日本泌尿器科学会雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
ISSN-L : 0021-5287
108 巻, 4 号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
原著
  • 前鼻 健志, 田中 俊明, 舛森 直哉
    2017 年 108 巻 4 号 p. 175-181
    発行日: 2017/10/20
    公開日: 2018/10/18
    ジャーナル フリー

    (目的) デノスマブはRANKLに対する完全ヒトモノクローナル抗体であり,原発性骨粗鬆症患者において高い治療効果が示されている.しかし腎移植後骨粗鬆症に対する治療効果の報告は少なく,当科における腎移植後骨粗鬆症に対するデノスマブの治療症例を検討した.

    (対象と方法) 当科にて生体腎移植後フォロー中の患者にdual energy X-ray absorptiometryを施行し骨粗鬆症と診断,デノスマブを投与した4例を対象とした.

    (結果) 投与12カ月後の骨密度は腰椎正面で平均5.5%,大腿骨頚部では3.0%の増加を認めた.骨代謝マーカー(Tartrate-resistant acid phosphatase-5bとIntact-procollagen type 1 N-terminal propeptide)は投与1カ月目に全例で減少し,その後も低値を維持した.全例で明らかな有害事象は認めず,移植腎機能も変化を認めなかった.

    (結論) 腎移植後患者に対してデノスマブを使用したが,安全かつ有効に治療を行うことができた.

  • 船田 哲, 寒野 徹, 吉川 武志, 久保田 聖史, 西山 隆一, 岡田 崇, 東 義人, 山田 仁
    2017 年 108 巻 4 号 p. 182-187
    発行日: 2017/10/20
    公開日: 2018/10/18
    ジャーナル フリー

    (目的) 腹腔鏡下尿膜管摘出術は2014年4月より保険適応となっているが,標準術式は必ずしも確立されているとは言えない.当科における腹腔鏡下尿膜管摘出術の周術期成績,並びにポート位置の工夫,有効性を検討した.

    (対象・方法) 2002年10月から2016年8月までに腹腔鏡下尿膜管摘出術を施行した20例を対象とした.カメラポートは臍右,ワーキングポートは臍上,右下腹部の3ポートとした.カメラは5mm 30度斜視鏡を使用した.患者背景,周術期成績について後方視的に検討した.

    (結果) 年齢は中央値27歳(12~40歳),男性16例,女性4例,尿膜管洞18例,尿膜管性膀胱憩室2例であった.周術期成績は3ポート19例,4ポート1例,手術時間中央値220分(103~399分),出血量中央値少量(少量~260ml),臍形成18例,膀胱部分切除4例(2例で臍形成と膀胱部分切除を同時施行).合併症は腸管損傷2例,腹膜炎1例,創部感染1例,腸閉塞1例,急性腎不全1例,術後入院期間は中央値10日(5~19日)であった.癒着が強い症例において4ポートが必要となり,手術時間も長く,腸管損傷を認めたものの,19例は3ポートでの手術が施行可能であった.

    (結論) 手術時間の短縮,合併症の軽減など課題はあるが,当院におけるポート位置はこれまで報告されてきたポート位置の利点を併せ持ち,標準化しやすい工夫の1つと考えられた.

  • 阪口 和滋, 岡 優, 小川 貢平, 永本 将一, 黒澤 和宏, 浦上 慎司, 岡根谷 利一
    2017 年 108 巻 4 号 p. 188-193
    発行日: 2017/10/20
    公開日: 2018/10/18
    ジャーナル フリー

    (目的) 腎血管筋脂肪腫AMLが多発する場合には結節性硬化症TSCや肺リンパ脈管筋腫症LAMを合併することがある.また,近年LAMは無症状のうちに診断される例が増えている.LAMを合併するAMLの臨床的特徴とLAMの治療経過からLAMをスクリーニングすることの意義について考察した.

    (対象・方法) 2006年から2014年までに受診したAML症例33症例のうちLAMを合併した7例(LAM-AML群)とLAMを合併していない26例(sporadic AML群)の2群間において臨床病理学的特徴,治療経過などを比較した.LAMのスクリーニングは胸部CTで行った.

    (結果) LAM-AML群ではsporadic AML群と比べて若年で女性が多く,腫瘍は大きく多発する傾向を認めた.AMLに対する治療はLAM-AML群では手術治療が(85.7%),sporadic AML群では経過観察症例が(73.1%)多かった.TSC症例を除き術前LAMのスクリーニングを施行された症例はなく全例術後に診断された.LAMの治療は肺移植が必要になった1例を除き全例無治療経過観察中であった.

    (結論) 無症候性のLAMの無治療例が多いが,予後不良であることや薬物治療による腎温存の可能性があることを加味すると,特に若年女性で腎AMLが多発している症例は腎AMLの術前にLAMをスクリーニングしておくべきである.

  • 仲村 和芳, 五島 悠介, 佐塚 智和, 今村 有佑, 小宮 顕, 市川 智彦
    2017 年 108 巻 4 号 p. 194-199
    発行日: 2017/10/20
    公開日: 2018/10/18
    ジャーナル フリー

    (目的) 進行腎癌の分子標的治療に伴う疲労・倦怠感に対する人参養栄湯とコウジン末の有効性の検討

    (対象と方法) 進行腎癌で分子標的治療中の疲労・倦怠感の評価目的で,Cancer Fatigue Scaleによるスコアリングを行った結果,病勢の増悪,甲状腺機能低下症,貧血進行などの無い症例でも疲労・倦怠感をきたすことがわかった.そこで,分子標的治療中の疲労・倦怠感に,人参養栄湯1日3包とコウジン末1日3g毎食前の同時内服治療を行った12症例を対象とし,患者背景・疲労・倦怠感の変化について後方視的に検討を行った.疲労・倦怠感のスコアリングは,Cancer Fatigue Scaleを用いた.また,人参製剤内服治療を行う以前の分子標的治療中症例18症例についても併せて検討を行った.

    (結果) 対象群12症例と,過去の18症例の背景に統計学的有意差を認める項目はなかった.過去の18症例では,総合点と身体的倦怠感の平均スコアが経過で有意に増悪した(16.2→20.6,p=0.0471,4.39→7.28,p=0.0237).対象群12症例では,総合点と身体的倦怠感の平均スコアが併用後に有意に改善した(21.8→18.5,p=0.041,9.67→7,p=0.0042).

    (考察) 進行腎癌の分子標的治療に伴う疲労・倦怠感に対して人参養栄湯とコウジン末の内服治療は有効である可能性が示唆された.

症例報告
  • 若宮 崇人, 松村 永秀, 児玉 芳季, 柑本 康夫, 原 勲
    2017 年 108 巻 4 号 p. 200-203
    発行日: 2017/10/20
    公開日: 2018/10/18
    ジャーナル フリー

    症例は78歳女性.肉眼的血尿を主訴に当科受診し,CT,逆行性腎盂造影,尿細胞診より左尿管結石に伴う巨大水腎症および多発腎盂癌cT3N0M0と診断した.経腹膜アプローチで開腹左腎尿管全摘除術を施行した.術中造設した腎瘻と術後検体から回収した腎盂尿は計8,600mlであった.腎盂癌の病理診断は,稀な組織型で悪性度が高い巨細胞型尿路上皮癌であった.15mm大の結石が嵌頓していた上部尿管にも同じ組織型の尿管癌を認めた.手術1カ月前から急速な水腎症の悪化を認めた原因は,巨細胞型腎盂尿管癌の急速な進行が一因であると考えられた.

    術後補助療法として,Gemcitabine/Cisplatin併用化学療法(GC療法)を3コース施行後,多発肺転移および骨転移を生じてきたため,現在は骨転移に対する放射線療法およびGemcitabine/Paclitaxel併用療法(GP療法)を施行中である.

  • 北風 宏明, 松下 慎, 岡田 紘一, 湊 のり子, 森 直樹, 吉岡 俊昭
    2017 年 108 巻 4 号 p. 204-209
    発行日: 2017/10/20
    公開日: 2018/10/18
    ジャーナル フリー

    66歳男性.約3カ月前から頻尿と下腹部違和感を自覚したため2015年7月に当科を受診した.膀胱鏡で左側壁~前壁に隆起性病変を認めたため経尿道的切除を施行した.病理結果は印環細胞癌であり精査の結果膀胱原発印環細胞癌,cT3N0M0と診断し膀胱全摘術の方針とした.しかし骨盤壁との癒着が強く膀胱全摘は断念,両側尿管皮膚瘻を造設した.右骨盤壁の生検で癌の浸潤を認めたためpT4N0M0と診断した.術後,2015年8月からTS-1+シスプラチン(CDDP)による化学療法を12コース,16カ月間施行した.

    投与開始後,腫瘍マーカーは8カ月間低下傾向にあったが,8カ月以降は経時的な上昇を認めた.CT・MRIでは膀胱内腫瘍の増大や遠隔転移・リンパ節転移を疑う所見を認めなかったため,画像上は16カ月間SDであった.

    化学療法施行中に大きな副作用は認めず,2017年1月現時点では明らかな再発なく経過している.

  • 中山 亮, 瀧澤 逸大, 丸山 亮, 笠原 隆, 原 昇, 齋藤 和英, 冨田 善彦
    2017 年 108 巻 4 号 p. 210-214
    発行日: 2017/10/20
    公開日: 2018/10/18
    ジャーナル フリー

    症例は56歳女性.左側腹部痛を主訴に他院を受診し,腹部CTにて左腎門部尾側に5cm大の後腹膜腫瘍を認め当院紹介となった.内分泌学的検査は正常で腫瘍マーカーの上昇なく,画像上の質的診断も困難なため後腹膜腫瘍摘出術を施行した.術中所見では,後腹膜腫瘍は左腎静脈と左卵巣静脈と連続しており,左腎静脈の中枢側まで浸潤していたため左腎を合併切除した.病理所見では,左卵巣静脈の平滑筋層から発生し左腎静脈に浸潤する平滑筋肉腫であった.術後21カ月で再発なく経過観察中である.本症例は卵巣静脈発生の平滑筋肉腫の18例目であり,腎静脈浸潤を伴う卵巣静脈原発平滑筋肉腫の3例目であった.

  • 冨山 栄輔, 永原 啓, 中野 剛佑, 中澤 成晃, 植村 元秀, 木内 寛, 今村 亮一, 宮川 康, 湊 のり子, 古賀 実, 菅尾 英 ...
    2017 年 108 巻 4 号 p. 215-219
    発行日: 2017/10/20
    公開日: 2018/10/18
    ジャーナル フリー

    症例は70歳,男性.2005年他病精査中の造影CTで左鼠径および骨盤リンパ節腫大を指摘されたが,その後の経過観察中に腫大リンパ節は自然に縮小した.2013年造影CTで左鼠径および骨盤リンパ節の再腫大を認め,PET-CTでは前立腺と全身のリンパ節にFDGの異常集積を認めた.PSAは682ng/mlと高値であり,前医で前立腺生検が施行され前立腺癌リンパ節転移(cT2cN1M1a)と診断された.その後アンドロゲン遮断療法(ADT)が開始されたがPSAの低下を認めず,リンパ節は増大し,精査加療目的に当科紹介となった.前医でADTが開始される前のテストステロン値を確認したところ0.05ng/ml未満であり,治療開始前から去勢状態であったことが判明した.性腺機能低下症の精査として頭部MRIを施行し,下垂体に腫瘤性病変を認め,下垂体腫瘍に伴う続発性性腺機能低下症と診断した.本症例は続発性性腺機能低下症を併発し,診断時点で既に去勢抵抗性となっていた稀な前立腺癌の1例であったと考えられた.

  • 竹村 公佑, 吉村 敏宏, 鄭 子文, 吉川 哲夫
    2017 年 108 巻 4 号 p. 220-224
    発行日: 2017/10/20
    公開日: 2018/10/18
    ジャーナル フリー

    症例は71歳,男性.右陰囊内腫瘤を主訴に当科を受診.超音波検査および磁気共鳴画像検査にて精巣に隣接する6.5cm大の腫瘤を認め,右陰囊内脂肪腫の術前診断にて,陰囊皮膚切開による局所切除術を施行した.病理組織学的診断は異型脂肪腫様腫瘍/高分化型脂肪肉腫であった.悪性腫瘍のため二期的手術が必要と判断し,拡大切除として鼠径皮膚切開による高位精巣摘除術および周辺脂肪組織広範切除術を施行した.病理組織学的診断では切除検体に遺残腫瘍細胞は認められなかった.術後に実施した造影CTにて転移が認められなかったため,術後補助療法をおこなわずに経過観察の方針とした.初回手術後1年経過して再発や転移を認めていない.

  • 窪木 祐弥, 山岸 敦史, 黒川 真行, 菊田 雅斗, 髙井 諭, 髙井 優季, 牛島 正毅, 黒田 悠太, 八木 真由, 櫻井 俊彦, 西 ...
    2017 年 108 巻 4 号 p. 225-228
    発行日: 2017/10/20
    公開日: 2018/10/18
    ジャーナル フリー

    脳静脈洞血栓症は稀な疾患であるが時として悪性腫瘍に合併する.精巣腫瘍に対してシスプラチンベースの化学療法を施行中に脳静脈洞血栓症を発症した2例を報告する.1例目は46歳男性で非セミノーマ,病期IIAに対しEP(エトポシド+シスプラチン)療法を導入した.3コース11日目に全身性痙攣が出現した.頭部単純CT,MRIで原因を特定できず対症的にフェニトインを使用した.体幹部造影CTで骨盤内静脈血栓を認め抗凝固療法を施行した.その後痙攣発作の再燃はなくEP療法を再開し計4コースを完遂した.痙攣出現時の頭部CT画像を後ろ向きに検証したところ上矢状洞に高吸収域を認め,痙攣の原因として脳静脈洞血栓症が強く疑われた.2例目は47歳男性でセミノーマ,病期IIIBに対しBEP(ブレオマイシン+エトポシド+シスプラチン)療法を導入した.2コース11日目に全身性痙攣が出現した.頭部CTで右頭頂葉にクモ膜下出血を認めた.CT静脈造影で上矢状洞内に造影欠損を認めた.MR静脈造影では同部位に狭窄を認めた.痙攣の原因は脳静脈洞血栓症と診断し抗凝固療法を開始した.血栓の縮小を確認した後,BEP療法を再開し計4コースを完遂した.

  • 天河 亮, 赤塚 純, 鈴木 康友, 濱崎 務, 木村 剛, 石井 英昭, 近藤 幸尋
    2017 年 108 巻 4 号 p. 229-233
    発行日: 2017/10/20
    公開日: 2018/10/18
    ジャーナル フリー

    症例は70歳の女性.健診にて胸部異常陰影を指摘され近医受診.単純CTにて左腎洞部に腫瘤性病変を認め当科紹介となった.尿検査では異常を認めず,尿細胞診はclass IIIaであった.造影CTでは左腎盂壁肥厚と両側閉鎖リンパ節腫大を認めた.尿管鏡下にて左腎盂粘膜生検を施行したが異常所見は認めなかった.その後腹腔鏡下に閉鎖リンパ節生検を施行.摘出したリンパ節に著明なリンパ球および形質細胞浸潤を認め,免疫組織学的所見において,IgG4陽性細胞は10以上/HPF,IgG4/IgG陽性細胞比は40%以上であった.術後に測定した血中IgG4は662mg/dlと高値を示し,IgG4関連腎臓病診断基準に基づき,IgG4関連腎臓病と確定診断した.その後無症状で腎機能障害ないため無治療経過観察にて40カ月経過したが増悪所見を認めていない.

  • 山本 慎一郎, 吉田 利之, 橋本 翔, 髙田 将吾, 桜井 文紀, 堀 祐太郎, 村田 保貴, 大野 将, 吉澤 剛, 松井 強, 佐藤 ...
    2017 年 108 巻 4 号 p. 234-237
    発行日: 2017/10/20
    公開日: 2018/10/18
    ジャーナル フリー

    症例は38歳女性.帝王切開術後より常時尿失禁を認めたため,当科を紹介受診した.各種検査を施行し右尿管子宮瘻の診断となった.

    Psoas hitch法を用いた右尿管新吻合術および子宮摘除術を施行した.術中所見では右下部尿管の子宮への強固な癒着と,尿管が子宮に結紮されている所見を認めた.癒着が強固なため,子宮摘除術を併施した.術後は尿失禁が改善し,術後3カ月で施行した点滴静注腎盂造影で右水腎の改善を確認した.術後2年が経過したが尿失禁の再発や腎機能障害を認めず経過良好である.

feedback
Top