日本泌尿器科学会雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
ISSN-L : 0021-5287
81 巻, 1 号
選択された号の論文の21件中1~21を表示しています
  • 里見 佳昭
    1990 年 81 巻 1 号 p. 1-13
    発行日: 1990/01/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    腎癌の治療の現況を述べ, 今後検討しなければならない問題について言及した. (1) 腎癌の生物学的な特性を念頭において治療方針を決めること (2) 一見, 腎癌の手術はすでに完成しているかに見えるが, まだ問題点が多いこと (3) 転移巣の手術適応に対する考え方 (4) インターフェロンが頻用されているが, 理論的裏付けが不十分な現況 (5) インターフェロンを中心とした他剤併用療法が今後の課題であること (6) 腎癌の adjuvant therapy の方法などについて述べた.
  • 粘膜抜去術の応用
    後藤 隆文, 青山 興司
    1990 年 81 巻 1 号 p. 14-18
    発行日: 1990/01/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    重複腎盂尿管は, 比較的よく経験される疾患の一つであり, このなかには無症状のまま偶然に発見されるものから, 新生児期より腹部腫瘤・尿路感染症などの症状で発症し早急な処置を必要とするものまで様々なものがある. 最近我々は, 胎児エコーにより発見された2例の重複腎盂尿管の症例を経験した. 1例は左完全重複腎盂尿管, 左上半腎無機能腎・水尿管・尿管瘤, 左下半腎水腎水尿管, 右VURの症例であり, 他の1例は右完全重複腎盂尿管, 右上半腎無機能腎・尿管異所開口, 右下半腎VURであった. いずれの症例も, 姉妹尿管に障害を及ぼすことなく上半腎所属尿管を全摘することは困難であり, 上半腎所属尿管の粘膜下層で剥離を行いこれを抜去する方法 (mucolysis) により尿管の全摘を行った. この方法は, Hirschsprung disease で Soave 氏手術を行う時に用いる方法に準じたものである. 先ず, mucolysis を開始する部位の尿管にスピッツメスで粘膜下層までの横切開をおく, この部位から鋭・鈍的な剥離を全周性に進めていくと, 尿管は粘膜層のみで上下が連がることになる. そして, この部位の外膜・筋層を4方向より支持し, 鋭・鈍的な剥離を下部の尿管全長にわたり行っていく. この方法であれば, 姉妹尿管に対して障害を及ぼすことなく尿管の全摘が可能となる.
  • 浅野 嘉文, 野々村 克也, 小柳 知彦
    1990 年 81 巻 1 号 p. 19-24
    発行日: 1990/01/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    利尿剤である furosemide には尿中カルシウム排泄量を増やす作用もある. 我々は, 長期 furosemide 投与がカルシウムバランスや腎機能与える影響, さらに腎・副甲状腺の病理組織学的変化について検討した.
    実験動物には, 4週齢のWKA rat, 雄を用いた. 10匹に furosemide 20mg/kgを隔日, 62週腹腔内投与, 9匹を対照群とした. 両群とも飼料はCE-2を, 飲水は脱イオン水を自由摂取させた. 1~4週毎に24時間尿中カルシウム及びクレアチニン排泄量を測定, 投与1週目と実験終了時 (62週目) に採血し, 血清カルシウム及びクレアチニンを測定した. 実験終了後屠殺し, 腎・副甲状腺の病理組織学的検索を行なった.
    24時間カルシウム排泄量は, 対照群に比べ2~3倍に有意に増加したが, (p<0.01), 血清カルシウム・クレアチニン値には差が見られなかった. Furosemide による高カルシウム尿症は確かに存在したが, 肉眼的に腎―尿路に結石形成は見られなかった. 病理組織学的にも結晶形成は認められなかったが, 腎盂腎炎様変化が瀰漫性に見られた. しかし, 副甲状腺には過形成等の変化は見出せなかった. Furosemide により高カルシウム尿症を誘発することは可能であったが, これが病態的に renal hypercalciuria の実験モデルとするには今回の実験結果からでは困難であった. さらに, 結石形成が見られなかったことから, 高カルシウム尿症という単独の要因では尿路結石の発症に至らないことが示唆された.
  • 第一報: Acetylcholine, Norepinephrine Isoproterenol に対する反応
    斉藤 政彦, 後藤 百万, 加藤 久美子, 近藤 厚生
    1990 年 81 巻 1 号 p. 25-30
    発行日: 1990/01/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    ヒトの高齢化にともない高頻度に発生する尿失禁, 頻尿の原因を追求するため, 高齢ラットの膀胱体部を実験モデルとして各種薬理実験を行なった. コントロール群として若い6ヵ月齢のラットを, 高齢ラットとしては16ヵ月齢と24ヵ月齢のラットを用いた. これら3群の膀胱を使用して acetylcholine, norepinephrine, isoproterenol に対する反応性を Magnus 法で検討した.
    1) ラットの体重はコントロール群に比較して16ヵ月齢, 24ヵ月齢で有意に増加した.
    2) Acetylcholine に対する反応には各月齢群間に有意差は認められなかった.
    3) Norepinephrine の利尿筋に対する収縮反応は6ヵ齢では極めてわずかであった. しかし16ヵ月齢, 24ヵ月齢と加齢に伴い収縮反応は有意に増強した.
    4) Isoproterenol はすべての月齢に対して弛緩作用を示した. 24ヵ月齢の高齢ラットの弛緩作用は, 他の2群に比較して有意に減弱していた.
    以上から高齢ラットではα-交感神経レセプターが膀胱体部に有意に増加していることが判明した. またこの反応性の増加は加齢相応であった. ヒト膀胱でも同様の変化がおこるならば,α-交感神経レセプターの膀胱体部における増加は不安定膀胱の原因または不安定膀胱を発生させる要因の一つとして重な役割をになっていると推測する.
  • 第二報: ATP, Prostaglandin F2α, Serotonin, Angiotensin II, VIPに対する反応
    斉藤 政彦, 後藤 百万, 加藤 久美子, 近藤 厚生
    1990 年 81 巻 1 号 p. 31-36
    発行日: 1990/01/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    高齢者における不安定膀胱の発生原因追求の目的で, 高齢ラット膀胱を実験モデルとして各種薬剤に対する反応性を検討した. 今回は, 膀胱利尿筋に固有レセプターの存在が示唆されている5種類の非コリン性, 非アドレナリン性の薬剤を使用した. 高齢ラットは16ヵ月齢と24ヵ月齢のものを, コントロールとしては6ヵ月齢のものを実験に使用した.
    1) ATP (Adenosine triphosphate) に対する反応はコントロール, 16ヵ月齢に比べて24ヵ月齢ラットの膀胱で有意に反応性の増大が認められた.
    2) Prostaglandin F2αに対する反応はコントロール, 16ヵ月齢, 24ヵ月齢いずれの間にも反応性に有意差は認められなかった.
    3) Serotonin に対してはATP同様24ヵ月齢で他の2群に比して有意の反応性の増大が認められた.
    4) Angiotensin IIに対する反応性は3群間に有意差は認めなかった.
    5) VIP (vasoactive intestinal polypeptide) に対しては3群いずれの膀胱も有意な反応を示さなかった.
    高齢ラットが非コリン, 非アドレナリン性の神経伝達物質として考えられているATPおよび serotonin に対して示した反応性の亢進は, これら物質が高齢者における不安定膀胱の原因またはその促進因子となっている可能性が示唆された.
  • 藤野 淡人, 石橋 晃, 小柴 健, 星合 治, 相磯 貞和, 安田 健次郎, 十河 孝
    1990 年 81 巻 1 号 p. 37-44
    発行日: 1990/01/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    γ-Seminoprotein (γ-Sm) に対するモノクローナル抗体を作製し, その化学的性状につき検討するとともに, その特異性について免疫組織化学法を含めて検討した.
    久留米大学医学部法医学教室より供与されたγ-Sm主分画標品にて, Balb/cマウスを免疫後, その脾細胞マウス骨髄腫SP2/O-Ag14細胞をPEG法で融合し, ハイブリドーマを得た. 抗体産生スクリーニングはELISA法により, クローニングは軟寒天法で2回施行した. また抗体の特異性の検定はウェスタンブロッティング法によった. 得られたモノクローナル抗体を用いて前立腺をはじめとする各組織におけるγ-Smの局在につきABC法により免疫組織化学的検討を行った.
    ELISA法で強陽性を示したハイブリドーマにつき再クローニングを行い, ハイブリドーマ, 43-21-1-1を得た. その培養上清はウェスダンブロッティング法において, 抗原の電気泳動で検知しえた全てのバンドと反応した. また, 本抗体のサブクラスはIgG1(κ) であった. 本モノクローナル抗体を用いた免疫染色では, 前立腺の腺上皮細胞内および腺腔内分泌物においてのみ陽性を呈し, 対照とした膀胱, 精嚢, 睾丸, 副睾丸および原発性前立腺移行上皮癌組織においては陰性であった. 本モノクローナル抗体の免疫組織化学法をはじめとする前立腺癌の診断法への応用が可能であると考えられた.
  • 後藤 修一, 峰 正英, 石坂 和博, 金親 史尚, 横川 正之
    1990 年 81 巻 1 号 p. 45-48
    発行日: 1990/01/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    ラットセルトリ細胞 Tight Junction (以下T-J) のランタン透過性の変化を, CDDP3mg/kg一回腹腔内投与後経時的に観察した. 2日目では精祖細胞周囲にランタンの拡散を認めるのみで対照と同じ所見であった. 7日目では拡散が最大となり, 精母細胞および精子細胞周囲にまで及んだ. セファランチンおよびカリクレインを前投与して同様の観察を行なったが, 予防的効果は認められなかった. 以後その拡散は減ずるものの53日目にも精母細胞周囲にこれを認めた.
    7日目では光顕的に精上皮の組織学的変化は認められず, この時期にT-Jをランタンが浸透し精子細胞周囲にまで及んでいたことは, CDDP投与後比較的早期のセルトリ細胞障害の形態学的な指標になり得ることを示唆するものと考えられた.
  • 血管結合織蛋白質とコルチコステロンの高血圧に果す役割
    中田 瑛浩, 角谷 秀典, 始関 吉生, 島崎 淳
    1990 年 81 巻 1 号 p. 49-53
    発行日: 1990/01/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    幼若雄性ウィスターラットに1%飲料生食水を摂取させ, 片側腎剔除術兼両側副腎核出術を施行し, 高血圧を発症させた. 高血圧の発生期にも慢性期にも血漿コルチコステロン濃度は高値を示さなかった. 20週齢ラットに 3H-lysine 0.4μCi/g体重を投与し, 血管蛋白質への取り込みを測定すると腸間膜動脈, 心臓のコラジェンおよびエラスチンへの 3H-lysine の取り込みが正常血圧ラットのそれより高値を示した. 片側腎剔除術兼両側副腎核出術を受けたラットに phenoxybenzamine を投与すると高血圧の発生は阻止され, 上記血管のコラジェンおよびエラスチンへの 3H-lysine の取り込みは減少した. 以上の成績より本実験高血圧症の昇圧には再生皮質副腎由来のコルチコステロンは関与しておらず, 腸間膜動脈, 心臓のコラジェンおよびエラスチン代謝の亢進が慢性期の高血圧維持に重要な役割りを果していることが判明した.
  • 経尿道的前立腺切除術における経験
    井原 英有, クルト リムクス, 滝内 秀和, 小池 宏, 荻野 敏弘, 細川 尚三, 河東 鈴春, 島田 憲次, 有馬 正明, 森 義則, ...
    1990 年 81 巻 1 号 p. 54-60
    発行日: 1990/01/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    同種血輸血に伴う副作用・合併症を回避する目的で, 経尿道的前立腺切除術 (TUR-P) 症例を対象として, 術前貯血式の自己血輸血を行なった. 手術予定日の3週前から1~3回にわたり1回200~400mlの採血をし, CPD液とともに4℃で保存して術中または術直後に輸血した.
    自己血輸血を開始した1988年2月以降のTUR-P症例61例のうち26例に自己血輸血を施行した. 1984年1月から1988年1月までのTUR-P203例での同種血輸血率は22.3%であったが, 1988年2月以降は13.1%に低下した.
    自己血輸血群の術後の血液ヘモグロビン値は貯血前値の平均81.6%まで低下したが, 臨床上問題はなく, 術後1ヵ月目には平均90.1%まで回復した. 術中・術直後の循環状態は無輸血群や同種血輸血群よりもむしろ安定していた. 止血機能検査では血小板数・血漿フィブリノーゲン値の減少, プロトロンビン時間の延長が認められたが, 臨床上問題になるほどではなかった.
    軽度ないし中等度の前立腺肥大症あるいは前立腺癌に対する経尿道的前立腺切除においては, 自己血輸血法によって同種血輸血は避け得, したがって同種血輸血に伴う副作用・合併症は回避でき, 有用な方法と考える.
  • 桜井 正樹, 日置 琢一, 奥野 利幸, 杉村 芳樹, 山川 謙輔, 柳川 真, 田島 和洋, 栃木 宏水, 川村 寿一
    1990 年 81 巻 1 号 p. 61-67
    発行日: 1990/01/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    54例でPNL前後で99mTc-DMSA腎シンチグフィを施行した. PNL側の腎摂取率はPNL4~8週後では術前18.2±6.7%から17.2±6.0%へ有意に (p<0.01) 低下した. 一方非手術側腎摂取率は変化しなかった. しかし数例において, 両側の腎摂取率がほぼ同程度5~7%変化し, この原因が不明であったため, 対側の非PNL側に対するPNL側腎摂取率の比を求め, この変化をもって腎機能の変化を検討した. 比による検討は両側腎機能が2倍以上違わない44例を対象として行った. その結果PNL後腎機能はPNL前値に比べ95.6±8.7%まで有意に (p<0.01) 低下した. 非閉塞症例は, 閉塞症例より腎機能の低下は大きかったが, 両群間に有意差は認めなかった. 臨床的合併症: 出血, 発熱の有無により検討したが, いずれも有意差は認めなかった.
    一年後にも検討した29例において, PNL後早期には94.2±9.6%まで有意に (p<0.01) 低下したが, 約一年後には, 99.6±11.6%に有意に (p<0.01) 改善した. しかし cold area を認める2例では一年後でも, PNL前の腎機能の80%前後に留まっていた.
    PNL4~8週後にはPNL側腎機能は軽度低下するが, 長期的にみると改善するものと思われる. しかし cold area を認める症例では腎機能の回復は充分ではなかった.
    99mTc-DMSA腎シンチグラフィはPNLの腎に及ぼす影響を検討する上で有効且つ簡便な検査と思われる.
  • 岩瀬 豊, 加藤 次朗, 伊藤 尊一郎, 大田黒 和生, 津ヶ谷 正行, 最上 徹
    1990 年 81 巻 1 号 p. 68-74
    発行日: 1990/01/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    上部尿路結石患者に対し, ESWL (MEDSTONE-1000) による臨床治験を施行した. 対象は1987年10月より1988年3月の間に治療した35例 (合計40回) であった. 年齢は22~65歳, 平均43.9歳で, 男23例, 女12例であった. 治療対象とした結石の存在部位は, 腎盂・腎杯が28例, 尿管が7例であった. サイズは, 1cm以下が15例, 1~2cmが12例, 2~3cmが7例, 3cm以上が1例であった. 術前処置として, 腎結石の13例に double-J ステントカテーテルを, 尿管結石の全例に尿管バルンカテーテルあるいはフレキシブルチップカテーテルを留置した. 麻酔方法は, 硬膜外麻酔を26例に, 全身麻酔を9例に施行した. 結石の照準は2軸方向のX線写真撮影により決定した. 治療電圧は主として24KVで行い, 衝撃波数は最高6,800発を要した. 直後の破砕効果は2mm以下が24例 (68.5%), 2~5mmが10例 (28.6%) と有効な成績であった. また, 砕石不能の1例はシスチン尿症であった. 3ヵ月後までに完全排石を22例 (64.7%) に認め, 5mm以上の残石は2例 (5.9%) であった. 副作用として肉眼的血尿, 皮膚溢血斑, 発熱等を認めたが, 一過性であった. 本装置は砕石効果に優れ, 重篤な副作用も認めず, ESWLに有用であることが確認された.
  • 長期経過観察の成績
    斉藤 政彦, 加藤 久美子, 後藤 百万, 近藤 厚生
    1990 年 81 巻 1 号 p. 75-81
    発行日: 1990/01/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    嚢胞性二分脊椎患者58例につき, 下部尿路機能の長期経過観察結果の検討を行なった. 58名中男は16名, 女は42名, 初診時平均年齢は7歳1ヵ月 (3ヵ月~16歳), 経過観察期間は平均81.7ヵ月 (18ヵ月~100ヵ月) である.
    1) 清潔間欠導尿を主体とする保存的治療を受けた群 (41例) では, その膀胱コンプライアンスは経過観察中に5.1から11.1m1/cmH2Oへと有意に改善した. しかし逆流防止術を受けた群 (17例) では, 5.2から4.8へと不変であった.
    2) 膀胱変形の程度と膀胱コンプライアンスとの間には相関関係が認められた. また逆流防止術を受けた群で膀胱変形がより高度であった.
    3) 無抑制収縮の状態は初診時よりこれを認めない症例が24例, 減少または消失した症例が26例, 逆に増大したり新たに出現した症例が8例であった.
    4) 最大尿道閉鎖圧は38例について検討し, 初回測定値の20%以上変動した症例を27例 (71%) に認めた. その平均値は60cmH2Oへ収束する傾向を示した.
    以上より開腹手術による逆流防止術は清潔間欠導尿による膀胱コンプライアンスの改善を阻害することが判明した.
  • 古田 秀勝, 中田 瑛浩, 片山 喬
    1990 年 81 巻 1 号 p. 82-88
    発行日: 1990/01/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    Sprague-Dawley ラット (SDラット) 腎膜分画を用いて receptor assay によりカテコールアミン受容体の受容体数ならびに親和性の検討を行った. 3H-prazosin を使用したラット腎皮質のα1受容体測定では解離定数 (Kd) は0.17±0.02 (nM), 最大結合能 (Bmax) は96.1±7.33 (fmol/mg protein) であった. 一方ラット腎髄質の解離定数は0.13±0.03 (nM), 最大結合能は44.5±8.2 (fmol/mg protein) であった. ラット腎髄質に比ベラット腎皮質にはα1受容体が単位蛋白あたり約2倍多く存在した. ラット腎皮質に対し, 3H-SKF38393を使用したドーパミンD1受容体測定では, Scatchard plot 上, hot ligand が1nM以下の低濃度では上方に突出した正の協同作用を示したが, 1nM以上では直線上にあてはまった. この高濃度部でのKdは5.3 (nM), Bmax は2.5 (pmol/mg protein) であった. さらに腎皮質膜分画浮遊液の3H-prazosin binding に対するドーパミンの置換作用が認められた. 高濃度のドーパミンは, α1受容体に対し親和性があるものと考えられた. dopaminergic 作用を示す低濃度のドーパミンと, 腎皮質膜分画を preincubation してもα1受容体の数や薬物親和性に変化を認めなかった. しかし高濃度のドーパミンを preincubation した試料では, 3H-prazosin binding による Bmax の値に変化を認めなかったがその親和性が低下した.
  • 片山 孔一, 梅川 徹, 石川 泰章, 児玉 光正, 高田 昌彦, 加藤 良成, 片岡 喜代徳, 郡 健二郎, 井口 正典, 栗田 孝
    1990 年 81 巻 1 号 p. 89-95
    発行日: 1990/01/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    カルシウム尿路結石症患者 (男性105名, 女性52名) の骨塩量をMD法を用いて計測し, MD正常群と異常群に分類し, また対象を1年間以上サイアザイド系利尿剤を投与されている投薬群 (男性21名, 女性3名) と無投薬群に分け, 尿中・血中諸因子について検討した.
    〔無投薬群〕年齢別の検討で男性では若年者でMD異常の割合が高く, 女性では加齢に伴いMD異常の割合が増加する傾向を認めた. 男性ではMD異常群で正常群に比べてアルカリフォスファターゼが有意に高値であった. 女性ではMD異常群で正常群に比べて尿中カルシウム排泄量が有意に高値であり, またPTHが高い傾向を認めた. 高カルシウム尿症と正カルシウム尿症と正カルシウム尿症の比較, 初発結石患者と再発結石患者の比較ではいずれもMD正常と異常の割合には有意差を認めなかった.
    〔投薬群〕男性において投薬群と無投薬群の比較では, 投薬群でPTHおよびアルカリフォスファターゼが有意に高値であった. またMD異常群で正常群に比べてアルカリフォスファターゼが有意に高値であった.
    結石再発予防の観点から見て, 血中・尿中カルシウムの動向以外にも, 体内のカルシウムの大部分が存在する骨の監視が重要であると考えられる.
  • 東海地方会泌尿器腫瘍登録2,304例の検討
    鈴木 和雄, 小幡 浩司, 深津 英捷, 大串 典雅, 置塩 則彦, 栃木 宏水, 酒井 俊助, 篠田 正幸, 牛山 知己, 高士 宗久
    1990 年 81 巻 1 号 p. 96-102
    発行日: 1990/01/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1980年から1986年の7年間に東海地方会泌尿器腫瘍登録に登録された膀胱腫瘍2,304例について主に治療成績を中心に検討を行った.
    膀胱腫瘍全体の5年相対 (実測) 生存率は73.8% (61.9%) であった. 深達度別ではTa; 101.9% (88.0%), T1; 87.6% (75.3%), T2; 57.9% (47.8%), T3; 33.7% (28.2%), T4; 6.1% (5.0%) であった. 組織型・異型度別ではG1; 93.7% (78.8%), G2; 87.2% (74.1%), G3; 47.3% (38.9%) となり, 移行上皮癌以外の膀胱悪性腫瘍は48.9% (42.4%), 複数組織型の混在した腫瘍は48.8% (41.3%) となっている. T2, G3以上で明らかに生存率は低下した. 移行上皮癌以外の膀胱悪性腫瘍および複数組織型の混在した腫瘍は移行上皮癌 grade 3とほぼ同様の結果であった. TUR施行症例の5年相対 (実測) 生存率は98.1% (82.2%) であった. 深達度別ではTa; 103.9% (89.7%), T1; 96.0% (82.6%), T2; 61.1% (49.1%), 異型度別ではG1; 102.2% (86.6%), G2; 104.3% (88.3%), G3; 56.9% (48.3%) であり, T1, G2以下がTURの適応と思われた. 膀胱全摘施行症例の5年相対 (実測) 生存率は62.4% (52.3%) であった. 深達度別ではTa; 102.3% (90.6%), T1; 77.8% (68.2%), T2; 56.3% (47.9%), T3; 41.8% (34.9%), T4; 15.2% (13.1%), 異型度別ではG1; 96.9% (80.9%), G2; 63.6% (55.7%), G3; 55.4% (47.1%) となっている. 進行癌症例の相対(実測)生存率は3年5.3% (4.8%), 5年0.87% (0.73%) と極めて予後不良であった.
  • OKT-3抗体を用いたTILの増殖法
    早川 正道, 宍戸 清一郎, 比嘉 功, 小山 雄三, 秦野 直, 大澤 炯
    1990 年 81 巻 1 号 p. 103-109
    発行日: 1990/01/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    ヒト末梢血リンパ球 (PBL) や腎腺癌組成内浸潤リンパ球 (TIL) を, ヒトインターロイキン-2 (IL-2) を含む培養液 (1,000IU/ml) 内で培養することにより, 新鮮自己腫瘍細胞と株化癌細胞に対する強い細胞障害能が誘導された. さらに, 長期培養開始の2日間のみ, Tリンパ球の増殖刺激の意味でモノクローナル抗体OKT-3を培養液内に加えることにより, 細胞障害能がある程度保たれたままで, リンパ球の増殖が著明に増強された. また, OKT-3陽性細胞とIL-2リセプター陽性細胞数が増加した. この方法により, 従来のIL-2単独刺激法にくらべ, はるかに多くのリンパ球が養子免疫療法用として得られるようになった.
    転移性腎腺癌患者5例を, このようにして増殖させたTIL・LAK細胞とIL-2を用いて治療し, 1例にのみ3ヵ月間持続する肺転移巣の縮小 (MR) が得られた. 特に重篤な副作用は見られなかった.
  • 東海地方会泌尿器腫瘍登録384例における検討
    上田 公介, 小幡 浩司, 磯貝 和俊, 森 脩, 大島 伸一, 成瀬 克邦, 栗山 学, 安積 秀和, 小谷 俊一, 藤本 佳則
    1990 年 81 巻 1 号 p. 110-115
    発行日: 1990/01/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1980年から1986年までの7年間に404例の腎盂尿管腫瘍が日本泌尿器科学会東海腫瘍登録委員会に登録された. この中で経過の明らかであった384例について, その治療成績について報告した.
    男性は299例, 女性は85例であり, 腎盂腫瘍は210例, 尿管腫瘍は174例であった. 根治療法が行われたのは319例, 83.1%であり, 非根治群は20例, 5.2%, 進行癌群は45例, 11.7%であった.
    腎盂尿管腫瘍の組織型は, 移行上皮癌が341例 (88.8%) であり, その異型度は, G0が0.3%, G1が12.9%, G2が49.3%, GXが5.2%であった. 腎盂尿管腫瘍の5年相対生存率は49.5%であり, 移行上皮癌の異型度が高くなるに従い, 生存率は低下した.
    深達度は, T1が97例 (33.6%), T2が48例 (12.5%), T3が56例 (14.6%), T4が51例 (13.3%), Tisが1例, TXが95例であり, 深達度が高くなるに従い, 生存率は低下した.
    腎盂尿管腫瘍全体の生存例は177例であり, 死亡例の内, 癌死が122例, 85.3%を占めた.
    以上から, 腎盂尿管腫瘍の治療成績を向上させるためには, 早期発見, 早期の根治手術が重要と考えられた.
  • 比例ハザードモデルによる評価
    高士 宗久, 坂田 孝雄, 村瀬 達良, 高木 康治, 長井 辰哉, 佐橋 正文, 下地 敏雄, 三宅 弘治, 浜島 信之
    1990 年 81 巻 1 号 p. 116-121
    発行日: 1990/01/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    表在性膀胱癌の進展に関与する臨床的・病理学的因子を明らかにするために, 1973年1月から1987年12月までに初回治療を施した表在性膀胱癌 (pTa, pT1) 223例について検討した. 年齢・性・症状・受診までの期間・初回治療時の腫瘍発生部位・大きさ・数・内視鏡的形態・組織学的発育様式・異型度・深達度・膀胱内注入療法の12項目について調べ, それらと進展との関係を統計学的に検討した. 今回検討した223例の初回手術後の観察期間の中央値は46ヵ月であった. 死亡例は17例 (7.6%) あり, うち癌死は8例 (3.6%), 他疾患による死亡は9例 (4.0%) であった. 進展は12例 (5.4%) にみられ, 初回治療から進展までの期間は4ヵ月から108ヵ月, その中央値は11.5ヵ月であった. また9例 (75%) は2年以内に進展がみられた. 進展症例の5年実測生存率は47.1%, 非進展症例の5年実測生存率は92.8%であり, 一旦進展がみられた症例では予後不良であった. Cox の比例ハザードモデルによる解析の結果, 初回治療時に膀胱刺激症状があり, 高異型度・粘膜固有層への浸潤・非乳頭状発育を示す症例が有意に進展に関連していた. 各因子のハザード比は膀胱刺激症状: 10.2, grade 3: 6.3, pT1: 4.9, 非乳頭状発育: 4.7であった. さらに多変量解析 (逐次法) により, 膀胱刺激症状>grade 3>pT1>非乳頭状発育の順に進展への関与度が高いことが確認された. 上記の特徴を有する例に進展がみられる可能性が高いので, 初回治療後の綿密な経過観察が重要である.
  • 島田 憲次, 田口 恵造, 細川 尚三, 荻野 敏弘, 生駒 文彦
    1990 年 81 巻 1 号 p. 122-129
    発行日: 1990/01/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    過去約5年間に出生前超音波検査により発見された腎尿路奇形35例に臨床的検討を加えた.
    1) 出生前の超音波所見: 胎児の尿路異常が発見された時期は妊娠20週が最も早く, 30週以前に発見されたのが30%であった. 羊水過少を呈したのは5例であった. 出生前と出生後の診断が一致していたのは約60%であった.
    2) 新生児期の処置: 12例では新生児期に何らかの泌尿器科的処置が加えられた. これらは尿通過障害に対する尿ドレナージと腫大した嚢胞性腎疾患に対する摘除術が主たるものであった. 2例に対しては内視鏡的手術が加えられた.
    3) 治療法と予後: 死亡は5例 (嚢胞腎2例, 両側多嚢腎1例, 後部尿道弁1例, 巨大尿管1例) であった. 追跡可能であった26例中, 15例では手術が施行され, 他の11例では保存的に経過が観察されている. この内, 腎盂尿管移行部狭窄では3/12例が腎盂形成術の適応となり, 他の症例は自然改善の傾向を示している. 多嚢腎では経過中に嚢胞の増大が観察された2例で腎摘除が加えられ, 他の症例では相対的な腎の縮小が認められている.
    従来は尿路感染や腎機能障害の症状を呈して初めて発見されていた症例が, 出生前診断により症状が出現する以前に処置可能となったのは, 先天性尿路奇形の治療の上で大きな進歩である.
  • 川上 理, 福井 巌, 長浜 克志, 寿美 周平, 竹内 信一, 大島 博幸
    1990 年 81 巻 1 号 p. 130-133
    発行日: 1990/01/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は41歳, 製麺業の男性で慢性腎不全のため9年来, 血液透析をうけていた. 7年前より時折血尿をみていたが, 最近, 発熱と左側腹部痛も出現したためCT検査を行なったところ, 両側の後天性多嚢胞化腎 (ACDK) に加え, 左腎の内側中央部に径4cm大の腫瘤を認めた. これは, 動脈造影にて血管新生像に乏しく, また, 膀胱鏡検査で膀胱壁全体に乳頭状腫瘍の発生を認めたことから, 腎盂腫瘍と考えられた. 1988年6月8日, 両側腎尿管摘除術と根治的膀胱全摘術を施行し, 2週後に尿道摘除術を追加した. 病理組織学的にはACDKに加え, 左側の腎盂と尿管下部及び膀胱壁のほぼ全域に Grade 2>3の乳頭状移行上皮癌を認めた. 浸潤度は大部分Ta~Tlであったが, 腎盂癌の一部に筋層浸潤を認めた. リンパ節転移ならびに腎細胞癌の所見はいずれもなかった. 後療法は特に施行しなかったが, 術後6ヵ月現在, 再発なく社会復帰している.
    慢性透析患者に発生する悪性腫瘍としてはACDKに随伴する腎癌の好発がよく知られているが, 尿路上皮腫瘍の発生についても十分な注意が必要なことを強調した.
  • 浪間 孝重, 相馬 文彦, 今林 健一, 折笠 精一, 西村 洋介
    1990 年 81 巻 1 号 p. 134-136
    発行日: 1990/01/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は6歳女児で, 3歳時から尿失禁が継続し, 尿流動態検査で過活動膀胱と排尿筋括約筋協調不全 (DSD) を認めた. 脳波検査及び頭部CTで, 右後頭葉にてんかん焦点を有する左中頭蓋窩クモ膜嚢胞と診断された. クモ膜嚢胞に対する外科的処置によりてんかん焦点の消失と共に尿失禁の改善を認め, 尿流動態検査上も正活動膀胱への変化とDSDの改善を認めた.
    本症例では, 中頭蓋窩クモ膜嚢胞による異所性てんかん焦点が尿失禁の発症に関与していたと思われた.
feedback
Top