日本泌尿器科学会雑誌
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80 巻, 12 号
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  • 吉田 修, 筧 善行
    1989 年 80 巻 12 号 p. 1695-1705
    発行日: 1989/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    A dramatic improvement in the survival of patients with testicular cancer has been witnessed in the 1970s. These advances are in the areas of diagnosis, staging, and monitoring of patients with this disease. The thrust of improvement includes the finding of sensitive and specific markers, the introduction of CDDP, and utilization of CT. Also, the finding of the efficacy of multidiciplinary treatment consisting of intensive chemotherapy and surgery has played a decisive role in the management of patients.
    This paper is devoted of a discussion of the basic sciences related to testicular cancer and the diagnosis and management of this tumor.
  • 山内 民男, 國保 昌紀, 吉野 修司, 立花 裕一, 河合 恒雄, 北川 知行
    1989 年 80 巻 12 号 p. 1706-1712
    発行日: 1989/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    前立腺癌 estrogen 療法における肝実質障害を主に diethylstilbestrol diphosphate (DES-DP) で治療された6例の剖検例で検討した.
    肝実質障害は, estrogen 投与量に応じて, 様々の程度の組織学的障害を認め, Ludwing らの提唱する“nonalcoholic steatohepatitis”(非アルコール性脂肪性肝炎) の像であった. DES-DP投与総量は12.6gから619gまでであったが, 組織学的に障害の許容限度は, 150g前後が妥当であろうと, 6例の組織障害度から推察された.
    死亡前10日以内に検査された諸肝機能検査と肝実質障害度との比較で, 唯一 cholinesterase の異常を認め, 慢性肝実質障害である非アルコール性脂肪性肝炎の程度を予測するには, cholinesterase の推移が有用と考えられた.
  • Diethylstilbestrol Diphosphate 投与量と Cholinesterase 値の関係について
    山内 民男, 國保 昌紀, 吉野 修司, 立花 裕一, 河合 恒雄
    1989 年 80 巻 12 号 p. 1713-1719
    発行日: 1989/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    ホルモン治療として diethylstibestrol diphosphate (DES-DP) 投与のみを行った25例につき, cholinesterase (ChE) と年齢・総投与量・投与期間・Ratio (投与量投与期間比) との重回帰分析を行い, 肝機能保持のための至適投与量を検討した. なお, Ratio とは便宜上総投与量を総投与期間で除したもので, 6ヵ月以上長期投与例では略一日平均投与量を意味し, 6ヵ月未満の短期投与例では漸減投与法のために, 必ずしも一日平均投与量を意味しない. 6ヵ月未満短期投与16例では, ChEは重相関係数0.645で全因子と関係し, そのうち総投与量と単相関係数-0.521 (p<0.05), 投与期間と単相関係数-0.56 (p<0.05) の単相関を認め, Ratio とは単相関係数0.144で相関を認めなかった. 6ヵ月以上長期投与9例では, 重相関係数0.803で全因子と関係し, Ratio とは単相関係数-0.707 (p<0.05) で強い単相関を認めた.
    単相関図からChEを正常値に維持するためのDES-DP投与量の許容限度を計測すると, 短期投与例では総投与量は50g, 100日以下, 長期例ではほぼ1日投与量を意味する Ratio は300mg/day以下であった. 前立腺癌の長期ホルモン治療におげる肝機能保持ひいては心血管系障害予防のうえから, DES-DPの投与は, 総量50g, 期間は100日以内で寛解導入し, 維持量は300mg/day以下にChEを指標として投与すべきと考えられた.
  • 寺島 保典, 服部 智任, 金森 幸男, 秋元 成太
    1989 年 80 巻 12 号 p. 1720-1727
    発行日: 1989/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    ヒト膀胱癌培養細胞株NBT-2より限界希釈法を用い, その培養形態に基づき3種類の clone を分離 (C1, C3, C8), doubling time, nude mice 可移植性, 染色体分析などの生物学的特性を検討した. 各 clone の doubling time は, C1が最速で22時間, C8は最も遅く36時間であった. 何れの clone も nude mice 可移植性だったが, 組織像から各 clone の差を認めなかった. 染色体分析の結果, 各 clone の mode は, C1は66, C3は68, C8は63で, それぞれに特徴的な所見も観察された. 以上より, 各 clone は生物学的に異なる性格を持つと考えられた. そこでこれらの細胞を使い, 3H-thymidine の取り込みを指標にした in vitro 制癌剤感受性試験を行い, 薬剤感受性を検討した. その結果, 抗癌剤は以下の3群に分類された. 1. clone と parent cell line の感受性が一致している薬剤 (carboplatin, (glycolato-o, o-) diammine platinum (II), ifosfamide). 2. parent cell line が高い制癌剤濃度によって初めて抑制される薬剤 (adriamycine, vinblastine, peplomycin, bleomycin), 3. clone 間, parent cell line との間で, 感受性に差を認めた薬剤 (methotrexate). 以上の結果より, 制癌剤の感受性に関して clonal heterogeneity の存在が示された. また, C1は methotrexate に対して自然耐性 clone である可能性も考えられた.
  • 安本 亮二, 浅川 正純, 井関 達男, 仲谷 達也, 岸本 武利, 前川 正信, 梅田 優, 千住 将明, 堀井 明範, 川村 正喜, 山 ...
    1989 年 80 巻 12 号 p. 1728-1732
    発行日: 1989/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    膀胱腫瘍症例62例の膀胱内に2%のセルロースのヒドロキシプロピルセルロスム (Hydroxypropylcellulosum: HPC) 15mlにペプロマイシン (Peplomycin: PEP) 90mg/生食15mlを混ぜ総量30mlとしたHPC-PEPを注入し, 7日目の内視鏡的観察と尿細胞診にてその効果判定を行った. 臨床効果はCR10例, PR26例, NC26例で, 有効率58%であった. 深達度別にみた効果はT1の43例中9例にCRを, 23例にPRを, T2では15例中1例にCRを, 3例にPRの結果をみたが, T3では全例NCで, それぞれの群での有効率は74.4%, 26.7%で, T1とT2, T3との間に有意差を認めた (p<0.05). 組織学的分化度よりみた判定ではG1 23例中6例がCR, 9例がPR, G2 32例中4例がCR, 16例がPR, G3では1例にPRがみられ, G2とG3間に推計学的有意差を認めた (p<0.05). また腫瘍の形態では乳頭状有茎性46例中10例にCRが, 25例にPRを認めたが, 非乳頭状広基性では1例にのみCRが観察され, 明かに乳頭状の増殖群に有効症例が多く観察された (p<0.05). 単発多発での有効率についてみると, 単発53例中9例がCR, 20例がPR, 多発症例9例中1例にCR, 6例にPRの成績が得られ, 両群間に有意差を見いたさなかった. 腫瘍の大きさによる効果について調べてみると, 腫瘍の直径が1.00cm未満とそれ以外ではp<0.05の危険率で有意差を認めた. 以上より, 本方法は表在性膀胱腫瘍に対する有用な投与方法であると考えられる.
  • microplate 法による metastable limit 簡易測定法について
    川村 研二, 鈴木 孝治, 津川 龍三
    1989 年 80 巻 12 号 p. 1733-1740
    発行日: 1989/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    蔭酸カルシウム結石形成は結晶核生成に始まるが, その要因は一般的には metastable limit の低下によるとされている. 本論文は microplate 法による metastable limit 測定が蓚酸カルシウム結晶核生成の評価において簡便であり信頼できる方法であることを記載したものである. microplate 法による metastable limit 測定は, 200μlの尿に最終添加蔭酸濃度が0~1.5mmolとなるよう蓚酸ナトリウムを加え37℃20分間放置, 倒立顕微鏡を用い結晶核生成に要した最小蓚酸必要量を metastable limit と決定した. microplate 法による metastable limit は Coulter counter 法による metastable limit と正の相関関係(p<0.001)を示し concentration product ratio と負の相関関係 (p<0.001) を示した. また, metastable limit は正常人より再発性尿路結石症患者で有意に (p<0.001) 低下し, サイアザイド療法で有意に (p<0.01) 上昇した. さらに, metastable limit は stone episode rate と負の相関関係 (p<0.01) を示した. microplate 法による metastable limit 測定は蓚酸カルシウム結晶核生成能の評価および治療効果の判定に有用であると結論する.
  • 伊藤 晴夫, 山口 邦雄, 小竹 忠, 松嵜 理
    1989 年 80 巻 12 号 p. 1741-1748
    発行日: 1989/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    オボマクログロブリンおよび卵黄LDL分画が樹立ヒト癌細胞株 (Kato III, QG-90, Raji) に対して細胞増殖促進効果をもつことが判明した. そこで, これらを含む無血清培地 (BEM-841) を作製した. その組成は主メディウムRPMI-1640にHEPES 10mM, オボマクログロブリン50μg/ml, 卵黄LDL分画0.1%(V/V), カタラーゼ10-8M, インスリン5μg/ml, トランスフェリン5μg/ml, セレニウム5ng/ml, BSA 1mg/ml, trace elements 0.5%(V/V)を含んだものである.
    腎癌細胞の初代培養をこの培地を用いて行なったところ, 線維芽細胞の増殖もなく6例中3例で初代培養から継代可能となった.
  • 伊藤 晴夫, 山口 邦雄, 小竹 忠, 松嵜 理
    1989 年 80 巻 12 号 p. 1749-1754
    発行日: 1989/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    膀胱癌細胞の初代培養をわれわれの開発した無血清培地 (BEM-841) を用いて行なったところ, 線維芽細胞の増殖もなく, 6例中4例で成功した.
    61歳男性の膀胱癌原発巣より, 膀胱移行上皮癌細胞株 (HAMT-1) を樹立した. この細胞が膀胱癌細胞由来であることは培養細胞およびヌードマウス異種移植腫瘍が光顕的 (HE染色, TPA染色) にもとの腫瘍と類似していること, 電顕的に移行上皮癌と矛盾しない所見を呈することより明らかである. また, われわれの実験室では Hela 細胞を扱っていない. さらに, この培養細胞を移植したヌードマウスは腫瘍を摘出した患者と同様に血中TPAの高値を示した. この細胞は無血清培地中では壁付着性を示さないが, FCS添加により壁付着性となる. コラーゲン, フィブロネクチンの添加では壁付着性は回復しなかった. 倍加時間は18~20時間であった. 染色体数は59から78までに分布し, 74のものが最も多かった.
  • 小橋 一功
    1989 年 80 巻 12 号 p. 1755-1762
    発行日: 1989/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    尿路移行上皮癌31例34腫瘍の臨床材料を用いて, subrenal capsule assay (SRC法) を施行した. day 6において, 97.7%の移植片が肉眼的に認められ, 組織学的に腫瘍細胞が認められた移植片は, 45.4%であった. 移植片の増大 (ΔTS) と, 間質組織の占有率との間に負の相関が認められた. また, day 6において, 腫瘍細胞からなる偽嚢胞形成を示す移植片が認められた. これらは, 腎被膜下において, 尿路移行上皮癌が増殖することを示唆するものと考えられた. 抗癌剤感受性の評価可能率は97%であり,ΔTS判定法によると, cisplatin (CDDP), adriamycin (ADM), methotrexate および cyclophosphamide (CPM) に対し, 33%, 41%, 32%および29%の腫瘍が感受性ありと判定された, 間質組織の多い腫瘍においては, tumor growth inhibition rate (TGIR) 判定法よりΔTS判定法の方が, より多くの抗癌剤に感受性ありと判定された.ΔTS判定法による感受性結果で, S-期細胞の比率の高い腫瘍群で, 抗癌剤に高い感受性を示したが, TGIR判定法による結果では差が認められなかった. これらから, TGIR判定法より,ΔTS判定法の方が, 実際的ではないかと考えられた. その他, CPM 180mg/kgの前処置による, 免疫抑制効果は十分ではなかったが, 無処置群に比し移植片の増大は良好であった. また, CDDPとADMの併用では, 抗腫瘍効果と副作用軽減効果が認められた.
  • 岸本 武利, 杉村 一誠, 仲谷 達也, 山本 啓介, 安本 亮二, 和田 誠次, 坂本 亘, 浅川 正純, 西川 慶一郎, 大山 哲, 前 ...
    1989 年 80 巻 12 号 p. 1763-1768
    発行日: 1989/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    大阪市立大学泌尿器科に於ては, 1985年8月尿管結石に対し transurethral ureterolithotripsy (TUL) を適応以来, 39ヵ月間に178名の尿管結石患者を対象に総計200回のTULを施行した. 対象側は左側111例, 右側65例, 両側2例であった. また尿管を腸骨稜でそれより上部を上部尿管 (84例), それより下部を下部尿管 (94例) と分けた. 結石の89%は長径2cm以下であった. 手技としては原則として腰麻下にまずガイドワイヤーを患側尿管に留置し尿管ブジーにより尿管拡張を行った後 Storz 社製13Fあるいは 14F ureteroscope を挿入し直視下に超音波破石器で結石破砕を行い結石把持鉗子やバスケットカテーテルを適宜使用し結石を摘出した. 術終了時に double-J カテーテルを留置し通常5日以内に抜去した. 治療の評価は2~3ヵ月後のDIP検査により行い, 残石のある場合でもその長径が4mm以下のものは自然排泄可能と判断し成功例として扱った. 上部尿管結石に対する成功率は53%であり結石の大きさに反比例した. 一方, 下部尿管結石に対する成功率は85%と有意に高かった. 不成功の原因は結石の上方移動 (60%), 尿管狭窄および尿管穿孔等のため尿管鏡を結石介在部まで到達させることが出来なかった (39%) であった. 合併症としては尿管穿孔 (13例) 尿管完全破裂 (1例), 膀胱穿孔 (1例), 腎皮膜下血腫 (1例) を認めた. 術後早期合併症としては38℃以上の発熱が16%に晩期合併症としては grade I のVUR, 尿管狭窄それぞれ3例を招いた.
    以上の結果より上部尿管結石に対してはESWLが, 下部尿管結石に対してはTULが推奨される.
  • 武中 篤, 北沢 荘平, 小山 隆司, 藤盛 孝博, 後藤 章暢, 郷司 和男, 前田 盛, 守殿 貞夫
    1989 年 80 巻 12 号 p. 1769-1775
    発行日: 1989/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    抗デスモゾーム抗体B-11を作製し, その認識抗原の形態学的および生化学的解析を行うとともに, 膀胱癌における組織学的分化度との相関を免疫組織学的に検討した.
    BALB/c nu/nuマウスに移植継代していたヒト食道扁平上皮癌を, BALB/cマウスに免疫しB-11を得た. B-11はIgG1抗体で, Western blot 法で34kD蛋白を認識し, ABC法, 蛍光抗体法および免疫電頭で, 正常扁平上皮, 移行上皮およびそれらの癌のデスモゾームのみを特異的に認識し, 従来報告されている抗デスモゾーム抗体とは異なるものと思われた.
    ついでこのB-11を用い, 47例の膀胱移行上皮癌についてABC法による免疫組織染色を行った. その結果B-11陽性率は, 組織学的異型度別では, Grade 1および2がそれぞれ5/6 (83%) および8/11 (73%) と, Grade 3の6/30 (20%) に比べ高く, 組織学的浸達度別では, 非浸潤癌が13/17 (76%) と浸潤癌の6/20 (20%) に比べ高率で, 組織学的浸潤様式別では, INFαが13/19 (68%) とINFβおよびγの4/17 (24%) および2/11 (18%) に比べ高率であった.
    B-11抗体による免疲組織学的検討は, 膀胱移行上皮癌の有用な分化度の指標となり得ることが示唆された.
  • 予備的腎瘻術の意義と適応
    北村 康男
    1989 年 80 巻 12 号 p. 1776-1782
    発行日: 1989/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    高度先天性水腎症31例34腎に対して予備的腎瘻術を施行し, 腎機能の推移を観察した. その結果から腎機能の回復の程度と予備的腎瘻術の意義および適応について検討した.
    1. クレアチニンクリアランスおよび腎シンチグラフィーの結果からみると, 腎瘻造設後の腎機能は, 腎瘻造設時の機能以上には回復しなかった.
    2. 腎瘻造設前の腎実質の厚さと, 腎瘻造設後の腎機能は比例した. すなわち腎実質が厚いほど術後の機能は良好であった.
    3. 予備的腎瘻術は, 高度水腎症のうち, 新生児および乳児症例, 尿管下端部に原因のある症例, 全身状態が著しく悪い症例, 正確な分腎機能の必要な症例および診断に難渋する症例で適応となる.
  • 富樫 正樹, 森 達也, 永森 聡, 斉藤 文志郎, 森田 肇, 関 利盛, 後藤 敏明, 野々村 克也, 小柳 知彦
    1989 年 80 巻 12 号 p. 1783-1789
    発行日: 1989/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    両側性および単腎の腎細胞癌に対して腎保存的手術を施行した10例の成績から, 腎保存的手術の適応とその成績を左右する因子について検討した. 症例は stage I 8例, stage IV 2例であり, 転移巣摘除術を行えなかった stage IV の1例が術後8ヵ月で癌死したが, 他の9例は3~43ヵ月生存している. 局所再発を来した1例は, 腫瘍核出術症例で偽被膜が欠損していた. また偽被膜の欠損および偽被膜への癌細胞浸潤を有する5例中4例は, grade 2以上の腫瘍であった. 以上より low grade, low stage 症例の腎保存手術の成績は良好で, 術式としては腎部分切除術を選択すべきと思われた. しかし, 多発性腫瘍や腎中極内側に存在する被包化された腫瘍に対して, 腫瘍核出術は有用な術式と思われた.
  • 井坂 茂夫, 岡野 達弥, 島崎 淳, 根本 良介, 小磯 謙吉, 吉川 和行, 折笠 精一, 立花 裕一, 関 利盛, 小柳 知彦, 沼沢 ...
    1989 年 80 巻 12 号 p. 1790-1794
    発行日: 1989/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    腎盂尿管癌に対する腎保存手術の意義を明らかにするために, 13施設における過去10年間19症例の経験を retrospective に検討した. 腎機能は全例良好に保持された. 対側腎が健常で腎保存手術を行ったものが12例であり, low grade, low stage で下部尿管に発生した腫瘍が主な対象であった. 平均観察期間39ヵ月で同側腎盂尿管の再発を2例, 膀胱再発を2例, 対側腎盂癌発生を1例に認めたが, この群の予後は良好であり, 全例生存であった. 対側腎が病的であるため腎保存手術を行ったものが7例であり, うち6例が high grade または high stage であり, 平均観察期間19ヵ月で4例に膀胱再発, 1例に肺転移を認め, このうち癌死したのが3例であった.
    low grade, low stage の腫瘍は腎を保存しても根治性を失わず治療可能と思われる. 腎保存手術の適応を広くするためには, 細胞診や腎盂尿管鏡を用いた組織診などにより性状を正確に把握する必要がある.
  • 後藤 百万, 斎藤 政彦, 加藤 久美子, 近藤 厚生
    1989 年 80 巻 12 号 p. 1795-1801
    発行日: 1989/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    膀胱をリザーバーとした continence が保持定れる尿路変向の新しい術式, すなわち Continent Vesicocutaneostomy を考案し, 犬を用いた実験によりその実現性, 有用性について検討を加えた. 膀胱前面よりU字形フラップを切離し, ロール状に縫合して輸出管とした. 輸出管の1/2から2/3を膀胱筋層と粘膜の間に置き, 輸出管の遠位は, 下腹部正中で恥骨上縁直上にストーマとして接合した. 尿の排出は, 間欠的にカテーテルによりストーマから輸出管を通して行うものである. 術後1ヵ月および3ヵ月において, 全例でストーマの continence は保持定れ, またカテーテルによるストーマからの導尿が可能であった. ウロダイナミクス的検索では, 輸出管全長における continence zone の長定と最大閉鎖圧 (最大輸出管内圧―膀胱内圧) は, 膀胱空虚時 (膀胱内圧=0) 23.2±4.5mm, 41.2±14.7cmH2O, 膀胱充満時 (膀胱内圧=20~40cmH2O), 21.4±4.7mm, 36.0±7.0cmH2Oであった. 膀胱粘膜下輸出管部のみの continence zone 長および最大閉鎖圧は, 膀胱空虚時12.8±4.3mm, 18.5±5.2cmH2O, 膀胱充満時13.3±2.9mm, 22.0±9.9cmH2Oであった. さらに, 7例中6例で, 膀胱粘膜下輸出管部のみの存在下でも, 膀胱加圧時 (50~90cmH2O), 輸出管の continence は完全に保持された. 本術式は, 臨床応用が充分可能と考えられ, また膀胱のリザーバーとしての機能が保持されており, 何らかの原因で尿路変向が必要な症例において, continence が保たれ採尿具が不要であることより, 有用な術式と思われた.
  • 新しいTNM分類に基づいた予後の検討
    佐藤 健, 河合 弘二, 西島 由貴子, 佐々木 明, 桐山 功, 吉井 慎一, 宮永 直人, 岩崎 明郎, 阿弥 良浩, 真鍋 文雄, 石 ...
    1989 年 80 巻 12 号 p. 1802-1808
    発行日: 1989/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1978年1月から1988年11月までの約11年間に筑波大学で経験した腎細胞癌の92症例について, 臨床統計学的分析を行い検討した.
    1. 78名の患者に対して根治的腎摘出術が, 2名の患者に対して腎部分切除術が施行された. 3名の患者は他院にて腎摘出術を受けていた. 9名の患者に対しては保存的治療のみが施行された.
    2. 患者全体の1年, 3年, 5年, 10年生存率はそれぞれ81.8%, 58.0%, 55.3%, 50.2%であった.
    3. 新しいTNM分類による3年生存率は, 56名のT2患者が71.3%, 16名のT3a患者が66.8%, 16名のT3b患者が24.1%であった. T3b群はT3a群に比べて予後が悪い傾向が示され, 従来この二つを一緒にしていたT3群の予後の評価のうえでより正確性を増した.
  • 徳田 倫章, Darwich E. Bejany, Manuel A. Penalver, George M. Suarez, Victor ...
    1989 年 80 巻 12 号 p. 1809-1815
    発行日: 1989/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1986年1月より1988年11月までに44症例に尿路変更法として colonic reservoir 造設術を施行した. pouch輸出脚として, 切除を加え, さらに巾着縫合を行って細くした回腸末端部を使用し, 尿管吻合に non-tunneled ureterocolonic anastomosis を用いた.44症例全例 (100%) が尿漏れなく蓄尿可能となり, また, 88尿管中84尿管 (95%) に逆流, 水腎症, 閉塞等の術後異常を認めなかった. 術後早期合併症は6症例延べ7症例に, 後期合併症は6症例延べ7症例に認められた. そのうち7症例延べ8症例に再手術または修復術が必要となったが, ストーマに関するものは1例 (ストーマ狭窄1), 尿管吻合部に関するものは2例 (吻合部狭窄1, 吻合部尿漏れ1) と発生率は低かった.
    この方法は手術手技も単純で, また合併症も少なく有用な尿路変更法と考えられた.
  • 尿中マンノースの感染防御における役割
    豊田 精一, 福士 泰夫, 加藤 慎之介, 折笠 精一, 鈴木 康義
    1989 年 80 巻 12 号 p. 1816-1823
    発行日: 1989/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    膀胱の有する様々な感染防御機構のうち最も基本的且つ大きな効果を有するのは排尿による洗浄作用である. これに打ち勝って細菌が膀胱内にとどまるには粘膜に付着する過程が必要となる. 付着の機序の1つに細菌線毛があるが, 中でもI型線毛は普通線毛と言われるほど一般的で, 上皮細胞表面に存在するマンノースをリセプターとする事が知られている. 従って尿中にマンノースが存在するばそれらは線毛を覆い, 菌の上皮への付着を競合的に阻止すると予想される. そこで我々は高速液体クロマトグラフィーを用いて尿中マンノースの検出を試みた. マンノース標品による検討では検出限界は0.02μgと微量で, 保持時間及び検出濃度の再現性も十分なものであった. 尿中マンノースの検出を試みた186例中, 近傍のピークに隠されずにマンノースのピークの存在が確かめられた例が80例, 濃度測定できた例が24例であり, その濃度は2.6~108.7μg/mlで多くは20μg/ml以下であった.
    次に微量のマンノースが菌の付着を阻止しうるか否かを赤血球凝集反応で検討した. 用いた菌はI型線毛保有急性膀胱炎起炎大腸菌11株である. 凝集阻止最小マンノース濃度は0.6~156μg/mlであり, 11株中7株では20μg/ml以下の濃度で赤血球凝集が阻止された.
    以上の結果より尿中に存在する微量のマンノースだけでもI型線毛を介する細菌の粘膜付着を阻止し, 膀胱の感染防御に役立っている可能性が示唆された.
  • 渡辺 秀輝, 堀 武, 佐々木 昌一, 野口 幸啓, 和志田 裕人
    1989 年 80 巻 12 号 p. 1824-1827
    発行日: 1989/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は1歳10ヵ月の女児. 繰り返す腎盂腎炎と排尿困難を主訴に受診. 諸検査にて左完全重複腎盂尿管の上位腎所属尿管に発生した cecoureterocele と診断した. 上位腎は逆流性の拡張尿管, 下位腎所属尿管は閉塞性拡張尿管であった. 高度の排尿困難は, 尿道末梢部近くまでのびた瘤壁が排尿時に尿の逆流により充満し, 尿道閉塞を起こすためと診断した. 左腎盂腎盂吻合術, 左上位腎所属尿管摘出術, 尿管瘤切除術および左下位腎所属尿管の新吻合術を Cohen 法で行った. 術後には左腎の加機能および水腎の改善を認めたが, 尿道内瘤壁の遺残による排尿障害が残り, 経尿道的に再手術を行った. その後は尿路感染や排尿困難も無く, 外来経過観察中である.
  • 五島 明彦, 松浦 謙一, 吉邑 貞夫, 高野 康雄
    1989 年 80 巻 12 号 p. 1828-1831
    発行日: 1989/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は71歳男性. Stage D2 の前立腺癌にてエストロゲン療法中に両側乳房腫瘤が発見定れた. 組織学的に前立腺癌類似の腺癌構造であったが, 転移性か原発性乳癌かの鑑別は不可能であった. 両腫瘍のホルマリン固定, パラフィコ切片を用いて, B-SA法により, PSA (prostatic specific antigen) およびPAP (prostatic acid phosphatase) 染色を行ったところ, 乳房の腫瘤は前立腺癌の転移と確定できた. 前立腺癌の乳房転移が臨床的に認められることはまれであり, 本邦例5例を含む30例が報告定れているにすぎない. 大部分の症例では前立腺癌の転移を組織学的あるいは臨床面から証明しようとしているにすぎず, 患者の予後にとっては確測診断が重要であり, これには免疫組織化学的手法がきわめて有用であった.
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