日本泌尿器科学会雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
ISSN-L : 0021-5287
109 巻, 2 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
原著
  • 松下 慎, 北風 宏明, 岡田 紘一, 湊 のり子, 森 直樹, 吉岡 俊昭
    2018 年 109 巻 2 号 p. 59-67
    発行日: 2018/04/20
    公開日: 2019/04/19
    ジャーナル フリー

    (目的) 膀胱温存を目的とした局所浸潤性膀胱癌に対する化学放射線療法の治療成績を検討した.

    (対象と方法) 2000年から2015年の間に当科で局所浸潤性膀胱癌に対して化学放射線療法を施行した60例を対象とした.男性51例,女性9例で,平均年齢は66.1歳であった.病期はT1,T2,T3,T4,不明がそれぞれ4,24,17,4,11例であった.14例で水腎を認めた.治療方法は,経尿道的に腫瘍を切除し,続いて46Gyを膀胱部に照射,同時にCisplatin 20mg/dayを経静脈的に10日間投与した.MRI,尿細胞診,経尿道的膀胱生検を施行し,残存癌が認められない場合は膀胱を温存,非浸潤癌を認めた場合は経尿道的膀胱腫瘍切除術やBCG膀胱内注入療法を行って膀胱を温存,浸潤癌を認めた場合は膀胱全摘除術を行った.観察期間の中央値は55カ月であった.

    (結果) 72%の症例で残存癌を認めず,93%の症例で膀胱温存が可能であった.全生存率は,3年,5年でそれぞれ86%,78%であった.水腎あり,Cisplatin総投与量200mg未満が有意な予後不良因子であった.

    (結論) 化学放射線療法は,膀胱全摘術と比較し遜色のない結果であった.十分量のCisplatin投与が可能かどうか,水腎の有無が予後予測因子となる可能性が示唆された.

  • 田﨑 正行, 齋藤 和英, 中川 由紀, 信下 智広, 安楽 力, 黒木 大生, 今井 直史, 伊藤 由美, 冨田 善彦
    2018 年 109 巻 2 号 p. 68-73
    発行日: 2018/04/20
    公開日: 2019/04/19
    ジャーナル フリー

    (目的) 腎移植後の慢性抗体関連型拒絶反応(Chronic antibody mediated rejection;CAMR)に対するボルテゾミブの効果については報告が少なく,今回5症例に使用したためその結果を報告する.

    (対象と方法) 5名の腎移植後CAMR患者に対し,初期治療として血漿交換,ガンマグロブリン静注療法,ステロイドパルス治療,リツキシマブ投与が全例で施行された.初期治療後,抗ドナーHLA抗体が陰性化せず,組織学的にCAMR残存があったため,ボルテゾミブ1.3mg/m2をday1,4,8,11の4回静脈内投与した.ボルテゾミブ投与3カ月後に抗HLA抗体検査,6カ月後に抗HLA抗体検査と移植腎生検を行い,治療効果を判定した.

    (結果) ボルテゾミブ投与後の移植腎機能は5例中3例で安定していたが,2例において血清クレアチニン(sCr)の継時的な上昇を認めた.ボルテゾミブ投与により抗HLA class I抗体は有意な減少を示したが,抗HLA class II抗体に関しては経過を通して有意な減少を示さなかった.また,ボルテゾミブ投与による組織学的な改善は認めなかった.移植腎機能が悪化した2症例は,治療前のsCrが高く,組織所見ですでに間質の線維化や尿細管の萎縮が存在した症例であった.

    (結論) 臨床的,組織学的に悪化したCAMRに対し1コースのボルテゾミブ投与は,移植腎機能の安定化に寄与しない.

  • 大森 千尋, 堀 俊太, 大塚 憲司, 飯田 孝太, 森澤 洋介, 直井 牧人, 谷 満, 仲川 嘉紀
    2018 年 109 巻 2 号 p. 74-84
    発行日: 2018/04/20
    公開日: 2019/04/19
    ジャーナル フリー

    (目的) 尿管鏡の細径化や周辺デバイスの改良等により,経尿道的尿管砕石術(TUL)は尿路結石の一般的な治療法となった.しかし,TULは術後有熱性尿路感染症(fUTI)を引き起こし重症化することもある.我々は当院でのfUTIの発生状況とリスク因子について調査し,TULにおける術前予防抗生剤投与の効果につき検討した.

    (対象と方法) 2011年1月から2014年10月までの期間に当科でTULを施行した260例を前期群として,術後fUTIのリスク因子につき後方視的に検討した.さらに2014年10月から2016年8月までの期間にTULを施行した110例を後期群とし,そのうち術後fUTI発症のリスク因子を有する場合,術前1週間のレボフロキサシン(500mg)予防抗生剤投与で術後fUTI発症を予防し得るか否か検討した.統計学的検討はX2検定,Mann-Whitney U検定,ロジスティック回帰分析を用いた.P<0.05を有意と判定した.

    (結果) 術後fUTIは260人中43人(16.5%)で発症した.TUL術後fUTI発症の独立リスク因子は,術前腎盂腎炎(P=0.024),術前尿管ステント留置(P=0.038),手術時間90分以上(P=0.028)であった.手術時間と結石サイズは相関関係にあり(P<0.0001),術前に評価可能な因子として結石サイズを手術時間の代用マーカーとした.これらリスク因子を有する症例に術前予防抗生剤投与を行った結果,fUTIの発症が有意に減少した(P=0.012).

    (結論) 術前腎盂腎炎,術前尿管ステント留置,結石サイズ20mm以上の場合,術前予防抗生剤投与を行うことで術後fUTIの発症を低減できることが示唆された.

  • 髙橋 宣弘, 渡邉 望, 中村 健三, 塚本 拓司, 桑原 勝孝, 武田 正之
    2018 年 109 巻 2 号 p. 85-89
    発行日: 2018/04/20
    公開日: 2019/04/19
    ジャーナル フリー

    (目的) 本邦における光選択的前立腺蒸散術(photoselective vaporization of the prostate:PVP)が開始されてから約10年が経過した.世界的にみてもいまだ長期成績の報告は非常に少ない.当院におけるPVP術後10年の成績について報告する.

    (対象と方法) 2006年1月から6月までにPVPを行った症例のうち,10年後において評価が可能であった20例を対象とした.術前と6カ月後,10年後のIPSS,QOLスコアにより治療効果を評価検討した.手術は旧型機である出力80Wのチタン酸リン酸カリウム(Potassium-Titanyl-Phosphate:KTP)レーザーを使用して行った.

    (結果) 術前,6カ月後,10年後の平均IPSSはそれぞれ21.1,5.5,9.4で,QOLスコアは5.3,2.2,2.5であった.IPSS,QOLスコアはともに術前より有意な改善を認め,10年後まで効果は持続した.一方で,残存腺腫に対して再手術を必要とした症例が4例(20%)あり,1年未満が1例,8年後が2例,9年後が1例であった.

    (結論) PVPの治療成績は10年後も良好であった.

  • 加藤 久美子, 鈴木 省治, 川西 秀治, 松井 宏考, 永山 洵, 佐野 友康, 平林 裕樹, 山本 茂樹, 鈴木 弘一, 服部 良平
    2018 年 109 巻 2 号 p. 90-95
    発行日: 2018/04/20
    公開日: 2019/04/19
    ジャーナル フリー

    (目的) 骨盤臓器脱(POP)後の慢性疼痛を各術式で検討した.

    (対象) 2006~2016年の当院手術例,他院手術後の受診者を対象とした.慢性疼痛の定義は,術後3カ月以降に3カ月以上疼痛が継続し治療を要したものとした.

    (結果) 当院手術の経腟メッシュ手術(TVM),従来型手術(NTR),腹腔鏡下仙骨腟固定術(LSC)の慢性疼痛発生率は各々12/2,457(0.49%),1/402(0.26%),0/29(0%)で有意差はなかった.他院手術後8名を合わせた計21名の慢性疼痛患者(53~81歳)の術式詳細は,TVMがProlift型12名,脚なし2名,Elevate型1名,NTRが腟式子宮摘除3名,腟壁形成2名,マンチェスター手術1名であった.発症は直後から84カ月後で,術前骨盤痛が7名(33%)にあった.19名で三環系抗うつ薬,カルシウムチャネルα2δリガンド,セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)などの薬物療法を行い,9名(47%)で改善を得た.手術療法を3名で行い,膀胱メッシュ露出,腟壁メッシュ露出の各1名は露出部の切除で症状消失したが,圧痛のある脚を切除した1名は奏功しなかった.4名はペインクリニックに紹介した.

    (結論) POP術後慢性疼痛は各術式で起こり,傾聴と薬物療法が基本となる.メッシュ使用時は露出の確認が必須である.術前の慢性疼痛はリスク因子として注意を要する.

  • 加藤 久美子, 鈴木 省治, 川西 秀治, 永山 洵, 松井 宏考, 佐野 友康, 平林 裕樹, 鈴木 弘一, 服部 良平
    2018 年 109 巻 2 号 p. 96-101
    発行日: 2018/04/20
    公開日: 2019/04/19
    ジャーナル フリー

    (目的) 腹腔内圧上昇は骨盤臓器脱(POP)のリスク因子になりうる.腹腔内腫瘤・腹水貯留の関与を検討した.

    (対象と方法) 過去7年間のPOP新患患者2,748名のカルテ調査で,腹腔内腫瘤・腹水貯留がリスク因子にあった8名(0.3%)を抽出分析した.

    (結果) 年齢52~88歳.卵巣腫瘍3名中1名は,子宮摘除術後の全腟脱の術中に下腹部膨瘤に気づき,術後CT,MRIで長径24cmの卵巣腫瘍が判明した.付属器摘除の病理は卵巣囊胞性粘液性腫瘍であった.1名は完全子宮脱で紹介.経腟超音波検査では卵巣が描出されず,経腹超音波検査で長径18cmの卵巣腫瘍(粘液性囊胞腺腫)が判明した.1名は紹介後に腹部膨満感を述べ,経腟超音波検査で長径10cmの分葉状卵巣腫瘍が判明,化学療法後に手術した(漿液性腺癌).常染色体優性多発性囊胞腎の1名は,膀胱瘤に経腟メッシュ手術を行った際に出血に難渋した.悪性リンパ腫再発の1名は,巨大な腹腔内腫瘤のため腹部膨満と膀胱瘤を来していたが,高齢で経過観察を希望した.腹水貯留3名中2名は肝転移を伴う末期癌(大腸癌,乳癌)で,POPには保存療法が行われた.C型肝硬変の症例は腟閉鎖術を予定したが,肝性昏睡の発症で中止した.

    (結論) 腹腔内腫瘤や腹水貯留は,腹腔内圧上昇からPOP発症に関与しうる.卵巣腫瘍の3名はPOPを契機として発見され,注意が必要と考えられた.

症例報告
  • 七条 武志, 小泉 真太郎, 小川 祐, 松原 英司, 松本 祐樹, 斎藤 克幸, 井上 克己, 小川 良雄, 鮫島 未央, 小田金 哲弘, ...
    2018 年 109 巻 2 号 p. 102-105
    発行日: 2018/04/20
    公開日: 2019/04/19
    ジャーナル フリー

    患者は70歳代 男性.体重減少精査にて貧血を認め,CT検査で右腎癌の右心房まで続く下大静脈腫瘍塞栓とリンパ節転移を認め,cT4N2M0,MSKCCリスク分類でIntermediate riskと診断した.局所浸潤などにより手術不能症例と判断し,スニチニブを使用するも劇症肝炎,左室機能低下など重篤なadverse effect(AE)を認め,投与継続困難となった.薬剤中止にて劇症肝炎は保存的に改善したが左室機能低下の改善が得られず,手術不能は変わらないため経過観察を余儀なくされた.薬剤中止時点で腫瘍の縮小(31.9%)と腫瘍塞栓のレベルダウン(IV→II)を認め,薬剤中止後も腫瘍の継続的な縮小(最大44.9%)を認めた.薬剤中止後7カ月にて腫瘍の増大を認めたが,左室機能低下の改善が得られ手術可能となり,右腎摘除術を施行した.病理結果では,肉腫様変化を含む淡明細胞癌でリンパ節転移を認めたが,現在術後14カ月を経過しているが再発など認めていない.

  • 山内 裕士, 松川 宜久, 加藤 真史, 吉野 能, 山本 徳則, 小林 弘明, 後藤 百万
    2018 年 109 巻 2 号 p. 106-110
    発行日: 2018/04/20
    公開日: 2019/04/19
    ジャーナル フリー

    症例は34歳の男性.膀胱に発生したパラガングリオーマの診断にて当院を紹介受診.CT検査にて64mmの膀胱腫瘍を認め,123I-MIBGシンチグラフィーでは同部位に集積を伴っていた.同時に右閉鎖リンパ節の腫大を認めたことから膀胱に発生した悪性パラガングリオーマと診断した.2012年6月膀胱全摘術,両側内外腸骨および閉鎖リンパ節郭清術を行い,尿路変更術として新膀胱造設を施行した.病理組織診断は右側閉鎖リンパ節転移を伴うパラガングリオーマであった.術後の123I-MIBGシンチグラフィーでは有意な集積を認めず,血中・尿中カテコラミン値とも正常化を示したが,術後22カ月のPET-CT検査にて新膀胱背側に最大径53mmおよび骨盤内に最大径13mmの結節を認め再発と診断した.CVD療法(CPA・VCR・DTIC)を9コース施行後,MIBG内照射治療を2回行った.治療効果は腫瘍反応性minimal response生化学的反応性complete responseと治療効果を認めた.RECIST基準ではPRと判定した.現在MIBG内照射治療後2年が経過するが,明らかな再発所見は認めず経過観察中である.

  • 鈴木 宏明, 中西 泰一, 吉野 公二, 片岡 円, 福島 啓司, 鳶巣 賢一, 古賀 文隆
    2018 年 109 巻 2 号 p. 111-115
    発行日: 2018/04/20
    公開日: 2019/04/19
    ジャーナル フリー

    症例は60歳女性.外尿道口部出血を自覚し前医を受診した.MRIで外尿道口に20mmの腫瘤を認めた.経尿道的尿道腫瘍切除を施行し,病理組織学的に間質浸潤を示す尿道悪性黒色腫(MM)の診断であった.当院紹介となり尿道MMの診断の下,ミニマム創内視鏡下拡大尿道全摘除+膀胱瘻造設+センチネルリンパ節生検を施行した.病理組織所見は尿道MM,pN0(0/2),切除断端陰性であった.術後補助療法としてインターフェロンβ投与を行ったが,術後1年のCTで両側副腎,左肺門リンパ節に転移を認めnivolumab開始となった.nivolumab 4コース施行後,CTで転移巣の増大の他,間質性肺炎が出現した.ステロイド投与行い間質性肺炎は改善傾向を示した.その後も積極的治療を希望され,ipilimumabの投与を開始したが,間質性肺炎の増悪のため治療継続不可能となった.治療開始から19カ月目に原疾患により永眠された.

  • 大橋 朋悦, 錦見 俊徳, 服部 恭介, 山内 裕士, 石田 亮, 山田 浩史, 横井 圭介, 小林 弘明
    2018 年 109 巻 2 号 p. 116-121
    発行日: 2018/04/20
    公開日: 2019/04/19
    ジャーナル フリー

    症例は60歳男性.13歳時に交通外傷を受けている.57歳時から慢性心不全の薬物治療を受けていたが,心不全が緩徐に増悪したため精査したところ,CTで右腎動静脈瘻を指摘され当科紹介受診した.右腎動静脈瘻の形態は右腎動脈16mm,動脈瘤60mm,流出静脈87mmと巨大なものであり,下大静脈は60mm大に著明に拡張していた.右腎動静脈瘻による高流量シャントが高拍出性心不全の原因と考えられ治療適応と判断した.放射線科に経カテーテル的動脈塞栓術を依頼したが肺塞栓症のリスクが高く適応外と判断され,血管閉塞用バルーンカテーテルを用いて腎動脈血流遮断下に右腎摘出術を施行した.術後速やかに心不全症状は消失した.

  • 奥村 昌央, 森井 章裕, 北村 寛
    2018 年 109 巻 2 号 p. 122-126
    発行日: 2018/04/20
    公開日: 2019/04/19
    ジャーナル フリー

    4例の前立腺膿瘍を経験したので報告する.いずれも抗菌剤治療は無効であったが,ドレナージが有効であった.症例1は肺癌患者で糖尿病を合併しており,症例2は経直腸的前立腺生検後に急性前立腺炎が生じ,尿培養および血液培養での起炎菌はESBL産生大腸菌であった.症例3は脊髄損傷後で自己導尿をしており,症例4は未治療の重篤な糖尿病を有していた.症例1~3は経尿道的前立腺切除術を行ったが症例2は術後に射精不全が生じ精神的に大きな苦痛を招いた.症例4は年齢が43歳と若く,射精不全を避けるために,経会陰的に超音波ガイド下で膿瘍の穿刺吸引を行った.いずれも前立腺膿瘍は消失し,再発は生じていない.

feedback
Top