日本泌尿器科学会雑誌
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106 巻, 3 号
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原著
  • 山本 茂樹, 鈴木 晶貴, 鈴木 弘一, 鈴木 省治, 加藤 久美子, 服部 良平
    2015 年 106 巻 3 号 p. 151-155
    発行日: 2015/07/20
    公開日: 2016/08/10
    ジャーナル フリー

    (目的) 腹腔鏡下腎摘除術後の経腟的摘出術の手技と結果について報告する.

    (対象と方法) 2013年8月より,6例の女性患者に腹腔鏡下腎摘除術後の経腟的摘出術を予定し,そのうち5例に経腟的摘出術を施行した.腹腔鏡下腎摘除及び標本をバッグへ収納後,体位を砕石位とし経腟的に後腟円蓋を横切開した.腟から指を挿入し腹腔鏡視下に鈍的に腹膜を開放し,収納バッグのパースストリングを腟から引き出した後,標本はバッグごと腟から摘出した.標本サイズが大きく腟壁が硬い場合は患側に切開を延長した.標本摘出後,腹膜は腹腔鏡下に,後腟円蓋は経腟的に閉鎖した.

    (結果) 試みた5例で経腟的摘出に成功した.経腟的摘出に要した時間は平均59分であった.出血は少量で摘出標本の平均値は447 g(271~655 g)であった.術中合併症は生じなかった.1例で術後,一時的な神経障害によると考えられる排尿障害により数日導尿管理を要した.

    (結論) 腹腔鏡下腎摘除後の経腟的摘出術は有効で合併症も少ない手技である.

  • 遠藤 匠, 神谷 直人, 矢野 仁, 岡 了, 李 芳菁, 内海 孝信, 上島 修一, 西見 大輔, 高波 眞佐治, 蛭田 啓之, 鈴木 啓 ...
    2015 年 106 巻 3 号 p. 156-162
    発行日: 2015/07/20
    公開日: 2016/08/10
    ジャーナル フリー

    (目的) デュタステリドは前立腺肥大症に対して本邦で初めて使用可能となった5α還元酵素阻害薬であり,現在広く用いられている.しかしながら,デュタステリド投与により前立腺癌をマスクすることが懸念される.今回我々は,デュタステリド投与中に前立腺癌が疑われ,前立腺生検を施行した症例について検討した.

    (対象と方法) 2010年1月から2013年6月の間に,3カ月以上デュタステリドが投与された312症例のうち,PSAの異常高値や継続的上昇ないし一時低下するも再上昇したため前立腺癌が疑われ,前立腺生検を施行した6症例を対象とし,臨床病理学的検討を行った.

    (結果) デュタステリド投与開始時の平均年齢,投与期間,前立腺容積,PSA値,PSA densityはそれぞれ,69.5±5.9歳,14.1±7.4カ月,70.4±30.7ml,7.7±3.3ng/ml,0.098±0.045ng/ml/cm3であった.また,生検施行時のPSA値は5.4±2.7ng/mlだった.6症例中3症例で前立腺癌が検出された.前立腺癌非検出例では経時的なPSA値の上昇を認めなかった.

    (結論) 前立腺癌検出全症例において,早期の段階で前立腺癌を検出することができ,治療介入のタイミングが遅れた症例は認めなかった.デュタステリド投与後も注意深くPSA値の変動パターンを確認することが重要であると考えられた.

  • 久保田 聖史, 寒野 徹, 西山 隆一, 岡田 崇, 東 義人, 山田 仁
    2015 年 106 巻 3 号 p. 163-171
    発行日: 2015/07/20
    公開日: 2016/08/10
    ジャーナル フリー

    (目的) 敗血症性DICを合併した尿管結石による閉塞性腎盂腎炎はときに致命的となる.当院では緊急腎盂ドレナージとDIC治療を行っているが,それによって予後が改善するのか,また,遺伝子組み換えトロンボモジュリン(rTM)の導入が有効であるのかを治療成績をもとに検討した.

    (対象と方法) 対象は2006年9月から2013年5月に当科に尿管結石による閉塞性腎盂腎炎の診断で入院し,急性期DICスコア4点以上でDIC治療薬を投与した31例である.患者の背景と治療結果を評価し,患者をrTMの使用開始前と開始後の患者群を2群に分類し,臨床経過を比較した.

    (結果) 対象31例のうち,30例がドレナージ可能であった.敗血症性ショックの患者が87.1%を占めたが,死亡例は1例(3.2%)であった.rTM使用群が22例,rTM不使用群が9例であった.両群の年齢以外の患者背景に有意差を認めなかった.rTM使用群では血小板数,血清クレアチニン値,SOFAスコアが有意に早期改善した(p=0.017,0.0038,及び0.0006).

    (結論) 当院では敗血症性DICを合併した尿管結石による閉塞性腎盂腎炎に対し,腎盂ドレナージとDIC治療を行い,高い救命率を得た.また,rTMを導入し以前の症例よりも凝固異常に関連した臓器不全を早期に改善させ,敗血症の致死的状況からの早期離脱が可能であった.

  • 岡田 卓也, 河野 有香, 松本 敬優, 住吉 崇幸, 増田 憲彦, 白石 裕介, 根来 宏光, 宇都宮 紀明, 常森 寛行, 大久保 和俊 ...
    2015 年 106 巻 3 号 p. 172-177
    発行日: 2015/07/20
    公開日: 2016/08/10
    ジャーナル フリー

    (目的) LUTSを有する男性において,症状が包括的健康関連QOLに及ぼす影響を検討した.

    (対象と方法) 2003年から2011年の間に,LUTSを主訴に泌尿器科外来を受診した男性患者567例に対し,IPSSとUCLA PCIによる尿失禁頻度,MOS 36-Item Short-Form Health Survey(SF-36)による包括的健康関連QOLの調査を行った.併存疾患のない230例を対象とし,Pearson積率相関分析と重回帰分析を用いて,LUTSの各症状がSF-36より算出した8領域の下位尺度得点に与える影響を検討した.

    (結果) 単変量解析の結果,尿失禁頻度はSF-36における8つの下位尺度得点全てと有意な相関を示し,その他尿意切迫感,夜間頻尿,腹圧排尿の項目値が,複数のSF-36下位尺度得点と有意な相関を示した.多変量解析の結果,LUTSが包括的健康関連QOLに及ぼす寄与度は10%程度であった.包括的健康関連QOLに及ぼす影響が最も大きいと考えられた症状は尿失禁であり,SF-36の7領域の下位尺度得点に有意な影響を与えていた.その他,夜間頻尿はSF-36の4領域,腹圧排尿は2領域,尿意切迫感は1領域で,健康関連QOLを有意に悪化させていた.

    (結語) LUTSの中で尿失禁と夜間頻尿,腹圧排尿が,包括的健康関連QOLを悪化させる症状として重要であった.

症例報告
  • 嘉島 相輝, 齋藤 満, 土谷 順彦, 齊藤 元, 南條 博, 沼倉 一幸, 鶴田 大, 秋濱 晋, 井上 高光, 成田 伸太郎, 南谷 佳 ...
    2015 年 106 巻 3 号 p. 178-184
    発行日: 2015/07/20
    公開日: 2016/08/10
    ジャーナル フリー

    神経線維腫症1型は,NF1遺伝子の異常によりRASが活性化する疾患である.悪性神経鞘腫などの神経堤由来の腫瘍や,一部の非神経堤由来の悪性腫瘍を高頻度に発症することが知られているが,胚細胞腫瘍との関連は明らかではない.症例は神経線維腫症1型の29歳,男性.前縦隔に巨大な腫瘍と頸部リンパ節腫大を指摘され,当院を紹介受診.頸部リンパ節生検でyolk sac tumorの病理結果を得,縦隔原発胚細胞腫と診断した.化学療法と残存腫瘍切除により完全寛解を得た.これまで,神経線維腫症1型に合併した性腺外胚細胞腫の報告はない.胚細胞腫瘍の発生にはRASとの関連が指摘されており,自験例の縦隔原発胚細胞腫の発生とNF1との関連性が示唆される.

  • 池田 敬至, 飯田 祥一, 戸田 直裕, 福田 洋典, 大前 憲史, 高木 敏男, 飯塚 淳平, 近藤 恒徳, 田邉 一成
    2015 年 106 巻 3 号 p. 185-189
    発行日: 2015/07/20
    公開日: 2016/08/10
    ジャーナル フリー

    症例は67歳男性.2010年4月に直腸癌に対し直腸低位前方切除術施行.2011年4月に局所再発のため直腸切除術を施行された.病理学的所見では直腸癌術後局所再発,左閉鎖腔腸管浸潤あり,断端陽性であったため,2011年6月から術後補助化学療法を6カ月間施行した.その後再発無く経過していたが,2013年4月のCTにて直径23mmの右副腎腫瘍を認めた.同年11月には直径46mmと増大傾向であり,PET CTでは同部位に高集積を認めた.血清CEAは2013年4月:6.1ng/ml,7月:8.1ng/ml,11月:10.4ng/mlと急激な増加傾向であった.ACTH,副腎系ホルモンの数値は全て正常範囲内であり,機能性腫瘍は否定的であった.

    腫瘍サイズの急激な増大とCEA上昇のため,直腸原発の異時性,孤立性,転移性副腎腫瘍を疑い,2014年1月腹腔鏡下右副腎摘出術を施行した.病理学的診断は(adenocarcinoma, compatible with metastasis of rectal cancer)であり直腸癌の転移であった.手術後6カ月経過しているが,血清CEAは正常範囲内で推移し,画像上,再発,転移等の所見を認めていない.

  • 鎌田 修平, 岡東 篤, 野積 和義, 宮崎 兼考, 井上 淳, 木藤 宏樹, 永田 真樹
    2015 年 106 巻 3 号 p. 190-193
    発行日: 2015/07/20
    公開日: 2016/08/10
    ジャーナル フリー

    症例は68歳,女性.肉眼的血尿を契機として見つかった腎盂癌(cT1cN0M0)に対して鏡視下右腎尿管全摘術を行った.術後6カ月で肝転移が出現したが,全身化学療法(GC療法)を行ったところ部分奏功を認め,原発巣切除1年後に肝転移巣切除を行った.現在,転移巣切除から4年5カ月経過しているが,新規病変の出現無く経過している.

  • 宮川 友明, 田中 建, 池田 篤史, 小峯 学, 堤 雅一, 品川 篤史
    2015 年 106 巻 3 号 p. 194-198
    発行日: 2015/07/20
    公開日: 2016/08/10
    ジャーナル フリー

    61歳女性.既往に急性骨髄性白血病があり,骨髄移植後,骨髄寛解状態ではあったが血小板の回復は不十分で経過していた.2013年5月末に発熱,左背部痛にて精査加療目的に入院.腹部CT上右上部尿管,左下部尿管に腫瘍が疑われた.尿管尿細胞診はClass IIIであり,診断のため尿管鏡検査を施行した.右上部尿管および左下部尿管に黄色調の腫瘍を認め,組織生検を行った.検査2週間後に全身倦怠感著明となり,腹部CTにて腫瘍の増大,腹水の出現,後腹膜播種を認めた.腹水細胞診にて白血病細胞の浸潤を認め,骨髄穿刺にて白血病の再発と診断された.積極的治療は困難であり,緩和療法の方針となった.入院1週間後に死亡した.尿管腫瘍は顆粒球性肉腫の診断であった.

    顆粒球性肉腫は,顆粒球系幼弱細胞が骨髄外に腫瘤を形成する病態で,WHO分類で骨髄肉腫(myeloid sarcoma)に分類され,骨髄性白血病の2~8%に認められる.予後不良であり,白血病既往のある患者には念頭に置く必要がある.

  • 栫井 成彦, 田中 峻希, 川村 貞文, 伊藤 しげみ, 佐藤 郁郎, 栃木 達夫
    2015 年 106 巻 3 号 p. 199-205
    発行日: 2015/07/20
    公開日: 2016/08/10
    ジャーナル フリー

    異時性発症の両側精巣癌に対して,異なる治療を行った3例を経験し,再発の有無,性機能および妊孕能について検討したので報告する.

    症例①:患者は38歳.26歳時に右精巣癌の診断で高位精巣摘除術を施行.病理組織学的診断はセミノーマで,病期はT1N0M0S2と診断.38歳時に6cm大の左精巣癌が疑われ,高位精巣摘除術を施行.病理組織学的診断はセミノーマで,病期はT1N0M0S2と診断.2回目の手術から4年経過し,再発を認めない.勃起および射精は不可能である.

    症例②:患者は21歳.20歳時に左精巣癌の診断で高位精巣摘除術を施行.病理組織学的診断はセミノーマで,病期はT1N0M0S0と診断.21歳時に1cm大の右精巣癌が疑われ,精巣部分切除術を施行.病理組織学的にセミノーマと診断され,腫瘍周囲にITMGCが確認された.温存精巣にITMGCの残存が示唆され,BEPを2コース追加した.化学療法から5年経過し,再発を認めない.勃起および射精は可能である.

    症例③:患者は36歳.30歳時に右精巣癌の診断で高位精巣摘除術を施行.病理組織学的診断は胎児性癌で,病期はT1N0M0S1と診断.36歳時に左精巣に1cm大の腫瘤を認め,吸引細胞診検査を施行.病理組織学的に胎児性癌と診断され,BEPを3コース行った.化学療法から11年経過し,再発を認めない.勃起および射精は可能である.

  • 坂野 恵里, 西野 安紀, 永井 康晴, 安田 宗生, 田原 秀男, 木野 茂生, 菅野 展史
    2015 年 106 巻 3 号 p. 206-210
    発行日: 2015/07/20
    公開日: 2016/08/10
    ジャーナル フリー

    症例は42歳,男性.無症候性肉眼的血尿にて近医受診.膀胱鏡にて膀胱右側壁に粘膜発赤あり,膀胱生検目的に当院へ紹介.CT,MRIにて右水腎症と膀胱に近接した右骨盤内に境界不明瞭な40mm大の腫瘍を認めた.2012年2月,経尿道的膀胱腫瘍切除術を施行,病理組織の結果は扁平上皮癌であった.PET-CTでも当該腫瘍以外に集積を認めず,後腹膜原発扁平上皮癌として肺扁平上皮癌に準じたパクリタキセル・カルボプラチンによる化学療法(weekly TC療法)を1コース施行,腫瘍は29mmに縮小.同年4月,右腎尿管全摘,膀胱尿道全摘除および回腸導管造設術を施行.病理組織の結果はTUR部にごくわずかに上皮内癌(以下CIS)を認めていたため,扁平上皮への分化を伴う尿路上皮癌と診断した.術後補助化学療法としてweekly TC療法を2コース施行.術後11カ月の腹部CTで肝転移および骨盤内に局所再発を認めたため,weekly TC療法を2コース施行するも骨盤内の局所再発が増大.GC療法に切り替えたが腎障害のため1コースで中止.術後17カ月で局所再発の腸管浸潤による消化管出血により癌死した.

  • 稲津 宏紀, 村田 太郎, 徳永 まゆ子, 饒村 静枝, 高橋 尚子, 近藤 幸尋, 冨田 京一
    2015 年 106 巻 3 号 p. 211-215
    発行日: 2015/07/20
    公開日: 2016/08/10
    ジャーナル フリー

    37歳女性.他院にて反復する腎盂腎炎の原因精査目的で腹部CTを施行し,右腎門部より約2cm尾側の右尿管周囲に19mm大の腫瘍とそれに伴う右水腎症を認め,当センターを紹介受診となった.右後腹膜腫瘍と診断し,右後腹膜腫瘍摘除および右尿管端々吻合術を施行した.術中所見では腫瘍は右尿管と右卵巣静脈を巻き込んでいたが,下大静脈への浸潤は認めなかった.病理組織学的診断は右卵巣静脈から発生した血管平滑筋肉腫であった.術後12カ月経過した時点で,胆嚢および下大静脈浸潤を伴う右尿管周囲再発を認めたため,胆嚢摘除および一部下大静脈の合併切除を伴った右腎尿管摘除術を施行した.再術後3カ月のCT検査では明らかな再発を認めなかったが,再発予防目的でgemcitabineおよびdocetaxelによる化学療法を開始した.

    卵巣静脈原発の血管平滑筋肉腫は文献を調べ得る限り10例目であり,水腎症を伴った症例は2例目である.

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