膀胱癌患者50名についてIgG-FcR
+・T cell を未治療の時点でダブルロゼット法により測定した. 対照として, 非腫瘍患者20名についても同様の測定を行った. 膀胱癌患者では, IgG-FcR
+・T cell のT cell における比率の平均値および標準偏差は, 7.6±5.7%であった. 一方, 対照群のそれは5.2±2.4%であったが, 両者の間に有意の差はなかった. 浸潤度より検討すると, 早期群 (pTa, pT
1およびpT
2) 30例で5.4±4.5%, 進行群 (pT
3a, pT
3bおよびpT
4) 20例で10.8±6.0%であった. すなわち進行群は早期群に比しIgG-FcR
+・T cell の割合が高いと, 0.1%以下の危険率でいえた. 組織学的異型度より検討すると, 低異型度群 (G
0およびG
1) 27例で5.5±4.4%, 高異型度群 (G
2およびG
3) 23例で9.7±6.2%であった. すなわち高異型度群は, 低異型度群に比しIgG-FcR
+・T cell の割合が高いと1%以下の危険率でいえた. CEA値より検討すると, CEA2.5ng/ml以下の群21例で5.6±3.7%, CEA2.6ng/ml以上の群12例で12.5±6.3%であった. すなわちCEA2.6ng/ml以上の群では2.5ng/ml以下の群に比しIgG-FcR
+・T cell の割合が高いと0.1%以下の危険率でいえた. IgG-FcR
+・T cell 9%以上の群に限ればIgG-FcR
+・T cell とPHAによるリンパ球幼若化率との間に有意の逆相関がみられた(r=-0.81, p<0.01).
CEA2.6ng/ml以上の群では有意にPHAによるリンパ球幼若化率の低下もみられ, これに連動してIgG-FcR
+・T cell の増加がみられたとも考えられる. この事実は, IgG-FcR
+・T cell の誘導に細胞外環境の一因としてCEAが関与していることを示唆するものである.
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