.85±0.15 vs 1.28±0.17×10-3 mm2/sで前立腺癌部が低く,移行域でもそれぞれ0.87±0.15 vs 1.19±0.14×10-3 mm2/sで前立腺癌部が低かった.前立腺癌のGleason scoreでADC値を比較すると,8, 9のADC値は0.76±0.12×10-3 mm2/sでGleason score 6, 7の0.86±0.15×10-3 mm2/sに比べ有意に低かった.(結論)DWIとADC値は前立腺癌の局在診断に有用であると考えられた.
  • 鶴崎 俊文, 山崎 安人, 丸田 大
    2013 年 104 巻 3 号 p. 496-504
    発行日: 2013/05/20
    公開日: 2014/06/16
    ジャーナル フリー
    (目的)D'Amicoリスク分類の高リスク症例における根治的前立腺全摘除術および拡大骨盤内リンパ節郭清(拡大PLND)の治療成績をレトロスペクティブに検討した.(対象と方法)2010年までの10年間に根治的前立腺全摘除術および拡大PLNDを行った未治療高リスク症例の89例を中心に検討した.術後無治療経過観察の84例で術後PSA非再発率をKaplan-Meier法,種々の因子別に有意差をlog rank testを用い検定した.(結果)病理所見ではpT3以上が32.7%,切除断端陽性が16.9%,リンパ節転移陽性が6.7%,Gleasonスコア8~10が30.3%.摘出リンパ節個数は中央値13個.術後PSA値は96.6%がPSA 0.2 ng/ml未満.術後5年全生存率・癌特異生存率は100%.術後無治療経過観察84例の術後5年PSA非再発率は73.8%.治療前3因子(cT分類,生検時Gleasonスコア,治療前血清PSA値),その陽性因子数や摘出リンパ節個数(≤13個群vs. ≥14個群)では術後PSA非再発率での有意差を認めなかったが,病理学的因子の切除断端とpT分類では有意差を認めた.(考察)我々の高リスク限局性前立腺癌における手術単独療法の治療成績は諸家の報告をくらべて良好であった.これはより広範囲の切除や拡大PLNDによるものであるかもしれない.
  • 和田 耕一郎, 上原 慎也, 吉良 慎一郎, 松本 正広, 庄 武彦, 栗村 雄一郎, 橋本 次朗, 上原 央久, 山根 隆史, 金丸 聰淳 ...
    2013 年 104 巻 3 号 p. 505-512
    発行日: 2013/05/20
    公開日: 2014/06/16
    ジャーナル フリー
    (目的)2007年に日本泌尿器科学会が編集した「泌尿器科領域における周術期感染予防ガイドライン」は我が国初の泌尿器科,周術期に特化した感染予防ガイドラインである.今回,その妥当性,有用性を検証するため多施設で前向きに調査,解析を行った.(方法)対象は2008年7月から9月に全国の10施設において泌尿器科領域の手術を受けた513例.手術の内訳は経尿道的膀胱腫瘍切除術,経尿道的前立腺切除術,副腎摘除術,腎摘除術,腎尿管全摘除術,前立腺全摘除術,膀胱全摘除術である.患者背景,術式,予防投与した抗菌薬の種類と投与期間,SSI(Surgical Site Infection:手術部位感染)とRI(Remote Infection:遠隔感染)の有無を解析した.(結果)513例のガイドライン遵守率は75.4%であった.ガイドラインを遵守していた387例におけるSSI, RIの発生率はそれぞれ5.9, 4.1%であった.SSIについてはASA(American Society of Anesthesiologists)手術リスク,糖尿病と手術時間が,RIについては手術時間が発生に寄与していた.(結語)同ガイドラインの妥当性,有用性の検証にはさらなる大規模な調査やエビデンスの蓄積が必要と考えられた.
  • 北野 弘之, 神明 俊輔, 郷力 昭宏, 岩本 秀雄, 林 哲太郎, 牟田口 和昭
    2013 年 104 巻 3 号 p. 513-520
    発行日: 2013/05/20
    公開日: 2014/06/16
    ジャーナル フリー
    (目的)尿管結石に対して圧縮空気破砕システム(Lithoclast®:L群)とHo-YAG laser(H群)を用いて施行した経尿道的尿管結石砕石術(TUL)の治療成績を検討した.(方法と対象)L群388例とH群368例のTULの手術時間,尿管ステント留置期間,周術期合併症と排石率を検討した.(結果)結石部位の内訳(L群/H群)はU1:141/181例,U2:69/57例,U3:178/130例,結石径中央値(L群/H群)はU1:10.0/10.0 mm, U2:7.0/10.0 mm, U3:6.0/7.0 mmであった.L群は79例に,H群は35例に初回TULから3カ月以内に追加治療を施行した.手術時間中央値(L群/H群)は29.5/25.0分,尿管ステント留置期間中央値(L群/H群)は4.0/4.0日であった.排石率(L群/H群)は,U1:69.3/82.0%,U2:85.5/87.0%,U3:92.0/98.4%であった.合併症(L群/H群)は尿管穿孔が8/5例,腎盂腎炎が7/2例,尿管狭窄が2/6例,結石のpush upが27/13例であった.Ho-YAG laser使用群では手術時間は短く(p=0.001),U1結石とU3結石の排石率は有意に高かった(U1:p=0.009, U2:p=0.016).(結論)Ho-YAG laserはTULにおいて有効な砕石機器と考えられた.
症例報告
  • 伊藤 寿樹, 栗田 豊, 新保 斉, 八角 康裕, 牛山 知己
    2013 年 104 巻 3 号 p. 521-524
    発行日: 2013/05/20
    公開日: 2014/06/16
    ジャーナル フリー
    エホバの証人信者である59歳の女性が高血圧の治療中に径11 cm大の左副腎褐色細胞腫と診断された.宗教的理由による無輸血手術を希望したため,十分なインフォームド・コンセントを行ったうえで輸血謝絶兼免責証明書を作成し,さらに血漿分画製剤および術前希釈式自己血輸血と術中回収式自己血輸血の使用許可を得た.手術に先行してエリスロポエチン製剤とα1ブロッカーを投与して貧血の是正と循環血液量の確保を行った.手術時間は4時間42分,術中出血量は335 mlで,希釈式自己血を400 ml輸血したが回収式自己血は不要であった.無輸血手術を施行するためには輸血謝絶兼免責証明書を作成するとともに,患者が許容する輸血の同意を得る必要がある.また医師は患者との信頼関係を構築するために,褐色細胞腫の周術期管理と手術手技に習熟するとともに,あらゆる代替治療を用いて最善の努力を尽くすべきである.
  • 大坪 智志, 上領 頼之, 奥村 幸司, 下釜 達朗, 金城 満
    2013 年 104 巻 3 号 p. 525-529
    発行日: 2013/05/20
    公開日: 2014/06/16
    ジャーナル フリー
    症例は69歳の男性.2010年11月に左側腹部痛を主訴にかかりつけの消化器内科受診.上部消化管内視鏡検査では異常は指摘されなかったが,腹部エコーにて左後腹膜に腫瘍を指摘され当科紹介となった.CTにて左腎上極に接する形で10 cm大の後腹膜腫瘍を認め,腎周囲や腸腰筋に複数の転移性病変および大動脈周囲にリンパ節転移を認めた.副腎癌や悪性褐色細胞腫・悪性リンパ腫・肉腫を疑い,手術で根治性を求めるのは困難と判断し,まずは組織診断をつけるため12月に開放生検を施行した.腎下極の4.0 cm大の弾性硬で白色の腫瘍を摘出した.周囲との癒着はほとんど認めず容易に用手的に摘出可能であった.組織診断は後腹膜原発のGISTであり,GISTガイドラインにしたがい2011年1月からイマチニブ(グリベック®)400 mg/dayを開始した.しかしながらイマチニブの効果は不十分で病状は急速に進行し,2月に永眠された.後腹膜原発のGISTはまれな疾患であり,報告する.
  • 錦見 俊徳, 都築 豊徳, 山内 裕士, 吉田 真理, 石田 亮, 山田 浩史, 横井 圭介, 小林 弘明
    2013 年 104 巻 3 号 p. 530-535
    発行日: 2013/05/20
    公開日: 2014/06/16
    ジャーナル フリー
    47歳,男性.右腎腫瘍にて当院を受診.腫瘍に対し,後腹膜鏡下右腎摘出術を施行.術後病理は,Renal Cell Carcinoma, Clear cell carcinoma, pT1b, pNx, V(+),Fuhrman grade 4であった.1年後のCTにて多発肺転移が出現.インターフェロンα(IFN-α)療法,次いでスニチニブの投与を行ったが,肺転移は増大し,エベロリムス:10 mg/日の投与を開始した.投与6週後からCT上肺転移巣は縮小し,治療効果はPartial Response(PR)と判定.投与31週後のCTでもPRを維持していたが,肺転移巣は残存していたため,右肺下葉切除術およびリンパ節生検を施行した.肺転移巣やリンパ節にViableな腫瘍細胞を認めたため,その後もエベロリムス:10 mg/日の投与を継続している.エベロリムス投与後50週経過しているが,新たな転移巣を認めていない.
  • 加藤 秀一, 堀田 裕, 峯田 昌之, 三宅 正文
    2013 年 104 巻 3 号 p. 536-539
    発行日: 2013/05/20
    公開日: 2014/06/16
    ジャーナル フリー
    症例は56歳,女性.多発性嚢胞腎,慢性腎臓病にて内科通院中に発熱と左背部痛を認めた.CTにて左水腎症,左尿管結石を認め,急性複雑性腎盂腎炎と診断し,左尿管ステント留置および抗菌化学療法を施行した.発熱が持続するため感染性腎嚢胞を疑いMRIを施行したところ,拡散強調画像にて左腎下極の嚢胞の1つが高信号を呈し,感染源と考えられた.同部位にCTガイド下経皮的嚢胞穿刺術を施行し,膿汁のドレナージに成功し治癒に至った.超音波検査やCTでは感染性腎嚢胞を同定するのは困難であるが,本症例のようにMRI拡散強調画像は感染性嚢胞を特定するのに有効であると考える.
  • 石井 龍, 松原 匠, 平 浩志, 平塚 義治
    2013 年 104 巻 3 号 p. 540-544
    発行日: 2013/05/20
    公開日: 2014/06/16
    ジャーナル フリー
    症例は69歳,男性.左上肢腫脹を主訴に当院を受診した.前病歴として5年前に他院でTURBTを受け,病理診断はurothelial carcinoma with micropapillary variant, G3=G2, pT1であった.CTにて直腸浸潤を伴う膀胱腫瘍と腋窩,後腹膜,骨盤内の多発性リンパ節腫大を認めた(cT4bN3M1).膀胱壁と左腋窩リンパ節生検の結果はともにmicropapillary carcinomaであった.GC療法(Gemcitabine 1,000 mg/m2×3. Cisplatin 70 mg/m2×1)を5コース施行し,CTで膀胱腫瘍とリンパ節転移は著明に縮小し,血清19-9は172,000 U/mlから106 U/mlまで低下した.しかしGC療法開始から23カ月後に癌の再発で死亡した.
  • 森山 真吾, 吉田 宗一郎, 竹下 英毅, 倉田 盛人, 岡田 洋平, 斎藤 一隆, 古賀 文隆, 増田 均, 藤井 靖久, 川上 理, 木 ...
    2013 年 104 巻 3 号 p. 545-548
    発行日: 2013/05/20
    公開日: 2014/06/16
    ジャーナル フリー
    拡散強調MR画像(DW-MRI)にて高信号を呈した膀胱炎症性病変の1例を報告する.症例は66歳女性.横行結腸癌術後CTにて膀胱壁肥厚を指摘され,精査目的にて当科紹介受診.膀胱鏡にて右壁に5 cm大の浮腫状の腫瘍を認めた.膀胱壁肥厚部深部はDW-MRIにて高信号を呈した.TURBTおよび経膣針生検にて病理組織学的に炎症細胞浸潤に線維化を伴う肉芽組織と診断された.近年,悪性腫瘍に対するDW-MRIの有用性が報告され始めている.DW-MRIは水分子の拡散の程度を反映した画像であり,DW-MRIを用いた膀胱悪性腫瘍の存在診断において,本症例のような炎症性病変が偽陽性を呈する可能性に留意する必要があると考えられた.
  • 鈴木 孝尚, 古瀬 洋, 栗田 豊, 今西 武志, 田村 啓多, 大塚 篤史, 麦谷 荘一, 大園 誠一郎
    2013 年 104 巻 3 号 p. 549-553
    発行日: 2013/05/20
    公開日: 2014/06/16
    ジャーナル フリー
    女性尿道clear cell adenocarcinomaを経験したので報告する.症例は57歳女性.主訴は肉眼的血尿.腹部超音波検査・膀胱尿道鏡・CT・MRIで膀胱頸部に浸潤する尿道腫瘍を認めた.臨床病期cT3N1M0の診断で前方骨盤内臓器全摘除術,回腸導管造設術を施行した.病理組織診断はpT3N1の尿道clear cell adenocarcinomaであった.術後再発に対して,TS-1およびシスプラチンなどによる集学的治療を施行したが,術後54カ月後に多発肺転移のため死亡した.尿道clear cell adenocarcinomaは本邦において稀な症例であり,その病因および治療法について考察する.
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