日本泌尿器科学会雑誌
Online ISSN : 1884-7110
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82 巻, 11 号
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  • 斉藤 泰
    1991 年 82 巻 11 号 p. 1723-1731
    発行日: 1991/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    酸性フォスファターゼは, 前立腺癌の腫瘍マーカーとして測定されるようになり, 治療に対する反応, 診断などで重要な役割を果してきたが, 癌の発見にはそれ程価値を認められなかった. 前立腺からの酸性フォスファターゼの精製, 基質に対する特異性, 各種薬品による酵素活性の阻害実験などから, 前立腺酸性フォスファターゼに特異的に反応する基質と, 阻害剤を用いることによって, 感度や特異性も高まったが, より特異性の高い方法として, 免疫学的測定法が登場してきた. 免疫学的方法により, 測定感度や特異性が高くなったが, 前立腺癌のスクリーニングにおける価値は低い. 免疫組織化学をモノクローナル抗体を用いて行い, 染色の程度は組織学的分化度と相関し, 予後とも相関する報告も出てきた.
  • 高尾 雅也
    1991 年 82 巻 11 号 p. 1732-1741
    発行日: 1991/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    加速度負荷が腎におよぼす影響について, 特にレニン―アンジオテンシン―アルドステロン (R-A-A) 系および高加速度負荷に曝定れる航空機操縦者に対する経皮的腎尿管砕石術の安全性について, 犬モデルを用いて検討した. R-A-A系に対する加速度負荷の影響についての検討では, 通常のNa+摂取量下で飼育定れた平均体重10.9kgの雑種成犬22頭を座位として, 第1群は緩速変化, 第2群は急速変化の高加速度負荷を加えた. 血漿レニン活性は負荷により第1群では有意な変化を示定なかったが, 第2群では負荷後に有意に増加した. 血漿アルドステロン濃度は両群とも, 負荷により有意に増加した. アンジオテンシンIIは, 負荷により第2群で有意に減少した. これらの結果から, 加速度負荷による血漿アルドステロン濃度の増加はR-A-A系の活性化によるものではなく, 加速度負荷による循環血液動態の変化に起因しているものと推察された.
    腎瘻造設腎の加速度負荷への耐性についての検討では, 15頭の雑種雌成犬を用い, ペントバルビタールによる麻酔下に1側腎に腎瘻を作成した. 腎瘻カテーテル抜去後2または4週間後に高加速度負荷を加えた. 負荷前後の腎機能検査に差はなく, 排泄性尿路造影で異常を認めた例もなかった. 負荷前の腎動脈造影ではほぼ全例腎瘻に沿って僅かな腎梗塞像を認めたが, 負荷後もこの状態は変化しなかった. つまり, 腎瘻造設腎は, 高加速度負荷にも十分耐え得るものと思われた.
  • 鈴木 孝憲, 黒川 公平, 岡部 和彦, 伊藤 一人, 羽鳥 基明, 今井 強一, 山中 英寿
    1991 年 82 巻 11 号 p. 1742-1747
    発行日: 1991/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    雄雑種犬の骨盤内血管, 特に前立腺血管と椎骨静脈系との関係を, レントゲン撮影にて観察した.
    腹大動脈は第6腰椎の高さで外腸骨動脈を左右に分岐し, 第7腰椎の高さで内腸骨動脈を左右に, また正中の位置で正中仙骨動脈を分岐していた. 仙腸関節の中央部で内腸骨動脈より分岐した尿生殖動脈は, 頭側に後膀胱動脈を, 尾側に前立腺動脈を分岐していた. 前立腺動脈は前立腺被膜部で分岐し, 尿道の中心部に向かうように実質内に入り, 網状に分岐分布していた.
    前立腺静脈は実質内では網状に分布し, 動脈と並走し, 被膜部で合流し, 後膀胱静脈と吻合後尿生殖静脈へ流入していた. 尿生殖静脈は内腸骨動脈へ流入し, 外腸骨静脈と合流後, 総腸骨静脈, 後大静脈へと流入していた.
    骨盤内静脈と椎骨静脈系との吻合は椎間静脈により行われていた. 椎骨静脈系との交通は, 後大静脈, 総腸骨静脈, 内腸骨静脈および内陰部静脈に観察された.
  • 安川 修, 戎野 庄一, 森本 鎮義, 上原 正樹, 大川 順正
    1991 年 82 巻 11 号 p. 1748-1753
    発行日: 1991/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    尿路結石症におけるクエン酸代謝の異常を解明するひとつの手がかりとして, クエン酸の消化管における吸収と代謝を知る目的で, 血清クエン酸本濃度の測定をクエン酸リアーゼを用いた酵素法により試みた. 本測定法を用い尿中クエン酸を測定する場合に比べ, 反応条件や検体処理に若干の相違が認められた.
    反応に用いる Tris HCl buffer のpHは尿の場合の7.2とは異なり, 8.6よりアルカリ側で良好な反応が得られた. 検体は測定前に除蛋白が必要であり, これは過塩素酸を加えることにより可能であるが, このままでは反応が阻害されるため, 水酸化カリウムを加え検体を中和する必要があり, この時, 検体を冷却することが反応をよりすみやかに完了させた.
    本測定法の血清におけるクエン酸の回収率は95~108%, 再現性は変動係数2.0~7.1%と良好なものであり, 本測定法によって今回測定した健常人17名 (女子1名) の血清クエン酸濃度は1.03~2.30mg/dl, 1.57±0.33mg/dl (平均±標準偏差) であった. また, 健常人7名 (女子1名) において, クエン酸製剤39を経口負荷し, 経時的に血中クエン酸濃度を測定した結果, 負荷15分後から60分後にかけて有意な血中クエン酸濃度の上昇が認められた.
  • 膀胱充満時及び収縮時のイヌ膀胱壁内尿管の活動電位
    川村 繁美, 熊坂 康二, 野呂 一夫, 瀬尾 喜久雄, 久保 隆, 大堀 勉, 鈴木 安, 菅 一徳, 沼里 進
    1991 年 82 巻 11 号 p. 1754-1760
    発行日: 1991/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    膀胱運動と膀胱壁内尿管の関係を知る目的で, イヌを用いて膀胱充満時と収縮時の膀胱壁内尿管の筋電図を膀胱外尿管の筋電図とともに記録した. 膀胱充満は生理食塩水 (10ml/分の注水速度, 5ml/kgの注水量) の注水により得た. 膀胱収縮は電気刺激により惹起した. 経腹膜的に膀胱外尿管と膀胱外より剥離した壁内尿管に電極を刺入し筋電図を記録した. 膀胱瘻を2本作製し, 一方は注水用, 他方は膀胱内圧測定用とした. 結果, 膀胱内圧が約10cmH2Oまで上昇した膀胱充満でも膀胱壁内尿管の活動電位の放電頻度は膀胱外尿管と有意な変化を認めなかった. 膀胱収縮により内圧が収縮前の約5倍に上昇しても壁内尿管の活動電位の放電頻度は膀胱外尿管あるいは, 収縮前と有意な変化を認めなかった. 以上のごとく膀胱充満, 収縮という運動の間も壁内尿管の活動電位は膀胱外尿管と同様に影響を受けず, また膀胱外尿管の尿搬送と同様に尿を能動的に膀胱に送り続けていることが示唆された.
  • 山下 良孝
    1991 年 82 巻 11 号 p. 1761-1770
    発行日: 1991/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    基礎的検討として, 前立腺癌患者23症例, 前立腺肥大症患者24症例, 膀胱腫瘍6症例, 慢性精巣上体炎3症例, 精管異常による無精子症5症例, 避妊希望1症例より得られた, 男性副性器および精巣内各部のα1-receptor を測定した. Ligand として 3H-bunazosin, cold として phentolamime を用い, Scatchard plot analysis を用いて解析した. その結果, 男性副性器のα1-receptor 濃度は精管,前立腺において最も高く, 次いで精巣上体に高く, 精巣では最も低値であった. 精巣各部, 精細管においてはα1-receptor は低値であるが, 精巣網に比較的高濃度に分布していた.
    臨床的検討として, 特発性男性不妊症22例 (無精子症4例, 乏精子症18例) に対して, bunazosin 3mgを連日, 12週から24週間内服定せ治療効果を判定した. 治療開始後12週, 24週の精子濃度改善度27%, 40%, 運動率改善度27%, 67%, 全般改善度36%, 60%の良好な結果を得た. 無精子症, 治療前FSH高値例には治療効果を認めなかった. 副作用は2例 (9.1%) に認められた.
    以上より特発性男性不妊症に対する,α1-blocker 療法は, 有用な治療法であるが, 治療前すでに高度の造精能障害を示すものには効果が無いことが判明した. またその作用部位としては, 精細管におけるより, むしろ精巣上体以後の精路に作用することが示唆された.
  • 田代 和也, 古田 希, 岩室 紳也, 小針 俊彦, 浅野 晃司, 中内 憲二, 長谷川 倫男, 和田 鉄郎, 大石 幸彦, 町田 豊平
    1991 年 82 巻 11 号 p. 1771-1775
    発行日: 1991/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1976年から1979年までの最近14年間に経験した腎盂尿管癌170例から, 併発膀胱癌の発生頻度, 予後への影響を retrospective に検討した. 腎盂尿管癌に対する膀胱癌は, 同時性に発生したものは31例 (18.2%), 術後にみたもの33例 (19.4%) の64例 (37.6%) であった. 原発腫瘍の部位別の併発頻度は, 腎盂が27.2%, 尿管が45.6%, 腎盂と尿管が58.3%であり, 腎盂と尿管の両者に腫瘍のみられたもので有意に高くみられた. 異型度別では, G1に続発性が多くみられた. 病期別ではT4で続発性膀胱癌が少ない傾向がみられたが, 膀胱癌の発生頻度には一定の傾向がなかった. 腎盂尿管癌の予後は, 10年生存率でG1が93.3%, G2が66.6%, G3が12.4%で異型度とよく相関した. しかし, 膀胱癌の併発が初発性であった症例, 続発性にみられた症例, 膀胱癌の併発のなかった症例の5年生存率は, おのおの56.2%, 72.7%, 64.8%と有意な差は認められなかった. 腎盂尿管癌に伴う膀胱癌は, 治療を複雑にするが, その予後に対する影響は認められなかった. 併発膀胱癌の治療は, 特別なものでなく一般の膀胱癌と同様に異型度, 病期に応じた治療をすることで十分と思われた.
  • 梅川 徹, 郡 健二郎, 井口 正典, 栗田 孝
    1991 年 82 巻 11 号 p. 1776-1780
    発行日: 1991/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    ESWLともない発生する腎障害をGd-DTPA enhanced dynamic MRI を用い検討した. 撮影は呼吸停止下高速磁気共鳴画像にてフリップ角20度のT2強調画像で行った.
    正常腎ではGd-DTPAの腎内の通過にともない低信号領域が認められ, これが時間経過とともに腎皮質から髄質へと移動することを認めた. しかしESWL治療後では, これが不明瞭化しておりさらに通常のMRIではとらえることのできない微少な腎実質の変化をとらえることができた. Gd-DTPA enhanced dynamic MRI は今後の minimal invasive ESWL therapy にとってその適正化や短期, 長期的副作用の検討にも有用であると考えられる.
  • 長瀬 泰, 森山 信男, 保坂 義雄, 東原 英二, 村橋 勲, 阿曽 佳郎
    1991 年 82 巻 11 号 p. 1781-1789
    発行日: 1991/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    腎細胞癌患者18例に於て腫瘍組織内, 隣接正常腎組織, 末梢血中の各リンパ球サブセットをフローサイトメトリーを用いて測定するとともに, 免疫組織学的に各リンパ球サブセットの局在や浸潤様式を検討した. 腫瘍組織内では14例でCD5陽性細胞の比率が最も高かった. また17例でCD8陽性細胞がCD4陽性細胞よりも多く, CD4/CD8比は1以下 (0.7±0.3) であった. CD16陽性細胞は2例 (pT2: 1例; pT3a: 1例) でCD5陽性細胞よりも多かった. 正常腎組織では, 各サブセットの割合は腫瘍組織のそれとほぼ同様であったが, 陽性細胞数は腫瘍組織に比べ明らかに少なかった. 末梢血のリンパ球サブセットは健常人のそれとほぼ同様の結果であり, CD4/CD8比は1以上 (1.9±0.8) であった.
    CD8陽性細胞は腫瘍組織で末梢血よりも有意に増加し (p<0.05), 逆にCD4陽性細胞は有意に減少していた (p<0.01). 免疫組織学的検索による腫瘍内浸潤リンパ球の浸潤様式は, 集塊 (cluster) 型, 散在 (single) 型, 混合型の3種類に分類定れた. 腫瘍の悪性度との相関では, grade 1では集塊型/混合型が多く, grade 2では散在型が多くみられた. pTとの相関では, pT3aで散在型が多い傾向がみられた. また, 集塊型ではCD4陽性細胞がCD8陽性細胞を取り囲むように存在する傾向がみられた.
  • 今井 強一, 岡部 和彦, 小林 大志朗, 伊藤 一人, 高橋 修, 山中 英寿, 三木 正也, 登丸 行雄, 佐藤 仁, 黛 卓爾
    1991 年 82 巻 11 号 p. 1790-1799
    発行日: 1991/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    群馬県下の60歳以上男子を対象として行った34,140名の排尿困難アンケート調査と, 前立腺集団検診時に得られた8,219名の問診結果を合わせ, (1) 排尿症状を通して集検例に加わる bias・(2) 加齢と排尿症状の変化・(3) 高齢者における正常排尿状態は如何にとらえるべきか? の3項目について検討した.
    若い集検受診者における症状保有率は他の年齢層や同年齢のアンケート調査結果と比べても高かった. また, 集検受診者の約10%が前立腺肥大症・尿閉・前立腺の手術の治療を受けていた. 集検受診者の特徴として60歳以下の受診者は症状保有率が高い事, 医療を受けたにもかかわらず, その医療内容に満足せずに受診する者が多い事が示唆された.
    尿勢・「いきみ」・遷延性排尿・尿線途絶の4症状と前立腺の大きさ, あるいは加齢との関連性を検討した. 尿勢は大きさと相関し, 加齢との相関性はわずかであった. 他の3症状は大きさ・加齢とある程度の相関性を認めるものの, 統計的・実質的有意差は認められなかった. 夜間排尿回数は加齢と良く相関したが, 大きさとは実質的有意差は設められなかった.
    下部尿路閉塞性疾患の既往歴がなく胡桃大以下の前立腺をもつ60歳以上高齢者における症状保有率は, 尿勢の重篤な衰え約16%,「いきみ」約7%, 遷延性排尿約14%, 尿線途絶約5% (80歳以上では12%) であった. 夜間排尿回数は59歳以下では1回以下, 60から79歳2回以下, 80歳以上3回以下と考えられた.
  • 大西 哲郎, 町田 豊平, 増田 富士男, 鳥居 伸一郎, 白川 浩, 波多野 孝史, 牧野 秀樹
    1991 年 82 巻 11 号 p. 1800-1806
    発行日: 1991/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    免疫組織学的検討を行った腎細胞癌16例中, 透析腎に併発した後天性腎嚢胞 (ACDK) に発生した腎細胞癌2例 (症例1及び症例2) の免疫的環境を検討し, 以下の結論を得た.
    1) 腫瘍細胞のMHC発現は, 症例1では class I, class II 及びDR抗原のいずれも, 対照症例に比較して発現率は高かったが, 症例2ではいずれのMHC発現も認められなかった.
    2) 腫瘍浸潤リンパ球 (TIL) におけるCD25 (IL-2 receptor) の表出は全ての症例で表出率が低かったが, T細胞受容体 (TCR)-alpha/beta chain は症例1では対照群とほぼ同程度の表出率であったが, 症例2では表出していなかった. TIL subset は, 症例1と対照群間の比率に差はなかったが, 症例2ではいずれの subset についても比率が低かった.
    3) 所属リンパ節リンパ球 (RLNL) のCD25は全ての症例で表出がなく, TCR-alpha/beta chain の比率は症例1と対照症例間に差はなかったが, 症例2は表出していなかった, RLNL subset は, 症例1は対照症例に比較してCD3陽性T細胞 (その内の特にCD4陽性T細胞) の比率が高かったが, 症例2では全ての subset 率が低かった.
    4) 末梢血リンパ球の subset では, 症例1と対照症例間に差はなかったが, 症例2では症例1及び対照症例に比較して, CD3陽性T細胞の増加と, その内特にCD4陽性T細胞の比率が高かった.
    従って, ACDK に発生した腎細胞癌には症例2の様なきわめて免疫学的応答の低い症例が存在することが示唆された.
  • 折笠 精一, 今井 克忠, 猪狩 大陸, 木村 正一, 鈴木 康義, 福士 泰夫, 福崎 篤, 吉川 和行, 目時 利林也, 棚橋 善克, ...
    1991 年 82 巻 11 号 p. 1807-1816
    発行日: 1991/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    カテーテルの尿道留置により尿感染が生じ, かつ継続する理由は次ぎの通りである. 1) 尿道とカテーテルの隙間を細菌が上昇する. 2) 侵入した細菌は, カテーテルおよび持続導尿システムに容易に付着し増殖する. 3) カテーテル先端には色々な付着物が付いて細菌の良い培地となり, 細菌の供給源となる. 4) 導尿チューブ内に流れがないと桿菌はゆっくりと上昇し, 流れがあると上昇しないが, 気泡の動きとともに急速に逆流する.5) 持続導尿中といえども平均7.3mlの残尿がある. 6) カテーテル (異物) は, 膀胱の感染防御機構を破壊する.
    一方, 清潔間欠自己導尿 (CIC)は, 非無菌操作にもかかわらず尿感染が生じない. その理由は, カテーテル留置に伴う欠点がないことに加えて, 排尿障害により低下した膀胱の感染防御機構を改善することによる. 導尿操作に伴う細菌感染は, 残尿なく測期的に導尿 (4~5時間以内) すれば問題とならない. しかし, 残尿は尿感染の最も大きな要因なので, 膀胱に肉柱形成や憩室が出来る前にCICを開始すべきであり, 導尿後の残尿測定は正しい導尿指導に役立つ.
  • 経尿道的前立腺切除術後経過におよぼす影響の検討
    藤田 公生, 植木 恒雄, 松島 常, 宗像 昭夫
    1991 年 82 巻 11 号 p. 1817-1820
    発行日: 1991/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    経尿道的前立腺切除術を受けた463例について, グラム陽性菌感染の臨床的意義を検討した. 菌種としては Enterococcus が半数, ついで S. epidermidis, S. aureus の順であった. グラム陽性菌感染が術後にグラム陰性菌感染に発展する危険率は非感染例とほぼ同率で, とくに高くはなかった. 術後に新たなグラム陰性菌感染の発生した症例は発熱を伴ったが, グラム陽性菌感染ではそのようなことはなかった. 尿路感染例は術後膿尿持続期間が延長する傾向がみられたが, グラム陽性菌感染例には長期間続く例はすくなく, 非感染例に近い経過をとった. これらの所見はグラム陽性菌の尿路感染がグラム陰性菌によるものより軽症であることをうらづけた.
  • 松島 常
    1991 年 82 巻 11 号 p. 1821-1828
    発行日: 1991/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    前立腺異型上皮のうちで, 主として細胞異型度に基づいて診断された異型過形成について, 全年齢層に及ぶ310例の剖検前立腺の段階全割標本を作成し, その発生部位, 発生様式, 年齢別頻度, 潜伏癌との合併率について検索し, 更に異型過形成を細胞異型度, 細胞配列の点から3 Grades に分類し, Grade と加齢, 潜伏癌との合併率との関係について検索し異型過形成の前癌病変としての可能性について検討した.
    その結果, (1) 異型過形成は, 発生部位の点で潜伏癌と類似していた. (2) 異型過形成は, 潜伏癌と同様に50歳以上では加齢とともに発生頻度が上昇した. (3) 異型過形成発現世代は潜伏癌発現世代に先行していた. (4) 異型過形成の Grade は加齢とともに high grade 症例の比率が増加した. (5) 異型過形成と潜伏癌は, 統計的に有意に合併していた. (6) 異型過形成の Grade が高い症例で潜伏癌を合併する率が高く, とくに Grade 3症例の74%が潜伏癌を合併していた. (7) 異型過形成と潜伏癌はともに多中心性発生を示す症例があり, 両者は高率に合併する傾向を認めた.
    以上の所見は, 異型過形成の前癌病変としての可能性を支持するものであり, 今後同一患者からの経時的生検により, その生物学的意義が一層明らかにされるものと考えられる. また, 生検にて異型過形成が発見された場合には, とくに high grade の異型過形成においては, すでに高率に癌を合併していると考え, 更なる検索と十分な経過観察が要求されるべきであろう.
  • 川畑 幸嗣, 清水 俊次, 家田 和夫, 中村 宏, 寺畑 信太郎, 相田 真介
    1991 年 82 巻 11 号 p. 1829-1832
    発行日: 1991/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    患者は45歳の女性. 1977年に右顎下腺腫瘍の切除術後コバルト照射を受けた. 右上腕部及び右上殿部の腫瘤を触知したので来院した. 腫瘤の生検では, malignant clear cell tumor が疑われた. 胸部単純エックス線, IVP, CT, MRI, 腎動脈造影により, 右腎腫瘍の, 右肺 (S1+S10), 左第4及び第5肋骨, 右上腕筋, 右上殿筋転移と診断し, 右腎摘除術と右上腕及び右上殿部腫瘤摘除術とを施行した. 組織学的には, 13年前の右顎下腺悪性混合腫瘍の転移と判明したが, 原発巣の局所再発は認められなかった. 右肺と左肋骨の腫瘍摘除術も実施し, 経過は良好である. 唾液腺悪性混合腫瘍の第2例目で, 顎下腺原発としては本邦第1例目であった.
  • 小笠原 英幸, 小川 愛一郎, 石松 隆志, 上田 昭一, 工藤 惇三
    1991 年 82 巻 11 号 p. 1833-1836
    発行日: 1991/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は28歳男性. 主訴は勃起不全, 射精不能. 20歳を過ぎても二次性徴発現せず, 過去に2年間テストステロンの補充療法を受けていた. 内分泌学的検査ではLH, FSH, テストステロンいずれも低値であり, LH-RH負荷試験では, LH, FSHとも反応を示し, 視床下部性と診断した. ポータブル自動注入器によるLH-RHの間欠的皮下注を開始した. 投与量は2時間毎に10μg, 1日量120μgとした. 治療13週目までに精巣容量は約14mlと約4倍に増大し射精可能となった. さらに, LH, FSHおよびテストステロンも正常範囲まで増加し, 治療25週目に, 精液検査にて精子の出現を見た. この治療法は, LH-RHを自然の分泌のリズムに模倣して補うという点で生理的であり, 良好な二次性徴の発現を見た.
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