日本泌尿器科学会雑誌
Online ISSN : 1884-7110
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80 巻, 1 号
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  • 阿曽 佳郎
    1989 年 80 巻 1 号 p. 1-2
    発行日: 1989年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
  • 黒田 加奈美
    1989 年 80 巻 1 号 p. 3-10
    発行日: 1989年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    胎生期より下垂体前葉の形成不全がみられ成長ホルモン (GH), プロラクチン (PRL), 甲状腺刺激ホルモン (TSH), 副腎皮質刺激ホルモン (ACTH) のほとんどが欠如している Snell 下垂体性小人症マウス (dw), GH単独欠損症の little 小人症マウス (lit), 甲状腺が低形成を示し血中サイロキシン (T4) は測定不能で逆にTSHが異常に高い先天性原発性甲状腺機能低下症マウス (hyt), 以上3種類の先天性ホルモン欠損動物のうちホモ接合体である dw/dw と hyt/hyt の雄は不妊であるが, lit/lit に関しては明確でない. dw/dw にGH+T4, lit/lit にGH, hyt/hyt にはT4を出生直後より投与する早期回復実験を行ない各々のマウスでの正常対照群, 未治療群, 治療群における40日齢の精巣を摘出し, 造精過程を形態学的に検索し比較検討した.
    3種類のマウス (dw/dw, lit/lit, hyt/hyt) のすべてにおいて, それぞれの対照群と比較して spermatogonia 数, spermatocyte 数, spermatid 数, sperm 数の全部を合計した総造精細胞数は著明に減少しており, またその総細胞数の減少はホルモン投与で良好に改善されていた. なお, 対照群と比べて dw/dw 群では spermatid 数, lit/lit 群で sperm 数, hyt/hyt 群で spermatid 数と sperm 数の減少が著明であった.
    この実験よりGHとT4が造精機能に関与している事が示唆された.
  • 中井 秀郎, 橘 政昭, 馬場 志郎, 出口 修宏, 実川 正道, 畠 亮, 田崎 寛
    1989 年 80 巻 1 号 p. 11-16
    発行日: 1989年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    正常副腎10例, 腫瘍性副腎20例の flow cytometric DNA histogram の分析検討を行ない臨床診断, 病理診断と比較検討した.
    正常副腎, 過形成副腎は, normal diploid pattern を示したが, 皮質腺腫のなかに, tetraploid pattern を示すものがあり, 特に原発性アルドステロン症腺腫では, 7例中6例 (86%) と高頻度に認められた. Cushing 腺腫 (2例) では, いずれも normal diploid pattern を示した. Proliferation Index (PI) (全細胞数に対するS期及びG2+M期の細胞数の比率) は, 正常副腎で, 9.45±6.97%を示し, 過形成副腎は, ほぼ同様の値を示したが, 皮質腺腫では高値で, 特に原発性アルドステロン症腺腫では20.87±8.764%であった. 従って細胞生物学的にみると原発性アルドステロン症腺腫は, Cushing 腺腫よりも細胞増殖能の高い腫瘍であると示唆された. 良性褐色細胞腫では, 5例中3例 (60%) に aneuploid pattern を認め, 1例 (20%) は tetraploid pattern で, 1例 (20%) は normal diploid pattern であった. このことは, 褐色細胞腫は, 細胞生物学的観点から見ると, 個々の症例間で細胞増殖能の差が著しい腫瘍であることを示唆するものと考えられた. 副腎皮質腺癌, 悪性褐色細胞腫は, いずれも aneuploid pattern を示した.
    以上の結果より副腎腫瘍の Flow cytometric DNA histogram 分析は, この臓器に特徴的とも言える多彩な機能性, 非機能性腫瘍の細胞増殖能の比較に際し, 客観的, 定量的, かつ迅速な細胞生物学的解析を可能にする有用な方法であると考えられた.
  • 打林 忠雄, 江川 雅之, 浅利 豊紀, 中嶋 和喜, 久住 治男, 遠藤 良夫, 田中 基裕, 佐々木 琢磨
    1989 年 80 巻 1 号 p. 17-21
    発行日: 1989年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    継代培養細胞株 (B16-F10メラノーマ, ヒト膀胱癌由来培養細胞株KK-47) および臨床材料 (腎細胞癌5例, 尿路移行上皮癌9例) を用いて鶏卵法による温熱と抗癌剤併用効果の検討を行なった. その結果マウスB16-F10メラノーマではADR単独処理群およびCDDP+温熱, ADR+温熱, CY+温熱併用群において有意に高い腫瘍発育阻止率が認められた (P<0.05, P<0.01). KK-47ではCY単独処理群およびCY+温熱処理群において有意に高い腫瘍発育阻止率が認められた (P<0.05). 臨床材料を用いた検討では14例中11例 (79%) において感受性試験の評価が可能であり, 今後これらの結果を臨床応用し, その相関性につき検討していく予定である.
  • 凍結乾燥硬膜を利用した補填について
    垣本 滋, 酒井 英樹, 久保田 茂弘, 近藤 厚, 岸川 正大
    1989 年 80 巻 1 号 p. 22-27
    発行日: 1989年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1986年4月から1987年8月までの1年5ヵ月間に10例の膀胱癌患者 (前壁5例, 頂部1例, 頂部~前壁2例, 側壁2例) に膀胱部分切除術を施行し, その欠損部に凍結乾燥硬膜を用いて被覆した. 術前8例に循環器系の合併症, 糖尿病, 肝硬変が認められ, また80歳以上の高齢者は3例でほとんどの症例が poor risk であった. 手術時間は平均109±26分と比較的短く, カテーテル留置期間は15~42日間, 平均28±8日と比較的長期間であった. 3例に術後2~4週間にわたる創部よりの尿漏れを認め, 1例に一過性のVURを認めたが重篤な尿路感染症は全例に認めなかった. 術後8週目には硬膜の内面は上皮化され他の正常膀胱粘膜とは鑑別困難であった. 術後経過は1例は急性腎不全にて死亡, 1例は術後1年3ヵ月目に腫瘍の再発を認め, TUR-Btを施行したが他は全例再発を認めていない. 以上より凍結乾燥硬膜を用いることにより広範囲な膀胱部分切除術が可能であり, 膀胱頂部, 前壁, 側壁の腫瘍であれば有効な手術法と思われた.
  • 早川 正道, 増田 毅, 比嘉 功, 小山 雄三, 秦野 直, 小田 正美, 大澤 炯
    1989 年 80 巻 1 号 p. 28-34
    発行日: 1989年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    我々は3例の進行性腎癌患者に対して, 2つの異なった type のLAK細胞の分割動注とrIL-2の全身投与を併用した養子免疫療法を行ったので, その効果について報告する.
    リンパ球分離を週1回行い, ついで Percoll を用いた密度勾配遠心法でリンパ球を2つのサブタイプに分け, おのおのをrIL-2と共に培養してLAK細胞を誘導した. 転移巣の栄養血管を介してLAK細胞を週2回動注した. 3例中1例において, 上臀動脈を介してLAK細胞を3ヵ月間動注することにより腸骨転移巣が明らかに消失した. また腰動脈へのLAK細胞動注により, 腸腰筋と傍大動脈リンパ節転移の消失および腰椎転移巣の縮小が得られた1例を経験した.
    他の1例では, 脳転移に対して内頚動脈よりLAK細胞を動注したが, 脳浮腫が増悪し中止となった.
    LAK細胞の動注療法は, 転移性腎癌の治療に有用であり, 今後とも期待される方法と考えられた.
  • 田中 重人, 安本 亮二, 浅川 正純, 森 勝志, 柿木 宏介, 前川 正信
    1989 年 80 巻 1 号 p. 35-38
    発行日: 1989年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    我々は慢性非細菌性前立腺炎34例にリニア式経直腸的前立腺走査法を行い慢性非細菌性前立腺炎の画像診断と病態および臨床経過の関係について考察した.
    リニア式経直腸的前立腺走査法において慢性非細菌性前立腺炎に定形的といえる所見は認められなかったが, 前立腺内部エコー像の乱れ, 被膜エコーの凹凸不整の変化がみられた. また, 67.6%の症例に前立腺結石が, 11.8%の症例に前立腺嚢胞が認められ, 超音波走査法は骨盤単純レ線像より前立腺結石および嚢胞性病変の検出において, はるかに優れていた. また, 前立腺結石は年齢層が高くなるにつれ合併率も高くなった. 臨床症状の再燃憎悪頻度と前立腺結石, 嚢胞性病変との関係を検討すると再燃憎悪頻度の高い症例に前立腺結石, 嚢胞性病変の合併が多くみられ, 前立腺結石, 嚢胞性病変の有無が慢性非細菌性前立腺炎の臨床経過を推測する上で重要であると考えられる.
  • 沼沢 和夫, 久保田 洋子, 鈴木 仁, 柿崎 弘, 高見沢 昭彦, 斉藤 雅昭, 鈴木 騏一, 加藤 弘彰, 平野 順治, 平野 和彦
    1989 年 80 巻 1 号 p. 39-47
    発行日: 1989年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1981年11月より1987年11月までにStage C 6例, Stage D2 29例の計35例の進行性前立腺癌新鮮例に対して除睾術と Diethilstilbestrol diphosphate と Cisplatin との併用投与による内分泌化学療法を施行した.
    全例にPR, NCの近接効果がえられ, PD症例は認められなかった.
    遠隔治療成績では全症例の3年生存率は75.8%, 5年生存率は60.7%であり, Stage C症例の3年および5年生存率は100%で再燃は認められなかった. Stage D2症例の3年生存率は72.2%, 5年生存率は54.2%であり historical control とした stage D2内分泌療法施行例18例の3年, 5年生存率と比較して生存率の向上がみられた.
    再燃は Stage D2症例29例中7例 (24.1%) に認められ historical control と比較して再燃までの期間の延長が認められた.
    また再燃例はいずれも組織分化度が低分化で, 骨転移の進行した症例に多い傾向がみられた.
    副作用は嘔気, 嘔吐の消化器症状と貧血およびGOT, GPTの上昇が認められた.
    以上の結果から進行性前立腺癌新鮮例に対する内分泌化学療法は有効な治療法と考えられる.
  • 三方 律治, 今尾 貞夫, 堀内 大太郎, 田中 良典
    1989 年 80 巻 1 号 p. 48-53
    発行日: 1989年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    Computed Radiography や Picture Archiving & Comunication System の開発普及に伴って腎癌の臨床画像も総てデジタル化されて, その記録, 保管, 転送及びデジタル解析が行われる趨勢にある. しかしながら, 医用画像のデジタル化やデジタル解析ということ自体が一般臨床医には馴染みにくい問題である. 今回我々は, パーソナルコンピュータを本体とした. 簡便な画像解析装置を応用して, 腎癌の各種アナログ画像をデジタル化し, デジタル解析を試みて, その結果を供覧する. 腎癌のアナログ画像のデジタル化とデジタル解析について理解し慣熟する目的には, この様な画像解析装置は有用性が高いと思われる.
  • 魚住 二郎, 岩坪 暎二, 安藤 三英, 浜野 克彦, 原 三信
    1989 年 80 巻 1 号 p. 54-58
    発行日: 1989年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    脊髄損傷患者の急性腎盂腎炎において尿中NAGを測定し, その診断的意義について検討した. 脊髄損傷患者の急性腎盂腎炎31例中23例 (74%) で尿中NAGの上昇がみられた. また対照群として各種の尿路生殖器感染症についても尿中NAGを測定した. 非脊髄損傷患者の急性腎盂腎炎7例中4例 (57%) で尿中NAG上昇がみられたが, 下部尿路感染症の急性単純性膀胱炎20例, 慢性複雑性膀胱炎11例, 尿道炎6例のうち尿道炎の1例 (17%) を除いて尿中NAGの上昇はなかった. 生殖器感染症の急性前立腺炎9例, 急性副睾丸炎9例のうちそれぞれ6例 (67%), 5例 (56%) で尿中NAG上昇がみられ, 急性腎盂腎炎の診断に尿中NAG値を参考にする場合にはこれらの疾患を考慮にいれる必要がある. 脊髄損傷患者の急性腎盂腎炎31例について尿中NAGと発熱, 末梢白血球数との関係について検討を試みたが, 膿尿あるいは細菌尿に加えて38℃以上の発熱と10,000以上の白血球増多を示すような典型的症例16例中11例 (69%) で尿中NAG上昇がみられたのみならず, 38℃以上の発熱か10,000以上の白血球増多の一方しか伴わない症例でも15例中12例 (80%) で尿中NAGの上昇がみられた. 複雑な病態を有し, 急性腎盂腎炎の診断が容易ではない脊髄損傷患者において尿中NAGの測定は有用な補助検査法と思われる.
  • 林 宣男, 杉村 芳樹, 桜井 正樹, 栃木 宏水, 川村 寿一
    1989 年 80 巻 1 号 p. 59-68
    発行日: 1989年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    ヒト腎細胞癌を培養し, in vitroでは, 67歳女性の spindle cell type (MR-1) と74歳女性の dark cell type (MR-2) の2株を樹立した. in vivo では, MR-1と同一患者よりヌードマウス移植株 (MRV) を樹立した. MR-1は140代, MR-2は110代で凍結保存中である. 継代の進行にともない, 倍加時間や染色体数などの性状に変化がみられた. このような変化は, 継代中の細胞に transformation・mutation・selection が起こっていると考えられた. MRVは7代継代中で移植率は86.8%, 特に4代以降は100%であった. 樹立した細胞株を用い, in vitro では3H-thymidine の uptake を利用した Radioisotope uptake assay で, in vivo でヌードマウスの移植腫瘍重量で制癌剤感受性試験をおこなった. その結果, in vitro と in vivo において有効薬剤の差がみられた. Radioisotope uptake assay は, 核酸合成阻害を指標とし制癌剤と24時間持続接触させるため, ビンカアルカロイドのような細胞分裂阻害剤で時間依存性の薬剤の効果判定が難しく, 抗生剤型薬剤の効果を過大評価する可能性が示唆された. しかし, 制癌剤感受性試験を臨床応用するためには, 簡素化された in vitro test が必要であり, 薬剤濃度・接触時間・判定方法について Radioisotope uptake assay の検討改良が必要と思われた.
  • 阿曽 佳郎, 牛山 知己, 田島 惇, 鈴木 和雄, 大田原 佳久, 太田 信隆, 大見 嘉郎, 畑 昌宏, 増田 宏昭, 神林 知幸, 鈴 ...
    1989 年 80 巻 1 号 p. 69-73
    発行日: 1989年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1977年11月に浜松医大泌尿器科が開設されて以来1987年3月までの約10年間に浜松医大泌尿器科およびその関連病院で治療した腎盂尿管腫瘍患者は46例であった.
    腎盂尿管腫瘍46例の性別頻度は, 男34例, 女12例と, 約3:1で男に多くみられた. 年齢別では, 70歳代が17例と最も多くみられ, 次に50歳代, 60歳代の順であった. 組織型別では, 移行上皮癌44例 (95.7%), 扁平上皮癌2例 (4.3%) であった. 深達度別では, Tis 1例,T1 13例, T2 2例, T3 8例, 転移あり (M+) 15例であった. 異型度別では, G1 1例, G2 24例, G3 15例であった. 移行上皮癌全体の5年生存率は37%だった. 異型度別の5年生存率はG2 43%, G3 42%, 深達度別では, T1 71%, T3 46%, M+には5年経過したものはみられなかった. 異型度別には有意差はなかったが, 深達度別でT1とM+(p<0.001), T3とM+(p<0.05) の間に有意差を認めた. 部位別の5年生存率は, 腎盂腫瘍 (n=24) 38%, 尿管腫瘍 (n=20) 34%と両群間に有意差はなかった. 根治的治療のできた群 (n=24) とできなかった群 (n=20) についてみると, 5年生存率はそれぞれ63%, 7%であった.
  • 阿曽 佳郎, 牛山 知己, 田島 惇, 鈴木 和雄, 大田原 佳久, 太田 信隆, 大見 嘉郎, 畑 昌宏, 増田 宏昭, 神林 知幸, 鈴 ...
    1989 年 80 巻 1 号 p. 74-81
    発行日: 1989年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1977年11月に浜松医大泌尿器科が開設されて以来1987年3月までの約10年間に浜松医大泌尿器科およびその関連病院で治療した膀胱腫瘍患者は255例であった. 性別は, 男198例, 女57例と, 約4:1の割合で男に多くみられた. 年齢別では, 70歳代が100例と最も多くみられ, 続いて60歳代, 50歳代の順であった. 組織型別では, 移行上皮癌242例 (94.9%), 扁平上皮癌11例 (4.7%), 腺癌2例 (0.4%) だった. 移行上皮癌242例の深達度はTis7例, Ta43例, T1 111例, T2 33例, T3 19例, T4 5例, 転移有り (M+) が14例であった. 異型度は, G0 6例, G1 66例, G2 100例, G3 64例であった. 深達度と異型度との間に相関がみられた. 組織型別の5年生存率 (Kaplan-Meier 法) は, 移行上皮癌64%, 扁平上皮癌58%であった. 異型度別では, 5年生存率はG0 100%, G1 73%, G2 73%, G3 40%だった. 深達度別では, Ta 81%, T1 81%, T2 35%, T3 41%, T4 40%, M+12%であった. 初回治療法別の5年生存率は, TUR (n=137) 81%, 膀胱部分切除 (n=4) 36%, 膀胱全摘 (n=56) 61%だった. TURと膀胱全摘, TURと膀胱部分切除の間に有意差がみられた. TUR後の5年非再発率は, 全体で58%, 異型度別で, G0 63%, G1 59%, G2 58%, G3 80%, 深達度別で, Ta66%, T1 57%, T2 50%, 形態別で, 乳頭状単発70%, 乳頭状多発40%, 非乳頭状には5年以上の経過例はなかった.
  • 井坂 茂夫, 岡野 達弥, 島崎 淳, 森田 新六, 恒元 博, 手澤 伸一
    1989 年 80 巻 1 号 p. 82-87
    発行日: 1989年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    浸潤性膀胱移行上皮癌47症例に対し, 術前照射 (サイクロトロンによる速中性子線910rad/16日間, またはリニアックによるX線3,000rad/14日間) を行い, 根治的膀胱全摘除術および尿路変更術を施行した. 32%に Stage down 効果を認め, これらの症例の予後は Stage down 効果を認めなかったもののそれより良好であった. 大星・下里の分類により組織学的照射効果を判定したところ, Grade IIB または Grade III の著明な効果を49%に認めたが, この効果は予後に影響がなかった. 術前照射施行例の5年生存率はPT0, PTisで100%, PT1: 75%, PT2: 100%, PT3: 47%, PT4: 0%であり, 術前照射を施行する以前の膀胱全摘除施行症例と比較して明らかに改善した.
  • 塚本 泰司, 熊本 悦明, 宮尾 則臣, 大村 清隆, 山崎 清仁
    1989 年 80 巻 1 号 p. 88-94
    発行日: 1989年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    腎細胞癌に対する抗癌剤と interferon (IFN) との効果をとくに両者の併用効果を中心に in vitro 抗癌剤感受性試験を用いて検討した. In vitro 抗癌剤感受性試験の方法としては colony formation assay (CFA),〔3H〕-thymidine incorporation assay (〔3H〕-TdR assay) を用いた. 4例の腎細胞癌, 5株のヌードマウス可継代株を用い両方法による結果を比較したが, これらは互いに類似し, 良好な相関を示した (r=0.97, p<0.01).
    既述の in vitro 抗癌剤感受性試験 (CFAおよび〔3H〕-TdR assay) における“感受性”薬剤の基準を用いると, 24例の腎細胞癌組織の延べ63薬剤に対する感受性は, 5薬剤, 7.9%に認められたのみであった. これは, これまでの他の報告と同様の結果であった.
    ヒト腎細胞癌株 (SMK-R2) に対する抗癌剤, HLBIおよび両者の併用効果の検討では, VBL, MTX, HLBIのそれぞれが濃度依存的に〔3H〕-TdR uptake を抑制した. 抗癌剤とHLBIの併用では, Valeriote, Lin の定義に従えば, VBL 0.05μg/mlとHLBI 102, 103IU/mlの併用で subadditive effect が, MTX 0.1μg/ml, HLBI 102IU/mlの併用で synergistic effect が認められた. 特に, synergistic effect が, 臨床的に到達可能な濃度において認められたことは臨床検討に際して重要な点であると思われた.
  • 江原 英俊, 竹内 敏視, 小林 克寿, 林 秀治, 長谷 行洋, 兼松 稔, 栗山 学, 坂 義人, 河田 幸道, 藤広 茂, 田村 公一 ...
    1989 年 80 巻 1 号 p. 95-99
    発行日: 1989年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    Acute focal bacterial nephritis (以下AFBNと略す) は, 1ないし数個の腎葉に限局した腎の炎症性疾患であり, 早期の適切な抗生剤による保存的治療が奏効する疾患である. 今回AFBNの2症例を経験したので報告する. 症例1は52歳の男性で, 前立腺肥大症による尿閉のため, カテーテルを留置中, 突然の発熱と右側腹部痛を訴えた. 超音波検査, CTにより右腎に多発性で周囲の腎実質に比べて低い density の辺縁不明瞭な腫瘤を認めた. 吸引細胞診で好中球, 組織球を主体とする炎症性変化がみとめられた. 一方, 両側肺野に多発性腫瘤を認め経気管支的生検により肺膿瘍と診断された.以上より, 多発性肺膿瘍を併発したAFBNと診断し, 抗菌剤投与を行い入院後5週間で軽快退院し, 発症後1年8ヵ月の現在, 再発の徴候は認められていない. 症例2は24歳の女性で, 突然の発熱と嘔吐で発症し, 右側腹部に圧痛を認めた. 超音波検査, CTにて右腎に症例1と同様の腫瘤を多数認めた. 約2週間の抗菌剤投与を行い軽快した. その後, 両側膀胱尿管逆流現象を認めたため, 逆流防止術を行い, 発症後1年3ヵ月の現在再発を認めていない. AFBNは, 画像診断技術の発達と共に確立された疾患単位であり, 閉塞性尿路疾患や膀胱尿管逆流現象等の基磁疾患を有する症例において, 腎の急性炎症発生時には本症を考慮することにより, 今後多数報告されるものと思われた.
  • 岩動 孝一郎, 近藤 靖司, 親松 常男, 平沢 潔, 本間 之夫, 益田 貞彦, 吉野 信二, 薬丸 一洋
    1989 年 80 巻 1 号 p. 100-103
    発行日: 1989年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    徐放性のLH-RHアナログ製剤により治療を受け, 完全寛解となった前立腺癌の1症例に縦隔腫瘍の合併が見られた. 外科的手術によって摘出された腫瘍は病理組織学的に胸腺腫であった. 胸腺腫と前立腺癌との合併例は文献上報告が見られないが, 両者の合併が全く偶発的なものかあるいは何らかの因果関係を有するものかについては論議のあるところである.
  • 高井 計弘, 垣添 忠生, 鳶巣 賢一, 田中 良典, 呉屋 朝幸, 近藤 大造, 梶浦 雄一, 柄川 順, 手島 伸一, 岸 紀代三, 関 ...
    1989 年 80 巻 1 号 p. 104-110
    発行日: 1989年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    左鎖骨上窩腫瘤, 血尿を契機として発見された右腎癌の63歳, 男性症例を報告した. ポイントは, 1) AFP産生性の腎癌であること, 2) きわめて進行した状態で発見され, かつ増悪していったこと (初診時腎門部, 傍大動脈, 上縦隔, 左鎖骨上窩リンパ節を伴う腎癌, 後に左鎖骨上窩リンパ節転移再発, 皮膚転移をみた), 3) 各種の治療 (右腎摘除術, 腹部リンパ節郭清, 上縦隔・左鎖骨上窩リンパ節郭清, その後左鎖骨上窩再発巣に対して温熱療法+放射線治療, 全身的には腫瘍浸潤リンパ球の静注療法) とAFPの動きが連動したことである. 腎癌の腫瘍マーカーとしてのAFPの意義, 本症例における各種の治療の適否, 意義を論じた.
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