日本泌尿器科学会雑誌
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105 巻, 4 号
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原著
  • 坂本 直孝, 牧 知子, 河野 将和, 小林 聡, 小林 武, 濱口 益光, 吉川 正博, 井口 厚司, 桃崎 征也, 中山 吉福
    2014 年 105 巻 4 号 p. 163-171
    発行日: 2014/10/20
    公開日: 2015/10/21
    ジャーナル フリー
    (目的) 前立腺全摘標本において癌巣内intraductal carcinoma(IDC-P)を含む腺房・導管内病変の分布について検討した. (対象および方法) 前立腺癌に対して前立腺全摘術を施行した412例のstep-sectionを再検鏡し,IDC-P含む腺房・導管内病変および浸潤癌をmappingした. (結果) IDC-Pは98例(23.8%),102癌巣に認められた.IDC-Pは全例同一癌巣に浸潤癌と併存していた.全癌巣でIDC-Pを認め,83癌巣(81.4%)でIDC-Pに隣接または混在してtufting,micropapillaryおよびloose cribriform patternの腺房・導管内病変が併存していた.また,IDC-P周囲に浸潤癌が混在する領域が95癌巣(93.1%)に,周囲に浸潤癌を混在しない領域は66癌巣(64.7%)(63癌巣は癌巣辺縁部,14癌巣は癌巣の中央部)に存在した. (結論) 癌巣内でのIDC-Pの分布は様々であり,また,これらに隣接または混在するtufting,micropapillaryおよびloose cribriform patternの腺房・導管内病変もIDC-Pの一病変の可能性があり,high grade intraepithelial neoplasiaとoverlapする病変と考えられた.
  • 宮前 公一, 木谷 公亮, 原 一正, 中熊 健介, 濱田 泰之, 山崎 康晴, 堀尾 美世, 宮村 重幸
    2014 年 105 巻 4 号 p. 172-177
    発行日: 2014/10/20
    公開日: 2015/10/21
    ジャーナル フリー
    (目的) ドセタキセルを長期継続投与した症例について治療効果・有害事象についてretrospectiveに調査し,短期投与群と比較検討した. (対象と方法) 2008年10月から2013年9月までに当科でドセタキセル療法を導入した去勢抵抗性前立腺癌51例のうち11コース以上の長期継続投与を行った14例,10コース以下の投与で終了した19症例を短期投与群として比較した.ドセタキセルは60~70 mg/m2を3~4週毎に投与し,原則プレドニゾロン10 mg/日内服を併用した. (結果) 投与は中央値15コース,PSA低下症例は93%,PSA 50%以上低下症例は71%,1年全生存率は100%で短期投与群の1年全生存率と比較して16%で有意に高値であった.長期投与群ではGrade 3以下の副作用は白血球減少が85%,血小板減少28%で,口内炎,倦怠感,脱毛などが散見されたがGrade 4以上の副作用は認めなかった.多変量解析では治療開始時PSA値,ALPで長期投与と有意な相関を認めた. (結語) 当科でのドセタキセル療法施行例の42%で11コース以上投与継続可能であった.全例ではないが症例によっては長期継続投与が重篤な有害事象を伴わず,生存期間を延長している可能性が示唆された.
  • 南里 正晴, 南里 正之, 南里 和成
    2014 年 105 巻 4 号 p. 178-182
    発行日: 2014/10/20
    公開日: 2015/10/21
    ジャーナル フリー
    (目的) 泌尿器科診療所における間質性膀胱の診断・治療の問題点について検討した. (対象と方法) 2002年3月から2013年4月までに当院で間質性膀胱炎を疑った82例を対象とした.2010年4月以降の膀胱水圧拡張術は厚生労働省からの施設基準に従い,大学病院から麻酔科標榜医を招聘し実施した. (結果) 男性20例,女性62例で,診断時の平均年齢は53歳だった.潰瘍型間質性膀胱炎を疑っていた29例のうち6例は最終診断が間質性膀胱炎では無かった.膀胱水圧拡張術で間質性膀胱炎と診断した67例のうち,痛みの症状が無かった症例が29例(43%)で,痛みがある症例に比べ診断までに時間を要していた.間質性膀胱炎の診断がついても,有効な治療法が少ないため28例(42%)が治療を途中であきらめていた. (結論) 間質性膀胱炎は広く認知されたが,診断が難しく治療にも制限があるため一般医が積極的に診断・治療に参加できないのが現状である.これを解決するには間質性膀胱炎は過知覚膀胱の状態であり,痛みが無い症例も存在することを認識し,ハンナ潰瘍を正確に理解し診断することが重要である.また診断と治療を円滑に行うには水圧拡張術の施設基準の緩和や食事療法・生活指導の評価など保険診療上の改善が必要である.
  • 寺本 咲子, 成島 雅博, 小嶋 一平, 高木 康治, 下地 敏雄
    2014 年 105 巻 4 号 p. 183-189
    発行日: 2014/10/20
    公開日: 2015/10/21
    ジャーナル フリー
    (目的) 今回我々は,子宮筋腫がTVM手術の治療成績に与える影響について検討した. (対象と方法) 2010年6月から2012年1月にTVM手術を行った103例を対象とした.対象患者の平均年齢,平均出産回数,平均body mass index(BMI)はそれぞれ67.8歳,2.3回,23.7でPelvic organ prolapse quantification(POP-Q)はStage III 69例,Stage IV 34例,術式はAnterior TVM 26例,Anterior-Posterior TVM 77例であった.術前,術後6カ月でPOP-Qを行い,術後再発はいずれかの計測部位が-1以上(stage II以上)と定義した.術前に5 cmを超える子宮筋腫が認められた5例を子宮筋腫あり群,明らかな子宮筋腫が認められなかった症例を子宮筋腫なし群と定義した.TVM手術前後の解剖学的評価と,子宮筋腫の有無との関連性について比較検討した. (結果) 子宮筋腫あり群はなし群に比べ術前のAa・Ba・ghが有意に大きい値であった.子宮筋腫あり群はなし群に比べ術後のAa・Baが有意に大きい値であったが,Stage II以上の再発は統計学的有意差を認めなかった. (考察) 子宮筋腫を合併した骨盤臓器脱は腟前壁下垂のリスクが高いと考えられ,治療法選択の際にはこのことを念頭におく必要がある.
  • 稲原 昌彦, 杉浦 正洋, 加賀 勘家, 芳生 旭辰, 荒木 千裕, 増田 広, 小島 聡子, 納谷 幸男
    2014 年 105 巻 4 号 p. 190-195
    発行日: 2014/10/20
    公開日: 2015/10/21
    ジャーナル フリー
    (目的) 前立腺肥大症による尿閉患者に対して,α1アドレナリン受容体拮抗薬にデュタステリドを併用することで尿閉離脱率が増えるかの検討は未だ無い.我々はα1アドレナリン受容体拮抗薬を内服していても急性尿閉から離脱できない前立腺肥大症症例における,デュタステリド併用療法の効果を検討した. (方法) 前立腺肥大のある急性尿閉の症例に対して,尿道カテーテル留置療法を開始すると同時に,α1アドレナリン受容体拮抗薬を2週間以上内服させても尿閉から離脱できず,手術が不適当な症例においてデュタステリド(アボルブ0.5 mg/日)内服併用療法を開始した急性尿閉患者52例を対象とした.自尿100 ml以上かつ残尿100 ml以下になった症例をデュタステリド併用効果ありと判定し,効果を予想する因子を検討した. (結果) α1アドレナリン受容体拮抗薬単独療法では急性尿閉から離脱できなかった52人の症例において,デュタステリド併用療法により,33人(63.5%)の症例が尿閉から離脱できた.尿閉から離脱できた症例は,全て併用療法から7カ月以内だった.Performance status(PS)が0~1の患者の尿閉離脱率は78%であり,PS 2~4の患者の尿閉離脱率40%より有意に良好な結果だった. (結語) デュタステリド併用療法はPSが1以下の尿閉症例において,特に有益な治療と思われた.
  • 八木橋 祐亮, 島袋 修一, 新垣 義孝
    2014 年 105 巻 4 号 p. 196-201
    発行日: 2014/10/20
    公開日: 2015/10/21
    ジャーナル フリー
    (目的) 当院における尿道カテーテル挿入に伴う医原性尿道損傷を把握する. (対象と方法) 当院での医原性尿道損傷32例について検討した.また,尿道カテーテル挿入を担当しうる看護師150名に対してアンケート調査を行い,133名(回答率88.7%)から得た回答をもとに解析した. (結果) 32例には,日常生活で介助が必要なADL低下患者14例(44%),脊髄損傷4例(13%),麻酔・鎮静下中の発症4例(13%)が含まれた.急性期合併症には,敗血症5例(16%),敗血症性ショック3例(9%)などがあった.敗血症の症例は,全例長期カテーテル留置患者であった.また看護師へのアンケート調査では,バルーン固定水は『尿流出を確認して注入する』という回答が86%であったが,『尿流出がなくても固定水を注入する』という回答は7%に認めた.尿流出がない場合に,『下腹部を圧迫する』という回答が46%,『膀胱洗浄を行う』が6%で,『どちらも行わない』が48%であった. (結論) 当院での医原性尿道損傷は,ADL低下例が半数を占め,長期カテーテル留置患者における定期交換時の損傷では敗血症を合併しやすい.アンケート調査では,カテーテル挿入時に尿流出を確認後にバルーン固定水を注入する概念が8割以上で守られていたが,実際に尿流出が見られない場合への対応が看護師によって異なっていた.この状況への対応が看護師への教育上重要と思われた.
症例報告
  • 伊藤 克弘, 上戸 賢, 砂田 拓郎, 加藤 敬司, 植月 祐次, 川西 博晃, 奥村 和弘
    2014 年 105 巻 4 号 p. 202-206
    発行日: 2014/10/20
    公開日: 2015/10/21
    ジャーナル フリー
    傍糸球体細胞腫により二次性高血圧を来し,腹腔鏡下腎部分切除術により治癒した症例を経験したので報告する.症例は22歳,男性.学校検診で高血圧を指摘され近医受診,精査にてレニン高値,左腎腫瘍を認め当科紹介受診した.CTにて左腎上極に17 mmの腫瘤を認め,カプトプリル負荷試験でレニンの自律性分泌を認めたため,レニン産生腫瘍と診断した.腹腔鏡下左腎部分切除術を施行し,病理組織では電子顕微鏡検査にて菱形のプロレニン顆粒を認め,傍糸球体細胞腫と診断した.術翌日より血圧,レニン活性ともに正常化し,術後半年の現在まで腫瘍,高血圧ともに再発を認めていない.傍糸球体細胞腫は稀ではあるが,手術により治癒が可能であり,若年性高血圧の鑑別診断として重要であると考えられた.
  • 杉下 圭治, 毛利 学, 西村 陽子, 竹内 一郎, 石津 明洋, 篠原 信雄
    2014 年 105 巻 4 号 p. 207-211
    発行日: 2014/10/20
    公開日: 2015/10/21
    ジャーナル フリー
    70歳女性.50年前に結核性萎縮膀胱に対してScheele法による回腸利用膀胱拡大術を受けた.肉眼的血尿を主訴に受診し,CTおよび膀胱鏡で膀胱回腸吻合部の回腸側に隆起性腫瘍を認めた.生検では悪性所見を認めなかったが,経過観察中に腫瘍増大傾向あり膀胱部分切除術を施行.病理組織は腺癌であった.術後再発による水腎症,イレウスを発症し,術後8カ月で死去.膀胱拡大術後の悪性腫瘍は本邦では自験例を含め43例の報告があり,拡大術後癌発症までは平均33年と長期である.自験例は術後50年後の発症で43例中最長であった.
  • 原岡 政貴, 高向 茉利子, 豊永 洋一郎, 田中 道雄, 花澤 喜三郎, 坂本 善郎, 堀江 重郎
    2014 年 105 巻 4 号 p. 212-217
    発行日: 2014/10/20
    公開日: 2015/10/21
    ジャーナル フリー
    症例は62歳,男性.2010年5月PSA高値(32.4 ng/ml)を指摘され,当科に紹介され受診した.以前,他院で2回前立腺生検を施行されたが,癌は検出されなかった.当院でも2010年7月と2011年2月に前立腺生検を施行しているが,癌は検出されなかった.2011年3月PSA上昇(126.7 ng/ml)と左鎖骨上窩リンパ節と腹部大動脈周囲リンパ節腫大を認め,リンパ節生検を施行したところ腺癌を認め,PSA染色陽性のため前立腺癌のリンパ節転移と診断した.現在,去勢抵抗性前立腺癌となりドセタキセル治療を施行している.
  • 柴森 康介, 山本 卓宜, 松木 雅裕, 松田 洋平, 加藤 秀一, 武居 史泰, 柳瀬 雅裕
    2014 年 105 巻 4 号 p. 218-223
    発行日: 2014/10/20
    公開日: 2015/10/21
    ジャーナル フリー
    横紋筋融解症は周術期合併症としては比較的稀ではあるが,重篤な転帰を辿ることもある.今回我々は側臥位での根治的腎摘除術,根治的腎尿管摘除術後に横紋筋融解症を来した2例を経験したので,文献的考察を含め報告する. (症例1) 40歳,男性.BMI 26.9で筋肉質.主訴は無症候性肉眼的血尿.CTにて右腎盂癌cT3N0M0の診断で右腎尿管全摘除術,リンパ節郭清,膀胱部分切除術を施行.左側臥位時間は5時間21分であった.術後Cr, CKが上昇傾向であり,術後1日目の夕にはCr 4.2 mg/dl, CK 1,945 IU/lと著明な上昇を認めたため集中治療室(ICU)にて持続血液ろ過透析(CHDF)を施行した.CHDF後はCr, CKともに順調に減少し術後4日目で離脱した.尿中ミオグロビンが2,943.7 ng/ml,血中ミオグロビンが530.5 ng/mlと高値であり,横紋筋融解症による急性腎性腎不全と診断した. (症例2) 40歳,男性.BMI 34.8,高度肥満.健康診断で偶然に右腎腫瘍を指摘.CTで右腎癌cT1aN0M0の診断となり右腎部分切除術を施行.手術時間は5時間17分であった.麻酔覚醒後より左大腿部の疼痛を訴え,術後1日目の採血ではCK 31,138 IU/l,尿中ミオグロビン89,000 ng/ml,血中ミオグロビン8,634 ng/mlと著明な上昇を認めたため横紋筋融解症と診断,ICUにて大量補液を施行した.術後3日目にCK 20,709 IU/lと減少に転じ,血液透析は施行せずに改善した.
  • 加藤 大貴, 濱野 敦, 河村 秀樹
    2014 年 105 巻 4 号 p. 224-228
    発行日: 2014/10/20
    公開日: 2015/10/21
    ジャーナル フリー
    近年,幼児におけるウイルス性胃腸炎罹患後の結石嵌頓による腎後性腎不全の報告が散見されるようになった.我々は,ノロウイルス胃腸炎罹患後に尿管結石嵌頓による急性腎後性腎不全を発症した単腎症の幼児の1例を経験したので報告する.症例は2歳11カ月男児.発熱,腹痛,嘔吐のため近医に受診し,急性胃腸炎と診断された.一旦症状は軽快したが,2日後より腹痛,嘔吐が再燃し乏尿となった.補液を受けたが乏尿は続き,第5病日に前医に入院した.便中ノロウイルス抗原陽性で,腹部エコーで左単腎と軽度水腎症を認めた.血液検査で血清CREの上昇を認め急性腎不全と診断され,同日当院へ転院となった.腹部CTで左単腎と左尿管結石嵌頓による腎後性腎不全と診断した.直ちに経尿道的尿管ステント留置術を施行し,術後2日目には腎機能は正常化した.尿アルカリ化を行い,術後28日目の腹部CTで結石は消失していた.ウイルス性胃腸炎罹患後の腎後性腎不全の原因は,酸性尿酸アンモニウム結石の両側尿管閉塞である.3歳以下の男児に多い,ロタウイルス胃腸炎に多い,高尿酸血症を呈する,胃腸炎症状回復期に発症するなど臨床的特徴がある.ウイルス性胃腸炎罹患後の急性腎不全は脱水による腎前性腎不全であることが多いが,結石嵌頓による腎後性腎不全の可能性も考慮すべきであると考える.
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