日本泌尿器科学会雑誌
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80 巻, 5 号
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  • 杉田 篤生
    1989 年 80 巻 5 号 p. 641-649
    発行日: 1989/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    腎血管性高血圧症の治療の主流は腎血行再建術であり, 複雑な合併症を有する症例においても血行再建の成功例がみられるようになった. ところが最近になって, 本症の治療において二つの大きな進歩がみられた. その第一は, Grüntzig らによって開発された経皮的血管形成術 (PTA) の本症への応用である. これによって本症の大部分の症例が, 外科的腎血行再建術の適応からPTAの適応となった. 第2は内科的治療法において, 本症の病態生理の本態であるレニン・アンジオテンシン系を選択的に阻害するアンジオテンシンI変換酵素阻害剤の出現である.
    これらの出現により腎血管性高血圧症においては, その腎動脈狭窄の病因により治療法の選択が変化をみたので, この10年間における研究の概略をまとめ, 治療法の選択をいかにすべきかについて述べた.
  • 小林 裕
    1989 年 80 巻 5 号 p. 650-658
    発行日: 1989/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    化学発癌におよぼす Natural Killer (NK) 活性の影響を調べるため, 遺伝学的にNK活性が低値である, beige mutant mouse を用いて, N-butyl-(4-hydroxybutyl) nitrosamine (BBN) による膀胱化学発癌を行ない, NK活性が正常であるC57BL/6 mouse との膀胱粘膜の早期発癌過程を比較検討した. 同時に biological response modifier (BRMと略す) の1つであるOK-432を経口投与し, その影響も検討した.
    すなわちC57BL/6 mouse および beige mouse をおのおの2群に分け, A, B群とC, D群とした, A群およびC群には initiator として0.1%BBN溶液を4週間経口投与した. B群およびD群はBBNの他にOK-432 (5KE/1,000ml) を同時に同期間飲料水として投与した.
    そして投与後12週, 14週, 16週, 18週, 24週にて屠殺し膀胱を光学顕微鏡 (光顕) および走査電子顕微鏡 (走査電顕) にて観察した.
    光顕的観察所見では18週において初めて悪性変化が認められその頻度はA群0/10, B群0/8, C群5/10, D群3/9であり, 24週ではA群1/8, B群1/9, C群2/5, D群3/6であった (18週では beige mouse とC57BL/6 mouse との間に, p<0.01にて有意差が認められた). また走査電子顕微鏡による観察では発癌過程に出現すると考えられる敷石状細胞およびその表面に出現する pleomorphic microvilli や short uniform microvilli などの出現頻度は16週においてA群2/10, B群1/11, C群5/6, D群4/5, 18週ではA群2/10, B群0/8, C群7/10, D群7/9, または24週ではA群0/8, B群0/9, C群4/6, D群3/6であった (16週, 18週, 24週で beige mouse とC57BL/6 mouse との間にp<0.01にて有意差を認めた).
    しかしながら,BRMであるOK-432投与群と非投与群との間にはC57BL/6 mouse, beige mouse いずれにも光顕的にも走査電顕的にも有意差は認められなかった. 以上より beige mouse 群ではC57BL/6 mouse 群より膀胱発癌が早期に認められた, これはNK活性が膀胱発癌の免疫監視機構 (immune surveillance) に関与している可能性を強く示唆していた.
  • 1. 尿路性器悪性腫瘍患者の末梢血NK活性に関する研究
    山下 元幸, 亀井 義広, 藤田 幸利
    1989 年 80 巻 5 号 p. 659-665
    発行日: 1989/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    Natural killer (NK) 細胞の生体内での役割に関して, 多数の報告がみられるが, その活性を測定する手段としては, 一般に 51Cr-release 法が用いられている. しかし, この方法は radioisotope を併用するため, 繁雑な手続きと操作が必要となる. そこで今回, NK活性の測定において, radioisotope を使用せず, 実験室内で簡便に行える ATP-chemiluminescence 法 (ATP法) の有用性を検討するため, 健康人40名, 泌尿器科系良性疾患患者40名, 尿路悪性腫瘍患者39名の計119名の末梢血NK活性を測定した. 両者で測定したNK活性はよく相関し (相関係数0.78), ATP法はNK活必測定法として利用できると思われた. このATP法で測定した末梢血NK活性は, 健康人と良性疾患患者あわせて80名については加齢とともに低下する傾向がみられたが尿路上皮悪性腫瘍患者においては, 年齢による影響はなかった. また悪性腫瘍患者のNK活性は, high stage 症例ほど低くなる傾向にあった.
    ATP法は, 51Cr-release 法よりも感度が高く, 少数の細胞でも評価しうるので, 検体採取が少量ですむ. しかも生細胞はほぼ一定量のATPを含んでいるが, 死細胞では急速に分解され消失することより, NK活性以外にも殺細胞能を検討するうえで利用できると考えられる.
    また, 尿路悪性腫瘍患者の病態を把握するうえで, 末梢血NK活性は良い指標になることが示唆された.
  • 2. 尿路性器悪性腫瘍患者の領域リンパ節のNK活性に関する研究
    山下 元幸, 亀井 義広, 藤田 幸利
    1989 年 80 巻 5 号 p. 666-673
    発行日: 1989/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    尿路性器悪性腫瘍患者の領域リンパ節における細胞性免疫能を測定し, 局所リンパ節の抗腫瘍能について検討することは, 手術時のリンパ節郭清の是非を決定すると考えられる. そこで, 腎癌4例, 腎盂尿管腫瘍4例, 膀胱癌16例, 前立腺癌2例の計26症例で, 末梢血リンパ球および手術時に得られた転移を認めない所属リンパ節39個の natural killer (NK) 活性を, ATP-chemiluminescence (ATP) 法で測定するとともに, 一部はモノクローナル抗体を用いてT-cellサブセットを同定した. T-cellサブセットはLeu 2a (suppressor/cytotoxic-T), 3a (helper/inducer-T), 4 (pan-T), 7, 11 (NK cell) の5系統で検討した. また, コントロール群として, 泌尿器科良性疾患患者で手術時リンパ節を摘出できた9例についても同様に末梢血およびリンパ節9個のNK活性と, T-cellサブセットを測定した.
    その結果, 領域リンパ節のNK活性は, 同一患者の末梢血NK活性に比して有意に低く, これは自己腫瘍を標的細胞とした場合も同じであった. また, リンパ節におけるNK担当細胞 (Leu 7, 11陽性細胞) 数も末梢血と比較して有意に少なかった.
  • 臨床分離株の薬剤感受性とMRSAの頻度
    荒川 創一, 高木 伸介, 松井 隆, 前田 浩志, 柯 昭仁, 田 珠相, 郷司 和男, 岡田 弘, 松本 修, 守殿 貞夫
    1989 年 80 巻 5 号 p. 674-681
    発行日: 1989/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    当院において最近の各種臨床検体から分離された黄色ブドウ球菌につき, Kirby Bauer 法によるディスクにて薬剤感受性を検討した. 少なくともDMPPC, CETおよびCMZの三者に耐性すなわち MRSA (Methiclillin cephem resistant Staphylococcus aureus) と考えられるものの割合を算出した. また, 尿由来の黄色ブドウ球菌に関してはその臨床的背景を検討した. 全体 (537株) の薬剤別感受性率は, MINOが83.1%と最も高く, 次いでCMZ (63.7%), CET (63.5%) の順であった. DMPPCでは41.9%であった. MRSAの割合が最も高かったのは浸出液であり, 72.2%であった. 喀痰由来では, MRSAは37.8%を占めていた. 尿由来菌ではPCG, ABPC以外には高感受性率であり, MRSAは1株もみられなかった. 眼科, 耳鼻咽喉科からの検体由来菌は, セフェム剤に比較的高感受性を示していた. 血液由来菌は全般に耐性傾向が強く, MRSAは41.9%を占めていた. 尿検体由来の本菌の分離形態は, 24例中13例が複数菌であった. 患者年齢の平均は約40歳であった.
  • 八木 静男
    1989 年 80 巻 5 号 p. 682-690
    発行日: 1989/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    膀胱癌細胞における血液型同種抗原の発現と糖鎖の局在, 分布について癌の進展, 悪性化との関連を明確にするために免疫組織化学的に検討した.
    最近7年間に鹿児島大学泌尿器科で施行された48例の膀胱全摘除術の標本を材料として用いた. 移行上皮癌G1 4例, G2 21例, G3 20例と扁平上皮癌3例である. 経尿道的前立腺切除術の際に採取された6例の正常膀胱組織を対照とした.
    血液型抗原の検索には抗A, B及びHモノクローナル抗体, レクチン染色には, GSI-A4, UEA-1, LTA-M, BPA, DBA, 及びPNAの6種類のレクチンを用いた.
    血液型抗原の陽性率は high grade 程陽性率が低く, G1 75%, G2 57.9%, G3 33.3%であった. 担癌非腫瘍部における陽性率も同様の傾向を示した.
    腫瘍部におけるレクチン染色の反応性は, GSI-A4, BPA, PNAでは high grade 程陽性率が高く, DBAでは低下した. 担癌非腫瘍部ではLTA-M, BPA, DBA, PNAは全く染色性を示さなかった. 深達度別では染色性に有意差はみられない. INF-αよりもINF-β, rの方が染色性が高い傾向にあった. 原発巣がLTA-M陽性例では70%がリンパ管侵襲 (ly) 陽性であり, 55%にリンパ節転移を認めたが, 陰性例では全くリンパ節転移を認めず, LTA-M結合末端糖鎖の重要性が示唆された.
  • 木暮 輝明
    1989 年 80 巻 5 号 p. 691-699
    発行日: 1989/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    雑種成犬の尿管下部に不完全閉塞を作製し, 拡張した尿管の外径, 柔軟性 (コンプライアンス), 閉鎖圧, 初期尿管断面積を経時的に測定するとともに, 尿管壁の組織学的所見を検討した. 尿管のコンプライアンス, 閉鎖圧, および初期尿管断面積はインピーダンス法による尿管内圧, 断面積同時測定用のプローブを利用し, 内圧, 容積相関図から求めた. その結果, 尿管のコンプライアンスは閉塞期間の延長とともに徐々に上昇し, 正常尿管に比べ有意に高くなった. しかし, さらに閉塞期間が延長し, 8週を経過すると逆に低下する傾向を示した. 尿管閉鎖圧は, 正常尿管に比べ拡張尿管で有意に低下していた. 初期尿管断面積は, 拡張尿管において有意に高値を示していた. 尿管壁の組織学的観察では, 閉塞期間の推移に従って尿管粘膜の皺襞構造は消失し内腔は開大した. また, 拡張尿管では, 平滑筋層の肥厚は著明となったが, 閉塞期間の延長に伴なって筋束周囲に結合組織の増生が見られるようになった. これを拡張尿管のコンプライアンスと対比すると, コンプライアンスすなわち尿管の柔軟性は, 筋層の発達とともに高くなり, 結合組織の増生とともに低くなった.
  • 戸塚 一彦, 石川 真也, 森田 辰男, 小林 裕, 石山 俊次, 徳江 章彦
    1989 年 80 巻 5 号 p. 700-703
    発行日: 1989/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    過去1年間に当科外来で認められた燐酸塩尿について検討し, 燐酸塩尿は外来における尿検査の1.5%に認められ, その出現頻度は尿路結石症 (ことにカルシウム結石症) に高いことを示した (p<0.01). 頻回に燐酸塩尿を示す症例の大多数は尿路結石症例であり (p<0.01), 燐酸塩尿はカルシウム結石の形成に関与していると考えられる. しかし, 燐酸塩尿と尿路感染症との間には密接な関係は認められず, 尿路結石症以外の疾患では燐酸塩尿の出現は尿のアルカリ化を反映しているにすぎないと考えられる.
  • 男児の先天性球部尿道狭窄に対する直視下内尿道切開
    森 義則, 松井 孝之, 荻野 敏弘, 細川 尚三, 辻本 幸夫, 井原 英有, 寺川 知良, 島 博基, 島田 憲次, 有馬 正明, 生駒 ...
    1989 年 80 巻 5 号 p. 704-710
    発行日: 1989/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    男児における先天性尿道狭窄は一次性内胚葉性尿道と二次性外胚葉性尿道の接合部に発生する. 内視鏡的には, 本疾患は尿道外括約筋のすぐ外側にリング状の尿道狭窄としてみとめられる. 本疾患に対しては直視下内尿道切開術が最も有効な治療法である. 本稿では1974年から1986年までに教室で経験した226例の男児先天性尿道狭窄に対する直視下内尿道切開術の成績について検討した. 先天性尿道狭窄はVURの自然治癒の障害となっている増悪因子と考えられるが, 176尿管について直視下内尿道切開術後のVUR自然消失率をみると, I~II度62.8%, III度65.0%, IV度28.9%, V度16.7%であり, III, IV, V度のVURにおいては原発性VURの自然消失率にくらべて有意に高い消失率であり, 直視下内尿道切開術のVURに対する有効性が示唆された. また薬剤でよくならない遺尿症に対しても直視下内尿道切開術は69.4%の有効性を示し, 再発性尿路感染症の予防においてもVURの有無にかかわらず直視下内尿道切開術は有効であった. 以上より男児の先天性尿道狭窄は小児泌尿器科における重要な疾患であり, 直視下内尿道切開術はそれに対する有効な治療法であると思われる.
  • 血清 Immunosuppressive Acid Protein との比較検討
    郷司 和男, 荒川 創一, 松本 修, 守殿 貞夫, 大島 秀夫, 永田 均, 岩本 孝弘, 広岡 九兵衛, 島谷 昇, 井上 隆朗, 田中 ...
    1989 年 80 巻 5 号 p. 711-718
    発行日: 1989/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    腎細胞癌に対する血清 Basic Fetoprotein (BFP) の臨床的意義を検討すると共に血清 Immunosuppressive Acid Protein (IAP) との比較検討を行った. 対象は腎細胞癌46例で年齢は40歳から85歳, 平均56歳, 性別は男性31例, 女性15例である. Robson 分類に従えば, Stage I が10例 (22%), Stage IIが4例 (30%), および Stage IV が18例 (39%) と3者で大部分を占めた. 血清BFPの陽性率は54%で, 特に Stage IV での陽性率は72%と Stage が進めばより高率にかつ血清BFP値はより高値となった. 他方, 血清IAPを測定し得たのは34例でその陽性率は76%で特に Stage IV では79%とBFPと同様 Stage が進めば高率に, また, 高値となった. 血清BFPおよびIAPを同時に測定することで Stage IV 腎細胞癌症例の85%でいずれかが陽性となった. また治癒切除例におけるこれら2種のマーカーの術前後の変動を検討したところ, BFPは術前陽性例の92%が術後約1週間で術前に比べ低下し, 特に75%の例では正常値となった. 他方, IAPは術前陽性例の82%が術後低下したが正常値となったのは27%にすぎなかった. 症例数および観察期間は共にまだ十分でないが, 血清BFPは腎細胞癌の非特異的マーカーとして特に術後のモニタリングに有用である可能性が示唆された. さらに血清IAPとの Combination assay により診断率を向上させることが可能と思われた.
  • 塚本 泰司, 熊本 悦明, 広瀬 崇興, 大村 清隆, 高木 良雄
    1989 年 80 巻 5 号 p. 719-727
    発行日: 1989/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    これまで13例に施行した continent ileocecocolonic reservoir の臨床経過を報告した.
    手術方法には症例ごとにいくつかの改善を施してきたが, 最終的に以下の方法を用いた. 20~25cmの回盲-結腸, 12cmの回腸末端を遊離し結腸の腸間膜付着部反対側を15~20cm縦切開し detubularization を行った. 回腸末端部の腸間膜 (8cm) を除去すると同時に回腸に漿膜, 筋層に達する乱切を加えた. 回腸を盲腸内に引き込み重積させ, nipple valve を stapler で3列および nonabsorbable suture の前後1対, 2列で固定した. さらに, non-absorbable suture, dacron mesh を重積した部分の基部に置き, nipple valve を補強した. 粘膜下トンネル法により尿管を結腸紐内に植え込み逆流防止術を行った. 縦切開を加えた結腸の遠位端の近位端への折り返しと縫合を行い, Heinecke-Mikulicz 法による reservoir の re-configuration を行った. 回腸においた dacron mesh を腹直筋およびその前筋鞘に固定し, fiush type の stoma を形成した.
    術後早期の合併症として reservoir-回腸瘻, 一過性麻痺性イレウス, 急性膵炎が3例に認められたが, 適切な処置で対処し得た. 初期の5例で軽度-中等度の incontinence が出現したが, reservoir の detubularization, nipple valve 固定の改善を行ったその後の8例は3ヵ月以上 continence を保っていた. このことは, detubularized reservoir の方が低緊張性, 高容量となっていた尿水力学的検査結果とも一致していた.
    以上の結果から, 良好な機能を持つ continent ICC reservoir の作成には, reservoir の detubularization, nipple valve の固定方法の改善が重要と思われた.
  • 荒川 創一, 高木 伸介, 松井 隆, 前田 浩志, 柯 昭仁, 田 珠相, 郷司 和男, 岡田 弘, 松本 修, 守殿 貞夫, 清水 良輔 ...
    1989 年 80 巻 5 号 p. 728-731
    発行日: 1989/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    新しい耐性黄色ブドウ球菌として, MRSA (Methicillin cephem resistant Staphylococcus aureus) の増加が指摘されている.
    当院で経験されたMRSAによる敗血症の1例を報告し, その対策につき考察を加えた.
  • 金子 尚嗣, 恩村 芳樹, 平野 順治, 菅野 理, 川村 俊三
    1989 年 80 巻 5 号 p. 732-736
    発行日: 1989/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は29歳, 女性. 昭和52年頃より徐々に Cushing 症候群の症状が出現してきた. 昭和55年9月に当院に紹介入院し, 両側副腎腺腫による Cushing 症候群の診断で, 二期分割手術を予定し12月22日に右副腎摘除術を施行した. 右副腎には径1.8cmの黒色結節と多数の黒色小結節を認め, 病理組織診断は primary adrenocortical nodular dysplasia であった. 術後ステロイドの補充を行わなかったが, 副腎不全症状はみとめられなかった. しかし, 3ヵ月後に副腎不全症状が出現し, 以後4ヵ月間デキサメサゾンを投与した. その後 Cushing 症候群の症状なく経過していたが, 昭和61年11月には再び Cushing 症候群の症状が明かとなり, 昭和62年6月1日に左副腎摘除術を施行し, 左副腎に右側と同様の所見を認めた. 本症例の様な経過を示した結節性過形成例の報告はなく極めて稀と考えられる. また, 本症例での血中ACTHと cortisol の変動にはACTHが必ずしも完全に抑制されていない時があること, また結節よりの自律分泌にも変動があると推測されることなどから下垂体と副腎の二元支配が疑われた.
  • 悪性腫瘍との関連について
    大東 貴志, 萩原 正通, 中薗 昌明, 山本 正, 菅井 昂夫
    1989 年 80 巻 5 号 p. 737-739
    発行日: 1989/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は41歳男性で, 頻尿と遷廷性排尿を訴えて受診した. 画像診断で膀胱頚部と三角部を中心に隆起性病変を認め, 経尿道的切除術を施行した. 病理組織学的診断は, cystitis glandularis であった. cystitis glandularis が排尿困難をきたすほど大きくなった症例は文献上報告がない. また本症例は13年前にも膀胱内の隆起性病変を指摘され, 生検により cystitis glandularis と診断されている. 10年以上におよぶ臨床経過から, cystitis glanlaris の成因, 悪性変化の可能性などにつき若干の考察が行なった.
  • 森山 信男, 北村 唯一, 国吉 昇, 阿曽 佳郎
    1989 年 80 巻 5 号 p. 740-743
    発行日: 1989/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    42歳男性の, 睾丸と副睾丸に病変を認めたマラコプラキアの1例を報告した. 自験例を含めて32例の睾丸マラコプラキアを集計し, 文献的考察を行なった. 本邦では自験例の他に1例の報告がある. 平均年齢は48.2歳で, 2/3が右側であった. 症状発現から手術までの観察期間は平均2.6ヵ月であった. 治療法としてほとんどの症例で睾丸摘出がおこなわれた. 確定診断は摘出標本の病理学的検索でなされている. 悪性腫瘍を含めた慢性疾患との関連も示唆された. なお, 自験例と同様に副睾丸マラコプラキアを合併した例は4例みられたが, 本邦ではまだ報告がない.
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