日本泌尿器科学会雑誌
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105 巻, 3 号
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原著
  • 三浦 徳宣, 井出 健弘, 宇田 尚史, 野田 輝乙, 浅井 聖史, 西村 謙一, 白戸 玲臣, 柳原 豊, 宮内 勇貴, 菊川 忠彦, 丹 ...
    2014 年 105 巻 3 号 p. 79-84
    発行日: 2014/07/20
    公開日: 2015/08/04
    ジャーナル フリー
    (目的) 副腎皮質癌は稀な疾患であるが,予後不良で治療に難渋する症例が多い.当科で副腎皮質癌と診断された7例における,臨床病理学的特徴と予後について検討した. (対象と方法) 2002年1月から2012年12月までに診断された7例の副腎皮質癌症例の臨床的背景,原発巣最大径,治療法,転帰について調査した. (結果) 男性4例,女性3例であった.診断時の年齢は中央値63歳(36~71歳)で,最大腫瘍径は中央値7.0 cm(4~13 cm)であった.治療は,Stage Iの1例は腹腔鏡下副腎摘除術のみ,Stage IIIの4例は,副腎摘除術に加え,周囲臓器合併切除をおこなった.完全切除した5例のうち4例は中央値55カ月(22~107カ月)で再発なく生存している.遠隔転移があった2例のうち,1例は外科的切除困難にて全身化学療法(エトポシド+アドリアシン+シスプラチン療法+ミトタン)をおこなったが19カ月目に癌死した.もう1例は,副腎皮質癌肺転移に対し,原発巣と転移巣を外科的切除し,術後補助療法としてミトタン内服治療を行っており,術後9カ月で再発は認めていない.7例の3年癌特異生存率は56%であった. (結論) 周囲臓器への浸潤が疑われても,副腎周囲臓器を含めて合併切除することで長期生存できる症例が存在しており,診断時の可能な限りの完全な外科的切除が予後改善に重要であると思われた.
  • 住吉 崇幸, 河野 仁, 前野 淳, 大久保 和俊, 岩村 浩志, 光森 健二, 西村 一男
    2014 年 105 巻 3 号 p. 85-90
    発行日: 2014/07/20
    公開日: 2015/08/04
    ジャーナル フリー
    (目的)我々はclinical T1腎腫瘍の無阻血腎部分切除術でマイクロ波組織凝固(MTC群)やソフト凝固(ソフト凝固群)を使用している.今回両群間での治療成績をレトロスペクティブに比較検討した.(対象と方法)今回の報告では36例(MTC群22例,ソフト凝固群14例)を対象とした.腎腫瘍の形態はR.E.N.A.L Nephrometry Scoreで,腎機能は推算糸球体濾過量(eGFR)で評価した.(結果)術前eGFRはMTC群72.1 ml/minに対し,ソフト凝固群65.6 ml/minと有意に低値だった(p=0.05).R.E.N.A.L Nephrometry Scoreは2群間で有意差がなかった.Clavian分類II以上の合併症はMTC群1例(4.5%),ソフト凝固群1例(7.1%)で有意差はなかった.ソフト凝固群で1例(8.3%)に局所再発および遠隔転移を認めたが,2群間で有意差はなかった.術後eGFRはMTC群で11.5%,ソフト凝固群で3.6%低下した.術後腎機能はMTC群よりソフト凝固群のほうが良好に温存される傾向だったが,有意差はなかった.(結論)clinical T1腎腫瘍にソフト凝固を使用した無阻血腎部分切除術はMTCと同様に有効な術式である.
  • 山本 致之, 中山 雅志, 上田 倫央, 武田 健, 中田 渡, 新井 康之, 垣本 健一, 西村 和郎
    2014 年 105 巻 3 号 p. 91-96
    発行日: 2014/07/20
    公開日: 2015/08/04
    ジャーナル フリー
    (目的) 局所進行性前立腺癌に対する根治的前立腺全摘除術の治療成績を後方視的に解析し,再発予測因子に関して検討する. (対象と方法) 局所進行性前立腺癌(cT3N0M0)に対し,1995年11月~2011年1月に当院で根治的前立腺全摘除術を施行した64例を対象とし,後方視的検討を行った.全64例の全生存率と癌特異的生存率,術後補助療法を施行しなかった44例に関して,生化学的再発率及び危険因子を検討した.p<0.05を有意とした. (結果) 全64例に関して,手術時年齢の中央値は67歳(48~74),診断時PSAは14.1 ng/ml(2.2~76.2),術後観察期間は62カ月(3~172)であった.10年全生存率,癌特異的生存率は98%,100%であった.術後補助療法未施行44例の5年,10年PSA非再発率は59%,51%であった.単変量解析では診断時PSA 15 ng/ml以上,生検GS 8以上がPSA再発の有意な危険因子であった.cT3a, PSA<15 ng/ml, GS<8のすべての条件を満たす16例の5年PSA非再発率は78%,その他の群は37%であった(p=0.009). (結論) 臨床的T3a, PSA 15 ng/ml未満,生検GS 8未満,これら全てを満たす局所進行性前立腺癌症例に対して,根治的前立腺全摘除術は有効な治療法となりうることが示唆された.
  • 西山 隆一, 久保田 聖史, 寒野 徹, 岡田 崇, 東 義人, 山田 仁
    2014 年 105 巻 3 号 p. 97-101
    発行日: 2014/07/20
    公開日: 2015/08/04
    ジャーナル フリー
    (背景) 体外衝撃波結石破砕術(ESWL)は,上部尿路結石症で最も普及した治療法である.EAUガイドラインで毎分60~90発が至適衝撃波発射頻度であると推奨されている.しかしながら,これまで毎分60発未満のESWL治療は評価されていない. (目的) 尿路結石症に対するESWLの至適衝撃波発射頻度を検討するため,前向きに247例の尿管結石患者をランダムに4つのグループに分け(A群76例,B群68例,C群55例,D群48例),ドルニエ社Lithotripter Dを用いて,異なる衝撃波発射頻度で治療した(A群毎分80発,B群毎分60発,C群毎分45発,D群毎分30発).どのグループも1セッション40分間(即ちA:3,200発,B:2,400発,C:1,800発,D:1,200発)で治療した. (結果) 治療に必要とされたセッション数は,4群間に統計学的有意差を認めなかった.術翌日,1週間後,1カ月後の結石消失率・有効率に4群間で統計学的有意差を認めなかった.また腎盂腎炎で2例に尿管ステント留置を行い,1例に腎被膜下血腫を認めた. (結論) 毎分30または45発のESWL治療は,毎分60もしくは80発のESWL治療と同等である可能性が示唆された.
  • 巴 ひかる, 井上 雅, 木元 康介, 高橋 悟, 永尾 光一, 本間 之夫, 小林 美亜, 池田 俊也
    2014 年 105 巻 3 号 p. 102-111
    発行日: 2014/07/20
    公開日: 2015/08/04
    ジャーナル フリー
    (目的) Prolapse/Urinary Incontinence Sexual Questionnaire, IUGA-Revised(PISQ-IR)の日本語版を作成し,その言語学的妥当性を検討する. (対象と方法) PISQ-IRの翻訳は,International Urogynecological Association(IUGA)の国際的事業として行われるため,日本語訳作成についてIUGAからの承認を得たのち,IUGAのプロトコール(IUGAからの承認取得→順翻訳→コミュニティー・レビュー→逆翻訳→IUGAからの承認)に従って行った.初回翻訳は2名の泌尿器科医で行い,さらに4名の泌尿器科医,1名のQOL研究者が加わり日本語訳を完成させた.コミュニティー・レビューは骨盤臓器脱または腹圧性尿失禁患者20名を対象として半構造化面接を行い,いくつかの文言の変更および,より明確に回答できるよう独自の説明文を追加した.これを逆翻訳してIUGAの翻訳ワーキング・グループに提出した. (結果) IUGAの翻訳ワーキング・グループからの質問および訂正指示に従い日本語訳を修正し,さらにこれを逆翻訳して再提出した. (結論) 多段階の検討過程を経て,言語学的妥当性のある,IUGAからの承認を得たPISQ-IR日本語版が完成した.
  • 今村 正明, 碓井 智子, 上仁 数義, 吉村 耕治, Walid Farhat, 兼松 明弘, 小川 修
    2014 年 105 巻 3 号 p. 112-121
    発行日: 2014/07/20
    公開日: 2015/08/04
    ジャーナル フリー
    (目的) 小児下部尿路症状(LUTS)の公式認証された質問票の必要性は高い.我々はその一つであるDVSS(Dysfunctional Voiding Symptom Score)の公式認証翻訳作業を行い,その調査過程で認知言語学的アプローチにより小児における言語学的留意点を検討した. (対象と方法) 標準的な公式認証手順にしがたい順翻訳,統合,逆翻訳,原作者の承認を経て,小児語版と成人語版の二つのDVSS日本語試訳第1版を試作した.5~15歳の知能障害のない患児と保護者により,認知言語学専攻のインタビュアー同席のもと,それぞれ小児語および成人語試訳版への回答を行った.質問票記載後のヒアリングで保護者が質問の意味が理解できなかった場合,また患児が保護者による言い換えや言葉の付加がなければ理解できなかった場合を「誤認」と定義した. (結果) 第一版ヒアリング調査の結果に基づいて修正第2版を作成し,再ヒアリング後に最終第3版を作成した.第1版では,対象症例は32例(男19例 女13例)であった.第2版では,対象症例は11例(男8例 女3例)であった.小児語版では時間および頻度の表現で誤認を認める一定のパターンがあった.ヒアリングで明らかとなった問題点を修正し,最終版とした. (結論) 日本語版DVSSについて公式認証作業を行い,成人語版と小児語版を作成した.小児は時間の感覚が乏しいため,問診票では時間や頻度の表現には注意が必要と考えられた.
  • 荻原 広一郎, 矢澤 聰, 浅沼 宏, 高松 公晴, 増田 彩, 安水 洋太, 佐藤 裕之, 松井 善一, 村松 真樹, 香野 日高, 水野 ...
    2014 年 105 巻 3 号 p. 122-128
    発行日: 2014/07/20
    公開日: 2015/08/04
    ジャーナル フリー
    (目的) 先天性中部尿管狭窄症(congenital midureteral stricture:CMS)は稀であり,病態や至適な治療方法は明らかでない.我々は,胎児超音波検査を契機に発見されたCMS症例を臨床的に検討した. (対象と方法) 2006年からの6年間に胎児超音波検査で腎盂拡張を検出された137症例の内,CMSと診断された4症例を対象とした.患者の臨床的背景,診断および治療成績に関して後方視的に検討した. (結果) 対象症例は男児3例,女児1例で,確定診断時年齢は中央値1歳11カ月であった.全例が片側病変(左3例,右1例)で,狭窄レベルはL4が2例,L5とS1が1例ずつであった.3例で患側の分腎機能の低下を認めた.2例で患側の腎盂尿管移行部狭窄,1例で患側の低形成腎を合併していた.1例ではurosepsisを併発し外科的ドレナージを要した.全例で外科的治療が適応となり,3例で尿管部分切除術及び尿管尿管吻合術,1例で腎盂形成術を行った.全例で内因性狭窄を認め,1例で血管による圧迫所見を認めた.術後平均観察期間3年1カ月で,尿路感染症や尿管狭窄の再発は認めていない. (結語) CMSは自然軽快が認められず,分腎機能低下,腎盂拡張の悪化,重篤な尿路感染症の併発により外科的治療の適応となり,治療後は経過良好であった.本症は診断後に速やかな外科的治療を考慮する必要性が示唆された.
症例報告
  • 石井 元, 波多野 孝史, 遠藤 勝久, 関 邦彦, 山田 裕紀, 木村 高弘, 頴川 晋
    2014 年 105 巻 3 号 p. 129-133
    発行日: 2014/07/20
    公開日: 2015/08/04
    ジャーナル フリー
    薬剤治療抵抗性のため予後不良とされるpapillary renal cell carcinoma(pRCC)type2の転移性腎細胞癌に対しsecond lineとしてアキシチニブ投与が著効を示した症例を経験したので報告する.症例は52歳 女性.乳癌術後の経過観察中に左腎腫瘍を指摘され受診,腎細胞癌が疑われ腹腔鏡下左腎摘除術施行.病理結果はpRCC type2, Fuhrman分類G3, pT1bであった.術後4カ月に多発肺転移,骨転移が出現,胸腔鏡下肺生検を施行.病理結果はmetastatic carcinoma from renal cell carcinomaであった.first lineとしてスニチニブ50 mg/dayの投与を開始したが,投与14日目にGrade3の有害事象が出現,肺転移の増大も認められた.second lineとしてアキシチニブ10 mg/dayの投与を開始,14 mg/dayまで緩徐に増量し投与5カ月目には肺転移巣の83%腫瘍縮小効果が認められた.アキシチニブ投与後8カ月経過しているが,PRを維持し治療は継続できている.
  • 山田 康隆, 河野 充, 南村 和宏, 澤田 卓人, 藤川 敦, 太田 純一, 森山 正敏
    2014 年 105 巻 3 号 p. 134-138
    発行日: 2014/07/20
    公開日: 2015/08/04
    ジャーナル フリー
    症例は77歳女性.2011年3月,胃癌の精査の際に骨盤内腫瘤と左水腎症を指摘され,当科紹介受診した.CTにて左腎盂・尿管の拡張と,尿管周囲の腫瘤を認めた.開腹での生検も検討されたが心機能低下(EF約40%)のためリスクが高く,断念した.その後下血を認めたためCFを施行.S状結腸に壁外性圧迫・浸潤と思われる易出血性の粘膜隆起を認め,同部位より生検でsquamous cell carcinomaが検出された.内視鏡所見から他臓器癌の大腸浸潤が疑われた.逆行性腎盂造影では左下部尿管に造影欠損像を認めた.PETでは,骨盤左側壁にS状結腸を圧排する不整形軟部腫瘤を認め,同部位に異常集積(SUVmax=10.3)を認めたがその他部位に異常集積は認められなかった.以上より,浸潤性尿管扁平上皮癌と診断し,同年4月よりGN(Gemcitabin800 mg/m2 day1.day8, Nedaplatin60 mg/m2 day1)療法2コース施行した.経過中,grade4の血球減少認めたがその他有害事象は認めなかった.2コース施行後の効果判定CTでは徐々に腫瘍の縮小傾向を認め,約4カ月後の時点でCRを得た.その後,現在までCT上骨盤内腫瘍の再発なく経過している.
  • 石川 晶子, 田﨑 正行, 今井 直史, 池田 正博, 笠原 隆, 関島 光裕, 富田 祐介, 中川 由紀, 齋藤 和英, 西山 勉, 高橋 ...
    2014 年 105 巻 3 号 p. 139-143
    発行日: 2014/07/20
    公開日: 2015/08/04
    ジャーナル フリー
    症例は36歳女性.母をドナーとする生体腎移植術1カ月後に,プロトコール移植腎生検を受けた.移植3カ月後の超音波検査で移植腎に嚢胞性病変を指摘され,そのサイズは徐々に増大を認めた.移植腎部を中心とする腹痛を度々訴えるようになり,嚢胞穿刺排液およびminocycline注入療法を2回施行したが,嚢胞液が再貯留するとともに腹痛が増悪・持続するため,当院にて腹腔鏡下移植腎嚢胞開窓術を施行した.摘出した嚢胞壁の免疫染色では,リンパ管のマーカーであるD2-40が陽性であった.経過から,移植後に行ったプロトコール生検により移植腎内のリンパ管を損傷・閉塞したために発生したリンパ嚢胞と診断された.
  • 宮島 茂郎, 入江 慎一郎, 中村 信之, 田中 正利
    2014 年 105 巻 3 号 p. 144-148
    発行日: 2014/07/20
    公開日: 2015/08/04
    ジャーナル フリー
    精嚢平滑筋腫は,文献上10数例が散見される程度で,非常にまれな疾患である.精嚢平滑筋腫の1例を報告する.症例は65歳,男性で,下腹部違和感にて近医受診した.腹部CTスキャンおよびMRIで精嚢後面に9.3×4.4×4.0 cmの腫瘍を認めた.超音波ガイド下経直腸的針生検を施行し,病理組織学的診断の結果は平滑筋腫で悪性の所見はなかった.下腹部違和感が持続するため,症状緩和の目的で下腹部正中切開で腫瘍摘出術を施行した.摘出腫瘍は重量115 gで,病理組織学的診断の結果は精嚢から発生した平滑筋腫で,悪性の所見はなかった.術後,症状はすみやかに消失し,経過は良好であった.術後3年間の経過観察で,明らかな転移,再発所見は認められない.
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