日本泌尿器科学会雑誌
Online ISSN : 1884-7110
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81 巻, 8 号
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  • 小磯 謙吉
    1990 年 81 巻 8 号 p. 1129-1139
    発行日: 1990/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    Urodynamic approach to the disorders of the urinary tract has been based on the knowledge of anatomy and neurophysiology of this abnormality. The development of this field included uroflowmetry, cystometry, urethral profilometry, and electromyogram of the external sphincter. In addition to these investigations new trends in urodynamic field were reviewed. With the advent of muscle biochemistry intra-renal urodynamics has been advocated. These researches would be expected to clarify the mechanism of intra-renal reflux. The another investigation was urophonography. When the urine passed through the posterior urethra the urethral sound occurred. The detecting, recording and analyzing systems were developed. This method would be entirely a new method of urodynamic study.
  • 第1報: 固有腎の形態的変化と嚢胞の発生
    藤田 潔
    1990 年 81 巻 8 号 p. 1140-1147
    発行日: 1990/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    慢性腎不全患者151名の固有腎について腹部エコー, CTを中心とした画像診断法を用いて腎の大きさを測定するとともに, 嚢胞の有無, 石灰化像の有無, 腎腫瘍の有無等を検索し, 以下の結果を得た.
    1) 内科的腎疾患140名のうち40名 (28.6%) に単純性嚢胞, 37名 (26.4%) に多嚢胞化萎縮腎 (ACDK)1)~3)の発生をみた. しかし透析導入期では27名中8名 (29.6%) に嚢胞の発生をみとめたが, ACDKは認められなかった. また糖尿病症例, 泌尿器科的腎疾患の患者にはACDKは認められなかった.
    2) 平均透析期間はACDKがもっとも長く, 統計学的に有意差を認めた. また, 平均年齢はACDKの患者が最も若かったのに対し, 糖尿病性腎症は高齢で, 透析歴が短く, 腎は大きかった.
    3) 固有腎は当初は透析期間の延長とともに萎縮するが, ACDKの発生とともに腫大した.
    4) 腎内石灰化像は151名中51名 (33.8%) にみられ, 多くは嚢胞性疾患に合併していた.
    5) 腎腫瘍は3例にみられた.
  • 第2報: 嚢胞性変化と腎腫瘍との関連について
    藤田 潔
    1990 年 81 巻 8 号 p. 1148-1154
    発行日: 1990/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    151名の透析患者のうち3名に腎腫瘍を発見し, 腎の嚢胞化との関連を臨床的, 組織学的に検討した. 臨床的には. 1例は多嚢胞化萎縮腎 (ACDK) に伴う腎腫瘍であった. 1例は単純性嚢胞を合併し. 1例は嚢胞の合併はないものと思われた. しかし, 組織学的には, 症例2, 症例3とも多数の微小嚢胞が認められ, この被蓋細胞は dysplasia を示し一部では乳頭状の増生を示す腺腫を認めたことから, 透析患者に発生する腎癌は嚢胞の発生と強い関連を有することが示唆された. また, 透析患者に発生する嚢胞は小さくかつ, 癒合傾向を持つとともに, その上皮が増殖能を強く持つことから, 健常人に生じる単純性嚢胞とは異なっていることが示された.
  • 吉田 正林, 長谷川 倫男, 町田 豊平, 鈴木 英訓
    1990 年 81 巻 8 号 p. 1155-1161
    発行日: 1990/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1988年12月より1989年2月までに, 30症例 (腎結石16例, 尿管結石14例) の上部尿路結石にたいし, 各々1回づつ計30回のESWL (TRIPTER X-1) による破砕術を施行した. その結石破砕率は100%であった. 治療1ヵ月後のレントゲン撮影で, 結石陰影が完全に消失した著効例は10例 (33%) であった. 5mm未満の残石を認めた有効例は10例 (33%) で, 著効と有効をあわせた臨床的有効率は67%であった. また結石部位別の有効率は腎結石で75%, 尿管結石で57%であった.
    副作用として肉眼的血尿, 皮下血腫, 発熱を認めたが重篤なものはなく, また血液生化学上の変化も軽度かつ一過性であり, X線被爆による影響についても特筆すべき点は見られなかった. 以上より本装置による体外衝撃波砕石術は, 有用な上部尿路結石の治療法であると確認した.
  • 森田 辰男, 菊地 敬夫, 橋本 紳一, 後藤 健太郎, 戸塚 一彦, 徳江 章彦, 加藤 兼房, 木村 茂樹
    1990 年 81 巻 8 号 p. 1162-1167
    発行日: 1990/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    S100a0蛋白を特異的に検出するサンドイッチ型EIA法を用いて, 腎細胞癌患者の血清S100a0蛋白を測定するとともに, S100a0蛋白の免疫組織化学的染色を行い, 腎細胞癌患者における血清S100a0蛋白の腫瘍マーカーとしての有用性について検討し, 以下の結果が得られた.
    1) 腎細胞癌患者 (n=36) の血清S100a0蛋白値は, 1,162±2,056pg/ml (Mean±SD) であり, 陽性率は44%であった (既報よりカットオフ値を524pg/mlに設定した). 臨床病期別検討によると, Stage I & II (n=19) では, 301±232pg/ml (陽性率: 16%) であり, Stage III & IV (n=17) では, 2,125±2,705pg/ml (陽性率: 76%) であった.
    2) 臨床経過に伴う血清S100a0蛋白の変化を検討すると, 再発の認められない患者では血清S100a0蛋白は正常範囲内あるいは変動が少なかったが, 病期が進行中の患者では血清S100a0蛋白の漸増が観察された.
    3) 組織学的異型度別検討では, 異型度別血清S100a0蛋白値に有意差を認めなかった.
    4) 免疫組織学的検討 (10例) では, すべての症例で腎癌組織にS100a0蛋白の産生を認めた.
    以上より, 血清S100a0蛋白は, 臨床病期および臨床経過を反映しており, 腎細胞癌のモニタリングマーカーとして有用であることが示唆された.
  • 石井 弘之
    1990 年 81 巻 8 号 p. 1168-1174
    発行日: 1990/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    男児に対する化学療法後の性腺の発育を検討するため, 急性リンパ性白血病 (ALL) 患者の化学療法終了後6ヵ月以内の16例の睾丸組織像とその後の経過を検討した. 平均精細管直径と Johnsen's Score Count の低下は半数以上の例にみられたが, Tubular Fertility Index の低下例はなかった.
    睾丸生検施行12名, 未施行5名の計17名の治癒患者について, 治療終了後1ヵ月から5年において, 睾丸容積, 外陰部の発育状態, 骨年齢, LH, FSH, テストステロンの基礎値, LH-RHテスト, HCGテストの検索をした. 睾丸容積, 外陰部の発育状態, 骨年齢は, ほぼ年齢相応であった. 治療終了後2年未満の例で内分泌検査に異常がみられたが, 2年以上の経過例では睾丸照射例を除きこれらは正常であった. 精液検査施行例は1例あったが, 精子濃度, 運動率とも正常であった.
    以上より, 小児ALLの場合化学療法は, 睾丸に傷害をあたえるが, 治療終了後2年経過すると, 内分泌機能とともに造精機能も徐々に回復することが推測された.
  • 第1編 超音波計測と超音波像の解析
    山口 聡, 藤井 敬三, 金子 茂男, 八竹 直, 安済 勉, 稲田 文衛, 小林 武, 古田 桂二, 石田 初一
    1990 年 81 巻 8 号 p. 1175-1182
    発行日: 1990/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    慢性透析患者280例, 546腎 (右272腎・左274腎) の超音波断層法による腎形態のスクリーニング検査を実施し, 超音波診断・超音波計測・超音波像の解析を行った.
    超音波診断は, 529腎 (96.9%) について可能であり, 結果は萎縮腎313腎 (59.2%), acquired cystic disease of the kidneys (ACDK) 107腎 (20.2%) と両者で全体の約8割を占めた.
    超音波計測値 (腎長径・前後径) 上, 慢性腎不全腎は, 正常機能腎に比し著明に萎縮していたが, 透析例では透析導入8年以降は後天性嚢胞の発生とともに, 腎長径は逆に増大傾向を示した. 原疾患別での腎長径・前後径の比較では, 糖尿病性腎症群が慢性糸球体腎炎群より大きかったが, 長期透析例では両者の差を認めなかった.
    慢性腎不全腎の超音波像の特徴は, 腎全体のイメージ・中心部エコー像・皮質髄質境界の不明瞭化・エコーレベルの増強であった. 腎輪郭の性状は, 長期透析例でACDKの増加とともに不整例が増加する傾向であったが, 必ずしも多くはなかった. 糖尿病性腎症の超音波像は, より正常機能腎に近い像を示した.
    今回の検討では腎合併症は認めなかったが, 検査後2年以内に合併症 (後腹膜腔出血2例・腎腫瘍1例) が発生した. 慢性腎不全患者に対する腎超音波診断は, 簡便で非侵襲性の検査であり, その合併症の早期診断に対しても有用と思われ, 定期的なスクリーニング検査は必要と考えられる.
  • 第2編 Acquired Cystic Disease of the Kidneys
    山口 聡, 藤井 敬三, 金子 茂男, 八竹 直, 安済 勉, 稲田 文衛, 小林 武, 古田 桂二, 石田 初一
    1990 年 81 巻 8 号 p. 1183-1189
    発行日: 1990/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    慢性透析患者280名に対して腎超音波検査を実施し, Acquired cystic disease of the kidneys (以下ACDK) と診断された59例・107腎を対象として, 超音波計測超音波像の解析を行い, 種々の検討を加えた.
    超音波診断上, 萎縮腎と診断された例 (以下萎縮腎例) との比較では, ACDKは若年者でかつ長期透析例に多く, 検査成績では赤血球数・ヘマトクリット値が有意に高値を示した. 超音波計測値は, ACDKは腎長径72.5±15.2mm・前後径41.7±9.8mmといずれも萎縮腎例に比し有意に大きく, その腎長径は透析期間とともに増大していく傾向であった. ACDKの男女別の比較では, 腎長径・前後径ともに男性が有意に大きかった.
    ACDKの発生頻度は, 透析期間とともに増加する傾向であり, 原疾患では慢性糸球体腎炎に多かった. 糖尿病性腎症は1例のみであり, 母集団との比較でも有意に少なかった.
    ACDKの超音波像は, 腎輪郭の性状では不整例が多かったが, 他は萎縮腎例に比し有意差を認めなかった.
    ACDKの合併症は, 今回の検査期間中は認めなかったが, 検査後2年以内に後腹膜腔出血2例 (3.4%), 腎腫瘍1例 (1.7%) が発生した. 慢性腎不全患者, 特にACDKと診断された症例に対しては, 注意深い経過観察が必要であり, これらの合併症の早期発見・治療のためにも, 超音波断層法による腎形態の定期的観察は必要と考えている.
  • 竹中 生昌, 宮川 征男, 國富 公人, 平川 真治, 松岡 則良, 河村 秀樹
    1990 年 81 巻 8 号 p. 1190-1196
    発行日: 1990/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    癌の骨転移に伴う骨代謝動態を明らかにする目的で, 腎, 膀胱癌などの溶骨性転移群および前立腺癌による造骨性転移群あるいは非転移群について, 前立腺肥大症を対照として, 血清 Ca, P, bone glaprotein (BGP), 尿中 Ca, P, hydroxyproline などの骨代謝マーカー及びCa代謝調節ホルモンとして vit D 代謝産物, h-CTおよびCTHを測定した. 溶骨性転移群では, 血清・尿中 Ca, P の上昇, BGPならびに hydroxyprolineが高値を示したこと, 逆に1α25(OH)2Dおよび25OHDの著しい減少を認めたことより, 本群では臨床的な骨破壊像に一致する骨吸収の亢進が主体であったが, 骨のリモデリングに類似する骨形成の異常を示唆する骨代謝動態を示した.
    一方, 造骨性変化を示す前立腺癌骨転移群では, 血清・尿中 Ca, P 値は対照群と差はみられず, 1α25(OH)2Dおよび24・25(OH)2Dが僅かに低値であったこと, および hydroxyproline の中等度の上昇をみとめたことより, 本群でも骨吸収の亢進をみとめた. しかしBGPの上昇はほとんどなく, 臨床的にみとめられている骨形成像は骨代謝にみられる骨芽細胞の関与しない機序が存在することを示唆するものであった.
  • 馬場 志郎, 畠 亮, 中野間 隆, 増田 毅, 出口 修宏, 田崎 寛
    1990 年 81 巻 8 号 p. 1197-1204
    発行日: 1990/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    体外衝撃波 (ピエゾリス, Richard Wolf) の腎および血圧に及ぼす影響を正常血圧ラット (WKY) と高血圧自然発症ラット (SHR) で検討した. 衝撃波投与前に麻酔下に右腎摘術を行い左腎の上下極に止血用クリップを置いた. 第一相の実験では36匹のWKYを6群に分けI群を対照としII, IV, VI群には各々1,250, 2,500, 5,000発の衝撃波を1回に, またIII, V群には各々1,250, 2,500発の衝撃波を2回繰り返して腎に照射した. VI群のラットは照射後48時間以内に死亡した. のこりの群には照射後30, 60日目に tail-cuff 法により血圧を測定し, 112日目で屠殺した. 観察期間中には血圧の有意な変動は認められなかった. II群を除きすべての照射群で腎の瘢痕性繊維化が組織学的に観察され, との変化は衝撃波の総投与数に比例したが分割投与により軽減する傾向があった. V群における血清クレアチニンは対照群に比較して有意に高く, また腎組織中で測定された adenine nucleotide pool は対照群の42%に減少した. つぎにWKY 15匹, SHR 18匹を各々, 片側腎摘対照群, 片側腎摘衝撃波投与群 (2,500発1回), 健常群の3群に分け血圧を照射前, 照射後90日目で測定し23週目で屠殺した. SHRの衝撃波投与群で拡張期血圧は140±11.1mmHgとSHR健常群の123±8.7mmHgと比較して有意に高値を示した (p<0.05). 血漿レニン活性に有意差は認められなかった.
  • 斉藤 政彦, 加藤 久美子, 後藤 百万, 近藤 厚生
    1990 年 81 巻 8 号 p. 1205-1211
    発行日: 1990/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1977年から89年までに泌尿器科的異常を主訴に当科を受診した仙骨部分欠損症15例 (男7, 女8) の下部尿路機能の検討を行なった. 初診時平均年齢は13歳であった. 仙骨の異常は両側仙骨部分欠損9例, 片側仙骨部分欠損6例であった. 主訴は夜尿, 尿失禁が10例, 頻尿が5例, 尿路感染症に伴う発熱が5例, 排尿困難2例であった. 4例に膀胱尿管逆流を認めた. 初回の膀胱内圧測定で無抑制収縮を認める症例は10例, 3例は正常または正常に近い膀胱機能を有した. コンプライアンスは1.4~37.0 (平均10.4) ml/cmH2Oであった. 清潔間欠導尿および抗コリン剤による治療の結果, 無抑制収縮は10例中8例で軽減または消失した. 基本的には核, 核下型神経因性膀胱に罹患していると考えられた. またコンプライアンスは15.1ml/cmH2Oと改善した. 仙骨の欠損状況あるいは他の神経障害程度と尿流動態検査成績との間に相関関係は認められなかった. しかし膀胱形態と膀胱コンプライアンスとの間には有意な相関関係が認められ, 変形の強い膀胱ほどコンプライアンスは低下していた.
  • 小山 雄三, 知念 善昭, 小倉 秀章, 宍戸 清一郎, 比嘉 功, 秦野 直, 早川 正道, 大澤 炯, 五十嵐 正道
    1990 年 81 巻 8 号 p. 1212-1216
    発行日: 1990/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    昭和57年1月より昭和63年12月における, 乳び尿患者87例を対象として, 免疫学的検討を行った. 末梢血中のWBCは78例に検査され, 5,210.3±1,440.9/mm3であった. リンパ球の分画は18.7±9.5%, また, その数は934.1±521.6/mm3と低値であった. リンパ球T細胞・B細胞の百分率は46例に検査され, それぞれ79.3±11.2% (正常値: 76~86), 10.4±7.9% (正常値: 8~16) であり, T細胞は低下の傾向にあった. PHAによるリンパ球幼若化の検査は20例に行われ, 17,410.0±10,275.1c.p.m. (正常値: 37,700~62,400) と正常値よりきわめて低値であった. PPD皮膚反応は22例に行われ, 陽性所見を呈した症例数は9例, 40.9%にすぎなかった. 以上のように乳び尿症においては, 細胞性免疫機能の低下が認められた. 一方, 免疫グロブリンについては51例に検査がなされ, IgG 1,325.3±475.6mg/dl, IgA 243.0±98.3mg/dl, IgM 130.4±95.9mg/dlであり, いずれも正常範囲であった. また, 検査結果間の相関係数の検討を行った結果, リンパ球分画・リンパ球数とT細胞数およびリソパ球幼若化反応に有意に相関が認められた. 乳び尿症では, 長期 follow up可能群で重篤な合併症の発生はなく, 比較的良好な経過をたどるとの報告もある. しかし, drop out した患者が他院を頼って消息を断つこともあり, 衰弱して起立も困難な症例も散見される. 乳び尿症においては, 日和見感染症, 特に, 細胞性免疫能低下がひとつの原因と言われている悪性腫瘍の発生がないかどうか定期的にかつ精密な follow up すべきであると考える.
  • 今井 強一, 鈴木 孝憲, 林 雅道, 中沢 康夫, 中田 誠司, 山中 英寿, 北浦 宏一, 登丸 行雄, 三木 正也, 加藤 宣雄, 佐 ...
    1990 年 81 巻 8 号 p. 1217-1224
    発行日: 1990/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    予後因子研究は疾患の臨床経過理解・治療法の決定・治療成績の評価等に有益な情報を提供する. 前立腺癌好発年齢を考慮し全身状態に関する因子を加え, 生存率のみならず前立腺癌死率との相関を基軸に本研究はなされた. 検討された因子は性格の, (1) 生存因子・癌死因子として共に統計的に相関ありと証明されたもの (病期・病理分化度・酸性フォスファターゼ), (2) 統計的には有意であったがカテゴリー間で生存と癌死率との関連が逆であったもの (年齢・既往歴/合併症), (3) 生存率のみ有意であったもの (赤血球沈降速度・歩行障害・血尿), (4) いずれも統計的には有意の相関が得られなかったもの, に大別される. 臨床医は各因子の特徴やカテゴリー間における生存率差の大きさを考慮にいれ各因子を使用することが望ましい.
  • 藤田 民夫, 名出 頼男, 大島 伸一, 小野 佳成, 鈴木 和雄, 田島 淳, 浅野 晴好, 太田 和雄, 福島 雅典, 阿曽 佳郎
    1990 年 81 巻 8 号 p. 1225-1231
    発行日: 1990/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    昭和57年9月より, 昭和59年5月までに, 進行前立腺癌と診断された52から80歳の12症例に clsplatinum, peplomycin, adriamycin の3剤を併用投与し, NPCPの効果判定基準に基づき, 効果判定を行った. 投与した回数は1~5回で, 12例中評価可能症例は強い悪心嘔吐のため投与中止した1例を除く11例であった.
    その結果, PR2例, SD5例, PD4例で, PR以上の奏効率は18.2%であった.
    これら症例のうち進行がみられた時点で, 10例に後療法としてホルモン療法を行ったところ, PR6例, SD1例, PD3例で, PR以上の奏効率は60%であった. なお奏効症例は高度あるいは中等度分化型の症例であった.
    以上の結果より cisplatinum, peplomycin, adriamycin の3剤併用療法は, 進行性前立腺癌に対する臨床的有効性は低いが, 後療法として行うホルモン療法の効果になんらかの影響があることが示唆された.
  • 寺沢 良夫, 福田 陽一, 加藤 正和, 森田 昌良, 鈴木 康義, 鈴木 騏一, 高橋 寿, 石崎 允, 今井 恵子, 鈴木 富夫, 関野 ...
    1990 年 81 巻 8 号 p. 1232-1239
    発行日: 1990/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1984年7月から1989年3月までの4年8ヵ月間に当院で手術された腎細胞癌は67人であった. この67人中摘出最大腫瘍径4cm以下の腎細胞癌 (便宜上今回小腎細胞癌とする) の31人について検討した. 小腎細胞癌の全腎細胞癌に対する割合は, 前期 (1984年7月~1987年7月) の3年1ヵ月では14人 (36%), 後期 (1987年8月~1989年3月) では17人 (61%) と小腎細胞癌が半数以上を占め, 且つエコースクリーニングでの診断例が31人中25人 (80%) であった. 腫瘍の局在性は24人 (77%) で腎辺縁より突出し, 腎実質内は7人 (23%) であって, 小腎細胞癌の77%で腎輪郭の変形を伴っていた. 腎細胞癌の早期診断にはエコースクリーニング法が最も有効だと考えられた.
  • 特に不安定膀胱の有無からみたVUR自然消失と腎瘢痕について
    柿崎 秀宏, 後藤 敏明, 森田 肇, 小柳 知彦
    1990 年 81 巻 8 号 p. 1240-1246
    発行日: 1990/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    昭和50年以降当科を初診した小児原発性VURのうち, 2年以上の観察が可能でかつ膀胱内圧検査を施行しえた104例を対象とした. 全例で内視鏡検査を施行し, 下部尿路の器質的通過障害は否定されている. 不安定膀胱 (以下USB) を認めるもの74例, 認めないもの30例であったが, 前者にはUSBの消失まで抗コリン剤を投与した. VURの程度には両群で差を認めず, III度以上の高度VURが5割以上であった. VUR自然消失はUSB (+) 群13例 (18%), USB (-) 群5例 (17%) で, そのVURの程度は前者ではIIb以上が過半数を占めるのに対し, 後者ではすべてIIa以下であった. IVPでみた初診時の腎瘢痕陽性率はそれぞれ26%, 36%であった. これをVURの程度との関係でみると両群ともVURの程度の上昇に伴い初診時の腎瘢痕陽性率が増加する傾向が認められた. 腎瘢痕進展 (新生+進行) に関しては73例で評価可能であった. 腎瘢痕進展は全体で6.8%で, 新生例はなく, 進行はUSB (+) 群で5例のみ認められたが, いずれも進行までの期間は2年以内で, 初診時既に腎瘢痕進行のプロセスが始まっていたものと思われた. 不安定膀胱を伴う小児原発性VUR症例においては, 抗コリン剤による不安定膀胱のコントロールは高度のVURでも自然消失をもたらし, またscar進展を防止している可能性も示唆され, 不安定膀胱の有無の評価および不安定膀胱に対する治療はたとえ手術を先行させる場合でも小児原発性VURの治療上必須であることを強調した.
  • 小野 佳成, 渡辺 丈治, 山田 伸, 松浦 治, 竹内 宣久, 田中 国晃, 橋本 純一, 大島 伸一
    1990 年 81 巻 8 号 p. 1247-1250
    発行日: 1990/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1986年8月より1989年7月までに社会保険中京病院泌尿器科及び小牧市民病院泌尿器科において腎孟尿管移行部から中部尿管の上部尿路閉塞性病変を有する52例54腎尿管に尿路閉塞解除を目的とした経皮的内視鏡手術を59回施行した. 手術方法は, 腎孟, 腎孟尿管切開 (53回), 直視下拡張 (6回) であった. 原因疾患は先天性26腎尿管, 結石による瘢痕16腎尿管, 手術後瘢痕15腎尿管, 結核によるもの2腎尿管であった. 手術後観察期間は3ヵ月から41ヵ月, 平均±S. D.; 12.2±7.3ヵ月であった.
    49回の手術 (83.1%) で排泄性腎孟造影あるいはTcDTPAレノグラムで閉塞性変化の改善がみられ,10回の手術で閉塞性変化の不変, 悪化がみられた. 合併症として輸血を必要とする腎穿刺部からの出血が4回 (6.7%) に, 後腹膜腔への灌流液の漏出が3回 (5.0%) にみられた. 他に重症な合併症はみられなかった. 本術式は, 腎孟尿管移行部から上部尿管の閉塞性病変に対する尿路再建術として有用な術式であると考えられる.
  • 木村 文宏, 川畑 幸嗣, 頼母木 洋, 浅野 友彦, 中島 史雄, 中村 宏
    1990 年 81 巻 8 号 p. 1251-1254
    発行日: 1990/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    70歳の女性. 肉眼的血尿が出現し, 尿細胞診, 膀胱鏡, DIP, CT, 血管造影等を行い術前に, 腎癌と腎盂尿管膀胱癌との重複癌と診断し右根治的腎尿管全摘出術, 膀胱部分切除術を行った. 病理組織学的診断は clear cell type, grade IIの腎細胞癌と grade II~IIIの腎盂および尿管下端の移行上皮癌であった. 本症例では腎動脈造影により術前診断をつけることが可能であった.
  • 入澤 千晴, 山口 脩, 白岩 康夫, 菊池 悦啓, 入澤 俊氏, 入澤 千晶
    1990 年 81 巻 8 号 p. 1255-1257
    発行日: 1990/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は60歳, 男子. 突然の排尿時痛, 尿線中絶及び軽度の膀胱刺激症状を訴え来院. 尿道膀胱造影で明かな結石陰影は認められなかったが, 腹部単純撮影にて両側腎部に多発性の小結石陰影を認めた. 更に, 排泄性腎盂造影で腎長軸が下方で交差する所見と腎錐体先端部の拡張した集合管内に貯留した造影剤を認めた. X線CTでは椎体前面で両腎下極が癒合する所見を認めた. 従って, 本症例は馬蹄腎に海綿腎が合併した稀な1例と診断した.
    臨床上, 馬蹄腎及び海綿腎は比較的よく経験するが, 両者の合併例は本邦では報告されておらず本症例が第1例目と思われた.
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