日本泌尿器科学会雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
ISSN-L : 0021-5287
113 巻, 4 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
原著
  • 黒瀬 浩文, 小宮 景介, 小笠原 尚之, 植田 浩介, 築井 克聡, 西原 聖顕, 名切 信, 松尾 光哲, 末金 茂高, 井川 掌
    2022 年 113 巻 4 号 p. 115-121
    発行日: 2022/10/20
    公開日: 2023/10/20
    ジャーナル フリー

    (緒言)男性の夜間多尿に伴う夜間頻尿に対して低用量デスモプレシンが使用可能となり,用量依存性の有効性が報告されているが,低Na血症等の副作用の報告も比較的高頻度に認めるため,年齢などを考慮し初期投与量を25μgとしている症例も少なくない.今回我々は高齢者に対するデスモプレシン初期投与量50μgの有効性と安全性について検討した.

    (対象・方法)当院にて夜間多尿に伴う夜間頻尿に対してデスモプレシンを50μgで初期投与開始した45例を対象とした.1週後,4週後の有効性,安全性を排尿日誌に基づく夜間排尿回数,夜間多尿指数,就寝後夜間第一排尿までの時間,就寝後夜間第一尿量,夜間尿量,IPSS,OABSS,アテネ不眠尺度,身体診察,血液検査を用いて検討した.

    (結果)平均年齢は78.3歳で既知の報告と比較し高齢であった.投与前と比較し1週後から夜間排尿回数の減少,夜間尿量の減少,就寝後第一排尿までの時間の延長,夜間多尿指数の改善,IPSS,IPSS-QOL,OABSS,アテネ不眠尺度の有意な改善を認めた.安全性に関しては有害事象を8例(17.8%)で認め,そのうち低Na血症は7例(15.6%)に認め,既知の報告と同等であった.

    (結論)デスモプレシンは高齢患者に対しても初期投与量50μgで有用であり,定期的な観察を行い,適宜休薬,減量することで安全に投与可能であった.

  • 南里 正晴, 松尾 学
    2022 年 113 巻 4 号 p. 122-127
    発行日: 2022/10/20
    公開日: 2023/10/20
    ジャーナル フリー

    (目的)ハンナ型間質性膀胱炎(HIC)に対するジメチルスルホキシド(DMSO)膀胱内注入療法の初期経験から治療効果と今後の課題について検討した.

    (対象と方法)HICに対してDMSOを投与した7例を対象とした.全例が過去に経尿道的ハンナ病変焼灼術を受けたことがある再燃例であり,DMSOは50mL膀胱内注入液50%を2週間毎6回投与した.治療評価は,膀胱痛に関するNumerical rating scale(NRS),O'Leary&Santの症状スコア(ICSI)と問題スコア(ICPI),24時間排尿回数,平均排尿量,最大排尿量の治療前後の変化で行い患者の総合的な改善度は質問票で行った.治療後には膀胱鏡を実施した.

    (結果)全例が女性で平均年齢は58.3歳であり,5例が中等症例で2例が重症例であった.重篤な副作用はなく全例で6回投与が可能であった.治療前後のベースラインからの変化はNRSが-6.1点,ICSIが-9.1点,ICPIが-10.0点であった.また24時間排尿回数は5.34回減少し,平均排尿量は60.3mL,最大排尿量は75.7mL増大した.全例自覚症状は改善し,膀胱鏡ではハンナ病変が縮小していた.

    (結論)HICの7例に対してDMSOの膀胱内注入を行い良好な治療効果と安全性について確認した.今後は初期治療としての使用も考慮できるためハンナ病変の正確な診断がより重要になる.

  • 奥木 宏延, 中村 敏之, 岡崎 浩, 吉原 忠寿
    2022 年 113 巻 4 号 p. 128-133
    発行日: 2022/10/20
    公開日: 2023/10/20
    ジャーナル フリー

    (目的)当院で腎盂尿管移行部狭窄症に対して施行した腹腔鏡下腎盂形成術における手術部位感染(surgical site infection:SSI)や遠隔感染(remote infection:RI),予防抗菌薬について検討した.

    (対象と方法)対象は2009年8月から2021年6月まで当院で施行した94例.SSI,RIの発生率やその危険因子,予防抗菌薬投与方法の違いによる発生率の比較検討を行った.

    (結果)全体でSSI発生率は2例(2.1%),RI発生率は3例(3.2%)であった.予防抗菌薬ガイドライン遵守群と,それ以前の比較において,SSI,RIとも発生率に有意差を認めなかった.SSI,RI発生リスク因子の検討では有意差を示す項目は認めなかった.

    (結論)腹腔鏡下腎盂形成術のSSIやRIの発生率は低値であり,予防抗菌薬を削減できる可能性があると考えられた.今後の課題としてSSIやRIの持続的客観的評価方法の確立,それに基づいた多施設での大規模な調査によるデータの蓄積が重要と考えられた.

症例報告
  • 杉戸 悠紀, 堀田 記世彦, 山田 修平, 千葉 博基, 松本 隆児, 大澤 崇宏, 安部 崇重, 阿保 大介, 佐藤 公治, 若狭 哲, ...
    2022 年 113 巻 4 号 p. 134-138
    発行日: 2022/10/20
    公開日: 2023/10/20
    ジャーナル フリー

    症例は36歳,女性.29歳時,子宮頸癌に対する広汎子宮全摘術の際に,両側尿管ステントが留置され,その後術後放射線療法として全骨盤照射,傍大動脈リンパ節照射が施行された.術後4年間は尿管ステント交換のために通院していたが,以後通院を自己中断した.

    術後7年目に肉眼的血尿を主訴に前医を受診した.右尿管ステント抜去直後に大量出血し,右尿管動脈瘻の疑いで当院に転院となった.血管造影検査および血管内超音波検査では右総腸骨動脈遠位端に仮性動脈瘤を認めたため,右総腸骨動脈内にステントグラフトを留置し,その後血尿の再燃なく退院となった.退院1カ月後に右水腎症と右腎盂腎炎を発症したため,右腎瘻が造設された.半年後発熱と腎瘻からの出血を来し,CTでは右総腸骨動脈に仮性瘤の形成とステントグラフト滑脱の所見を認めた.血管内治療は困難と判断し,手術にてステントグラフトの抜去と仮性動脈瘤の切除を行った.また大腿動脈―大腿動脈バイパス術を行い右下肢の血流を確保した.現在右腎瘻を定期交換しているが,感染や血尿の再燃なく,下肢の血流障害も認めず,安定して経過している.近年は尿管動脈瘻に対して低侵襲な血管内治療が第一選択となることが多いが,感染を合併した例では血管壁が脆弱化し,仮性瘤の形成やステントの滑脱が起こる場合がある.

  • 袴田 康宏, 内田 浩介, 野田 大将, 今井 伸, 米田 達明, 工藤 真哉
    2022 年 113 巻 4 号 p. 139-142
    発行日: 2022/10/20
    公開日: 2023/10/20
    ジャーナル フリー

    症例は62歳男性.慢性腎臓病のため当院腎臓内科通院中にエコー検査で左腎腫瘍を認め当科に紹介となった.精査で左腎に42mmの腫瘍と多発肺腫瘍を認め,左腎細胞癌cT1bN0M1と診断し,Pembrolizumab+Axitinibの投与を行った.左腎腫瘍は27mmに縮小し,肺転移は消失したため後腹膜鏡下左腎部分切除術を施行した.以降無治療経過観察中であるが,肺転移を含め新たな転移の出現は認めていない.

  • 奥末 理知, 前田 航規, 森 友莉, 佐藤 亘, 原田 吉将
    2022 年 113 巻 4 号 p. 143-146
    発行日: 2022/10/20
    公開日: 2023/10/20
    ジャーナル フリー

    交叉性精巣転位症は,一側の精巣が正中を越えて他側の鼠経管を通って下降し一つの陰囊に2つの精巣が存在する状態であり,非触知精巣の約2%に認められるとの報告がある.多くは幼少期に精巣固定術が行われているが,まれに腫瘍化し成人期に診断されることもある.症例は40歳男性.右側腹部痛を主訴に受診した.右陰囊内に精巣を触知したが左陰囊内には陰囊内容を認めず,右陰囊上部に有痛性の腫瘤を触知した.CTでは両側の精索が右鼠径管内を通過しており,交叉性精巣転位症と診断した.超音波検査では右陰囊上部の左精巣には血流を認めず精巣捻転症の診断で緊急手術を行った.右陰囊内には正常の右精巣と,その頭側に180度捻転した暗赤色の左精巣を認めた.左精巣は壊死していたため精巣摘除を行った.摘出標本の病理診断結果はseminoma,pT1であった.術後の腫瘍マーカーは陰性であり,術後2年5カ月間再発なく経過している.非触知精巣の捻転症の場合には交叉性精巣転位症の可能性も考え,患者の年齢に応じて悪性腫瘍を念頭におく必要がある.

  • 木下 茜, 山田 大介, 本多 一貴, 團野 哲也, 徳永 まゆ子, 宮川 仁平, 田口 慧, 秋山 佳之, 山田 雄太, 佐藤 悠佑, 久 ...
    2022 年 113 巻 4 号 p. 147-151
    発行日: 2022/10/20
    公開日: 2023/10/20
    ジャーナル フリー

    48歳女性.前医婦人科にて子宮筋腫,子宮内膜症に対し子宮全摘術と両側卵巣囊胞切除術を施行された.術後に腎機能の増悪を認め,病理組織検査で尿管組織を指摘され,左尿管損傷修復について当科紹介受診した.

    腎瘻からの順行性腎盂造影検査にて尿管欠損部は9.5cmであった.尿管損傷修復として尿管膀胱吻合は困難と考えられ,右腸骨窩の癒着が強くなく血管が確保できれば自家腎移植術の方針とした.

    術中操作で骨盤内の血管を確保できたため,左腎の右腸骨窩への自家腎移植術を施行した.術6カ月後の腎機能は保たれ,エコーで水腎を認めず腎血流も良好であった.

    尿管損傷の再建法を苦慮し文献検索をした経験から,尿管損傷長によるアルゴリズムを作成した.

feedback
Top