(目的)骨盤臓器脱に対する外科的治療として,腹腔鏡下仙骨腟固定術(LSC)やロボット支援腹腔鏡下仙骨腟固定術(RASC)を行う症例が増加している.これらは再発率が低く合併症の少ない優れた術式であるが,岬角での剥離時の出血や脊椎椎間板炎は重篤な合併症となり得る.LSC困難症例において当科では,外腹斜筋筋膜へメッシュアームを誘導する腹腔鏡下側方固定術(LLS)を行っており,その成績について解析した.
(対象と方法)2019年5月から2023年7月までに単一術者により骨盤臓器脱に対しLLSを施行した12症例を対象とし,主要評価項目として客観的再発の有無を術前後のPOP-Qスコアで評価した.排出困難の指標として術前後の残尿量の比較を行った.主観的指標として問診(PFDI-20)による評価を行った.
(結果)術前後のPOP-QスコアはBa,C,Bpのいずれにおいても有意に改善を認めた.術前後の残尿量は83mlから2.5mlへ術後に有意に減少した.術前後の自覚症状スコアは,下垂症状および排尿症状において有意に改善し,排便症状については有意差を認めなかった.周術期合併症は癒着性イレウス1例,膀胱損傷1例,腟壁損傷1例であった.
(結論)骨盤臓器脱に対するLSC施行困難例において,LLSは外科的治療の選択肢の1つとして有用であると考えられる.
(目的)日本のナショナルクリニカルデータベース(NCD)は,日本で実施される手術症例の大部分をカバーする大規模な全国規模のウェブベースのデータ入力システムである.2018年に従来のNCDシステムを踏襲するかたちで,泌尿器科手術に特化したデータ登録が開始された.本論文は,先にInternational Journal of Urologyに掲載されたNCDの年間報告書の概要をまとめたものである.
(対象と方法)2018年からNCD参加施設で実施されたすべての泌尿器科手術が登録された.本論文では2018年4月から2021年12月の間に実施された,「日本泌尿器科学会認定泌尿器科専門研修プログラム」に規定されている術式の件数を集計した.
(結果)日本泌尿器科学会の主導により,全国1,185施設から合計1,377,677件の症例が登録されていた.10のカテゴリーに分類した手術件数を実施年ごとに報告する.
(結論)NCDシステムは,本邦で実施された泌尿器科手術の術前情報,手術アウトカムに関して,実臨床に即した重要な情報を継続的に提供するものである.
(目的)本邦の泌尿器科領域のNational Clinical Database(NCD)は,2018年4月に登録を開始した.本稿は,詳細入力により登録されている5つの手術に焦点を当てた最初の報告書(International Journal of Urology掲載)の和文要約である.
(対象と方法)NCDに登録された根治的腎摘除術,腎部分切除術,根治的膀胱全摘除術,根治的前立腺全摘除術,腎盂形成術の5つの詳細入力術式の年次動向を集計した.
(結果)本報告書の対象期間中,上記5術式の手術を受けた合計149,417人の患者がNCDに登録された.実施件数は,2018年4月から2021年12月までの根治的腎摘除術/腎部分切除術が55,630件,2018年4月から2021年12月までの前立腺全摘除術が83,653件,2020年1月から2021年12月までの前立腺全摘除術が9,342件であった.2021年には,腎部分切除術が7,416件,根治的腎摘除術が7,739件,根治的前立腺全摘除術が22,692件,根治的膀胱全摘除術が4,677件,腎盂形成術が792件実施された.
(結論)全ての術式において,ロボット支援手術や腹腔鏡下手術が開放手術にとって代わり,一般的なアプローチとなっていることが示された.NCDデータの分析は,泌尿器科の主要分野全体の外科手術の傾向を理解する上で有用である.
後部尿道弁(posterior urethral valves;PUV)における下部尿路機能は予後予測が難しい.一次治療では経尿道的弁切開術が選択されることが多く,術後に上部尿路拡張が改善しない症例や,有熱性尿路感染症(febrile urinary tract infection;fUTI)を繰り返す症例では尿路変向術が考慮される.今回我々は,二次治療として早期に膀胱皮膚瘻造設術を施行し膀胱拡大術なしに下部尿路機能を回復し得た高度膀胱変形を呈したPUVの症例を経験したので報告する.
症例は10カ月,男児.8カ月時にfUTIを発症,超音波検査で両側水腎水尿管症,排尿時膀胱尿道造影検査で高度膀胱変形と右側膀胱尿管逆流,後部尿道の拡張を認めた.尿道内視鏡検査でType 3の後部尿道弁を認め切開を行い,低コンプライアンス膀胱に対しオキシブチニンを開始したが上部尿路拡張は改善せず,1歳9カ月時に膀胱皮膚瘻を造設した.以後fUTIの再発なく,両側水腎症は消失し,総腎機能は良好に保たれ,多尿も認めなかった.就学を機に尿禁制獲得の希望あり,膀胱コンプライアンスの改善と膀胱尿管逆流の消失を確認し,6歳5カ月時に膀胱皮膚瘻を閉鎖した.術後排尿状態は良好で,尿失禁や遺尿を認めなかった.13歳7カ月時にオキシブチニンを中止し,その後も上部尿路拡張やfUTIの再発なく排尿状態は良好に経過している.