(目的)前立腺全摘除術のリンパ節郭清において,閉鎖神経背側の組織を充分に郭清する意義について検討した.(対象と方法)対象は前立腺癌に対して恥骨後式前立腺全摘除術を施行した56例.リンパ節郭清は外腸骨静脈から閉鎖神経までの組織を閉鎖神経腹側群,閉鎖神経から内閉鎖筋に沿い可及的に背面まで摘出したものを閉鎖神経背側群として提出し,摘出リンパ節数,転移陽性率,転移陽性に関する因子について検討した.(結果)56例中8例にリンパ節転移を認めた.8例のうち,腹側群のみ,背側群のみ,両方に転移を認めたものがそれぞれ1例,4例,3例であった.全症例の郭清リンパ節数合計は腹側群が459個(1人平均8.2個),背側群が117個(同2.1個)であったが,転移陽性率は有意に背側群の方が高かった(腹側群1.3%vs.背側群10%,p<0.0001).リンパ節転移に関する因子について,PSA値(20以上),生検時Gleason score(GS)(9以上),clinical T stage(cT2以上),郭清リンパ節数(16個以上)を対象に解析を行ったところ,単変量解析ではPSA値,生検時GS,郭清リンパ節数が,多変量解析では郭清リンパ節数のみが有意な因子であった.(結論)前立腺全摘除術のリンパ節郭清施行時には,閉鎖神経背側の組織を充分に郭清することが重要であることが示唆された.
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