1974年1月より1983年12月までの10年間に当教室で初回治療を行った原発性膀胱腫瘍277例を集計し, 臨床統計的検討を行った.
症例の内訳は男子221例, 女子56例であり, 男女比は3.9:1であった. 年齢分布は24歳より86歳にわたり, 平均65.7歳であった.
腫瘍の病理組織診断では, 乳頭腫は2例, 移行上皮癌G1は53例, G2は111例, G3は88例, GXは16例, 扁平上皮癌は5例, 腺癌は2例であった.
異型度と深達度の関係では, 乳頭腫とG1は全例pT1以下の表在性腫瘍であったのに対し, G2の7.2%, G3の45.5%はpT2以上の浸潤性腫瘍であり, 異型度と深達度は非常に良い相関を示していた.
腫瘍の内視鏡所見と深達度の関係を検討すると, 各大きさごとの浸潤性腫瘍の占める割合は, 1cm以下が1.7%, 1~3cmが16.7%, 3~5cmが48.0%, 5cm以上が41.7%であった. また腫瘍の各形態における浸潤性腫瘍の割合は, 乳頭状有茎性が7.1%, 非乳頭状有茎性が57.1%, 乳頭状広基性が21.7%, 非乳頭状広基性が53.5%であり, 腫瘍の大きさや形態などの内視鏡所見は深達度とよく相関していた.
膀胱腫瘍の5年累積生存率は全症例で61.7%, 各深達度別ではpTaが81.4%, pT1が70.5%, pT2が58.7%, pT3aが50.0%, pT3bが32.6%, pT4が25.0%であり, 腫瘍の深達度はその予後を非常によく反映していた.
以上より,膀胱腫瘍の治療方針を決定するためにはその深達度を正確に判定しなければならないが, そのためには腫瘍の詳細な内視鏡的観察や正確な異型度の判定がきわめて重要と考えられた.
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