日本泌尿器科学会雑誌
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81 巻, 7 号
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  • その現状と問題点
    白井 将文
    1990 年 81 巻 7 号 p. 965-981
    発行日: 1990/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    ヒト陰茎深動脈より分岐したら行動脈が陰茎海綿体洞に開口する直前に平滑筋からなる弁構造があり, ここには自律神経が密に分布しており, これらが弁の開閉に深く関与していると考えられる. 一方, 陰茎海綿体洞より流出する静脈には弁構造はなく, 白膜直下を平行に走った後, 白膜を斜め, あるいは垂直に貫いて陰茎背静脈系に流入している. このような構築からら行動脈の弁が開くと血流が海綿体洞に流入し膨脹し流出静脈は白膜との間で圧迫され, また白膜自身が弁の作用をして血流の還流を妨害し勃起の維持に重要な働きをすると考えられる. また勃起の硬直には坐骨海綿体筋の収縮も関与していると考えられる. 一方, 海綿体小柱も勃起に深く関与していると考えられている.
    次にインポテンスの診断では勃起機能検査が最も重要で, 特にパパベリンテストや dynamic cavernosometry, cavernosography による血管性インポテンスの鑑別診断が可能となった. 治療も塩酸パパベリンやプロスタグランディンE1のような血管作動薬を陰茎海綿体内に注入する治療法が普及してきた. これら治療法で効果のない症例で静脈性インポテンスには深陰茎背静脈結紮術や陰茎海綿体脚部結紮術などが試みられるようになった. また動脈性インポテンスに対しては血行再建術が行われる. これら方法で効果のない症例には各種 penile prosthesis の陰茎内挿入が有効である. また多少でも勃起する症例に対しては勃起補助具を使用させるとよい.
  • 島田 憲次, 田口 恵造, 小池 宏, 細川 尚三, 有馬 正明, 森 義則, 生駒 文彦
    1990 年 81 巻 7 号 p. 982-987
    発行日: 1990/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    過去約16年間に治療が加えられた小児原発性VUR症例の内で, 経過観察期間が3年以上におよぶ541例829尿管の臨床経過, とくに逆流自然消失に焦点を合わせ検討を加えた. 逆流自然消失は182例 (33.6%) 220尿管 (26.5%) に観察された. 性別では男子で40%, 女子で28%と有意の差が認められた. VUR-grade 例では拡張のない grade I~IIの尿管の85%, 軽度拡張尿管 grade IIIでは46%で自然消失がみられたが, 中~高度拡張尿管 grade IV~Vでは10%以下であった. 膀胱機能検査の結果, 37%に不安定膀胱の所見がみられた. 自然消失した症例の内で腎実質に scar が認められたのは7%で, VUR全症例での scar の頻度に比べ有意に低い値であった. 初診時に scar のない逆流腎での自然消失率は30%, scar のある場合は10%であった. 腎長比から計測した small kidney の頻度は4%で, VUR全症例での small kidney の頻度に比べ有意に低かった. 逆流腎が正常の大きさの場合の自然消失率は30%, small kidney では6%と有意の差がみられた. 逆流消失時の平均年齢は男子5.7歳, 女子7.7歳と男女差がみられた. 初診から逆流消失までの期間は平均1.9年で, 各 VUR-grade の間では有意差は認められなかった. 逆流消失尿管では各 VUR-grade とも最初の1年でほぼ50%が消失し, 3年間では90%が消失していた.
  • 松田 久雄, 中西 淳, 上島 成也, 辻橋 宏典, 栗田 孝
    1990 年 81 巻 7 号 p. 988-992
    発行日: 1990/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    膀胱腫瘍患者でリンパ造影後, リンパ廓清を施行した51例について検討を加えた. リンパ造影有所見例は22例, 無所見例29例, 内病理学的に転移が認められたのは7例であった.
    病理学的に, リンパ節転移を認めた群の主たるリンバ造影所見は陰影欠損85.7%, 副行路57.4%であり, 多変量解析数量化理論IIIにて, 両者の出現の仕方に相関性を認めた.
    リンパ造影において, 敏感度87.5%, 特異度65.1%, 正診率68.6%であり, 他の報告例と比べ十分に高い正診率とはいえなかった. このことより, 膀胱腫瘍に対するリンパ造影の意義は大きいが決定的な方法でなく, リンパ造影後のCTなどを加えた総合画像診断の立場から判断しなければならないと思われた.
  • Freund Complete Adjuvant の発癌抑制効果と宿主免疫能の変化について
    斉藤 文志郎, 大橋 立彦, 富樫 正樹, 小柳 知彦
    1990 年 81 巻 7 号 p. 993-996
    発行日: 1990/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    BCGに対し感受性が低いA/J系マウスと感受性が高いC57BL/6系マウスに対し, BBN誘発膀胱発癌実験を行ない, BCG死菌を含む Freund の完全アジュバント (FCA) による発癌抑制効果と宿主免疫能の変化を検討し, 以下の結果を得た.
    1. FCA非投与群の発癌率はA/J系54.5%, C57BL/6系90.9%と, 2系統間で発癌率に有意差を認めた.
    2. FCA投与群の発癌率はA/J系45.5%, C57BL/6系18.2%であり, C57BL/6系で発癌抑制効果を認めた.
    3. 細胞性免疫能の指標である Footpad 反応は, A/J系においてFCA投与群・非投与群各々11.3±1.27%, 10.2±0.99%と有意差を認めなかったが, C57BL/6系では46.2±6.01%, 11.1±1.29%とFCA投与群で有意に亢進していた.
    以上よりマウスBBN誘発膀胱癌の発癌率は系統間差があり, FCAによる発癌抑制効果・宿主免疫能変化も異なることが判明した.
  • 山本 正, 萩原 正通, 中薗 昌明, 山本 秀伸
    1990 年 81 巻 7 号 p. 997-1001
    発行日: 1990/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    BCG膀胱内注入療法の表在性膀胱腫瘍に対する再発予防効果について検討する目的で, prospective randomized study をおこなった. 経尿道的切除後の初発性表在性膀胱腫瘍44例についてBCG非投与群 (21例) と投与群 (23例) に randomize した. 投与法は Tokyo strain BCG 80mgを1週毎6回, 2週毎6回, 1ヵ月毎20回の膀胱内投与を原則とした. 投与群では, 6ヵ月後に3例, 9ヵ月後に1例再発を認めたが, 平均20.3ヵ月の経過観察期間で, 19例では再発がみられなかった. 一方, 非投与群では, 3ヵ月後に3例, 6ヵ月後に5例, 9ヵ月後に2例, 12ヵ月後に3例, 21ヵ月後に1例再発がみられ, 平均32.3ヵ月の経過観察期間で再発がみられなかったのは7例のみであった. 投与群の1年および2年再発率 (18.4%, 18.4%) は, 非投与群 (63.2%, 68.6%) に比して有意に低値を示した. 本療法に起因する合併症は, 膀胱炎76.2%, 熱発13.0%, 肉眼的血尿13.0%であった. 多くは self-limited であり, 投与中止となったのはわずか2例のみであった. これらのことから, BCG膀胱内注入療法は表在性膀胱腫瘍の再発予防に有効と考えられた.
  • 後藤 章暢, 郷司 和男, 武中 篤, 荒川 創一, 浜見 学, 藤井 昭男, 松本 修, 前田 盛, 守殿 貞夫
    1990 年 81 巻 7 号 p. 1002-1009
    発行日: 1990/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1980年1月より1987年12月までの間に, 当科で入院治療を行った腎盂尿管腫瘍47例の臨床的検討を行った. 年齢は38歳から81歳 (平均65歳), 性比は約3:1と男性に多かった. 47例の内訳は腫盂腫瘍24例, 尿管腫瘍20例および腎盂尿管腫瘍が3例, 患側は右側19例, 左側27例および両側1例であった. 主訴は血尿が最も多く40例 (85%) であった. 初発症状出現より1ヵ月未満に受診したものが9例 (19.1%) であった排泄性腎盂造影で陰影欠損を21例 (47.1%), 患側腎描出不能を15例 (33.8%) に認めた. 尿細胞診は全例に施行し, 44.7%の陽性率であった. 45例に観血的治療が施行され, 腎尿管全摘除術+膀胱部分切除術が30例 (66.7%), 腎尿管摘除術が9例 (20%) であった. 病理組織学的には, 移行上皮癌43例, 扁平上皮癌2例および両者の混在型が2例であった. 術後膀胱内再発を8例 (17.7%) に認めた. 全体の1, 3および5年生存率を Kaplan-Meier 法により算出すると, 各々80.2%, 41.1%および41.1%であった. 初発症状出現から受診までの期間, 腫瘍の Grade および Stage ならびにリンパ節転移の有無が, 重要な予後決定因子と考えられた.
  • 山崎 春城, 近藤 直弥, 今中 啓一郎, 黒田 淳, 中内 憲二, 町田 豊平
    1990 年 81 巻 7 号 p. 1010-1016
    発行日: 1990/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    睾丸胚細胞性腫瘍の化学療法後では, 腫瘍マーカーとしての血中AFP値が一過性に上昇する現象, すなわち血中AFPの急性変動が知られている. この血中AFP値変動の臨床的意味を明確にする目的で, PVB療法後の血中AFP値の推移を経時的に解析しその推移と化学療法効果との関連性を検討した.
    対象は, 治療前に血中AFP値異常を示しPVB療法を施行した睾丸胚細胞性腫瘍31例 (stage I; 11例, stage II; 7例, stage III; 13例) である. 血中AFP値の測定はRIAにより化学療法開始日 Day 1, およびその後 Day 8と Day 22に行ない, AFPの half-life (t1/2)あるいは doubling time (t2) を求めた.
    stage I群では, 血中AFP値は化学療法後 Day 22まで, その biological half-life にほぼしたがって減衰した (t1/2=6.2日). stage II以上では, 化学療法直後の Day 1~8における血中AFP値の推移は治療効果と並行しなかった. すなわちCR (完全寛解) 群でも血中AFP値は減衰遅延 (t1/2=63.0日) をみ, PR (部分寛解) 群では一過性上昇 (t2=49.5日), NR (無効) 群では急上昇 (t2=9.9日) が見られた. 一方, Day 8~22における血中AFP値は, 全症例群とも化学療法効果と一致して推移した.
    進行性睾丸胚細胞性腫瘍の化学療法後 Day 1~8において血中AFPの初期変動が見られた. この期間での血中AFP値による化学療法効果判定は困難であった. また血中AFPの初期変動の出現と化学療法効果との間に負の相関性が見られた. さらに初期変動の機序に関しても検討を加えた.
  • Clomiphene Citrate 投与による精漿 transferrin 上昇度と Sperm Count 改善度との関連性
    高木 良雄, 熊本 悦明, 伊藤 直樹, 南部 明民, 立木 仁, 三熊 直人, 赤樫 圭吾, 丸田 浩
    1990 年 81 巻 7 号 p. 1017-1024
    発行日: 1990/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    男子不妊症のクエン酸クロミフェン投与による Sertoli 細胞機能の変化について検討するため, この薬剤で治療した乏精子症 (精子数20×106/ml未満) 22例, subnormal 症例 (精子数20~39×106/ml) 14例について精子数および精漿中 transferrin の変化について検討した. クエン酸クロミフェンは1日25mgを3ヵ月以上連日経口投与した. 治療後に精漿中 transferrin が1.5倍以上上昇した症例では6例中4例 (66.7%) で精子数の改善 (精子数10×106/ml以上の増加) が認められた. 精漿中 transferrin が1.5倍未満の上昇しか認められない症例では30例中12例 (40%) で精子数の改善が認められた. また治療後に精漿中 transferrin が1.5倍以上上昇した症例では上昇の認められない症例と比較して治療後の血清FSHが高値を示す傾向が認められた. 以上よりクエン酸クロミフェン投与により精子数が改善する症例ではFSHの上昇によって Sertoli 細胞機能が刺激され賦活化することが示唆された.
  • 森田 隆, 近藤 俊
    1990 年 81 巻 7 号 p. 1025-1030
    発行日: 1990/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    加齢によって前立腺の自律神経受容体がどのように変化するのかを検討するために, receptor assay 法を用いて, 若齢, 老齢家兎の前立腺の自律神経受容体 (交感神経α1, α2およびβ受容体, 副交感神経ムスカリン受容体) を定量した. Ligand として, 3H-Prazosin (3H-PZ), 3H-Yohimbine (3H-YOH), 3H-Dihydroalprenolol (3H-DHA), 3H-Quinuclidinylbenzilate (3H-QNB) を使用した.
    それぞれの ligand について家兎前立腺には単一の結合部位が存在することが判明した. 四つの自律神経受容体の量的分布の比率は若齢群と老齢群との間で異なっており, 若齢群ではα1=muscarinic>α2>βであり, 老齢群ではα1>muscarinic>α2>βであった. 交感神経α1, α2受容体は若齢より老齢家兎前立腺に多い傾向が認められた. 交感神経β受容体, 副交感神経ムスカリン受容体総量には年齢差は認められなかった. 従って, 前立腺においては加齢によって自律神経受容体の量が有意に増加することはなく, 量的分布が影響を受けることが示唆された.
  • 横山 正夫, 河合 弘二, 東海林 文夫, 柳澤 良三, 金村 三樹郎, 北原 研, 藤戸 収作
    1990 年 81 巻 7 号 p. 1031-1038
    発行日: 1990/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1966年~1982年の間の東京大学付属病院分院における20例及び1977年~1987年の間の虎の門病院における30例, 計50例の腎盂尿管腫瘍の治療成績について報告した. 男42, 女8 (性比5.3:1) で平均年齢は61歳であり, 部位は腎盂31, 尿管15, 腎盂尿管4で患側は左33, 右16及び両側1であった. 86%に肉眼的血尿を認め, IVP所見は陰影欠損 (42%) 及び無機能腎 (33%) が多かった. 尿細胞診は25例中12例 (48%) で陽性であった. 手術は47例に行われ, 内訳は腎尿管全摘除術+患側後腹膜リンパ節郭清術26, 腎尿管全摘除術+膀胱全摘除術3, 腎尿管全摘除術7, 腎摘除術9, 腎部分切除術1, 尿管部分切除術+尿管尿管吻合術1であった. 組織学的には全例移行上皮癌で, 手術例の1年, 3年, 5年生存率 (カプラン・マイヤー法) は各々84.2%, 73.1%, 69.4%であった. 腫瘍の深達度と悪性度は予後と相関し, リンパ節郭清でのN因子は最も予後に影響した. 非手術例3例中2例は5FU内服, 1例はCAP療法で治療されたが2例は癌死し, 1例は追跡不能であった. 全身化学療法は9例に施行され, 内訳はCDDP単独投与1, CAP療法8, CAP及びMVAC療法1であった. 遠隔転移3例に対する効果はNC1, PD2であり, 全例癌死した. 両側例1例は1側の腎部分切除後, 化学療法が施行され効果はNCで3年8ヵ月生存している. 5例には術後補助化学療法として施行され平均観察期間3年で再発を認めない. 44例中11例は膀胱内に再発し, 55%は術後1年以内に再発した.
  • 尿失禁と逆流腎機能
    太田 章三, 近田 龍一郎, 折笠 精一, 坂井 清英, 久慈 了, 相馬 文彦, 浪間 孝重, 西村 洋介
    1990 年 81 巻 7 号 p. 1039-1044
    発行日: 1990/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    排尿習慣の確立しはじめる3歳以上の小児 primary VUR 例153例を対象に, 尿失禁 (夜尿, 切迫尿失禁) の有無, 尿失禁及び尿路感染の既往の有無と逆流腎機能障害との関係について検討した.
    尿路感染を主訴としたものが98例 (64%) と最も多く, 尿失禁を主訴としたものが43例 (28%) であった. 尿路感染を主訴としたもののうち44例 (45%) に尿失禁が認められ, VUR患者全体では87例 (57%) に尿失禁が見られた.
    尿失禁と逆流腎の機能障害との関係をみると, 尿失禁のみで尿路感染の既往のない例では1例を除き全例腎機能は良好に保たれており, 腎機能障害を伴うものは尿路感染の既往のある例であった.
    以上の結果より, 3歳以上のVUR例では,尿失禁は尿路感染の再発や尿路感染による腎障害の増悪因子となりうるが, VURに伴う腎障害と尿失禁との間には直接の関連は見られなかった.
  • 原林 透, 野々村 克也, 富樫 正樹, 関 利盛, 小柳 知彦
    1990 年 81 巻 7 号 p. 1045-1050
    発行日: 1990/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1963~1987年に当教室で治療を行った陰茎扁平上皮癌38例を対象とし, 臨床的検討を行った. 初診時の病期はI: 22例, II: 7例, III: 9例であった. 鼠径節転移陽性率はT・深達度・異型度の進行により増加し, 特に異型度G2以上はG1に比し有意に高かった. 27例に化学療法と放射線療法による陰茎保存療法を試み, 11例に完全緩解を得た. G1では58%, T2以下では50%と高い完全緩解率を得たが, 45%が平均74ヵ月で局所再発した. 5年生存率は全体では73%, 病期別ではI: 90%, II: 75%, III: 25%であり, 病期IIIは有意に予後が悪かった. 鼠径節転移例の中でもG2例は各種の治療にもかかわらず3年生存率0%であったが, G1例は5年生存率60%と治療が奏効する例がみられた. 以上より異型度が鼠径節転移・保存療法の効果・転移例における予後を予測する上での重要な因子と考えられた.
  • 第1編: 腎細胞癌患者の末梢血単核球機能および血中免疫抑制因子
    薄井 昭博
    1990 年 81 巻 7 号 p. 1051-1057
    発行日: 1990/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    インターロイキン2 (IL-2) 産生能, IL-2レセプター発現率, および Lymphokine activated killer (LAK) 活性を測定し, 腎細胞癌患者の免疫能を検討すると共に, IL-2レセプター発現率, LAK活性におよぼす患者血清の影響を評価した. 腎細胞癌患者末梢血単核球のIL-2産生能は非腫瘍群と比較して抑制されていなかったが, IL-2レセプター発現率は臨床病期の進行とともに低下する傾向がみられた. LAK細胞の細胞障害性 (LAK活性) の検討では, 腎細胞癌患者末梢血単核球より誘導されるLAK細胞はDaudi細胞, ACHN細胞, 自己腫瘍細胞に対して明らかなLAK活性を示した. これに対して腎細胞癌患者血清はIL-2レセプター発現率, LAK活性誘導を抑制し, さらに正常人ボランティアの末梢血より誘導されたLAK細胞の effector phase における活性を抑制した. これらの結果より腎細胞癌患者血清中にはIL-2, LAK細胞を用いた治療の障害となる免疫抑制因子の存在が示唆された.
  • 第2編: 進行性腎細胞癌に対する血漿交換併用LAK療法
    薄井 昭博
    1990 年 81 巻 7 号 p. 1058-1064
    発行日: 1990/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    腎細胞癌患者血清中には Lymphokine activated killer cells を用いた養子免疫療法 (LAK療法) の障害となる免疫抑制因子の存在が報告されている. そこで免疫抑制因子の除去を目的とした血漿交換療法をLAK療法と併用し, 10例の進行性腎細胞癌患者を対象として施行した. 免疫学的指標では, 末梢血リンパ球数の増加, NK活性の亢進,およびLeu11陽性細胞の増加がみられた. 評価可能9例における臨床成績はPR1例, NC5例, PD3例であった. PR症例以外では, NCであった2例で一部の肺転移巣の縮小が認められた. 重篤な副作用としては脳転移を有する2症例で脳浮腫の増強による症状を認め, 1例で血漿交換療法によると思われる急性肝炎がみられた. また, 大半の症例で腎機能の可逆性低下が認められた.
    これらのことより, 本療法は進行性腎細胞癌の治療として期待し得ると考えられた.
  • 白根 由美子, 浜尾 巧, 香川 征
    1990 年 81 巻 7 号 p. 1065-1070
    発行日: 1990/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    蓚酸カルシウムの過飽和溶液から生成する結晶に対する各種グリコサミノグリカンの作用について, 光学顕微鏡により結晶サイズ及び形状の面から検討した. 結晶サイズから結晶成長抑制作用の強さを検討すると, それぞれの尿中濃度範囲に於いてはヘパラン硫酸, ヘパリン, コンドロイチン硫酸, ヒアルロン酸の順であった. 全般にカルシウム濃度, グリコサミノグリカンス濃度のいずれが高くなっても抑制作用は強められた. グリコサミノグリカンの種類により異なる結晶形状を示したが, その要因として分子構造上の相違, 即ち硫酸基の数及び種類 (特にN-硫酸の存在) が考えられた. またヘパリンあるいはヘパラン硫酸の存在で形成された結晶形状はこれまで報告されている高蓚酸尿症患者の尿沈渣中にみられる蓚酸カルシウム一水化物結晶に類似しており, 腎での結晶生成部位にこれらが存在する可能性が考えられた.
  • 宮田 昌伸, 水永 光博, 佐賀 祐司, 谷口 成美, 金子 茂男, 八竹 直
    1990 年 81 巻 7 号 p. 1071-1078
    発行日: 1990/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    正常成人女性36名の58回の排尿について, Uroflow Diagnostic Interpretation (UDI) の排尿パラメーターと排尿量の関係を解析した. 最大尿流量率 (Qmax) と排尿量の中央90%に対する平均尿流量率 (QM90) は, 排尿量400mlまでは直線的に増加した. 排尿時間 (T100) は100~400mlの排尿量ではこれに依存せず一定範囲の値をとり, 全体でも21秒を越えるものはなかった. 排尿量の中央90%に要する排尿時間 (T90), 最大尿流到達時間 (TQmax), Qmax から排尿量の95%までの所要時間 (Tdesc) は排尿量に依存しなかった. 尿流量率の最大増加率 (dQ/dT max) と膀胱容量が40mlに達した時点の計算上の膀胱壁収縮速度 (dL/dT40) は排尿量に依存して増加する傾向が見られた. 20名の神経因性膀胱患者の25回の排尿のうち84.0%, 21名の慢性膀胱炎患者の27回排尿のうち66.7%にT100の延長が見られ, これらはすべてT90の延長を伴っていた. 他のパラメーターでは正常女性と患者間の差もしくは患者群間の差が明らかではなかった. 排尿時間は女性排尿のパラメーターとして有用である.
  • 免疫組織学的検討及び腎癌細胞株におけるインターフェロンによる発現の誘導
    冨田 善彦
    1990 年 81 巻 7 号 p. 1079-1086
    発行日: 1990/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    主要組織適合遺伝子複合体 (MHC) の産物であるMHC抗原は免疫反応において重要な役割を果たしている. このうちクラスII抗原は抗原提示細胞がCD4陽性ヘルパーT細胞に抗原を提示する際に拘束因子として働く, また宿主と移植片のクラスII抗原の違いは移植片の拒絶の原因となることも知られている. さらに, 実験腫瘍の系では腫瘍細胞上でのクラスII抗原の発現が免疫原性の増強につながることが報告されている. 腎細胞癌 (RCC) と宿主の免疫反応の関係を検討するため, 30例のRCCと腎癌細胞株に対し, クラスII MHC抗原の発現を検討した. RCCに対する免疫組織学的検索の結果, 正常尿細管上皮にはみられないクラスII抗原陽性細胞が30例中29例に種々の程度でみられた. またHLA-DR陽性細胞が最も多く, ついでDP, DQの順であつた. 浸潤リンパ球はT細胞がほとんどであり, DPまたはDQ陽性の腫瘍細胞が多い症例でその数が多い傾向にあった. フローサイトメトリーによる解析で検討した3種の腎癌細胞株はクラスII抗原陰性であったが, インターフェロン (IFN)γによる処理後に, KRC/YとACHNが濃度依存性にHLA-DR陽性となり, KRC/Yの少数の細胞ではDPも陽性となった. なお, INFαでは効果は見られなかった. 以上の結果からRCC上のMHCクラスII抗原は治療目的で投与されたIFNや浸潤リンパ球から産成されたIFNにより修飾され, 宿主の免疫反応に影響を与えていることが考えられる.
  • 清水 弘文, 三木 誠, 松本 哲夫, 間宮 良美, 平田 亨, 栃本 真人, 伊藤 貴章, 塩沢 寛明, 辻野 進, 小柴 健一郎
    1990 年 81 巻 7 号 p. 1087-1090
    発行日: 1990/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    非同期性両側性腎細胞癌の2例に対し, 核出術を施行し良好な結果を得たので, それらを報告すると同時に, 非同期性両側性腎細胞癌の治療法について考察を加えた.
    症例1: 60歳女性, 右腎細胞癌のため腎摘除術を行ない10年後, CTなどで左腎細胞癌と診断した. 腫瘍核出術を施行し, 腎阻血時間は37分, 術2時間後より尿排泄を認め, Ccrは65ml/min., 20ヵ月後著変を認めない.
    症例2: 62歳男性, 右腎細胞癌のため腎摘除術を施行, 11年後に左腎に再発した. 腫瘍核出術 (3コ) を行ない, 腎阻血時間は53分, 術後透析を10回行ない, その後利尿がつき, Ccr47.3ml/min. まで回復, 13ヵ月後の現在著変を認めない.
    病理組織学的には前者は clear cell type, grade 1, 後老は alveolar clear cell type で一部 papillary あるいは cystic type の grade 2の腎細胞癌であった.
    これら2例を含め非同期性両側性腎細胞癌は本邦で24例報告されている. これらのうち腎摘除術後透析例は5例, 核出術8例, 部分切除術2例その他9例で, 腎機能を温存する努力がなされている.
    血液透析を避け, 充分な腎機能を残すと同時に, 原発巣を完全に取り除く可能性がある核出術や部分切除術は, このような例では第一選択の治療法といってよいと考える.
  • 金親 史尚, 峰 正英, 石坂 和博, 後藤 修一, 横川 正之, 平賀 聖悟
    1990 年 81 巻 7 号 p. 1091-1094
    発行日: 1990/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は48歳の男性. 排尿困難を主訴に, 近医を受診したが, 尿道よりカテーテルの挿入が出来ないため, 膀胱瘻を造設して尿路管理を行なっていた. 約1年半後に当科を紹介された. X線画像では, 二分脊椎・仙骨形成不全, 球部尿道に限局する狭窄, 水腎水尿管, 左側に中等度のVUR (右側は軽度) が認められ, 尿流測定では自排尿量5ml, 残尿量230mlと高度の排尿困難を示し, 膀胱内圧測定では高活動型膀胱と判定した. 排尿困難の直接的な原因には, 尿道狭窄が関与していると思われたが, 二分脊椎・仙骨形成不全による神経因性膀胱がその背景に存在すると思われた.
    尿道狭窄の原因は不明であったが, まず内尿道切開術を施行したところ自尿可能となったため, 膀胱瘻を閉鎖した. 次に残尿量が多いため, TUR-Bnを行ない著明な残尿量の減少を認めた. その後も腎孟腎炎を繰り返したため, VUR防止術 (Cohen法) を両側尿管に対して行ない, 術後2年を経過しているが, 自排尿は可能で, 水腎症も改善し良好な経過をたどっている.
    二分脊椎による神経因性膀胱の成人発症例は稀であり, 基本的な治療方針は間歇的自己導尿を中心とした保存的療法である. 本症例の場合は, 積極的な外科的治療を行なう方針をとり奏効した結果, 排尿状態と腎機能の改善が得られたものと思われた.
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