日本泌尿器科学会雑誌
Online ISSN : 1884-7110
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80 巻, 2 号
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  • 田崎 寛
    1989 年 80 巻 2 号 p. 145-150
    発行日: 1989年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    Recent research trends on carcinoma of the bladder with special references to the current concepts of its pathogenesis, the basic problems on its diagnosis and treatment were reviewed and discussed.
    1)The transitional epithelium as the origin of transitional cell carcinoma (TCC) is understandable as an intermediate of squamous and glandular epithelium and the biology on the basal cells is seemed to be the most interesting.
    2)Multistage carcinogenesis theory is adapted in the carcinoma of the urinary bladder and the research will be directed to clarify mechanisms to maintain the dormant cell in the state and to develop new technology for quantitative analysis of its promoters and antipromoters.
    3)Grading of TCC by the conventional histology is not adequate in the futer that new objective criteria to evaluate the structural atypia is expected other than the current DNA analysis by flow cytometry.
    4)Endoscopy for diagnosis of the bladder carcinoma should be available to observe whole urinary system and the recorded images should be analyzed by the objective method developed by new technology.
    5)New direction of the treatment of the bladder carcinoma will be headed to find a BRM as an antipromoters in the short range stratesy.
  • 西村 泰司, 本田 了, 川村 直樹, 坪井 成美, 広瀬 始之, 鈴木 央, 山形 健治, 渡辺 潤, 服部 智任, 矢島 勇臣, 大原 ...
    1989 年 80 巻 2 号 p. 151-157
    発行日: 1989年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1988年5月より7月にかけて第3世代ESWL (TRIPTERX-1) の臨床治験をおこなったので, その結果を報告した. 対象は上部尿路結石の30症例で, ESWLによる治療後1ヵ月のレントゲン撮影で結石陰影が完全に消失した著効例は18例 (60%) であった. また5mm未満の残石を認めた有効例は5例 (16.7%) で, 著効と有効をあわせた有効率は76.7%であった. 結石の部位別有効率は腎で72.7%, 上部尿管で87.5%であった. また結石の大きさ別の有効率は1cm未満で100%, 1~2cm未満で66.7%, 2~2.5cmでは71.4%であった. 副作用として肉眼的血尿, 皮下溢血, 痔痛, 発熱を認めたが重篤なものはなく, また血液生化学上の変化も軽度かつ一過性であった. 以上より本装置による体外衝撃波砕石術は問題となる副作用もなく, 有用な上部尿路結石の治療法であることを確認した.
  • 原 雅弘
    1989 年 80 巻 2 号 p. 158-166
    発行日: 1989年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    表在性膀胱腫瘍に対するインターフェロンの膀胱腔内注入療法への導入を目的として, インターフェロンのヒト膀胱癌由来培養細胞株T24に対する細胞障害作用, ならびに犬膀胱内インターフェロン注入によるインターフェロンの血中, 尿中移行, 臓器内濃度と, 膀胱粘膜に及ぼす病理組織学的影響について検討を行った.
    1) T24細胞を用い, 各種インターフェロンの濃度別, 添加時間別効果を colony formation method, および growth inhibition assay で検討した. インターフェロンα, β, γ共に濃度依存性, 時間依存性の殺細胞効果を示した. 尚, 殺細胞効果はβが最も強く, α, γの順であった. インターフェロンβの細胞増殖抑制効果もまた, 濃度依存性, 時間依存性に認められた.
    2) ビーグル犬を用い, 両側尿管皮膚瘻を造設, 空置した膀胱内にインターフェロンβまたはγを注入し, 血中, 尿中移行, 臓器内濃度をFL-sindbis 系により測定した結果, インターフェロンの膀胱腔内注入による血中, 尿中移行は認められなかった. さらに, 正常膀胱粘膜, 粘膜下層に対する影響を検討したが, 病理組線学的変化は極めて軽微であった.
    以上の結果より, インターフェロンβの膀胱内注入療法の臨床への導入が可能であることが示唆された.
  • 赤座 英之, 亀山 周二, 小磯 謙吉, 垣添 忠生, 小島 弘敬, 梅田 隆, 河辺 香月, 藤田 公生, 西村 洋司, 横山 正夫, 河 ...
    1989 年 80 巻 2 号 p. 167-174
    発行日: 1989年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    表在性膀胱癌 (Ta, T1) および上皮内癌 (CIS) に対するBCG (Tokyo 172株) の膀胱内注入療法に関する研究を3大学, 13病院の共同で施行した. BCGの投与量は第1相試験の結果より80mg又は120mgとし, いずれも生食水40mlに溶解して膀胱内に注入した. 投与回数は週1回8週を原則とした. 73症例の登録例のうち, 不適格例4, 脱落例3であり, 66例 (80mg群41例, 120mg25例) が完全例と判断された. BCGの投与が4回未満の症例を不完全 (脱落) 例とした. 各投与群間に効果および副作用の両面で有意な差異が認められなかった. 表在性膀胱癌 (Ta, T1) に対する抗腫瘍効果は全体でCR65.4%, PR27.3%, NC7.3%であり, CISに対する効果はCR54.5%, PR36.4%, NC9.1%であった. PDを示した症例は認められなかった. CR率は, 腫瘍の最大径の1cm未満のものでは81.2%, 1~3cmでは43.7%, 3cm以上では42.9%と, 小腫瘍において高率であった. しかし, 腫瘍の grade, stage, 数, 再発の既往の有無, 化学療法剤による膀胱内注入療法の既往の有無, およびPPD反応やOKTシリーズ, Leu7, ADCC活性, NK活性と, 効果の発現頻度の間には有意な差異を認めなかった. 表在性膀胱癌のうち有効でなかった症例は4例であったが, うち3例は女性でありこれらは, 膀胱刺激症状も軽度であった. また本治療によりCRを得た症例の腫瘍の非再発率は, 1年で80.6%と良好であった.
    副作用のため3症例が4回以上の投与を継続できなかったが, 他は治療の継続が可能であった. 以上よりBCG Tokyo 172株による膀胱注入療法は抗腫瘍効果および再発予防効果の両面においてすぐれた治療法であると判断された.
  • 高橋 公太, 八木沢 隆, 東間 紘, 寺岡 慧, 渕之上 昌平, 本田 宏, 合谷 信行, 田辺 一成, 海老原 和正, 大場 忍, 中島 ...
    1989 年 80 巻 2 号 p. 175-184
    発行日: 1989年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    新しい免疫抑制剤 ciclosporin (CYA) を主に使用した400例の腎移植患者に発生した感染症に検討を加えたので報告する. 移植後106例に129回の感染症がみられた. そのうちわけの主なものは尿路感染28.7%, 帯状疱疹24.0%, 肺感染症23.2%, 敗血症7.0%, 口唇疱疹7.0%であり, 感染症死は5例であった. これらの感染症のうち76%が移植後4ヵ月目までに集中していた. 感染症の病原体はウイルス47.3%, 細41.9%, Pneumocystis carinii (Pc) 3.9%, 真菌3.0%, および不明3.9%であり, azathioprine 群に比べてウイルス感染の占める割合が多くなった.
    生体腎の感染症では第一位が尿路感染症であり, 以下肺感染症, 帯状痕疹の順に発生率が高いが, 死体腎では肺感染症, 帯状疱疹の順であり, 死体腎において尿路感染症が少ない原因は移植後, 急性尿細管壊死による急性腎不全のためカテーテルの留置期間が短いためであった. 移植後最も重篤な感染症はPcと Cytomegalovirus による肺炎であり, これらの原因により5例が死亡した. これらの肺炎の早期診断には肺CTが有効であり, 治療薬剤として trimethoprim sulfsmethoxazole, pentamidine および human interferon-βが有効であった.
    CYA使用症例では感染症の発生頻度が低下し, その程度も軽くなったが, 感染症はいまだ移植後の合併症の第一位を占めている.
  • 頻度, 存在部位, 形態についての検討-
    平岡 保紀, 木村 剛, 秋元 成太, 小川 秀弥, 浅野 伍朗, 伊藤 博信
    1989 年 80 巻 2 号 p. 185-191
    発行日: 1989年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1985年11月より1987年11月までの期間に23例の膀胱癌に対してリンパ節廓清を含む根治的膀胱全摘術を行い, 摘出した標本を, 病理組織学的に検討した. この23例について, 内外腸骨動静脈領域と膀胱壁との間に存在する膀胱周囲脂肪組織層である膀胱傍組織内における転移の存在率, 存在部位および形態などを中心に検討した. 23例は grade 1が1例, grade 2が10例, grade 3が12例であった. stage はpT1aが1, pT1bが4, pT2が8, pT3aが2, pT3bが7, pT4が1例であった. 膀胱傍組織内転移は膀胱傍組織内の主に結合組織層内に23例中22例の96%に認められた. リンパ節およびその周辺への転移に関して, リンパ節転移陽性率は23例中4例の17%で, リンパ節周囲の結合組織層内には5例の22%に転移を認め, その内の3例はリンパ節転移陰性例であった. 転移の形態には癌細胞が数個で集団を形成したものから, 間質の増殖を伴った腫瘍塊まで種々であった. 今後, 膀胱癌の予後を予測するうえにおいて膀胱傍組織内への転移の有無とその形態変化を考慮して, 病理組織学的に検討を加えるべきであろう.
  • 増田 富士男, 倉内 洋文, 今中 啓一郎, 川原 元, 中條 洋, 町田 豊平
    1989 年 80 巻 2 号 p. 192-196
    発行日: 1989年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    124例の腎細胞癌に computed tomography (CT) を行い, 原発腫瘍の周囲への浸潤度, 静脈浸潤, 所属リンパ節転移について検討し, 病理学的所見と比較した. CTは腫瘍の腎周囲脂肪織への浸潤については sensitivity 82%, specificity 82%, accuracy 82%, 隣接臓器への浸潤では sensitivity 90%, specificity 100%, accuracy 99%, 静脈浸潤は sensitivity 86%, specificity 97%, accuracy 95%, リンパ節転移は sensitivity 80%, specificity 98%, accuracy 96%であった. CTは腎周囲脂肪織への浸潤では正確度がやや低いが, 隣接臓器への浸潤, 静脈浸潤, リンパ節転移の診断にはすぐれた成績であり, 手術方針をきめるのに有用であった.
  • 北村 唯一, 森山 信男, 河邉 香月, 阿曽 佳郎
    1989 年 80 巻 2 号 p. 197-203
    発行日: 1989年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    カルシウム含有上部尿路結石患者 (SF-A群, 116名) および, 正常対照者 (Normal 群, 10名) に対して, 普通食下, Ca制限食下, basal period に於いて, 尿中Ca排泄量 (Ca/Cr), 尿中P排泄量 (P/Cr) を測定した.
    その結果, SF-A群に於いても Normal 群に於いても, 経口摂取量の減少に伴い尿中CaおよびP排泄量が有意に低下したが, SF-A群は Normal 群に比べて, 尿中Ca排泄量は有意に高く, 尿中P排泄量も高い傾向を示した. また, SF-A群に於いては, 普通食下, Ca制限食下, basal period のいずれにおいても, 尿中Ca排泄量と尿中P排泄量は有意の正相関を示した. しかし, Normal 群に於いては有意な相関はみられなかった. この結果の正当性を確認するため, 更に, カルシウム含有上部尿路結石患者 (SF-B群, 40名) に対して, 普通食下で同様の測定を行った所, 尿中Ca排泄量と尿中P排泄量はより良好な有意の正相関を示した.
    以上より, 尿中Ca, P排泄量は, その経口摂取量により強く影響を受け, また, SF群 (SF-A群およびSF-B群) では, Normal 群よりも尿中Ca, P排泄量が多く, 更に, SF群では, 尿中Ca排泄量が多い者程, 尿中P排泄量が多い可能性が示唆された.
  • 辻橋 宏典, 石原 浩, 中西 淳, 松田 久雄, 上島 成也, 秋山 隆弘, 栗田 孝
    1989 年 80 巻 2 号 p. 204-209
    発行日: 1989年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    膀胱腫瘍に対する lymphokine-activated killer (LAK) 細胞の抗腫瘍効果を in vivo, in vitro で検討した. In vitro ではPBL (peripheral blood lymphocytes) を刺激細胞とした, 51Cr細胞障害性試験を用いて行った. IL2にて4日培養したところ26.6%のLAK活性が得られ, 同様にOK432にて刺激したところ22%のLAK活性が誘導された.
    ついでin vivo, ヌードマウス移植人膀胱腫瘍に対するLAK細胞の抗腫瘍能を検討した. 膀胱腫瘍に対して in vitro にてIL2, OK432にて誘導したLAK細胞を1回局所投与した. LAK細胞注入群ではコントロール群に比較して腫瘍増殖抑制効果を認めた. また組織学的には有効効果をしめし, 腫瘍の周囲には組織浸潤リンパ球の増殖を認めた. LAK細胞注入群では脾臓のNK活性の上昇もみられた.
    さらなる検討を要するが, これらの結果は膀胱腫瘍に対する免疫療法にひとつの示唆をあたえると思われた.
  • 杉村 芳文, 檜垣 昌夫, 吉田 英機, 今村 一男, 須田 立雄
    1989 年 80 巻 2 号 p. 210-215
    発行日: 1989年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    近年, ビタミンD代謝物の中で最も強い生理作用を示す1α, 25(OH)2Dレベルの測定法として Amersham 社 (英国) より, HPLC (高速液体クロマトグラフィー) を用いずに分析可能な方法が開発された. 従来, 血清1α, 25(OH)2Dレベルの測定には Radio receptor assay に先立ちHPLCによる1α, 25(OH)2D画分の精製が不可欠とされていた. そので我々は Amersham 社の assay system を用いHPLC操作を省略しても正しい血清1α, 25(OH)2Dレベルが測定出来るかどうかについて検討を行なった.
    方法は, 血清を有機溶媒にて抽出後, LH-20カラムにてビタミンD代謝物を分画し, HPLCを用いた群と用いない群について chick embryo intestinal receptor にて radio receptor assay を行ない, その結果, (1) カラムサイズの変更による分離能および回収率が向上した. (2) HPLC法およびnon-HPLC法により得られた健常人血清1α, 25(OH)2D値は, 理論値と一致した値を得た. 慢性腎不全患者 (未透析群, 透析施行群) については, 理論値に対し, やや低値を示したが有意な差は認められなかった. 相関係数はr=0.990と良好な結果を得た. (3) assay 内変動は, HPLC法CV (Coefncient of variability)=16.5%, non-HPLC法CV=21.4%であった.
    以上の結果より, 健常人血清の1α, 25(OH)2D値は, HPLCを用いない assay system で正確に測定出来ることが確認された. この assay system を用いることにより測定時間の短縮とコストの軽減が可能となった.
  • 吉田 謙一郎
    1989 年 80 巻 2 号 p. 216-223
    発行日: 1989年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    精漿中 transferrin 濃度は近年, Sertoli 細胞機能の指標と成り得る可能性が示唆されている. 今回, 免疫拡散法を用い, 主として男子不妊症例につき精漿中 transferrin 濃度を測定し, 次の様な結果を得た.
    1. 精漿中 transferrin 濃度は精子濃度と有意の相関を示したが (p<0.001), 運動率とは有意の相関を示さなかった. 又血中LH, FSH, testosterone 値に対しても有意の相関を示さなかった.
    2. 精路通過障害例における精漿中 transferrin 濃度は平均16.2±4.1μg/mlで, 妊娠成立群の平均77.5±49.0μg/mlのおよそ20%であった. このことは精漿中 transferrin の大部分の精巣由来であることを示している.
    3. 精索静脈瘤合併乏精子症例および spermatid arrest 例では精漿中 transferrin 濃度はそれぞれ22.1±7.5μg/mlおよび13.0μg/mlと低値を示した. 以上の症例では精子形成不全の1因として, Sertoli 細胞加機能の障害が考えられた.
    4. 特発性乏精子症には精漿中 transferrin 濃度の高いもの (128.3±23.8μg/ml) と, 低いもの (29.8±10.9μg/ml) の2群が存在した. 前者の血中 gonadotropin 値は妊娠成立群と同レベルであったが, 後者のそれは有意に増加していた. これら2群は異なる category に属する疾患と思われた.
  • 柳 重行, 小竹 忠, 北川 憲一, 始関 吉生, 山口 邦雄, 伊藤 晴夫, 並木 徳重郎
    1989 年 80 巻 2 号 p. 224-228
    発行日: 1989年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    13例の膀胱憩室患者 (平均年齢68歳) に対して, 経尿道的手術を施行した. 下部尿路通過障害を合併する症例では, それらに対する経尿道的手術を同時施行した. 術後6ヵ月の経過観察で, 13例中11例 (85%) は膀胱憩室が完全消失した. 膀胱憩室に対する経尿道的手術は, TURPなどの下部尿路通過障害に対する経尿道的手術と同時施行でき, 安全で有効な手術法と考えられる.
  • 田中 良典, 垣添 忠生, 鳶巣 賢一, 高井 計弘
    1989 年 80 巻 2 号 p. 229-235
    発行日: 1989年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    国立がんセンターで経験した, 腎摘除術時に肝に腫瘍性病変を認めた3例の腎細胞癌の臨床経過を呈示した. 肝病変は, それぞれ肝海綿状血管腫, 腎細胞癌の肝転移, および肝細胞癌であった. 次に, 腎摘除術時または腎摘除術後の経過観察期間中に認める肝転移の治療方針を決定するために, 1962年12月から1988年6月までに腎摘除術を施行した188例の腎細胞癌のうち, 肝転移を有した20例を検討した. 腎摘除術時に発見されたのは1例のみで, 剖検時の発見が4例, 腎摘除術後の経過観察中に発見されたのが15例であった. この15例は肝転移出現の時期により, 腎摘除術後1年6ヵ月以内に出現する早期群と, 6年以上経て出現する晩期群に分けられた. 早期群8例のうち, 肝転移出現後10ヵ月と4年9ヵ月生存した2例, および現在2ヵ月生存中の1例を除いた5例は, 肝転移出現後1ヵ月で死亡した. 晩期群7例のうち4例は肝転移出現後も2年以上生存し, 晩期群の平均生存期間は21ヵ月であった.
    以上より, 腎細胞癌の診断の時点で肝転移を有する可能性は低いが, 肝病変が良性であると確診されない限りは肝病変も合併切除するべきであると思われた. また, 腎摘除術後に出現する肝転移は, 腎細胞癌の自然経過の中で末期に出現する病態と思われ, 一般に積極的治療の対象とはなりにくいが, 晩期群の中には外科的治療の適応となる場合もあると考えられた.
  • 小山 幸次郎
    1989 年 80 巻 2 号 p. 236-244
    発行日: 1989年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    ケタミン, クロラロース麻酔イヌ38頭を用い, 両側下腹神経切断後, 扁桃体刺激による骨盤神経膀胱枝, 陰部神経尿道枝の遠心性活動, 膀胱容量の変化を記録した.
    骨盤神経活動の促進と陰部神経活動の抑制が得られた刺激部位は, 中間主核の内側部, 内側主核の内側部, 皮質核と周辺皮質核の一部であった. 骨盤神経活動の抑制と陰部神経活動の促進が得られた部位は中心核, 内側核, 内側主核の外側部, 周辺皮質核の一部であった. 外側主核の刺激はほとんど無効であった.
    骨盤神経活動の促進は2Hzではなく, 10, 20, 50Hzで得られた. 5, 100Hzでは刺激部位により一定でなかった. 抑制反応は5, 10, 20, 50Hzで誘発されたが, 2Hzでは認められなかった.
    骨盤神経発射の増加と陰部神経活動の抑制の潜時はそれぞれ, 110-150msec, 80-114msecで, 骨盤神経活動の抑制と陰部神経活動の促進の潜時は, それぞれ, 60-120msec, 50-80msecであった.
    今回の実験で, 骨盤神経活動の促進時には陰部神経活動が抑制され, 骨盤神経活動の抑制時には陰部神経活動が促進されることが明らかとなった. また, 排尿促進, あるいは抑制がひき起こされる扁桃体内の領域を各核群によって区別することは困難であり, 同一核内に二様の反応を起こすものも存在した. 扁桃体刺激によるこれらの反応は視床下部, 橋排尿中枢, ついで仙髄を介して発現するものと推定される.
  • 安達 高久, 川嶋 秀紀, 森 勝志, 田中 重人, 浅川 正純, 安本 亮二, 前川 正信
    1989 年 80 巻 2 号 p. 245-248
    発行日: 1989年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    尿中NAG活性は腎障害の指標として有用視されているが, 本酵素は精液中にも高い活性が認められることが知られている. 健常者の精漿中NAG活性およびNAGアイソザイム分画を測定したところ, NAG活性については尿中のものに比べて1000倍の値を示し, またそのアイソザイム分画におけるA対Bの比率の検討より, 尿中のものに比べまったく異なることが認められた. 精漿中NAGの由来について検討するため, ヒトの精路に関する臓器 (睾丸, 副睾丸, 精嚢腺, 前立腺) と尿路に関する臓器 (腎臓) を用いてNAG活性とそのアイソザイム分画の測定を行った. その結果, NAG活性(U/g Protein) は, 前立腺では97.8±23.3 (Mean±SD), 睾丸26.7±2.4, 副睾丸43.3±30.5, 精嚢腺8.75±6.72で, 前立腺はその中でも著明な高値を示した. またNAGアイソザイム分画 (A:B) を調べた結果, B分画 (%) は睾丸15.1±5.5, 副睾丸33.6±8.2, 精嚢腺37.7±0.1, 前立腺70.6±4.5の順に増加していた. とくに, 前立腺でのA対Bの比率は精漿中NAGアイソザイム分画比に類似していた. これらのことにより, 精漿中のNAGの由来が前立腺であると考えられた.
  • 頴川 晋, 門脇 和臣, 石橋 晃, 小宮山 寛機, 梅沢 巌
    1989 年 80 巻 2 号 p. 249-255
    発行日: 1989年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    マウスIMC固型癌に対するシスプラチン (CDDP) および放射線併用療法における3種の免疫賦活製剤 (レンチナン, PSKおよび十全大補湯) の抗腫瘍効果増強作用を検討した. その結果, レンチナン及びPSK併用群では非併用群に比し腫瘍退縮効果が増強され, 特にレンチナンとの併用群では著明であったが, 再発予防効果は認められなかった. また, レンチナン併用群での病理組織学的検討を行ったところ, 併用群では非併用群に比べ治療1週目で大部分の腫瘍細胞が凝固壊死に陥っており, 2週目においても線維性組織増生や, リンパ球様細胞浸潤が持続するなど著明な組織変化が観察された. さらに各治療群において Winn 試験を行ったところレンチナン併用群では腫瘍の再生着が認められず, 抗腫瘍効果発現に免疫機構が重要な役割を果していることが示唆された.
  • 消化管を利用した自然排尿が可能な膀胱形成術
    鳶巣 賢一, 田中 良典, 高井 計弘, 垣添 忠生
    1989 年 80 巻 2 号 p. 256-263
    発行日: 1989年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1987年5月より, 1988年4月の間に, 膀胱全摘除術を施行した7例の男性患者 (43~69歳) に対し, 消化管を利用した代用膀胱を形成し, これを尿道に吻合した. 消化管は主に回腸, 盲腸, 上行結腸を利用し, 一度管腔を開いた (detubularization) 後に縫合して代用膀胱を形成した. 術後3ヵ月経過時点で, 7例中6例では, 300ml以上の膀胱容量となり, 一度に200ml以上の排尿が可能となった. 昼間尿失禁は, 術後3ヵ月経過時点で7例中1例に見られたのみで, 夜間尿失禁は, 6ヵ月経過時点で2例に認められた. 5~13ヵ月の経過観察期間中に腎機能障害や血清電解質の異常は認めず, 2例に性機能が温存された. 他方問題点として, 代用膀胱の粘膜より分泌される粘液が時に排尿の障害となること, および形成された膀胱が必ずしも術中に設計した通りの形態にならず, S字状に屈曲することがあるため, 排尿時間の延長や残尿の原因となることがわかった. 理想的な膀胱の形態とその骨盤腔内での位置, 及びより術前に近い排尿機能を実現するため, 利用する消化管の部位と detubularization 後の代用膀胱形成法に, まだ工夫の余地があると思われた. 本術式の長期的な評価は今後の課題であるが, 短期的にはきわめて有望な新しい尿路再建法と思われる.
  • 五十嵐 辰男, 村上 信乃, 富岡 進, 阿部 功一, 井坂 茂夫, 岡野 達弥, 正井 基之, 島崎 淳, 松嵜 理
    1989 年 80 巻 2 号 p. 264-269
    発行日: 1989年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1960年1月より, 1988年3月までに千葉大学泌尿器科および旭中央病院泌尿器科で腎摘除術を施行した胃癌223例のうち, grade 1胃癌65例を集計した. このうち, 39歳以下 (8例), PT1~2a (10例) では最長19年4ヵ月, 平均それぞれ7年1ヵ月, 5年8ヵ月の期間で, 顆粒細胞亜型 (11例) も最長19年1ヵ月, 平均7年3ヵ月で癌死例を認めなかった. また, pV0 (49例), slowtype (31例), 長径3cm以下 (12例) の予後も良好であり, 10年生存率はそれぞれ82.4%, 88.8%, 87.5%であった. 高齢になるにつれ slow type が減じる傾向にあり, 50歳を境として, pV1a~2, pT2b~3が増加する傾向にあったことより加齢とともに腫瘍の behavior が悪くなることが示唆された. 更に長径3cm以下の半数が60歳以上であった. これらのことより grade 1腎癌においては, pT1~2aは治癒可能癌と考えられた. また, slow type, pV0は長期生存が期待できる症例と思われた.
  • 金親 史尚, 後藤 修一, 横川 正之
    1989 年 80 巻 2 号 p. 270-273
    発行日: 1989年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は, 左腰背部痛を訴える43歳女性. 画像検査等により, 両側の完全重複尿管と, 左側の一方の尿管の異所 (膀胱頚部) 開口を認めた. さらに, 異所開口尿管に属する上位腎は嚢状水腎の像を呈し, 正常開口尿管に属する下位腎は上位腎のむしろ上方外側に圧排されていた. 治療として, 嚢状水腎を呈した上位腎を摘除したが, その際の所見では, 上位腎の実質としては, 嚢状腎孟の一部に僅か数グラムの組織塊を島状に認めるのみであり, 上位腎と下位腎は密に接しているものの, 腎実質に連続性はみられなかった. ただし腎動脈は独立しておらず, 1本の腎動脈からの分枝によって両者は養われていた.
    このような renal unit の重複は, 定義の上では,単なる重複尿管としか言えないと思われるが, 独立した重複, すなわち過剰腎との間の移行形と考えることも可能かと思われたので, 過剰腎に関する従来の概念を参照しつつ報告した.
  • 腎保存手術の経験
    高見沢 昭彦, 平野 順治, 石郷岡 学, 渡辺 博幸, 川村 俊三
    1989 年 80 巻 2 号 p. 274-278
    発行日: 1989年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    単腎に合併した腎動脈瘤と腎細胞癌に対し腎保存手術を施行した1症例を報告した. 症例は63歳女性, 無症候性血尿を主訴とし, 23年前に左腎摘除術 (原疾患不明) を受けていた. IVP, 腹部CTにて右腎中央に径6×6cmの中腎杯を圧排する腫瘤が認められた. 右腎動脈造影では, 腫瘤は hypervascularity を示し, また右腎動脈第一分岐部に16×18mmの嚢状動脈瘤が認められた. 遠隔転移はなく, 体内手術にて動脈瘤切除術と右腎中・下部3/4の部分切除術を同時に施行した. 病理学的所見は, pT2b, 淡明細胞亜型, grade 1の腎細胞癌で, 動脈瘤壁には石灰化はなく弾性繊維の減少が認られた. 術後21日間の無尿期を認めたものの, その後利尿期が出現し, 術後3ヵ月目の腎機能は, BUN26mg/dl, 血清Cr2.6mg/dl, Ccr.20.1ml/minで透析を必要としなかった. 術後18ヵ月経過した現在, 再発・転移も認めず, また腎機能の増悪もなく社会生活に復帰している. 本症例のような稀な合併に対しても腎保存手術は有用な治療法の一つと考えられた.
  • 後藤 章暢, 郷司 和男, 荒川 創一, 松本 修, 守殿 貞夫
    1989 年 80 巻 2 号 p. 279-284
    発行日: 1989年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    気腫性腎盂腎炎の1例を報告する. 症例は糖尿病の既往歴のある36歳の女性で, 左側腹部痛及び発熱を主訴として昭和63年1月13日に当科に入院した. 点滴静注腎盂造影にて左腎は造影不良で三日月状のガス像を腎陰影内に認め, 腹部CTにても左腎被膜下にガス像と思われる低本濃度領域を認めた. 以上より左気腫性腎盂腎炎の診断のもとに, 同年1月14日左腎摘出術を施行した. 術後経過良好で術後19日目に退院となった. 本邦文献において自験例は気腫性腎盂腎炎の43例目の報告であった. 本邦報告43例の臨床的検討を欧米報告例との比較にて行った. 性比は約4:1と欧米に比べ圧倒的に女性に多い. 年齢は50~60歳代にピークを示し, 平均年齢は欧米報告と大差はない. 患側は右側37%, 左側56%, 両側7%とやや左側に多く欧米報告と同様の結果であった. 基礎疾患としては糖尿病を93%に認め欧米報告と同様であるが, 尿路通過障害は14%でこの頻度は欧米報告に比べ少なかった. 本疾患の主な起炎菌は E. coli (58%) Klebsiella (23%) であり, 欧米報告と同様であった. 治療では化学療法単独が30%に, 手術療法が併用されたものが66%であった. 手術療法の内訳は腎摘 (49%), 切開排膿 (12%), 尿管皮膚瘻・腎瘻 (5%) である. 死亡率は化学療法で23%, 手術療法で11%, 未治療では100%であり, 欧米ほど大差を認めないものの, 手術療法の併用が優れていた.
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