日本泌尿器科学会雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
ISSN-L : 0021-5287
109 巻, 4 号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
原著
  • 武本 健士郎, 小羽田 悠貴, 郷力 昭宏, 梶原 充
    2018 年 109 巻 4 号 p. 178-183
    発行日: 2018/10/20
    公開日: 2019/10/18
    ジャーナル フリー

    (目的) 外科的治療を必要とした副腎骨髄脂肪腫5例の患者背景および臨床経過について検討すること.

    (対象と方法) 対象は当院にて副腎骨髄脂肪腫と診断し,外科的治療を施行した5例.調査期間は2004年から2017年とし,各症例の患者背景および臨床経過を後ろ向きに検討した.

    (結果) 年齢中央値は53歳,男女比は4:1,腫瘍の局在は右側4例,左側1例であった.全例において健康診断や他疾患における画像精査にて,腹部超音波検査やCTにて偶発的に発見されており,すべて無症候性であった.また,高血圧,糖尿病,肥満のいずれかが全例に認められた.診断時腫瘍径は28~80mm(中央値58mm)と多様であった.全例が内分泌非活性であり,CTでの術前診断が可能であった.自然破裂の1例を除き,腫瘍径が大きな症例でも腹腔鏡にて安全に手術可能であった.手術施行時の腫瘍径の中央値は66mmであった.

    (考察) 外科的治療を必要とした副腎骨髄脂肪腫の5例を経験した.副腎骨髄脂肪腫はまれな疾患であるが,近年の画像診断の進歩に伴い,本疾患に遭遇する機会は増加してきている.しかし,現在のところ標準的治療アルゴリズムは確立していない.自然破裂例も認められるため,経過観察・治療においては各患者背景を考慮し慎重に検討するべきである.

  • 三木 健太, 木村 章嗣, 大沼 源, 阪中 啓吾, 佐々木 裕, 木村 高弘, 鷹橋 浩幸, 頴川 晋
    2018 年 109 巻 4 号 p. 184-193
    発行日: 2018/10/20
    公開日: 2019/10/18
    ジャーナル フリー

    (目的) 放射線治療後再発前立腺癌に対する救済凍結治療の初期経験を報告する.

    (対象と方法) 2015年10月から2016年9月までに局所再発癌と診断された5例を対象とした.年齢は56~81才.全例,生化学的再発後,multiparametric MRI(mpMRI)で有意所見を認め,マッピング針生検で画像所見に一致した再発癌を確認した.切石位にて経会陰的に凍結プローブを穿刺し,アイスボールは経直腸的超音波でモニターした.治療後1,3,6,12カ月の時点で血清前立腺特異抗原(PSA),国際前立腺症状スコア(IPSS)と国際勃起機能スコア(IIEF)を評価した.なお,1カ月後のmpMRIを画像上の治療効果指標とした.

    (結果) 治療後1,3,6,12カ月の時点で初期PSA値からの下降の平均はそれぞれ72.2%,79.4%,78.2%,79.6%であった.IPSSは初期値からそれぞれ平均1.8倍,1.5倍,1.6倍,1.0倍に増加した.IIEFにおいては5例中2例で治療前の性活動があったが,治療後12カ月で初期値から約95%低下した.周術期の重篤な有害事象はなかった.治療1カ月後のmpMRIでは凍結部位が無信号となり,血流消失が示唆された.

    (結論) 放射線治療後再発前立腺癌に対する凍結治療は,重篤な合併症もなく安全に施行可能であった.治療効果,晩期有害事象に関してはさらに慎重な評価が必要である.

  • 小路 直, 平岩 真一郎, 小川 貴博, 花田 いずみ, 中野 まゆら, 座光寺 秀典, 橋田 和靖, 松本 知博, 長谷部 光泉, 田尻 ...
    2018 年 109 巻 4 号 p. 194-203
    発行日: 2018/10/20
    公開日: 2019/10/18
    ジャーナル フリー

    (目的) MRI-TRUS融合画像ガイド下生検により診断された限局性前立腺癌に対するHIFUをもちいたFocal Therapyについて,1年間の臨床成績を報告すること.

    (対象と方法) 対象は,血清PSA値が20ng/ml以下で,MRI-TRUS融合画像ガイド下標的生検によりsignificant cancerが検出された低,中リスク前立腺癌症例.Significant cancer局在区域に対して,HIFUを用いたfocal therapyを施行した.

    (結果) 対象症例は10例.年齢中央値は68歳,血清PSA中央値は7.07ng/ml,治療時間中央値は29.5分間であった.治療後全例が24時間以内に尿道カテーテルを抜去し,退院した.治療後の造影MRIでは,全例においてsignificant cancerを含む治療領域の血流消失し,治療後3カ月目の血清PSA値中央値は1.35ng/mlまで有意に低下した.治療6カ月目の生検では,治療領域外からsignificant cancerが1例で検出された.IPSS,OABSS,最大尿流量,IIEF-5,EPICおよびSF-36では,治療前後で有意な増悪は認められなかった.合併症として尿路感染症が1例,1カ月以内に自然消失した切迫性尿失禁が1例で認められた.

    (考察) 本治療の1年間の臨床成績は,治療の安全性と有効性を示唆させる結果であった.

  • 相川 浩一, 木村 高弘, 小池 祐介, 山田 裕紀, 頴川 晋
    2018 年 109 巻 4 号 p. 204-207
    発行日: 2018/10/20
    公開日: 2019/10/18
    ジャーナル フリー

    (目的) 陰茎折症は性行為に関連した稀な疾患であり,本邦においてまとまった報告は少ない.東京慈恵会医科大学附属病院では,近年16例の陰茎折症を経験したので,その臨床的特徴と合併症について報告する.

    (対象と方法) 2005年9月より2017年10月までの間に当院で陰茎折症と診断した16例を対象とした.発症誘因,症状,診断方法,治療方法,および術後の合併症に関して調査した.

    (結果) 年齢の中央値は41歳(22~67歳)であった.受傷起転の判明した15例のうち,性交渉中は5例(31%)で,4例(25%)は自慰行為中であった.尿道損傷が合併した症例は認めなかった.術前MRIを8例に施行し,所見記載を確認し得た7例すべてにおいて白膜の断裂部位が術前に診断可能であった.治療は全例で観血的手術を施行し,白膜の断裂を確認後に縫合を行った.術後は全例で勃起不全(ED)の合併は認めなかった.1例(6%)で術後陰茎屈曲を認めた.

    (結語) 陰茎折症は性行為,自慰によるものが多かった.全例外科的治療を施行し,手術後のEDの発症は認めず,陰茎屈曲を1例に認めた.中長期の男性機能評価,術後合併症に関しては経過観察期間が短く,更なる検討努力が必要である.

  • 柿木 優佳, 有働 和馬, 東武 昇平, 野口 満
    2018 年 109 巻 4 号 p. 208-215
    発行日: 2018/10/20
    公開日: 2019/10/18
    ジャーナル フリー

    (目的) 子宮頸癌の臨床進行期決定に際し,膀胱浸潤有無の判定におけるCTやMRI所見と膀胱鏡所見の関連および膀胱鏡の必要性について検討を行った.

    (対象と方法) 2012年4月~2017年3月に当院婦人科で子宮頸癌と診断された者のうち,臨床進行期決定目的の膀胱鏡を施行し検査画像が確認できた217例(年齢23~93歳,中央値53歳)を対象とした.CTやMRIでの膀胱浸潤所見の有無と,膀胱鏡画像での膀胱浸潤有無との関連について後方視的に検討を行った.

    (結果) CTは全例,MRIは216例に施行されていた.膀胱浸潤ありと判定したものはCTで70例,MRIで35例存在した.膀胱鏡で膀胱浸潤の可能性ありと泌尿器科医がレポート記載したものは24例存在したが,「隆起と裂孔」を伴う膀胱粘膜所見が存在していたもの(今回の検討で膀胱浸潤ありと判定したもの)は12例のみであった.CT・MRIの感度および陰性的中率はいずれも100%であった.膀胱生検は217例中1例のみ施行されており,病理学的には膀胱炎の診断であった.

    (結論) CTやMRIで子宮頸癌の膀胱浸潤が明らかに否定される症例においては,膀胱浸潤有無を判定する目的での膀胱鏡検査は不要と考えられた.

  • 原田 健一, 白石 祐介, 鈴木 光太郎, 岡村 泰義, 板東 由加里, 原 琢人, 寺川 智章, 古川 順也, 石村 武志, 重村 克巳, ...
    2018 年 109 巻 4 号 p. 216-219
    発行日: 2018/10/20
    公開日: 2019/10/18
    ジャーナル フリー

    (目的) 進行性腎癌に対する一次治療としてのパゾパニブの有用性及び安全性をレトロスペクティブに検討した.

    (対象と方法) 2014年10月から2018年2月までの期間で,神戸大学において,進行性腎細胞癌に対する一次治療としてパゾパニブを投与した23例を対象とし,治療成績および合併症について検討した.

    (結果) International mRCC Database Consortion(IMDC)リスク分類において,Favorable:2例,Intermediate:12例およびPoor:9例であった.Progression Free Survival(PFS)の中央値は8.6カ月であり,Overall Survival(OS)の中央値は未到達であった.パゾパニブの最良効果(Best Response:BR)はParcial Response(PR):10例(50.0%),Stable Disease(SD):8例(40.0%)およびProgression Disease(PD):2例(10.0%)であった(評価不能:3例).Grade3の有害事象は,肝機能障害:3例,血小板減少:2例および手足症候群,嘔吐,消化管出血をそれぞれ1例ずつに認めた.

    (結論) 一次治療としてのパゾパニブの治療成績は極めて良好であり,比較的忍容性に優れた薬剤であると考えられた.

症例報告
  • 南村 和宏, 渡部 貴彦, 宇田川 幸一, 小林 一樹
    2018 年 109 巻 4 号 p. 220-224
    発行日: 2018/10/20
    公開日: 2019/10/18
    ジャーナル フリー

    症例は75歳,男性.嚥下障害を主訴に当院を受診,左延髄梗塞が判明し,同疾患の精査で施行したCTにて両側副腎腫瘍を認めMRIでも右に4cm大,左に1.6cm大の腫瘍を認めた.血中カテコラミン値と尿中カテコラミン代謝物の異常高値と,131I-MIBGシンチグラフィーで両側副腎に一致した集積が認められ,両側副腎褐色細胞腫と診断された.まずは腹腔鏡下右副腎摘除術を開始した.気腹を開始後,腫瘍には触れなかったが,数分で収縮期血圧が急上昇した.気腹を中止し血圧が安定したところで,気腹を再開した.しかし血圧の低下に続き心停止を来したため,手術を中止し心肺蘇生を開始した.血圧が安定したところで,挿管したままICUへ退室した.その後は血圧は140mmHg程度で推移した.大きな合併症なく経過し術後11日目に退院した.降圧薬を増量し内科的に加療中である.

  • 篠木 理沙, 田部井 正, 福田 哲央, 滝澤 弘樹, 三留 拓, 佐野 太, 岡島 和登, 小林 一樹
    2018 年 109 巻 4 号 p. 225-228
    発行日: 2018/10/20
    公開日: 2019/10/18
    ジャーナル フリー

    症例は82歳男性.下腹部痛と全身倦怠感を主訴に当科を受診した.腹部単純CTで前立腺肥大と80mm大の巨大な膀胱結石ならびに両側水腎水尿管症を認めた.血液検査所見では,炎症反応高値,高度の腎機能障害とそれによる高カリウム血症を認め,尿閉に伴う急性腎後性腎不全の診断となった.尿道カテーテル留置の上,緊急血液透析を施行し腎機能の改善を得た.巨大膀胱結石に対しては,単回の手術で結石を完全に摘除するために,経皮的・経尿道的内視鏡手術を併用し,結石は完全に除去された.排尿管理のため間欠的自己導尿を要したが,重篤な術後合併症もなく,患者は術後9日目に退院した.

    巨大な膀胱結石の経尿道的手術は砕石・抽石ともに時間がかかり困難であることから,膀胱切石術が選択されることが多い.本例では,経皮的手術と経尿道的手術の併用により,手術時間を短縮し単回の手術で結石を完全に除去することが可能であった.症例の提示並びに巨大膀胱結石に対する内視鏡治療につき若干の文献的考察を交えて,ここに報告する.

  • 加藤 秀一, 柴森 康介, 松田 洋平, 武居 史泰, 柳瀬 雅裕
    2018 年 109 巻 4 号 p. 229-232
    発行日: 2018/10/20
    公開日: 2019/10/18
    ジャーナル フリー

    膀胱膣瘻は経膣分娩,骨盤内手術,放射線照射,癌の浸潤などが原因でおこることが多く,膀胱瘤が原因で生ずることは非常に稀であり,本邦においても報告がない.

    症例は74歳,女性.完全尿失禁を主訴に当科を受診した.身体所見上,重度の膀胱瘤を認めた.前膣壁の粘膜は一部欠損し,膀胱壁が露出していた.瘻孔より尿の流出を認めた.膀胱瘤によって生じた膀胱膣瘻の診断にて,経腟的到達法および経腹的到達法による膀胱膣瘻閉鎖術が施行された.術後10日後に膀胱造影を施行し,瘻孔の消失を確認し尿道カテーテルを抜去した.術後4年7カ月が経過したが,膀胱瘤および膀胱膣瘻の再発を認めていない.

  • 風間 明, 斎藤 俊弘, 石川 晶子, 武田 啓介, 小林 和博, 谷川 俊貴, 冨田 善彦
    2018 年 109 巻 4 号 p. 233-236
    発行日: 2018/10/20
    公開日: 2019/10/18
    ジャーナル フリー

    症例は73歳男性.初診時PSAは29.02ng/ml.CTで膀胱直腸浸潤を疑う前立腺癌を認め,経直腸前立腺針生検でadenocarcinoma,Gleason score 4+5,標本の一部に小細胞癌成分を検出した.cT4N0M0の前立腺癌の診断で当院へ治療目的に紹介された.治療開始2カ月後に高度の低ナトリウム血症(血清Na 114mEq/l)を発症し,単純CTでは右尿管転移の出現を認めた.ADHは1.7pg/ml(正常値;2.8pg/ml以下)であった.Na補充療法を行い,その後EP療法(VP-16+CDDP)を2コース,IP療法(CPT-11+CDDP)を4コース施行したが,多発肝転移の出現と全身状態の悪化を認め,診断から9カ月で癌死した.前立腺小細胞癌にSIADHを合併した症例はわれわれが調べた限り本例で19例目であり,文献的考察を含めて報告する.

  • 簑輪 忠明, 根本 勺, 柳 雅人, 三浦 剛史, 坪井 成美, 近藤 幸尋, 鈴木 康友
    2018 年 109 巻 4 号 p. 237-240
    発行日: 2018/10/20
    公開日: 2019/10/18
    ジャーナル フリー

    今回我々は淋菌性後部尿道周囲膿瘍に対し抗菌薬投与,膀胱瘻による尿路変更及び穿刺ドレナージで保存的に治療し得た症例を経験したので報告する.

    症例は27歳男性.1週間続く会陰部違和感を主訴に近医受診し痔核の診断でヒドロコルチゾン軟膏を処方されたが,症状増悪したため当科紹介受診となった.身体所見では発熱と前立腺の圧痛があり,血液検査では著明な炎症所見,尿検査では膿尿を認めた.単純CTで前立腺の軽度腫大と前立腺尖部背側に低吸収域を認めたため,急性前立腺炎および前立腺膿瘍の診断で精査加療目的に入院となった.入院後の造影MRI T2強調画像にて後部尿道に6cm大の高信号を呈する多房性腫瘤を認め,さらに尿細菌培養検査ではグラム陰性球菌を検出,また淋菌クラミジアPCRにて淋菌陽性を検出した.以上から淋菌性後部尿道周囲膿瘍の診断でCeftriaxone(CTRX)4g/dayを開始した.しかし炎症所見改善せず,第7病日には排尿困難の増悪を認めたため膀胱瘻を造設した.第8病日の造影CTで膿瘍の増大を認めたため経会陰的に膿瘍穿刺し,少量の黄白色の膿を吸引した.以降炎症所見の改善を認めたため第13病日よりFosfomycin(FOM)内服を開始し第15病日に退院した.退院後,腹部単純CTにて膿瘍の消失を確認しPCRで淋菌陰性を確認した.現在感染の再発や自覚症状を認めていない.

  • 田部井 正, 堀口 明男, 小林 一樹
    2018 年 109 巻 4 号 p. 241-244
    発行日: 2018/10/20
    公開日: 2019/10/18
    ジャーナル フリー

    症例は19歳男性.繰り返す尿閉を主訴に当院を受診した.尿道鏡と尿道造影では中部から遠位の球部尿道に約25mmにわたる狭窄を認めた.外傷や尿道カテーテル留置または経尿道的手術,性感染症などの既往や尿道狭窄症に対する治療歴はなく,特発性の尿道狭窄の診断で口腔粘膜を代用組織とした尿道形成術(dorsolateral onlay法)を施行した.術後,自覚症状ならびに尿流量測定検査でも改善を認めた.また,自己評価では勃起機能は保たれ,射精機能も改善を得た.近年,尿道狭窄症の治療において尿道形成術をより重視するようになってきている.本症例においてはdorsolateral onlay法を施行したが,本邦において,同術式を施行したとする報告はなく,若干の文献的考察を交えてここに報告する.

feedback
Top