日本泌尿器科学会雑誌
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105 巻, 1 号
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原著
  • 横山 仁, 加藤 晴朗, 井上 博夫, 小宮山 斎, 米山 威久, 中沢 功, 石塚 修, 西澤 理
    2014 年 105 巻 1 号 p. 3-9
    発行日: 2014/01/20
    公開日: 2015/01/30
    ジャーナル フリー
    (目的)前立腺全摘除術のリンパ節郭清において,閉鎖神経背側の組織を充分に郭清する意義について検討した.(対象と方法)対象は前立腺癌に対して恥骨後式前立腺全摘除術を施行した56例.リンパ節郭清は外腸骨静脈から閉鎖神経までの組織を閉鎖神経腹側群,閉鎖神経から内閉鎖筋に沿い可及的に背面まで摘出したものを閉鎖神経背側群として提出し,摘出リンパ節数,転移陽性率,転移陽性に関する因子について検討した.(結果)56例中8例にリンパ節転移を認めた.8例のうち,腹側群のみ,背側群のみ,両方に転移を認めたものがそれぞれ1例,4例,3例であった.全症例の郭清リンパ節数合計は腹側群が459個(1人平均8.2個),背側群が117個(同2.1個)であったが,転移陽性率は有意に背側群の方が高かった(腹側群1.3%vs.背側群10%,p<0.0001).リンパ節転移に関する因子について,PSA値(20以上),生検時Gleason score(GS)(9以上),clinical T stage(cT2以上),郭清リンパ節数(16個以上)を対象に解析を行ったところ,単変量解析ではPSA値,生検時GS,郭清リンパ節数が,多変量解析では郭清リンパ節数のみが有意な因子であった.(結論)前立腺全摘除術のリンパ節郭清施行時には,閉鎖神経背側の組織を充分に郭清することが重要であることが示唆された.
  • 菅谷 公男, 嘉手川 豪心, 翁長 朝浩, 安次富 勝博, 向山 秀樹, 仲宗根 啓, 島袋 浩一, 島袋 修一, 又吉 幸秀, 外間 実裕 ...
    2014 年 105 巻 1 号 p. 10-16
    発行日: 2014/01/20
    公開日: 2015/01/30
    ジャーナル フリー
    (目的) ジスチグミンには重篤な副作用であるコリン作動性クリーゼがあり,低緊張性膀胱による排尿困難に対しては,用法・用量が1日5 mgのみに変更された.そこで,α1遮断薬投与後も効果不十分な排尿筋低活動による排尿困難の患者を対象として,ジスチグミン1日5 mg併用の有効性と安全性を検討した. (対象と方法) α1遮断薬を4週間以上投与しても排尿困難の改善が不十分か,残尿が50 ml以上ある低活動膀胱(排尿筋低活動)の39例(男性18例,女性21例,平均年齢75歳)に対して,α1遮断薬に加えてジスチグミン5 mg錠を1日1回朝食後に8週間投与し,国際前立腺症状スコア(IPSS),quality-of-life(QOL)スコア,残尿量,血圧,血液生化学検査の変化を調べた. (結果) ジスチグミン投与4週後と8週後には,IPSSのすべての項目,QOLスコアと残尿量が有意に低下した.血圧,脈拍と血清コリンエステラーゼ値に有意な変化はなく,血清クレアチニン値が僅かではあるが有意に低下した.有害事象として4例(10%)に頻便,便失禁,下痢,頻尿や体調不良を認めたが,重篤なものはなかった. (結論) 排尿筋低活動による排尿困難に対して,α1遮断薬とジスチグミン1日5 mgの併用は早期に効果が出現し,有効かつ安全と考えられた.
症例報告
  • 水沢 弘哉, 小口 智彦, 道面 尚久, 小泉 孔二, 三村 裕次, 齊藤 徹一, 加藤 晴朗
    2014 年 105 巻 1 号 p. 17-21
    発行日: 2014/01/20
    公開日: 2015/01/30
    ジャーナル フリー
    (症例1)患者は28歳の女性.腹痛と頻尿・残尿感を主訴に産婦人科クリニックを受診した.MRI検査で膀胱頂部に接する5 cm径の腹膜外腫瘤を認め,尿膜管腫瘍の疑いがあると当科へ紹介された.下腹部正中に鶏卵大の硬い腫瘤を触知した.尿所見は正常,膀胱鏡検査で膀胱頂部の粘膜の一部に発赤を認めたが尿細胞診検査は陰性であった.尿膜管腫瘍の診断で手術を開始したが,術中迅速診断でデスモイド腫瘍と診断され,腫瘤摘除術を施行した.術後7年を経て再発転移を認めていない.(症例2)患者は71歳の男性.下腹部膨隆を主訴に当院外科を受診した.CT検査で15 cm径の腫瘍が膀胱前腔に存在し,尿膜管腫瘍の疑いがあると紹介された.下腹部に小児頭大の硬い腫瘤を触知した.尿所見の異常はなかった.膀胱鏡検査で膀胱頂部は著明に圧排されていたが粘膜面の異常はなかった.尿膜管腫瘍の診断で手術を行ったが,術中迅速診断は悪性所見なしであった.腫瘤は膀胱と連続していたため,腫瘤摘除術・膀胱部分切除術を施行した.最終診断は孤立性線維性腫瘍であった.術後5年以上経過しているが再発転移はみられていない.膀胱頂部に存在する腫瘍は尿膜管癌を念頭に手術を行うことになるが,良性腫瘍の可能性も考えて手術に臨み,過大手術とならないよう留意すべきである.
  • 横川 竜生, 塚 晴俊, 村中 幸二
    2014 年 105 巻 1 号 p. 22-25
    発行日: 2014/01/20
    公開日: 2015/01/30
    ジャーナル フリー
    症例は糖尿病治療中の76歳女性.高熱と下腹部痛を主訴に当院救急外来を受診された.腹部骨盤CTにて膀胱腔内と膀胱壁内のガス貯留像,および下大静脈内に気泡を認めた.気腫性膀胱炎と診断,膀胱留置カテーテルによるドレナージと抗菌化学療法にて全身状態は改善を認めた.尿培養では大腸菌が同定された.治療後の腹部骨盤CTでは膀胱腔内と膀胱壁内のガス貯留像,および下大静脈内の気泡は消失していた.気腫性尿路感染症の致死率は高く,この一因として気腫性尿路感染症に伴って生じた静脈内の気泡が空気塞栓等を引き起こす原因となり,このことが高い致死率に関与している可能性が示唆される.その機序としては,細菌による膀胱壁の障害や神経因性膀胱等による尿路閉塞に伴う膀胱内圧の上昇によって静脈系へのガス移動が生じることが考えられている.画像的に静脈内の気泡を捉えた気腫性尿路感染症は過去に6例(気腫性膀胱炎3例,気腫性腎盂腎炎3例)の報告があるのみである.気腫性膀胱炎に限っては自験例が4例目の報告であると思われる.
  • 甲斐 文丈, 本山 大輔, 海野 智之, 須床 洋
    2014 年 105 巻 1 号 p. 26-28
    発行日: 2014/01/20
    公開日: 2015/01/30
    ジャーナル フリー
    症例は29歳,男性.性同一性障害患者.主訴は陰嚢部痛.自己去勢を試みたが,出血と疼痛のため中止し,2時間後に当院に受診した.両側精巣は摘除されておらず,腰椎麻酔下に陰嚢縫合術を施行した.術後,自傷の反復は認めない.
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