横紋筋融解症は周術期合併症としては比較的稀ではあるが,重篤な転帰を辿ることもある.今回我々は側臥位での根治的腎摘除術,根治的腎尿管摘除術後に横紋筋融解症を来した2例を経験したので,文献的考察を含め報告する. (症例1) 40歳,男性.BMI 26.9で筋肉質.主訴は無症候性肉眼的血尿.CTにて右腎盂癌cT3N0M0の診断で右腎尿管全摘除術,リンパ節郭清,膀胱部分切除術を施行.左側臥位時間は5時間21分であった.術後Cr, CKが上昇傾向であり,術後1日目の夕にはCr 4.2 mg/dl, CK 1,945 IU/
lと著明な上昇を認めたため集中治療室(ICU)にて持続血液ろ過透析(CHDF)を施行した.CHDF後はCr, CKともに順調に減少し術後4日目で離脱した.尿中ミオグロビンが2,943.7 ng/ml,血中ミオグロビンが530.5 ng/mlと高値であり,横紋筋融解症による急性腎性腎不全と診断した. (症例2) 40歳,男性.BMI 34.8,高度肥満.健康診断で偶然に右腎腫瘍を指摘.CTで右腎癌cT1aN0M0の診断となり右腎部分切除術を施行.手術時間は5時間17分であった.麻酔覚醒後より左大腿部の疼痛を訴え,術後1日目の採血ではCK 31,138 IU/
l,尿中ミオグロビン89,000 ng/ml,血中ミオグロビン8,634 ng/mlと著明な上昇を認めたため横紋筋融解症と診断,ICUにて大量補液を施行した.術後3日目にCK 20,709 IU/
lと減少に転じ,血液透析は施行せずに改善した.
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