日本泌尿器科学会雑誌
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80 巻, 7 号
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  • 大島 博幸
    1989 年 80 巻 7 号 p. 983-987
    発行日: 1989/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    Andrology を学際領域に渡る雄性側からの生殖生理学と規定し, その学界の発展について説明した. さらに andrology の理解を助けるために重な名題につき, andrology の立場から解説を試みた.
  • 木原 和徳, 影山 幸雄, 寿美 周平, 東 四雄, 福井 巌, 大島 博幸
    1989 年 80 巻 7 号 p. 988-994
    発行日: 1989/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    タードマウス移植における形態で異なる分化度を示す5種のヒト膀胱腫瘍形代培養細胞を対象として,蛍光色素注入法を用いて細胞間コミュニケーション (IC) の検討を行なった. ICは次の項目について検討した. 1)各膀胱腫瘍培養細胞自身のIC. 2)異なる膀胱腫瘍培養細胞同士のIC. 3)膀胱腫瘍培養細胞とヒト皮膚および前立腺由来線維芽細胞とのIC. ヌードマウス移植にて中等度分化型を示すJTC-30のICは良好であり,低分化型を示すJTC-32とHUB-41のICはJTC-30より低かった. しかしながら有意の差は,JTC-30とJTC-32との間でのみ認められた(p<0.05). 移植にて未分化型を示すT-24のICは著明に低下していた. 分化度の異なる膀胱腫瘍細胞同士のICはJTC-30とJTC-32との間で認められ,他の組合せではICの存在は明らかではなかった. 線維芽細胞はそれ自身は良好なICを持っているにもかかわらず,いずれの膀胱腫瘍細胞とも明らかなICを示さなかった. 以上の結果より膀胱腫瘍細胞は正常膀胱上皮とは異なる多様なICを持っている可能性が高く,特にICの著明に低下している腫瘍細胞は悪性度が高いことが想定された. さらに分化度の異なる膀胱腫瘍細胞間にも様々なICの存在が予想され,これが腫瘍の grade up に関与している可能性も想定された. また癌細胞と間質細胞とのICの有無と転移性との関連も示唆されているが,今回の検討では膀胱腫瘍細胞と線維芽細胞との間には明らかなICは認められなかった.
  • 白根 由美子, 山本 晶弘, 水田 耕治, 平石 攻治, 黒川 一男, 香川 征
    1989 年 80 巻 7 号 p. 995-999
    発行日: 1989/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    蓚酸カルシウム結石患者の尿粗蛋白をゲル濾過分画し, その低分子量領域のウロン酸ピークにほぼ一致する画分に蓚酸カルシウム-水化物結晶を凝集させる作用があることが見い出された (日泌尿会誌, 78巻7号, 1987年). その画分の凍結乾燥標品のグリコサミノグリカンの定性をセルロースアセテート膜二次元電大泳動法及びアミノ酸分析法により行うとピアルロン酸が検出された. また同標品の酸加水分解物のアミノ酸分析結果はアスパラギン酸, グルタミン酸の酸性アミノ酸が約50%を占め, グリシンの含有率も高かった. 以上の結果はカルシウム含有結石マトリックス中にピアルロン酸及び酸性アミノ酸豊富な蛋白質が含まれるというこれまでの報告によく一致した. また蓚酸カルシウム一水化物結石は常に褐色を呈しているが, 本画分にも尿色素のピークを有しておりこの蛋白質に親和性を有する尿色素が蛋白質と共に結石に取り込まれたものと考えられ, 本物質が結石形成において蓚酸カルシウム結晶を糊付し固定化する役割を担っている可能性が強く示唆された.
  • 白根 由美子, 山本 晶弘, 水田 耕治, 香川 征
    1989 年 80 巻 7 号 p. 1000-1003
    発行日: 1989/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    人尿より調製した尿凝集能画分, ヒアルロン酸, コンドロイチン硫酸の蓚酸カルシウム結晶凝集に対する作用を Coulter multisizer を用いて検討し, 次の結果を得た. (1) ヒアルロン酸はほぼ10-1μg/mlの濃度を境として低濃度側では促進作用を高濃度側で抑制作用を示した. (2) コンドロイチン硫酸は10-2μg/ml以上で抑制作用を示した. (3)尿凝集能画分は添加量の増加に伴い平均粒径を増大させ凝集促進作用を示した. この場合はヒアルロン酸の場合にみられる高濃度における凝集抑制はみられなかつた. 以上の結果よりヒアルロン酸とコンドロイチン硫酸はそれぞれの尿中濃度では蓚酸カルシウム結晶凝集過程において異なる作用を有すること, また尿凝集能画分には, そこに含まれているヒアルロン酸以外の凝集促進因子の存在が示唆された.
  • 小山 雄三, 宮里 朝矩, 五十嵐 正道, 宍戸 清一郎, 比嘉 功, 秦野 直, 早川 正道, 大澤 炯
    1989 年 80 巻 7 号 p. 1004-1010
    発行日: 1989/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    過去14年間に当施設で施行された回腸導管の症例数は58例であった. そのなかで, 11症例に, なんらかの治療を要するほどの高度の水腎症が認められた. 水腎症の原因は尿路結石, 回腸導管萎縮, 腫瘍再発, それぞれ1例, 尿管回腸吻合部狭窄, 8例 (そのうち2例は両側) であった. これら8例は男性6例, 女性2例で, 男性6例の原疾患は膀胱癌 (T. C. C.) であり, いずれも膀胱全摘出術を受けていた. 女性2例の原疾患は子宮癌で, 2例とも前方骨盤内臓器摘出術を受けていた. これら10尿管のうち, 手術的に再吻合したもの, 7尿管, カテーテルによる拡張, 1尿管, 無治療, 2尿管であった. 再吻合した5尿管, カテーテルで治療した1尿管の症例に水腎症の改善ないし消失が認められた. 手術的に再吻合した7尿管に, 病理組織学的検査で線維化が認められた. 尿管回腸導管吻合部狭窄の原因を臨床的に検討した結果, 骨盤腔感染が一つの原因と考えられた.
  • 前立腺全摘33例の病理・組織化学的考察
    原 慎
    1989 年 80 巻 7 号 p. 1011-1016
    発行日: 1989/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1977年から1985年までの13年間の東京大学泌尿器科学教室並びに関連施設における前立腺癌全摘症例33例について病理組織学ならびに組織化学的検討をおこなった. 各種病理組織学的所見と骨転移の有無の相関を検討した. その結果, 分化度とpTが骨転移と有意の相関を示した. 脈管侵襲はpT1-2の15例中4例 (27%), pT3-4の18例中11例 (61%) に認められ, 骨転移の認められない25例中10例 (40%), 骨転移が認められた8例中全例に認められた (χ2検定でそれぞれp<0.05, p<0.01の相関). 即ち脈管侵襲は骨転移を規定する因子であることが示唆された. 神経線維周囲侵襲は分化度と相関していたが, 骨転移には影響を及ぼさなかった.
    なお脈管侵襲の判定には Ulex europaeus agglutinin I による染色を併用し, 内皮細胞の染色性を参考にした.
    組織化学的に Monoclonal 抗体による Prostatic acid phosphatase (前立腺性酸性ホスファターゼ) 染色の検討を行った. 染色陰性例は推計学的に中・低分化型に多く, かつ骨転移例に多くみられた.
  • 守山 正胤
    1989 年 80 巻 7 号 p. 1017-1024
    発行日: 1989/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    乳頭状移行上皮癌と非乳頭状移行上皮癌の細胞構築を明らかにするために, 正常尿管2例, 乳頭状癌6例ならびに非乳頭状癌5例について, 細胞形態の分化, 基底膜との関係ならびに基底膜の形態を, 光顕, 電顕ならびに連続切片法を用いた3次元的再構築によって検索した.
    正常上皮では, 基底細胞が細胞内小器官の発達を伴って, 中間ならびに表層細胞への規則正しい分化を示し, 約90%の表層ならびに中間細胞は細胞突起で基底膜と直接連絡しているのが確認された. 乳頭状癌では, 基本的には正常上皮と同様に極性は保たれ, 基底細胞が基底膜との連絡を保ったまま, しだいに中間ならびに表層細胞へ分化する傾向が認められた. しかし, G2乳頭状癌の1例では, 中間あるいは表層細胞の7~44%で基底膜との連絡を確認できず, G2腫瘍の heterogeneity を示すものと考えられた.
    一方, 非乳頭状癌では, 浸潤部分のみならず, 上皮内伸展部分でも細胞の極性は失われ, 規則的な細胞分化はみられず, かつ, 基底膜と連絡をもつ細胞も確認できなかった. また基底膜の発達も不完全で, しばしば非薄化ないしは断裂しており, 微小突起が断裂部より粘膜固有層へ侵入していた.
    上述の如き乳頭状癌と非乳頭状癌の細胞構築の違いは, 両者の発育様式のみならず, 生物学的悪性度の差として反映されると考えられた.
  • 橘 政昭, 実川 正道, 田崎 寛, 田代 征夫
    1989 年 80 巻 7 号 p. 1025-1030
    発行日: 1989/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    膀胱癌診断法としての膀胱洗浄液標本に対する flow cytometric DNA histgram (FCM) の有用性を検討する目的で, 同一症例における, 自然排尿細胞診, 膀胱洗浄液細胞診との比較検討を行った. 膀胱癌が組織学的に証明された56症例より得た74検体における膀胱洗浄液標本の細胞診陽性率は32/74 (43.2%) に対し, 同一検体のFCM陽性率は56/74 (75.7%) であった. 一方膀胱洗浄液採取前の一回自然排尿細胞診の陽性率は27/74 (36.5%) であったが, この症例の3回自然排尿細胞診では32/56症例 (57.1%) に陽性所見が得られた. Atypia あるいは dysplasia と診断された5症例より10検体の膀胱洗浄液標本を得たが, 2/10 (20%) に細胞診の陽性所見, 7/10 (70%) にFCMの陽性所見が得られた. 膀胱癌の悪性度別にみたFCMの検討では, G-I腫瘍の存在下で33.3%, G-IIで81.8%, G-IIIで88.9%であったのに対し膀胱洗浄液標本細胞診ではG-I 0%, G-II 40.9%, G-III 77.8%であった. 一方, 3回自然排尿細胞診の陽性率はG-I 25.0%, G-II 55.6%, G-III 83.3%と一回膀胱洗浄液標本細胞診の陽性率より高かった. 以上の結果より, 膀胱洗浄液標本FCMは low grade の膀胱癌検出には限界があるが, 膀胱癌患者の再発あるいは progression のモニターリング法として有用であると考えられた.
  • CT, 副腎シンチとの比較
    島居 徹, 菊池 孝治, 佐藤 健, 桐山 功, 石川 悟, 根本 良介, 小磯 謙吉, 黒崎 喜久
    1989 年 80 巻 7 号 p. 1031-1036
    発行日: 1989/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1978年3月から1987年5月までの間に, 22例の原発性副腎腫瘍に対して超音波検査を施行した. その内訳は褐色細胞腫11例, 原発性アルドステロン症6例, Cushing 症候群4例, ganglioneuroma 1例で, 年齢分布は21歳から79歳 (平均42.6歳) であった. 超音波検査による副腎腫瘍の描出率は86.4% (19/22) と良好で, 描出不能であった3例は, いずれも左側で肥満や腸管ガスの影響により明瞭な超音波像が得られなかった. 描出できた腫瘍の最小腫瘍径は右で10mm, 左で20mmであった. 超音波の断層方向としては, 肝, 腎を acoustic window とした右肋弓下スキャン及び側腹部からの肋間スキャンが最適であった. 褐色細胞腫の11例中8例に嚢胞成分 (echo free space) が認められ, 褐色細胞腫に関しては腫瘍の質的診断も可能で, 他の腫瘍との鑑別診断に有用な所見であった. 以上の結果から, 超音波検査は副腎腫瘍に対する第一選択の検査法と考えられた.
  • 中尾 昌宏, 中川 修一, 豊田 和明, 温井 雅紀, 高田 仁, 戎井 浩二, 渡辺 決
    1989 年 80 巻 7 号 p. 1037-1044
    発行日: 1989/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1974年1月より1983年12月までの10年間に当教室で初回治療を行った原発性膀胱腫瘍277例を集計し, 臨床統計的検討を行った.
    症例の内訳は男子221例, 女子56例であり, 男女比は3.9:1であった. 年齢分布は24歳より86歳にわたり, 平均65.7歳であった.
    腫瘍の病理組織診断では, 乳頭腫は2例, 移行上皮癌G1は53例, G2は111例, G3は88例, GXは16例, 扁平上皮癌は5例, 腺癌は2例であった.
    異型度と深達度の関係では, 乳頭腫とG1は全例pT1以下の表在性腫瘍であったのに対し, G2の7.2%, G3の45.5%はpT2以上の浸潤性腫瘍であり, 異型度と深達度は非常に良い相関を示していた.
    腫瘍の内視鏡所見と深達度の関係を検討すると, 各大きさごとの浸潤性腫瘍の占める割合は, 1cm以下が1.7%, 1~3cmが16.7%, 3~5cmが48.0%, 5cm以上が41.7%であった. また腫瘍の各形態における浸潤性腫瘍の割合は, 乳頭状有茎性が7.1%, 非乳頭状有茎性が57.1%, 乳頭状広基性が21.7%, 非乳頭状広基性が53.5%であり, 腫瘍の大きさや形態などの内視鏡所見は深達度とよく相関していた.
    膀胱腫瘍の5年累積生存率は全症例で61.7%, 各深達度別ではpTaが81.4%, pT1が70.5%, pT2が58.7%, pT3aが50.0%, pT3bが32.6%, pT4が25.0%であり, 腫瘍の深達度はその予後を非常によく反映していた.
    以上より,膀胱腫瘍の治療方針を決定するためにはその深達度を正確に判定しなければならないが, そのためには腫瘍の詳細な内視鏡的観察や正確な異型度の判定がきわめて重要と考えられた.
  • 北島 清彰, 斎藤 伸之, 川田 望, 岡田 清己
    1989 年 80 巻 7 号 p. 1045-1050
    発行日: 1989/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    33例の前立腺癌組織を用いて, 免疫組織学的にケラチンを染色して癌組織内のケラチン陽性細胞の変化について検討した. 抗血清は抗ヒトケラチン家兎血清を使用し, 組織はすべて凍結切片を用いた. 前立腺肥大症ではケラチンは基底細胞に強い局在が認められ, 腺上皮細胞では反応は弱かった. 前立腺癌組織において酵素抗体法でケラチン陽性であった細胞はH & E染色と比較して基底細胞であることが観察された. 前立腺癌の組織構築からみると large acinar は6例, small acnar は10例存在したが, これらにはケラチン陽性細胞は観察されなかった. cribriform の10例では10例ともケラチン陽性細胞が存在していた. 9症例の fused gland うち3例にケラチン陽性細胞が見られた. medullary の7例のうち3例にケラチン陽性細胞が観察された. 12例の column and cord ではケラチン陽性細胞は全く見られなかった.
    以上のことから基底細胞 (ケラチン陽性細胞) の消失及び変化は前立腺癌の組織構築となんらかの関係があることが示唆された. このことは前立腺癌組織の構造異型をみるうえで補助的な手法になることが期待される.
  • 睾丸機能系と膀胱発癌に対する影響
    松木 克之, 赤座 英之, 宗像 昭夫, 亀山 周二, 阿曽 佳郎
    1989 年 80 巻 7 号 p. 1051-1058
    発行日: 1989/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    膀胱発癌頻度の男性優位性を男性ホルモンとの関連より調べる目的の第一段階として, N-butyl-N-(4-hydroxybutyl) nitrosamine による雄性ラット (Wistar 系9週齢) 膀胱発癌実験系にLH-RHアナログを投与し, 下垂体―睾丸機能系と膀胱発癌に対する影響を検討した. ラットは以下の5群に分けた. 第1群 (Age matched control 群) 30週間水道水で飼育, 第2群 (BBN投与群) 6週間0.05%BBN投与後, 24週間水道水で飼育, 第3群 (LH-RH投与群) LH-RHアナログを4週おきに皮下注+30週間水道水で飼育, 第4群 (LH-RH・BBN併用群) LH-RHアナログを4週おきに皮下注+6週間0.05%BBN投与後, 24週間水道水で飼育, 第5群 (去勢群) 両側睾丸摘出+8週間水道水で飼育. 今回の実験より得られた結果は以下の如くであった. 1) LH-RHアナログ皮下注1日後まで血中LH, FSHおよびテストロン値の peak が認められ, 1週間後よりこれらの値は低下し, 血中テストステロン値は去勢群と同レベルまで低下した. 2) BBN投与群とBBN非投与群で両群間の血中LH, FSHおよびテストステロン値の変化は有意差は認められず, BBNは下垂体―睾丸機能系およびLH-RHアナログの作用に影響を与えなかった. 3) ラット膀胱の癌発生頻度は実験初期においてLH-RH・BBN併用群がBBN投与群より高く, 実験開始20週以後26週までその頻度は逆転し, 30週後実験終了時点ではその頻度はほぼ同率となった. この現象はLH-RHアナログ投与開始時期をBBN投与と同時にしたためと考えられた. 4) 以上よりLH-RHアナログによる下垂体―睾丸機能系の変化が, ラット膀胱発癌に影響を及ぼすと思われた.
  • 高井 計弘, 垣添 忠生, 鳶巣 賢一, 田中 良典, 手島 伸一, 岸 紀代三
    1989 年 80 巻 7 号 p. 1059-1062
    発行日: 1989/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    52歳, 男性. 健診にて潜血尿を指摘され, 精査の結果膀胱癌が疑われ当院を受診した. DIPで膀胱右側壁の凹凸不整を認めた. CTでは膀胱後壁が肥厚し, 内腔に突出する腫瘍像がみられた. 膀胱鏡では, 膀胱頚部を中心に全周性に浮腫状の凹凸がみられた. TURを施行したが, 病理所見は増殖性膀胱炎であった. しかし再び腫瘍の発生, 増大がみられ, 右無機能腎, 左水腎症にまで進行した. 腎機能保存の目的で膀胱全摘除術を施行した. 同時に神経血管束温存手術により性標機能を保持し, またS字状結腸を利用した代用膀胱を作製し, ストーマを造設しない尿路再建術を施行した. 術後両腎とも標機能は回復し, 尿道からの排尿も順調であり, 勃起も可能で性標機能は温在されている. 全摘標本の病理所見では, 腫瘍は認めず, 広汎な深い潰瘍と結合組織の増生が著明な増殖性膀胱炎であった. 以上, 進行性閉塞性腎症を来した増殖性膀胱炎について若干の考察を加え報告した.
  • 工藤 誠治, 稲積 秀一, 鈴木 唯司, 森田 秀, 高橋 信好
    1989 年 80 巻 7 号 p. 1063-1066
    発行日: 1989/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    患者は, 28歳の男性で, 1987年10月, 腰痛を主訴に, 某医受診し, 精査目的にて同年11月11日, 当院紹介入院となった. 入院時の検査成績では, 著明な腎機能低下が認められた他, 超音波検査並びに, 腎部CT撮影にて, 両側腎皮質の厚い石灰化が認められた. 腎生検では, 一部に骨髄細胞を伴った骨形成の病理所見が得られた. その後, 外来にて経過観察中であったが, 1988年6月3日, 再入院となり, 現在, 血液透析施行中である.
    腎における異所性骨形成は, 比較的稀な疾患であり, しかもこれまでの報告例は, 全て片側腎に限られていた. 今回, 我々は, 両側腎における異所骨形成を認め, 同時に慢性腎不全を呈する1症例を経験したので, 若干の文献的考察を加えて報告する. 両側腎における異所性骨形成は, 我々の調べ得た限りでは本邦での他の文献発表は, 認めなかった.
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