日本泌尿器科学会雑誌
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108 巻, 2 号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
原著
  • 朝隈 純一, 磯野 誠, 辻田 裕二郎, 田崎 新資, 黒田 健司, 佐藤 全伯, 堀口 明男, 瀬口 健至, 伊藤 敬一, 浅野 友彦
    2017 年 108 巻 2 号 p. 57-63
    発行日: 2017/04/20
    公開日: 2018/04/19
    ジャーナル フリー

    (目的)腎腫瘍性病変に対する経皮的針生検の有用性と安全性をレトロスペクティブに検討した.

    (対象と方法)2004年4月から2012年12月までに防衛医科大学校病院において,エコーもしくはCTガイド下に経皮的針生検を施行した44例(46腫瘍)を対象とし,生検成功率,合併症を検討した.

    (結果)46腫瘍の腫瘍径中央値は45(15~140)mm.採取検体数は中央値2(1~5)本.生検理由は腎細胞癌(RCC)と他腫瘍の鑑別が13腫瘍,RCCと腎盂癌との鑑別が11腫瘍,転移を有する切除不能RCCに対する分子標的薬等導入前の組織診断確定のためが10腫瘍,小径腎腫瘍に対するラジオ波焼灼術時に行った生検が12腫瘍であった.初回の腫瘍生検にて38/46腫瘍(82.6%)において生検成功であった.腫瘍径中央値は生検成功群45(15~140)mm,生検不成功群43(17~128)mmであった.また,採取生検本数中央値は生検成功群2(1~5)本,生検不成功群1.5(1~4)本であり,腫瘍径および採取生検本数に統計学的有意差は認めなかった.初回生検不成功群8腫瘍のうち3腫瘍において2回目の生検を行い,3腫瘍ともに生検成功であった.輸血を要する出血や腫瘍播種は認めなかった.

    (結論)腎腫瘍性病変に対する経皮的針生検は,安全に施行でき,治療方針の決定に有用と考えられた.

  • 佐藤 真彦, 坂井 孝成, 祢津 晋久, 黒本 暁人, 菅野 秀典, 沼畑 健司, 星 宣次
    2017 年 108 巻 2 号 p. 64-68
    発行日: 2017/04/20
    公開日: 2018/04/19
    ジャーナル フリー

    (目的)当院で後腹膜脂肪肉腫に対して手術を施行した症例についてレトロスペクティブに検討したので報告する.

    (対象と方法)2002年2月から2015年8月までに当院で後腹膜腫瘍脂肪肉腫に対して切除術を施行した症例について検討した.症例は全部で15症例,平均観察期間は46.7カ月(1~126カ月)であった.

    (結果)男性7例,女性8例であり性差は認めなかった.年齢の中央値は67歳であった(33~78歳).腫瘍長径の中央値は24cmであり(7.5~45cm),腫瘍重量の中央値は1,959gであった(545~15,400g).初回手術で腫瘍が残存した症例は1例,断端陽性であった患者は2例であった.全症例における5年生存率は67%,10年生存率は50%であった.初回手術で腫瘍が残存もしくは切除断端陽性であった場合は完全切除の場合と比べて生存率に有意差を認めた.また切除断端陽性の場合は完全切除の場合と比べて無再発生存率に有意差を認めた.臓器合併切除の有無による生存率や無再発生存率には有意差を認めなかった.

    (結論)脂肪肉腫は高率に再発する疾患であり初回手術での完全切除が必要である.

  • 那須 良次, 村田 匡, 杉本 盛人, 高本 篤, 櫻本 耕司
    2017 年 108 巻 2 号 p. 69-73
    発行日: 2017/04/20
    公開日: 2018/04/19
    ジャーナル フリー

    (目的)迅速病理診断を併用した経尿道的膀胱カフ切除法による下部尿管癌に対する腎温存尿管部分摘除術の経験を報告する.

    (対象と方法)2008年12月以降,単発の下部尿管癌11例(年齢中央値77歳,男女比10:1,患側 右10,左1).腫瘍の長径は14~28mm(中央値20mm),臨床病期はT1 4例,T2 4例,T3 3例.開腹に先立ち経尿道的に尿管口から約5mm離れた粘膜を4カ所迅速病理に提出する.生検部を連続するように針型電極で尿管口を中心に弧状に粘膜,さらに筋層深く尿管の連続性を断つまで切開を加える.次いで下腹部創から下部尿管を確保,腫瘍部から約1cm中枢の部で尿管を切断し,断端を迅速に提出.経尿道的に切開した粘膜断端まで下部尿管を摘出する(経尿道的膀胱カフ切除法).

    (結果)手術時間は170~317分(中央値258分),推定出血量は40~350ml(中央値150ml).病理診断は,pTa 3例,T1 3例,T2 2例,T3 3例,N1 2例,断端陽性例はなかった.術前後の血清Cr値,eGFRの平均値はそれぞれ1.05から0.89mg/dl,54.1から63.4ml/min./1.73m2へ推移した.癌死2例を経験したが,患側上部尿路への再発はなかった.

    (結語)下部尿管癌に対する尿管部分摘除術は腎機能温存が可能で有効な治療法であることが示唆された.

  • 宮前 公一, 木谷 公亮, 原 一正, 中熊 健介, 濱田 真輔, 濱田 泰之
    2017 年 108 巻 2 号 p. 74-79
    発行日: 2017/04/20
    公開日: 2018/04/19
    ジャーナル フリー

    (目的)当院におけるCRPCに対するドセタキセル(DOC)療法後の逐次療法で新規ホルモン薬2剤を使用した症例での治療効果,安全性を検討した.

    (対象と方法)当院でCRPCに対してドセタキセル(DOC)療法後にアビラテロンとエンザルタミドの2剤にて逐次療法を施行した21例を対象とした.主要評価項目は先行投与した薬剤と比較したPSA奏功(50%以上低下)率,副次的評価項目は奏効期間,全生存率および有害事象について検討した.

    (結果)エンザルタミド先行投与(E群)が12例,アビラテロン先行投与(A群)が9例.大半でDOC療法直後に新規ホルモン薬を使用していた.PSA奏功率はA群1例(11%),E群1例(9%)と有意差は認めず,不良な結果であった.全生存率で有意差は認めなかった.有害事象で変更を必要とした症例はエンザルタミド2例,アビラテロン1例であった.

    (結語)CRPCに対するドセタキセル療法後のアビラテロンとエンザルタミドの逐次療法におけるPSA奏功率および奏効期間は両薬剤の処方順にかかわらず治療効果は不良であった.

  • 千葉 量人, 菅原 翔, 鎌田 修平, 井上 敏史, 野積 和義, 宮崎 兼考, 井上 淳, 永田 真樹, 松井 とにか, 山口 邦雄
    2017 年 108 巻 2 号 p. 80-86
    発行日: 2017/04/20
    公開日: 2018/04/19
    ジャーナル フリー

    (目的)前立腺がん放射線治療後の放射線性膀胱炎(radiation induced cystitis:以下RC)はしばしば遭遇する有害事象であり尿路変更を要す症例も一部存在する.

    今回我々は前立腺がん放射線治療後のRCについて検討を行った.

    (対象と方法)2005年4月から2015年3月までに前立腺がんに対して根治照射を行った199例(以下:根治照射群)および前立腺全摘術後のAdjuvant/Salvage照射を行った104例(以下:adj/sal群)の計303例についてRC発症リスクや治療法についてRetrospectiveに検討を行った.

    (結果)観察期間中央値は37カ月(1~132カ月)で,全303例のうちRCを発症したのは30例(9.9%)であった.根治照射群に比べてadj/sal群はRC発症リスクが有意に高かった(4.5% vs 20.1%,p<0.01).RC30例のうち20例は外来治療で軽快した.10例は入院加療が行われ,6例は尿路変更を要した.

    尿路変更6例のうち2例は膀胱摘除を行わなかったが,術後の膀胱出血の遷延により在院日数が膀胱を摘除した4例に比べて長かった.

    (結論)前立腺がん放射線治療後のRCはadj/sal照射で有意に多かった.尿路変更を要する症例が約2%に認められ,膀胱摘除をしたほうが術後経過は良好であった.

  • 長谷川 雄一, 鎌田 裕子, 萬 昂士, 鷹橋 浩幸, 木村 高弘, 車 英俊, 田畑 龍治, 下村 達也, 山田 裕紀, 佐々木 裕, 頴 ...
    2017 年 108 巻 2 号 p. 87-95
    発行日: 2017/04/20
    公開日: 2018/04/19
    ジャーナル フリー

    (目的)本研究は上部尿路癌におけるペリプラキンおよび他のプラキンファミリー蛋白の発現変化を検討し,臨床病理学的因子との関係を解明することを目的とした.

    (対象と方法)2000年4月から2005年12月に,東京慈恵会医科大学泌尿器科にて手術を受けた上部尿路上皮癌(腎盂癌および尿管癌)患者57名を対象とした.癌部および非癌部におけるペリプラキン,エンボプラキン,プレクチン,デスモプラキンの発現を免疫組織染色にて解析し,臨床像と比較検討した.

    (結果)上部尿路癌組織におけるペリプラキン発現は,正常尿路上皮に比べ,強陽性を示す割合は有意に低下していた(P<0.0001).またエンボプラキンおよびデスモプラキンの発現も,強陽性を示す割合は癌部で有意に低下していた(それぞれP<0.0001).カプラン・マイヤー法およびログランク検定を用いた検討では,ペリプラキンとエンボプラキンの発現は予後と有意な相関を認めなかったが,デスモプラキンの強発現は癌特異生存率および全生存率が有意に低く(P=0.023および0.034),プレクチンの強発現は非転移生存率が有意に低かった(P=0.034).

    (結論)上部尿路上皮癌において,プラキンファミリー,特にデスモプラキンは予後予測マーカーとなる可能性が示唆された.

症例報告
  • 張 英軒, 諸角 誠人, 矢野 晶大, 立花 康次郎, 平沼 俊亮, 杉山 博紀, 竹下 英毅, 岡田 洋平, 川上 理, 長田 久人, 山 ...
    2017 年 108 巻 2 号 p. 96-100
    発行日: 2017/04/20
    公開日: 2018/04/19
    ジャーナル フリー

    47歳女性.2014年6月,長径24cmの右腎血管筋脂肪腫内出血によるショックのため,緊急入院となった.同日選択的右腎動脈塞栓術後,ショックから離脱した.手術を希望せず2週後退院した.しかし,その1カ月後,腹部腫瘤増大による呼吸状態悪化のため再入院となった.CT上,腫瘍内部の液状化により腫瘍が増大,また,腫瘍に圧排された左総腸骨静脈内に血栓が認められた.ADL低下のため保存的治療継続は困難と判断し,右腎摘除術を予定した.術中,左総腸骨静脈血栓遊離による肺塞栓症(PE)の危険性および右腎動脈瘤破裂を危惧し,術直前に腎動脈塞栓術とPE予防目的の回収可能型下大静脈フィルター留置後,経腹的右腎摘除術を施行した.術後,重篤な合併症はなく,抗凝固薬内服により術後3カ月で血栓は消失し6カ月目に抗凝固薬内服が終了となった.

    深部静脈血栓症に対する治療の第一選択は抗凝固療法である.本症例も左総腸骨静脈血栓に対し当初,抗凝固薬の溶解療法を施行した.しかし,腫瘍増大がみられ再出血も否定できず抗凝固薬を中止した.手術時,PEの危険性を低減させるため回収可能型下大静脈フィルターを留置したが,下大静脈フィルター留置に明確なコンセンサスはない.特に,周術期におけるPEの危険性回避に対する下大静脈フィルターの検討は少ない.下大静脈フィルターは血栓形成の危険性を伴うため,症例に応じた選択が必要である.

  • 佐々木 雄太郎, 塩崎 啓登, 三宅 毅志, 泉 和良, 岸本 大輝, 山中 正人, 川西 泰夫, 神野 真理, 林 俊哲
    2017 年 108 巻 2 号 p. 101-105
    発行日: 2017/04/20
    公開日: 2018/04/19
    ジャーナル フリー

    71歳,男性.2016年3月,USで偶然,膀胱腫瘍を指摘され当院受診.膀胱鏡検査,造影CT検査で膀胱後壁,頂部に最大径33mmの多発性の乳頭状有茎性腫瘍を認めた.TURBTを行ったところ,病理組織結果はurothelial carcinoma,high grade,pT2以深であった.2016年4月,腹腔鏡下膀胱全摘除術,新膀胱作成術を施行した.病理組織結果はurothelial carcinoma,microcystic variantであった.術後6カ月の時点で,再発は認めていない.また,本邦における本疾患の報告は4例のみであり,それらの文献的考察も併せて報告する.

  • 大草 卓也, 松山 聡子, 松井 太, 矢澤 浩治, 松本 富美, 松岡 圭子, 竹内 真
    2017 年 108 巻 2 号 p. 106-109
    発行日: 2017/04/20
    公開日: 2018/04/19
    ジャーナル フリー

    症例は11カ月,男児.在胎38週,経膣分娩にて出生.出生体重は2,526g.生下時に尿道下裂の疑いにて当科を紹介され,外来にて経過観察中であった.11カ月時に再診した際,9カ月過ぎより左陰囊内容が硬く,増大傾向を認めるとの訴えがあった.触診上左陰囊内に精巣とは境界が不明瞭な母指頭大,石様硬の腫瘤を触知した.超音波検査では左精巣外側に接した充実性の境界不明瞭な腫瘤を認めた.左傍精巣腫瘍の診断にて全身麻酔下に緊急手術を行った.腫瘍は豊富な脂肪を伴い,一部精巣鞘膜と強く癒着していた.迅速病理診断にて悪性腫瘍が否定されたため,用手的に触知可能であった腫瘍のみを摘除した.病理組織診断はfibrous hamartoma of infancy(FHI)であった.術後1カ月目に再び左陰囊内に腫瘤を触知し,再手術を行った.前回癒着の強かった腫瘤と精巣鞘膜との間の剥離は困難で,一塊に切除することとなった.術後10カ月現在,再発を認めていない.

  • 川村 正隆, 蔦原 宏一, 奥田 洋平, 栗林 宗平, 山道 岳, 中野 剛佑, 岸本 望, 竹澤 健太郎, 谷川 剛, 高尾 徹也, 山口 ...
    2017 年 108 巻 2 号 p. 110-113
    発行日: 2017/04/20
    公開日: 2018/04/19
    ジャーナル フリー

    選択的IgA欠損症を併存する45歳男性に対して,ABO不適合生体腎移植術を施行した1例を報告する.慢性腎不全により,1年間血液透析を行っている.血清抗IgA抗体は陰性であったが,過去に赤血球製剤に対してアナフィラキシー反応を認めたことがある.移植前に二重濾過血漿分離交換を2回施行した.血漿交換は抗IgA抗体の産生,アナフィラキシー反応の可能性を考慮し行わなかった.母親をドナーとして生体腎移植術を施行した.再灌流の際にアナフィラキシー反応は認めなかった.術後29日目に退院となり,退院時の血清クレアチニン値は1.2mg/dLであった.術後8カ月が経過し,拒絶反応や感染症の合併を認めていない.

  • 小澤 迪喜, 窪木 祐弥, 末永 信太, 石井 達矢, 鈴木 仁, 土谷 順彦
    2017 年 108 巻 2 号 p. 114-117
    発行日: 2017/04/20
    公開日: 2018/04/19
    ジャーナル フリー

    61歳男性,維持透析中.PSA高値のため経直腸的前立腺生検を施行.生検1時間後から肛門部重苦感が出現,7時間後から強い下腹部痛と胆汁様嘔吐が出現.貧血の進行と単純CTで一部腹腔内に達する巨大な後腹膜腔内出血を認め,前立腺生検時の動脈性出血が原因と考えられた.全身状態安定しており輸血と保存的加療にて症状は改善した.

  • 永山 洵, 加藤 久美子, 松井 宏考, 佐野 友康, 平林 裕樹, 鈴木 省治, 山本 茂樹, 鈴木 弘一, 服部 良平
    2017 年 108 巻 2 号 p. 118-121
    発行日: 2017/04/20
    公開日: 2018/04/19
    ジャーナル フリー

    (症例)31歳女性.3回目の帝王切開の1カ月後から排尿後の下腹部痛・尿失禁を自覚し膀胱鏡で後壁やや左側に瘻孔,膀胱尿道造影で子宮への漏出を認め,膀胱子宮瘻と診断された.

    月経前後に発作的な下腹部痛が排尿後に起こり,尿意を伴わずに少量の尿失禁を認めた.分娩後1年で卒乳してから,月1回のLH-RHアゴニストの投与を10カ月継続し,その間は無月経であった.投与開始から5カ月で,尿失禁は消失した.その後8年間のフォローアップで明らかな症状はなく,膀胱尿道造影でも造影剤の子宮への漏出を認めなかった.

    (考察)膀胱子宮瘻の治療では,外科的修復が行われることが多い.本疾患の病態は子宮内膜症に類似しており,LH-RHアゴニストによるホルモン療法は低侵襲で,手術の前に試みてよい治療選択肢と考える.

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