日本泌尿器科学会雑誌
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80 巻, 4 号
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  • 平尾 佳彦, 佐々木 憲二, 吉田 克法, 岡島 英五郎, 谷川 克己, 西沢 和亮, 岡田 敬司, 松下 一男, 河村 信夫, 森本 鎮義 ...
    1989 年 80 巻 4 号 p. 507-516
    発行日: 1989/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    今回, 従来のX線透視に代わって超音波断層診断装置で結石を照準する Sonolith 2000を用いて体外衝撃波による腎・尿管結石砕石術の臨床治験を1987年3月から1987年8月の期間に, 奈良県立医科大学, 東海大学医学部および和歌山県立医科大学の3施設の泌尿器科において上部尿路結石の111症例 (男性76症例, 女性35症例) 119腎 (右側60腎, 左側59腎) の延べ119例を対象として施行した.
    ESWL施行回数は, 119例に対して延べ155回施行し, 1回が89例, 2回が26例, 3回および4回がそれぞれ2例であった. 超音波断層診断装置を用いた位置決めは119例中著効即ち的確であったものが97例 (81.5%), 有効即ち略々的確であったものが20例 (16.8%) と有効以上が117例 (98.3%) であった. 結石破砕効果は119例中著効が69例 (58.0%), 有効が32例 (26.9%) で有効以上の症例は101例 (84.9%) であった. 最終ESWL施行後42日目のレントゲン撮影で残石なしが61例 (51.3%), 砂状破砕片の残っているものが20例 (16.8%), 5mm以下の小結石の残存が18例 (15.1%), 6mm以上の破砕片の残存が17例 (14.3%) であり, 自然排石が期待できる5mm以下の小結石を認める症例までを有効と判定すると本砕石術の有効症例は99例 (83.2%) であった. 本機による副作用としては, 衝撃波の入射する背部皮膚の皮下出血および血尿の出現がほぼ全例に認められたが, その他の重篤な副作用の発現はみられなかった. 総合有用度判定は, 119例中116例について評価が可能であったが, この内94例 (81.0%) が有用と判断され極めて良好な成績であった.
  • 特に形態学的検討を中心として
    木村 茂三, 中島 洋介, 長谷川 親太郎, 田崎 寛
    1989 年 80 巻 4 号 p. 517-525
    発行日: 1989/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    CBDCAの腎毒性が存在するか否かを検討するため, 雄6週齢の Wistar 系ラットを用い以下の実験を行った. ラットをI群 (無処置, CBDCA 80, 120mg/kg 1回のみ腹腔内注射), II群 (2日間禁水, 禁食後CBDCA 80, 120mg/kg 1回のみ腹腔内注射), III群 (2日間禁水, 禁食後CBDCA 15, 30mg/kg 7日間連続静注) および対照群のIV群にわけた. 各群とも実験開始後3日目, 7日目, 10日目, 14日目に屠殺し, BUN, 血清 creatinine 値の測定と光顕的, 電顕的に腎の組織学的検討を行うとともに, I群では血清総白金濃度の測定を行った. またCBDCA 100mg/kg, CDDP 6mg/kgそれぞれ2日間連続腹腔内注射をして (V群) X線元素分析を行った. その結果, 各群ともBUNの上昇は著明であったが血清 creatinine の有意の上昇はなく, catabolism によるBUNの上昇のみで腎障害はないと考えられた. 各群を通して, 尿細管上皮の局所的な空胞変性が主で, 比較的軽度の変化であった. 電顕的にも主に近位尿細管上皮の変化のみで尿細管管腔側からの再吸収を考察させる像がみられた. またX線元素分析法によりCDDPの白金がイオンの形で尿細管上皮細胞に存在することが判明した. しかしCBDCAではみられなかった. 血中蛋白結合の差によりCBDCAは主に糸球体濾過, CDDPは主に尿細管分泌の機序で尿中排泄されると考えられる. したがって両製剤による尿中排泄機序の相違が最も腎毒性と関連があると考えられる.
  • 鈴木 孝治, 宮澤 克人, 津川 龍三
    1989 年 80 巻 4 号 p. 526-531
    発行日: 1989/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    蓚酸カルシウム結晶形成, 成長, 凝集に対する Sodium Pentosan Polysulfate (SPP) の阻止効果を seed crystal 法, 全尿法および赤外分光分析法で評価した.
    seed crystal 法では結晶の数と体積の変化から凝集阻止能と成長阻止能を計算した. SPPは0.5μg/ml以上で修酸カルシウム1水化物と同2水化物結晶の凝集と成長に対して抑制を示した. 1%尿にSPPを添加すると阻止能は著明に増加した.
    全尿系では metastable limit を測定したあと修酸ナトリウムの追加に反応した修酸カルシウム結晶の形成と成長を測定した. SPPは5μg/ml以上の濃度で強い阻止効果が認められた.
    赤外分光法ではSPPは形成された修酸カルシウム2水化物の含有率を濃度依存的に高めた. 以上よりSPPは再発性結石患者の治療に有効と思われた.
  • 津ヶ谷 正行, 平尾 憲昭, 大田黒 和生, 加藤 次朗
    1989 年 80 巻 4 号 p. 532-539
    発行日: 1989/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    膀胱尿管逆流現象 (Vesicoureteral Reflux: VUR) ならびに反復性尿路感染症の既往を有する男9例, 女8例, 計17例29腎を対象にX線CTスキャンで裏付けしたMRIによる腎瘢痕の画像診断を試み, 臨床的検討を行なった.
    その結果, MRIの腎瘢痕の所見から3つのタイプに分類できた. また腎瘢痕の grade を従来のIVPの分類をもとにMRIの腎実質の所見から5段階に分類し, 従来のIVPによる分類で比較検討したところ, IVPで些細な腎杯の変形が認められたものはMRIで瘢痕が認められ, 放射線被曝が無いMRIは腎瘢痕の画像診断において極めて有用な検査法である.
    血清 creatinine 値とMRIの分類による腎瘢痕の grade との関係を検討したところ血清 creatinine 値との間に相関関係が認められた.
    上部尿路感染の発症年齢やその頻度とMRIの分類による腎瘢痕の grade との関係では, 発症年齢が早期であり, 頻度が多いことが腎瘢痕の grade を高めており, 腎瘢痕の形成には上部尿路感染が最も重要な要因であることが示唆された.
  • 高橋 和明, 坂下 茂夫, 丸 彰夫, 小柳 知彦
    1989 年 80 巻 4 号 p. 540-544
    発行日: 1989/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    膀胱腫瘍112例に対して行なった142回の経尿道的切除術の際に, 平均3.6ヵ所の非腫瘍部生検を行い, 異常な上皮細胞の有無を検討した. 非腫瘍部の上皮異形成をG1, G2, G3に3分し, G2以上の異形成上皮と腫瘍の異型度と再発との関係を検討した.
    膀胱腫瘍112例中31例 (27.7%) で非腫瘍部にG2以上の異形成上皮を認めた. 腫瘍の組織学的異型度がG3の症例では, 29例中15例 (51.7%) で非腫瘍部にG2以上の異形成を認め, G1の31例中3例 (9.7%) に比べ高頻度に異形成上皮がみられ (p<0.01), G0の9例中1例 (11.1%), G2の43例中12例 (27.9%) に比べても高頻度であった (p<0.05).
    膀胱全摘術を受けた症例を除けば, 経過観察中腫瘍の膀胱内再発がみられたのは102例中45例であるが, 非腫瘍部にG2以上の異形成を認めた19例中13例 (68.4%) に再発がみられ, G2以上の異形成の認めなかった83例中32例の再発率 (38.6%) に比べ高かった (p<0.05).
    したがって, 膀胱腫瘍患者の非腫瘍部生検で異形成上皮の存在は, 腫瘍の悪性度と再発の指標になりうると考えられた.
  • Giant section における病理組織所見とそれに対応する尿細胞診所見
    関根 英明
    1989 年 80 巻 4 号 p. 545-554
    発行日: 1989/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    膀胱癌全摘症例31例について, 膀胱全摘標本の大割切片 (Giant section) を作製し, 非腫瘍部粘膜にみられる dysplasia に関する病理組織学的所見と, 術前尿細胞診における dysplastic cell について検討した.
    正常移行上皮と膀胱上皮内癌の中間的形態異型を呈するものを dysplasia と定義し, その程度を, 細胞異型, 表層への細胞分化および細胞極性の3点から, slight dysplasia と severe dysplasia の2つに分けた. さらに構成細胞の細胞質の特徴から clear cell type と compact cell type の2つに分け, dysplasia を合計4群に分類した. compact cell slight dysplasia は検索した全ての例に認められたが, compact cell severe dysplasia は上皮内癌同様 low grade 腫瘍とは全く共存せず, high grade 腫瘍と高頻度に共存した. clear cell dysplasia は slight および severe ともに high grade 腫瘍と共存する頻度が比較的高かった. 核異型の程度から severe dysplasia は, いわゆる grade 2上皮内癌に相当すると思われ, high grade 腫瘍の発生に関与するものと考えられた. さらに, これら4群の dysplasia に対応する尿中のdysplastic cell の尿細胞診陽性率は各々70%以上であり, 尿細胞診は膀胱腫瘍のみならず, その周辺に共存する dysplasia 病変をも十分に反映し得ると考えられた.
  • 鈴木 唯司, 三木 敬也, 相馬 博, 工藤 真哉, 田沢 宏嗣, 舟生 富寿
    1989 年 80 巻 4 号 p. 555-561
    発行日: 1989/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    我々は膀胱全摘術後, 回腸を用いた代用膀胱 (ileal pouch bladder) を作り, 自然排尿をめざしてきた. 代用膀胱は遊離回腸をのう状に縫合して形成し, これを尿道断端に吻合した. 尿管は単純に約2cm膀胱腔内に突出させて吻合した. 排尿は坐位にて手圧, 腹圧を刺激に行なう.
    本術式を施行し, 予後を追跡しえた26症例の長期経過を述べる. 術後早期にはウロダイナミクス及びレ線検査より, 回腸膀胱は容量は少なく, 静止圧の急上昇を示すが, 徐々に膀胱容量は増加してゆき, 尿貯留時の内圧は低下する. 安定排尿時の平均膀胱容量は約250ml, 残尿は30mlであった. 大多数の症例は3時間に1回程度排尿していれぼ充分排尿をコントロールしうる. しかし, 夜間には尿失禁を示し易い.
    手術的合併症は尿漏れが最も多く, 症例によりUVR, 水腎症が見られた.
    症例を厳密に選択すれば回腸膀胱は非常に有用な方法である.
  • 佐藤 和宏, 佐藤 滋彰, 前原 郁夫, 折笠 精一
    1989 年 80 巻 4 号 p. 562-568
    発行日: 1989/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    新しく紹介された精子洗色法である Spermac stain 法を用い, 正常者10名, 不妊症者72名の精子先体の染色性と精子濃度, 精子運動能との比較検討を行なった.
    正常者10名の先体染色陽性率は平均81.5%であった. 不妊症者における検討では, 精子濃度, 精子運動能と染色陽性率は, 推計学的に0.1%の危険率で有意の正の相関を示した.
    5年以上の不妊歴を有する原因不明不妊症者8名中5名は精子濃度, 運動能が正常にもかかわらず, 染色陽性率は40~60%と低下していた. 精子頭部が丸く, 染色陽性率が極端に低い round-headed sper-matozoa と思われた2症例について精子, 精索の電顕像も含め報告した.
    本染色法は外来レベルで短時間に施行でき, 精子先体の形態判定に有用であり, 今後精子侵入試験等と比較検討する事によって, 精子先体の機能判定の簡便なスクリーニング法となりうると考えられた.
  • 下腹神経切断による神経終末の変化と尿道の反応
    朴 英哲, 大西 規夫, 際本 宏, 江左 篤宣, 杉山 高秀, 栗田 孝, 金子 茂男
    1989 年 80 巻 4 号 p. 569-573
    発行日: 1989/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    雑種雌成犬6頭を対象に両側下腹神経の慢性除神経をおこない, 下部尿路各部位における組織ノルアドレナリン濃度を測定し, コントロール群5頭のそれぞれと比較することにより, 下腹神経における short adrenergic neuron の介在を定量的に検討した. 組織ノルアドレナリン濃度は後部尿道において最も高値を示し, 以下膀胱底部, 膀胱頂部の順に有意に低値となった. しかし, 各部位とも除神経群とも除神経群とコントロール群の間に有意差はみられなかった. 同時に, 経静脈的なノルアドレナリンに対する尿道内圧の反応を測定し, 交感神経除神経過敏の有無についても検討した. ノルアドレナリンの負荷により両群とも有意な尿道内圧の上昇が観察されたが, その反応率については両群間に有意差はみられなかった. 以上の検討により, 下腹神経を経由する交感神経はほとんどが short adrenergic neuron を介しており, 後部尿道に最も密に分布することがわかった. 従って, 下腹神経の慢性除神経のみでは尿道の交感神経除神経過敏は誘発されず, この反応の発生機転には下腹神経のみならず仙髄もしくは骨盤神経の除神経が重要な役割を担っていると考えられた.
  • 篠原 充, 原 慎, 簑和田 滋, 阿曽 佳郎, 福谷 恵子
    1989 年 80 巻 4 号 p. 574-581
    発行日: 1989/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    外性器異常により発見された小児 Klinefelter 症候群の3例を経験した. 思春期前に本症候群が発見されることは稀であり, さらに睾丸生検を含めた内分泌学的検討の報告は少ない. 3例とも思春期の終了前に睾丸生検および内分泌検査を行った. 思春期前における身体的発育と間隔―下垂体―性腺系の反応は正常であった. また, 思春期以降に血中ゴナドトロピン値の異常上昇とLH-RHに対する過剰反応を認めるようになった. しかし, 睾丸組織像を詳細にみると, 精祖細胞の減少が認められ思春期前よりすでに睾丸の異常が存在することが示唆された. 以上の結果より, 本症候群の成人における睾丸機能障害の一部は思春期前より存在するものの, 多くは思春期以降に顕著になり臨床症状を現すと考えられた. つまり, 思春期前より存在する率丸の機能異常のため, 思春期において血中ゴナドトロピンの上昇が引き起こされ, さらにこの高ゴナドトロピン状態が率丸の障害を誘発あるいは増悪し, この過程が増幅され最終的に著しい高ゴナドトロピン血症と睾丸の荒廃をきたすものと考えられる. 完全な治療のためには, 早期に本症を診断する必要があり, そのためにも小児期に存在する停留睾丸や尿道下裂などの外性器異常に対しより深い注意をはらう必要があると考えられた.
  • 朝蔭 裕之, 東原 英二, 阿曽 佳郎
    1989 年 80 巻 4 号 p. 582-590
    発行日: 1989/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    第2世代のESWL (西独ウルフ社製 Piezolith 2200) による臨床治験を施行した. 1987年12月より1988年3月までに東京大学泌尿器科を受診した上部尿路結石患者32名, 48結石を対象として計59回のESWLを施行した. 治療は無麻酔で行い, 治療中に鎮痛剤を必要とした症例はなかった. 尿管結石例および大きな結石6例で術前にダブルJ尿管ステソトの留置を行い, 2例で治療後TULを施行した. 最終治療後3週目のレントゲン撮影で完全に残石のないものが13例 (40.6%), 5mm以下の破砕片の残っているものが9例 (28.2%) であった. 治療後3週目の時点で有用と判定された症例は71.9%であった. 今回の治験で重大な合併症はなく, 全例に治療後数日間の肉眼的血尿を認め, 発熱は4例 (12.5%) に, 側腹部痛は7例 (21.9%) に認められた. 治療前後の臨床検査値には軽度の一過性変化を認めたが, スパーク・ギャップ方式の砕石装置に比しより軽度であった. Piezolith 2200を用いた体外衝撃波砕石後は上部尿路結石症患者の治療法として有用であり, 臨床的に第1世代の砕石装置より一層安全であると言える.
  • 横山 修, 長野 賢一, 平田 昭夫, 久住 治男, 泉田 重雄
    1989 年 80 巻 4 号 p. 591-595
    発行日: 1989/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    脳性麻痺患者132例 (5歳~59歳, 平均年齢23.2歳) を対象として, 尿失禁, 排尿困難, および過去1年間の尿路感染の有無について調べた. また患者を移動能力に従って分類し, 尿失禁, 排尿困難との相関について検討した. その結果, 尿失禁, 排尿困難, 尿路感染はそれぞれ31.8%, 14.4%, 16.7%に認められた. 尿失禁は10歳以上の各年齢層で平均してみられたが, 排尿困難は年齢が高くなるにつれ高頻度に認められた. 移動能力の悪い症例ほど尿失禁, 排尿困難を有する頻度が高かった.
    泌尿器科外来を受診した30例に関しては, 脊椎疾患の有無により2群に分類し, urodynamic study の結果を各群間で比較検討した. その結果, 脊椎疾患合併群の15例中9例に外尿道活約筋筋電図上, 排尿筋活約筋協調不全が認められ, そのうち6例に排尿困難がみられた. 一方, 脊椎疾患非合併群では排尿筋活約筋協調不全は認められなかった. したがって, 脳性麻痺患者にみられた排尿困難は, 脊椎疾患による排尿筋活約筋協調不全に起因するものと考えられた.
  • 三方 律治, 今尾 貞夫, 柴本 賢秀, 堀内 大太郎, 村松 弘志
    1989 年 80 巻 4 号 p. 596-601
    発行日: 1989/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    子宮頚癌治療後の経過観察中に腎癌を偶然に発見した1例を報告する. 症例は55歳女性, 無職. 母親が胃癌で死亡. 1984年に子宮頚部扁平上皮癌IIIbの為に放射線治療を受け, 以後定期的観察を受けていた. 1987年にたまたま腹部X線CT走査を受けたところ, 右腎部に腫瘤像を認め東京都立墨東病院泌尿器科に入院した. 諸検査により右腎癌の臨床診断後, 根治的腎摘術を行い, 組織学的には腎細胞癌pT2N0M0であった. 全経過を通じ顕微鏡的にも血尿を認めなかった.
    本症例は子宮頚癌と腎癌の本邦報告例としては7例目に相当する. 子宮頚癌と腎癌との重複癌についてと, 画像診断法による無症状腎癌の早期発見について考察した.
  • 自験例と本邦報告例の特徴, 再発, 予後に関して
    坂本 亘, 杉田 治, 西島 高明, 岸本 武利, 前川 正信
    1989 年 80 巻 4 号 p. 602-606
    発行日: 1989/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は71歳, 女性. 主訴は, 内眼的血尿. DIPにて右腎盂内に陰影欠損 (血塊) を認め, 尿細胞診は自然排尿, 右腎盂カテーテル尿とも陽性. 腎盂腫瘍の疑いにて, 腎盂尿管全摘除術を施行した. 摘出標本は腎盂内に血塊のみにて, 隆起性病変および異常病変は認められず, 病理検査にて腎盂内に上皮内癌を認めた. 原発性上部尿路上皮内癌の本邦報告19例の特徴, 予後に関して調査した.
    1) 女性にやや多い (F/M=10/9).
    2) 上皮内癌が尿管に存在する時は高率にX線変化を認める (77%) が, 腎盂内に存在する場合X線変化は少ない.
    3) 尿細胞診は高率に陽性 (95%).
    4) 明らかな再発は4例に認められ, 全例2年以内に先ず膀胱に認められた. 再発膀胱腫瘍の形態は様々であり, 再発した場合の予後は著しく悪かった. また2年間再発を来さなかった場合は全例NEDにて生存しており予後は良いと考えられた.
  • 松田 聖士, 竹内 敏視, 徳山 宏基, 河田 幸道
    1989 年 80 巻 4 号 p. 607-610
    発行日: 1989/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    3年前の腎盂切石術後, 再発した左腎結石に対して経皮的腎砕石術を施行した. 再発した結石は前回の手術に使用された縫合糸が核となって形成された縫合糸結石であることが確認された. 内視鏡的に結石を完全に除去し, さらに縫合糸によると思われる腎盂の狭窄部の解除を行い得た. 腎異物結石に対する内視鏡的手術の報告は本邦にはみられない. 最後に治療法に対する若干の考察を行った.
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