日本泌尿器科学会雑誌
Online ISSN : 1884-7110
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80 巻, 8 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
  • 熊澤 浄一
    1989 年 80 巻 8 号 p. 1123-1126
    発行日: 1989/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
  • 岡村 廉晴, 徳中 荘平, 宮田 昌伸, 藤井 敬三, 水永 光博, 橋本 博, 八竹 直
    1989 年 80 巻 8 号 p. 1127-1133
    発行日: 1989/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    雄家兎外尿道括約筋を構成する筋線維型について組織化学的方法 (ATP-ase染色) を用いて明らかにした後, 筋線維型別のヒストグラム解析を行った. 家兎外尿道括約筋は, 全体として速筋型筋線維が優位 (87.3%) であるが, その分布は一様ではなく, 尿道内腔からの距離によって異なっていた. すなわち, 遅筋型筋線維 (Type1) は, 尿道内腔に近い内層に比較的多く (33.4%) 分布するが, 外層にはほとんど認められなかった. いずれの層における筋線維型別ヒストグラムも, 正常な釣鐘型の分布曲線であった. Type1およびType2の平均筋線維径はそれぞれ14.7μm, 20.5μmであり, 有意に速筋型筋線維の方が大きかった. 3種類の筋線維いずれも外側に向かうに従って筋線維径は増大する傾向にあり, いずれの層においても遅筋型より速筋型筋線維のほうが大きかった. 構成する筋線維の割合とその筋線維径は, 内層と外層とでは確かな相違が存在している事から, この両者は異なった機能を分担していると考えられる. すなわち, 内層は持続的な緊張を保ち, 外層は短時間の急速な収縮にそれぞれ与っており, 神経制御のあり方も異なっている可能性が考えられる. さらに, 家兎外尿道括約筋を構成している筋線維の中でも, 短時間の急速な収縮に関与する筋線維ほど径が大きいとの結果は, 家兎の頻回に尿線を急速に止めるという排尿機構上の必要性により生じてきたものと推察された.
  • 杉山 高秀
    1989 年 80 巻 8 号 p. 1134-1140
    発行日: 1989/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    排尿あるいは性機能に障害を訴える55人の患者を対象として, 挙睾筋反射を主とし, 球海綿体反射, 膀胱内圧測定などを組み合わせて測定した. 挙睾筋反射の測定は, 知覚閾値の約10倍の単発電気刺激で, 大腿内側皮膚又は, 陰茎背側皮膚を刺激し, 両側恥骨部の高さにおいて挙睾筋に刺入した同芯針電極によって導出した誘発活動電位について行なった. その結果, 神経学的に異常のない20人に対しては全例において挙睾筋反射を認め, その平均潜時は大腿刺激で72.5±4.5msec, 陰茎刺激で74.3±5.3msecであった. 平均バースト長は大腿刺激で55.2±3.5msec, 陰茎刺激で54.0±4.8msecであっ. これより挙睾筋反射は脊髄機能障害, 脳血管障害の患者においてはその脊髄内障害部位を測定するのに極めて有用であった. さらに, 膀胱内圧測定, 球海綿体反射などを組み合わせることによりさらに詳細な脊髄内障害部位診断が可能と考えられた.
  • 岡野 達弥, 井坂 茂夫, 島崎 淳, 五十嵐 辰男, 村上 信乃, 松嵜 理
    1989 年 80 巻 8 号 p. 1141-1147
    発行日: 1989/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    腎孟尿管癌の予後並びに術後再発様式等につき臨床的検討を加えた. 対象は, 25年間に経験した83症例である. 予後因子について生存率を比較し検討したが, 肉眼的血尿を認めない群, 非乳頭状移行上皮癌及び扁平上皮癌, high grade 群, high stage 群, リンパ節転移を認める群等で有意に予後不良であった. 術後再発は, 83例中49例 (59%) に認められ, 初回再発部位は, 膀胱内21例, 後腹膜腔再発及び遠隔転移28例であった. 膀胱内再発群では, 再発までの期間は平均14.8ヵ月, 5年生存率は62.1%であるのに対し, 後腹膜腔再発及び遠隔転移群では, 再発までの期間は平均6.5ヵ月, 3年生存率5%と著しく予後不良であった. 組織型との関係では, 乳頭状移行上皮癌では, low stage 群で38%の再発率で, 全例膀胱内再発であったが, high stage 群では56%の再発率で, 膀胱内再発はほぼ半数であった. 一方, 非乳頭状移行上皮癌では, 再発率は87.5%と高く, 膀胱内再発は認めず, 全例後腹膜腔再発または遠隔転移であった.
  • 高羽 秀典, 近藤 厚生, 田中 国晃, 金城 勤, 加藤 久美子, 斉藤 政彦, 後藤 百萬, 三宅 弘治, 成島 雅博, 小谷 俊一
    1989 年 80 巻 8 号 p. 1148-1153
    発行日: 1989/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    腹圧性尿失禁に罹患する女性100例を Stamey 氏変法, 即ちナイロン糸の張力を定量化して手術した. 片側ナイロン糸に負荷した張力は1,000g12名, 800g5名, 700g9名, 600g25名, 400g49名であった. 術後経造期間は10~32ヵ月(平均20.5ヵ月)であり, 術前の60分間尿失禁テストは1.0~196.0g/hr (平均36.0g/hr) であった.
    1. 手術は95例 (95%) で成功した. バネ秤によるナイロン糸に負荷する張力は片側400gが至適と考える.
    2. 術後にナイロン糸の抜去か2例で必要となり, 手術創からの出血を2例で認めた. 膀胱タンポナーデが2例で発生した. 排尿困難が続くため, CICを1ヵ月以上必要としたのは4例である.
    3. 排尿パラメーターは術後一過性に悪化した. 最大尿道閉鎖圧は有意に低下し, 機能的尿道長は有意に延長した.膀胱瘻留置期間は2~27日 (平均5.9日) であった.
    4. 郵送によるアンケート調査では, 89%が手術に満足しており, 11%が不満足と回答した.
    5. Stamey 氏変法の手技は比較的簡単であり, 副作用も少ない. 腹圧性尿失禁防止術として極めて有用な手術手技と結論する.
  • 藤原 光文
    1989 年 80 巻 8 号 p. 1154-1161
    発行日: 1989/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    膀胱癌患者50名についてIgG-FcR+・T cell を未治療の時点でダブルロゼット法により測定した. 対照として, 非腫瘍患者20名についても同様の測定を行った. 膀胱癌患者では, IgG-FcR+・T cell のT cell における比率の平均値および標準偏差は, 7.6±5.7%であった. 一方, 対照群のそれは5.2±2.4%であったが, 両者の間に有意の差はなかった. 浸潤度より検討すると, 早期群 (pTa, pT1およびpT2) 30例で5.4±4.5%, 進行群 (pT3a, pT3bおよびpT4) 20例で10.8±6.0%であった. すなわち進行群は早期群に比しIgG-FcR+・T cell の割合が高いと, 0.1%以下の危険率でいえた. 組織学的異型度より検討すると, 低異型度群 (G0およびG1) 27例で5.5±4.4%, 高異型度群 (G2およびG3) 23例で9.7±6.2%であった. すなわち高異型度群は, 低異型度群に比しIgG-FcR+・T cell の割合が高いと1%以下の危険率でいえた. CEA値より検討すると, CEA2.5ng/ml以下の群21例で5.6±3.7%, CEA2.6ng/ml以上の群12例で12.5±6.3%であった. すなわちCEA2.6ng/ml以上の群では2.5ng/ml以下の群に比しIgG-FcR+・T cell の割合が高いと0.1%以下の危険率でいえた. IgG-FcR+・T cell 9%以上の群に限ればIgG-FcR+・T cell とPHAによるリンパ球幼若化率との間に有意の逆相関がみられた(r=-0.81, p<0.01).
    CEA2.6ng/ml以上の群では有意にPHAによるリンパ球幼若化率の低下もみられ, これに連動してIgG-FcR+・T cell の増加がみられたとも考えられる. この事実は, IgG-FcR+・T cell の誘導に細胞外環境の一因としてCEAが関与していることを示唆するものである.
  • 西山 直樹, 長久保 一朗, 森口 隆一郎, 石黒 幸一, 堀場 優樹, 泉谷 正伸
    1989 年 80 巻 8 号 p. 1162-1167
    発行日: 1989/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    我々が経験した274例の前立腺癌患者について, 根治的外科的療法の適応と手術法について検討した. 根治的外科的療法の内訳は, 根治的前立腺全摘術31例, 根治的膀胱前立腺全摘術4例, 骨盤内臓器全摘術7例であった. 非治癒例には, 術後内分泌療法を併用している.
    根治的前立腺全摘術群において5年生存率は, stage A, stage Bでは,それぞれ100%, 93%であり stage Cでは75%であった. また stage Cにおいては, 根治的膀胱前立腺全摘術, 骨盤内臓器全摘術も行われ, それぞれの5年生存率は, 50%と66%であった. stage Cにおいて根治的前立腺全摘術を行った症例で膀胱再発をきたしたものは認めていない. 尿路変更を必要とする手術は患者の quality of life を損なうものである.
    今回の我々の成績より, 根治的前立腺全摘術は stage A, stage Bおよび stage Cの前立腺癌患者に対して適応となるものと考える.
  • 近藤 猪一郎, 森山 政敏, 村井 哲夫
    1989 年 80 巻 8 号 p. 1168-1174
    発行日: 1989/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    過去約20年間に膀胱保存手術を施行した膀胱癌202例について, 腫瘍の大きさ, 数, stage, grade, リンパ管内侵襲 (ly), 及び血管内侵襲 (v) と予後 (再発及び転移) との関係を検討した. 観察方法は, まず各因子別に Kaplan-Meier 法により検討し, 次いで重回帰分析法により各因子の重みを検討した. Kaplan-Meier 法で有意差を示したものは, 再発に関しては, 腫瘍の大きさ, stage, grade, ly, 及びvであり, 転移に関しては, 腫瘍の大きさ, stage, grade, ly, 及びvであった.
    重回帰分析による検討では, 再発に関しては, ly, stage, 腫瘍の大きさが, 転移に関しては, 腫瘍の大きさ, stage, vが重要という結果が得られた. grade は, 再発, 転移とも関連性がうすいという結果であった.
  • 蛋白摂取量による影響
    秋山 昌範, 沼田 明, 今川 章夫
    1989 年 80 巻 8 号 p. 1175-1180
    発行日: 1989/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    透析患者において蛋白摂取量が免疫機能に影響を与えているかどうかを知る目的で, 蛋白摂取量およびPHA皮内テストなどの測定を行った. 対象は高松赤十字病院で慢性血液透析をうけている45例で, 男性23例, 女性22例, 年齢は19歳から80歳で平均53.6±15.6歳, 平均透析期間は37.3±27.3ヵ月, 原疾患は, 慢性糸球体腎炎29例, 糖尿病性腎症11例などであった. 蛋白摂取量に応じて3つの群に分け, それぞれの群の間でPHA皮内テスト, PPD皮内テストを比較検討した. 結果は, PHA皮内テスト, PPD皮内テストともに, 適正蛋白摂取量群に比べ高蛋白摂取量群では有意に低値を示し, 低蛋白摂取量群も低下傾向を認めた. PPD反応低下率では適正蛋白摂取量群に比べ高蛋白摂取量群, 低蛋白摂取量群とも有意に高率であった. したがって, 高蛋白摂取や低蛋白摂取が透析患者における免疫抑制の一因となる可能性が示唆され, 蛋白摂取量を適正化することにより透析患者の免疫抑制状態を改善させる可能性があると考えられた.
  • 島田 憲次, 松井 孝之, 荻野 敏弘, 細川 尚三, 有馬 正明, 森 義則, 生駒 文彦
    1989 年 80 巻 8 号 p. 1181-1186
    発行日: 1989/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    小児原発性VUR症例で, 血清Cr1.0mg/dl, あるいはBUN20mg/dl以上の腎機能障害を呈した28例の臨床経過を検討した. 性別は男子20例, 女子8例で, 原発性VUR総数からみると男子の4.8%, 女子の1.9%, 全体では3.4%であった. 蛋白尿は22例, 高血圧は7例にみられた. 臨床症状は尿路感染症が54%と最も多かったが, その他では蛋白尿39%, 発育障害14%など腎機能障害による徴候が多くみられた. VURは24例で両側性に認められた. 一側性VUR4例はすべて反対側腎が低形成, 無形成であった. VUR grade では86%の尿管に中~高度の逆流がみられた. レ線形態的に総腎機能の低下を疑わせる所見には両側腎がともに small kidney の場合, 一側が small kidney で反対側腎に scar が存在する場合, あるいは両側腎に強い scar を有する場合があった. 腎機能の推移をみるとすでに8~10歳で末期腎不全に陥る症例, 14~15歳を過ぎてから腎機能が急激に低下する症例, そして血清Cr1.0mg/dl, CCr50ml/m前後で保たれる症例の三つのグループがみられた. これらの症例で逆流防止術の効果をみると, 術後に腎機能が軽度改善されたのは3例のみで, これらの症例でも術後半年から1年後には再び腎機能障害が進行していた. 統計学的分析でも腎機能障害の進行に対する逆流防止術の効果はほとんど認められなかった.
  • 藤沢 真, 森川 満, 有馬 滋, 八竹 直
    1989 年 80 巻 8 号 p. 1187-1194
    発行日: 1989/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    特発性蓚酸カルシウム結石症が小児期に非常に少ない疾患であることに着目し, この原因を調べるため蓚酸カルシウム結石に関与する尿中諸因子について8歳から40歳代までの年齢の異なる4群により比較検討した. 検討に際しては, 結石成長抑制活性 (および抑制物質) と晶質物質の2つの観点から考察した.
    結石成長抑制活性 (inhibitory activity) は小児群において高く, 年齢の大きい群ほど有意に低下していた.
    分子量25,000を維持限界とするフィルターで得た濾過尿による inhibitory activity の検討では, 濾過後の activity の有意な低下がみられた. これより濾過により除かれた分子量25,000以上の物質の抑制活性への関与が示された. しかし小児尿の濾過尿の activity は, 成人尿の原尿での値より高く, 小児では分子量25,000以下の低分子領域の物質も inhibitory activity に大きく関与することが考えられた.
    尿中の尿酸, クエン酸, マグネシウム, ウロン酸についての検討では, マグネシウムの尿中排泄量, 対クレアチニン比が小児群で高く, 小児の inhivitory activity にマグネシウムが比較的大きく関与するものと思われた.
    カルシウムと蓚酸においては, カルシウムの尿中濃度が小児で有意に低く, 小児結石症が少ないこととの関連性が示唆された.
  • 澤村 正之, 小田島 邦男, 長倉 和彦, 中村 宏
    1989 年 80 巻 8 号 p. 1195-1202
    発行日: 1989/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    代表的なヒト膀胱移行上皮癌由来の細胞株T-24, MGH-U1, KU-1の5種類の制癌剤に対する感受性について比較した. doxorubicin (DOX), mitomycin C (MMC), cis-diamminedi-chloroplatinum (II) (CDDP) については42℃温熱負荷併用の影響も併せて検討した. また, 細胞数算定方法として一般に用いられている dye exclusion assay (DEA) と, 最近注目されている3-(4,5-dimetylthiazol-2-yl)-2,5-diphenyl tetrazolium bromide (MTT) を用いた比色法 (MTT-assay) を行い, MTT-assay の有用性についても検討した.
    3種類の細胞を96-well multiplate に接種し, 48時間培養した後にDOX, MMC, CDDP, bleomycin (BLM) および peplomycin (PEP) の5種類の制癌剤と2~48時間接触させ, 48時間後にDEAとMTT-assay を行い生細胞数を算定した.
    5種類の制癌剤のうちDOX, MMCおよびCDDPは, 6時間以上の接触において3種類の細胞に対して強い増殖抑制作用を認めた. 特にDOXは, 2時間接触群においても膀胱移行上皮癌細胞に対して有効に作用することが確認された. 一方, BLMとPEPに対する感受性は3種類の細胞とも低かった. 42℃温熱負荷によってMMCでは各細胞で, CDDPではMGH-U1で, それぞれ2時間接触時のIC50値が約2分の1に低下し, 温熱増感を認めた. DOXでは温熱負荷による影響は認めなかった.
    3種類の細胞において, MTT-assay で求めた吸光度はDEAによる生細胞数を反映し, 両 assay で求めたIC50値には推計学的有意差はなかった. MTT-assay は半自動的に行え, 再現性に優れており, 今後DEAに代わり得る有用な assay 法であると思われた.
  • 水尾 敏之, 谷澤 晶子, 奥野 哲男, 安藤 正夫, 大島 博幸
    1989 年 80 巻 8 号 p. 1203-1206
    発行日: 1989/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    女子腹圧性尿失禁19例に対し著者らが考案した Stamey 変法を行なった. 対象は56歳~73歳 (平均64.1歳), 尿失禁の程度はストレステストで2度13例, 3度6例であった. 全例に残尿, 無抑制膀胱収縮を認めず, 機能的尿道長及び尿道閉鎖圧の低下と後部尿道膀胱角の増加を認めた. 変法では Stamey 針穿刺時にナイロン糸も一緒に恥骨上切開創から腟前壁に通し, ダクロンを尿道と平行に位置させるため左右とも1度の穿刺で済み, 術後の最大尿道閉鎖圧と機能的尿道長が術前に比較し有意に増加し, 後部尿道膀胱角は有意に減少した. 術後5症例に残尿と排尿困難を認めたが, 3日から4週で消失した. 他には問題となる重篤な合併症を認めず満足すべき成績を得た.
  • 福井 巖, 大橋 英行, 寿美 周平, 佐竹 一郎, 木原 和徳, 竹内 信一, 大島 博幸
    1989 年 80 巻 8 号 p. 1207-1210
    発行日: 1989/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    まず, 腎動脈を結紮, 切断し, それから静脈を剥離するという自然な手順で茎部の処理を行い, しかるのちに Gerota 筋膜ごと腎摘除を行う経腰的根治的腎摘除術のアプローチを工夫した. 手術体位は通常の腎摘位であるが, 手術台に背面が直角となる側臥位とする. 第XII肋骨直上の皮切に続いてXII肋骨の先端約5cmを切除する. 後腹膜に入ったら, まず, 背側より Gerota 筋膜の剥離を開始し, そのまま一気に腎茎部にまで到達する. この操作は肝臓鉤か腸箆で容易に行うことができ, 大腰筋筋膜との間を剥離すると拍動する腎動脈がすぐにみえてくる. 腎動脈直上で Gerota 筋膜を切開し, 腎動脈を処理したらその裏側にある腎静脈を剥離する. 左側では副腎, 性腺静脈, 時には腎静脈に流入する腰静脈も結紮切断する. 腎茎部の処理が終ったら通常の根治的腎摘と同様に Gerota 筋膜ごと腎を摘出する. 第12肋骨を切除しているので上極の視野も良好で, 副腎に入る小血管の処理が直視下に可能である.
    1987年6月より1年3ヵ月間に経験した腎癌21例中11例に本手術を施行した. 他の10例には種々の理由で経腹的腎摘除術を施行した. 経腰群の手術成績は, 比較可能な経腹群の7例に比べ, 有意に出血量が少なく, また手術時間が短かった. 合併症としては, 術中に胸膜損傷による気胸と術後に腹壁瘢痕ヘルニヤが各1例認められたが, 重篤なものはなかった. 本手術は侵襲, 合併症共に少ないので, 局所進行例 (T4, N+, V+) を除けば腎癌に対する根治手術の1つのアプローチとなるものと考えられる.
  • 馬場 志郎, 増田 毅, 朝倉 博孝, 橘 政昭, 出口 修宏, 実川 正道, 畠 亮, 田崎 寛
    1989 年 80 巻 8 号 p. 1211-1217
    発行日: 1989/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    経尿道的に硬性尿管鏡操作 (TUURS) を行なった58例 (尿管結石症例52例, 上部尿路腫瘍3例, 尿管狭窄2例, 尿管内異物1例) に尿管鏡潅流装置ウレテロマットを使用しその有用性について検討した. ウレテロマットによる高圧潅流により外尿道口より膀胱内に硬性尿管鏡を直視下に誘導した. 壁内尿管粘膜の観察は容易で, 54例 (93.1%) に機械的尿管口拡張法を使用せずに尿管鏡の挿入に成功した. のこりの4例には拡張用バルーンカテーテルを用いて挿入に成功した. 尿管鏡の上昇を阻止するような尿管内腔異常所見が33例 (63.5%) にみられた. 結石嵌部位での浮腫状粘膜変化がもっとも多く, ついで腸骨領域での尿管の痙攣的収縮が問題となった. ウレテロマットの潅流圧を一時的に上げても, これらの内腔異常所見を改善することはできなかった. しかし加圧により内視鏡視野は著明に改善し, また結石嵌頓部位をこえてガイドワイヤーを送り込む操作はきわめて容易となった. さらにはESWLのために嵌頓部位から結石を腎孟内に挙上することも100%に可能であった. 術前よりTULの適応となった37例の尿管結石症例での成功率は81.1%であった. 術後1年間の経過をIVPで検討しえた50例のうち1例に壁内尿管の狭窄を疑わせる軽度の水尿管が認められたが, 腎機能の悪化はみられていない. 術後の発熱もウレテロマットを使用しない諸家の報告と同等の頻度であった.
  • 朝倉 博孝, 橘 政昭, 馬場 志郎, 出口 修宏, 実川 正道, 畠 亮, 田崎 寛
    1989 年 80 巻 8 号 p. 1218-1223
    発行日: 1989/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    29歳以下の若年発症性膀胱腫瘍11症例について検討した. 男女比は2.7:1, 平均年齢は22.6歳であり, 平均観察期間は4年7ヵ月であった. 病理診断はすべて移行上皮癌で1例のみ腺癌組織を含んでいた. 深達度は, 全例 stage A (T1b以下) で grade については, grade I 4例, grade II 7例で, grade IIIは認めなかった. 全例に経尿道的膀胱腫瘍切除術 (TUR-BT) が行われ, 術後の膀胱内再発症例は1例のみであった. 一方, 膀胱洗浄液のFCMを施行した6例中3例 (50%) に aneuploid pattern が観察され, このことより若年発症型膀胱腫瘍が, DNA-histogram よりみると必ずしも low malignancy とは言い難いと考えられた. しかし, 文献的にも本検討でも, 再発, 転移, 浸潤を示すものは少なく, 若年発症型膀胱腫瘍は臨床的に予後良好と考えられ, この様な膀胱腫瘍の浸潤, 再発に関与している因子として, 膀胱腫瘍細胞そのものの生物学的特性のみならず, 宿主側の因子が考えられ, 膀胱腫瘍発症時の年齢という因子が宿主側因子として挙げられると推察された. 一方, 客観的細胞生物学的特性を表しているDNA-histogram より観ると, 若年発症型膀胱腫瘍は potential malignancy と考えられ, 厳重な長期経過観察が必要と考えられた.
  • 北村 唯一, 余郷 嘉明, 土井 直人, 植木 哲雄, 森山 信男, 高橋 悟, 福谷 恵子, 河邉 香月, 阿曽 佳郎
    1989 年 80 巻 8 号 p. 1224-1227
    発行日: 1989/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    我々は以前, 膀胱上皮内癌の1例 (S. Y.) からヒトパピローマ・ウイルス (HPV) 16型ゲノムを検出した (Cancer Res., 1988). その後, 他のタイプの膀胱腫瘍多数に対してHPVゲノムの検索を行ったが, HPVゲノムの存在は証明されなかった. したがって, HPVは全ての膀胱腫瘍に関わりを持つのではなく, 一部の膀胱腫瘍にのみ関わっていると考えられる. 今回の報告では, 特徴的な膀胱病変を提示するために, 前回に比べてより詳しく症例提示を行う.
    症例は免疫不全と貧血を有する40歳女性 (S. Y.) で, 無症候性膿尿を指摘され, 当科を紹介された. 膀胱鏡検査の結果, 境界鮮明で軽度隆起性の扁平な白色ベルベット状病変が認められた. 白色ベルベット状病変を生検した結果, 移行上皮内癌と判明した. 1987年11月25日, 膀胱全摘, 膣前壁切除, 外陰部部分切除および回腸導管造設術を施行した. 術後は, 創出血および右下肢深部静脈血栓を起こし, 危険な状態もあったが, 回復し, 術後2ヵ月で退院した. しかし, 術後9ヵ月で, 強度の貧血のため再入院し, 急性骨髄性白血病と診断された. 現在, 白血病に対し癌化学療法中である.
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