日本泌尿器科学会雑誌
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82 巻, 2 号
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  • 主として膀胱癌の化学療法
    松村 陽右, 津島 知靖
    1991 年 82 巻 2 号 p. 181-189
    発行日: 1991年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
  • 加瀬 隆久
    1991 年 82 巻 2 号 p. 190-195
    発行日: 1991年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1984年より1988年迄の5年間に, 東邦大学リプロダクションセンターにて, インポテンスの診断を受けた症例のうち, 262例を対象として塩酸パパベリンの陰茎海綿体内投与を行った. mercury strain gauge や rubber strain gauge で勃起状態を正確に記録し, その勃起曲線をパターン分類するとともに一部の症例について末梢血中への塩酸パパベリン流出量を測定し, 勃起曲線のパターンとの関係を検討した.
    末梢血塩酸パパベリン濃度は, 勃起のよいものほど末梢血への流出量が少なく, また勃起のパターン分類との関係では, N type (正常) の流出量が少なく, A type (動脈性), N′ type (動脈および静脈性), V type (静脈性) の順に流出量が多い結果となった.
    また262例の勃起曲線のパターンをみると, N type は45%, A type は10%, N′ type は22.5%, V type は22.5%であった.
    以上より塩酸パパベリン負荷時の勃起曲線のパターン分類は, 血管性インポテンスの鑑別, 特に流出系の障害の診断に極めて有用であると思われる.
  • 安本 亮二, 和田 誠次, 清田 敦彦, 上川 禎則, 河野 学, 阪倉 民浩, 飴野 靖, 浅川 正純, 吉原 秀高, 坂本 亘, 仲谷 ...
    1991 年 82 巻 2 号 p. 196-203
    発行日: 1991年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    Tecnomatix 社製経直腸的温熱療法装置 primus を用い, 30例のBPHについてその臨床成績を評価した. うち8例は留置カテーテルのある症例であった. 温熱条件は, 計算上の前立腺内温度が43~45℃で60分間持続するように設定し合計10回行った. 自覚症状をスコア値にして評価した結果, 留置カテーテルのない全症例に改善が観察された. 留置カテーテルのあった8症例中4例 (50%) にカテーテル抜去が可能であった. 前立腺容積については治療前後で有意差は認められなかったが, 残尿量に明らかな減少傾向が観察された. 最大尿流量率・平均尿流量率に明らかな改善が26%に見られた. 留置カテーテルのない22症例について他覚的改善度を調べてみると, 改善10例 (45%), やや改善6例 (27%), 不変6例 (27%)と, 改善傾向を示した症例は72%であった. 合併症や副作用は見られず, 有用率は63%であった. 温熱機序についてはまだ不明な点があるが, この方法は前立腺肥大症に伴う排尿障害に対し試みてもよい治療方法の一つと思われた.
  • 伊藤 直樹, 熊本 悦明, 丸田 浩, 塚本 泰司, 高木 良雄, 三熊 直人, 南部 明民, 立木 仁
    1991 年 82 巻 2 号 p. 204-209
    発行日: 1991年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    testosterone から aromatase により産生される estradiol の spermatogenesis に対する作用は不明の部分が多い. しかし乏精子症では E2/T ratio の高い症例も認められ, これらの症例では estrogen が造精機能に抑制的に作用しているのではないかと推察される. そこで aromatase を抑制し, estrogen を低下させることが造精機能にどのような影響を及ぼすかを検討した. 男子不妊症9例に aromatase in-hibitor である testolactone (Teslac®) 1.0g/日3ヵ月投与を行ったところ4例で精子数の改善 (治療前精子数に比し10×106/ml以上の増加) を認めた. 治療前後での内分泌学的変化として, estradiol, E2/total T ratio, E2/free T ratio の低下を認め, 血中遊離 testosterone の上昇も全例に認めた. 血中 sex hormone binding globulin (SHBG) を測定したところ, testolactone 投与後でSHBGは低下しており血中遊離 testosterone の上昇はこれによるものと考えられた. 特に治療有効群の4例はいずれも治療前 estradiol, E2/total T ratio, E2/free T ratio 高値の例であったが, testolactone 治療後それぞれ正常範囲内へ低下した症例であった. すなわち血中 estrogen, E2/T ratio が高い乏精子症例に aromatase inhibitor は有用性が高いものと考えられた.
  • 白根 由美子, 梶本 昌昭, 香川 征
    1991 年 82 巻 2 号 p. 210-215
    発行日: 1991年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    蓚酸カルシウムの過飽和溶液から形成される結晶形態は共存するグリコサミノグリカンの種類により異なることは先に報告したが, 本研究では, 更にマグネシウムを添加した場合の結晶形態に対する作用を光学顕微鏡及び走査型電子顕微鏡により検討した. マグネシウムの添加により, 結晶表面に平行に新たに板状の結晶が成長することが認められ, その効果は, ヒアルロン酸<コンドロイチン硫酸<ヘパラン硫酸<ヘパリンの順であった. 特にヘパラン硫酸, ヘパリンの存在する場合には, その板状結晶の薄板化と多層化が顕著であった. 薄板化はマグネシウム濃度に依存して強められており, 低濃度ヘパリンにマグネシウム添加した場合の結晶形態は, 高濃度ヘパリンのものと同様であることから, マグネシウムは各グリコサミノグリカンの結晶形態に対する作用を増強する効果を有することが推察され, そのメカニズムとしてマグネシウムと遊離蓚酸との結合によって形成される蓚酸カルシウム量が減少し, 単位蓚酸カルシウム当りに作用するグリコサミノグリカン量が増加するため考えられた.
  • 大西 哲郎
    1991 年 82 巻 2 号 p. 216-224
    発行日: 1991年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    根治的腎摘除術を施行した腎細胞癌22症例について, 術前IFN-γ無投与群12例 (無投与群) と, IFN-γ投与群10例 (投与群) の2群に分け, リンパ球のモノクローナル抗体による免疫組織染色法を用いてTIL及びPBLの各 subset 比率に関して検討し, さらにIFN-γ投与がこれら subset に及ぼす免疫的効果についても検討した.
    その結果, TILではIFN-γ投与によりCD3 (T細胞) の増加, 特にCD8 (suppressor/cytotoxic T細胞) の増加が認められた. PBLではIFN-γ投与によりCD16 (NK細胞) の増加のみが観察された. stage 別に TIL-subset 比率をみると, high stage 症例に各 subset 比率の高い傾向が観察された. また, IFN-γ投与により low stage 症例でのCD3及びCD8の増加が著しかった. grade 別に検討すると low grade 症例と high grade 症例間で差はなかったが, IFN-γ投与により low grade 症例のCD3及びCD8の増加が観察された. また, PBLについては, stage 及び grade に関係なくCD16の増加のみが観察された.
    従って, IFN-γ投与によりTILのCD3の増加が観察され, そのうち特にCD8を中心とした腫瘍に対する抗原性増強にIFN-γが関与することが示唆された. 同時にこの傾向は low stage 及び low grade の症例に顕著である結果が得られた.
  • 後藤 敏明, 浅野 嘉文, 関 利盛, 野々村 克也, 小柳 知彦
    1991 年 82 巻 2 号 p. 225-231
    発行日: 1991年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    先天性器質的下部尿路通過障害に合併した1側性高度VUR5例, および2度以上の左右差のある両側性VUR4例, 計9症例の経過を報告した. 通過障害の内訳は後部尿道弁5例, 前部尿道狭窄3例, 巨大尿道1例で, 主訴は発熱・尿路感染が最も多く次いで排尿困難, 夜尿症・尿失禁, 肛門からの排尿であった. 後部尿道弁以外の4例は高位鎖肛, 重複尿道 (鎖肛を伴わないH型尿道直腸瘻) を合併していた.
    高度VURは1例を除き全て左側であった. これら左側高度VURの所属腎の機能は腎シンチ上も多くの例で極めて不良で通過障害解除後もVURが消失しにくく, 腎機能の回復もみられなかった. 尿管口の上外側偏位も高度で摘出腎の病理も異形成, 高度低形成であった. 一方, 腎機能からみた予後は右側高度VURの1例を除き良好であった.
    尿管芽説に基きこのような症例をVURD症候群と呼ぶことの可否について考察した. 従来, 後部尿道弁での報告が多いが, 鎖肛例に合併した下部尿路通過障害での報告は初めてである. 大多数の例で腎機能が保たれていたのは, 高度に拡張した左腎尿管が右腎を保護した結果とも考えられた. 先天性器質的下部尿路通過障害に合併したVURは軽度であれば通過障害解除後消失するが, 尿管口の上外側偏位を伴う高度VUR (特に左側例) は消失しにくく, 腎機能の回復も期待出来ず腎摘が妥当である.
  • 免疫組織学的検討及び腎癌細胞株におけるサイトカインの影響
    冨田 善彦, 西山 勉, 佐藤 昭太郎, 藤原 道夫
    1991 年 82 巻 2 号 p. 232-238
    発行日: 1991年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    腎細胞癌 (RCC) と宿主免疫機構の関係を検討するため, 免疫反応において重要な役割を果たしている主要組織適合抗原 (MHC抗原) と intercellular adhesion molecule-1 (ICAM-1) のRCCおよび腎癌細胞株における発現を検討した. 免疫組織学的検討の結果MHC抗原とICAM-1の発現の間に相関がみられた. 全体的に単核球の浸潤の程度が高いほど多くの細胞がMHC抗原とICAM-1を強く発現していた. また, ヒト腎癌細胞株を用いた検討では, 悪性黒色腫の細胞株でICAM-1の発現を増強させ得るサイトカインのうちIFN-γとTNF-αが最もICAM-1とMHCクラスI抗原の発現を増強し, IL-1βはKRC/Yに対してはICAM-1とクラスI抗原の発現を増強したが, ACHNでは主にICAM-1を増強した. またIFN-αはクラスI抗原のみに増強効果を示した. クラスII抗原の発現はIFN-γによってのみ増強された. 以上の結果より腎癌細胞でのICAM-1とクラスI抗原の発現は浸潤単核球により産生され得るサイトカインにより修飾されていることが強く示唆された. この事実から宿主免疫担当細胞による抗腫瘍効果に影響を与える可能性も考えられる.
  • 組織学的な核分裂細胞数との相関について
    柏木 明, 永森 聡, 野々村 克也, 豊田 健一, 小柳 知彦, 野島 孝之, 井上 和秋
    1991 年 82 巻 2 号 p. 239-245
    発行日: 1991年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    Flow cytometry (FCM) を用いて解析したセミノーマの核DNA量と, 病理組織学上の核分裂細胞数による悪性度および病期分類との関係, さらに個々のセミノーマにおける核DNA量上の heterogeneity の有無について検討した. セミノーマ27例のパラフィン包埋標本80検体を用い, HE染色で各症例の核分裂細胞数を検討した後, その標本のDNAヒストグラムをFCMを用いて解析し, DNAIndex (DI) を求めた.
    1) 病理組織学上の核分裂細胞数は1.0~4.2個であり睾丸腫瘍取扱い規約に従い3個以上を退形成セミノーマとすると27例中6例 (22%) に認められた.
    2) 27例中26例 (96%) と高頻度に DNAaneuploidy を認めた.
    3) DNA量上の heterogeneity の頻度は複数検体検討した20例中3例 (15%) と他の固形腫瘍に比し低く, セミノーマが放射線および化学療法によく反応することと対応する結果と思われた.
    4) DI値の分布においては, 退形成性セミノーマ群 (median DI=1.70) と定型的セミノーマ群 (median DI=1.89) との間に有意の差は認められなかったが, 退形成性セミノーマのDIはすべて1.5から2.0の間に分布したのに対し, 2.0以上の大きなDI値を示した9例はすべて定型的セミノーマであった.
    5) 病期分類とDIの関係では, stage I で median DI=1.88, stage II およびIIIで median DI=1.75であったが, 両群に有意の差は認められなかった.
    以上よりセミノーマにおいてはDI値の大きなものが必ずしも組織学的および臨床的悪性度が高いとはいえない結果であった.
  • 蓚酸カルシウム結晶に対する作用の実験的研究並びに正常人における投与効果の検討
    深谷 俊郎
    1991 年 82 巻 2 号 p. 246-253
    発行日: 1991年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    蓚酸カルシウム結石に対する sodium pentosan polysulphate (SPP) の抑制活性について以下の3点から実験的検討を加えた. 1) 蓚酸カルシウム結晶形成, 凝集及び成長に対する抑制活性. 2) ラット実験結石モデルにおけるSPPの効果. 3) ヒトにおけるSPPの投与効果について, 尿中蓚酸カルシウムの metastable limit の変化, および蓚酸カルシウム結晶成長に対する尿の抑制活性の変化.
    結果は以下の通りであった.
    1. Aggregometer を用いて測定した蓚酸カルシウム結晶形成は, 1mM以上の濃度のSPPの添加により抑制されることが確認された.
    2. Coulter counter を用いた結晶凝集抑制活性の検討では, SPPは低濃度 (0.02μM) から抑制活性を示した.
    3.〔14C〕を用いた seeded crystal 法による結晶成長の面での検討では, SPPは低濃度から濃度依存的に抑制活性を示すことが確認された.
    4. Ethylene glycol (0.4%) の投与されたratの腎尿細管内に誘発される蓚酸カルシウムの結晶沈着は, SPPの筋肉内投与 (30mg/kg/day, 60mg/kg/day) により抑制されることが期待された.
    5. 健康成人男子5名でSPP250mgを1日2回5日間経口投与し, その前後に24時間尿を採取した. 各尿において, 尿中蓚酸カルシウムの metastable limit, および蓚酸カルシウム結晶成長抑制活性の測定を行い, 前者ではSPP投与後に上昇する傾向が見られたが, 後者では一定の傾向が得られなかった.
  • 一条 貞敏, 坂上 善成, 入沢 千晴, 橋本 樹, 白岩 康夫
    1991 年 82 巻 2 号 p. 254-259
    発行日: 1991年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    前立腺癌の確定診断には, 我々の開発した前立腺分泌液細胞診法が効果的である. 今回, この細胞診所見から組織分化度ひいては癌悪性度を推測したく, 細胞異型性の程度と組織分化度, 病期および癌死亡率との関係を検討した. 検索症例は1980年12月から1988年12月までに施行した本細胞診591例中, 癌細胞が検出され, かつ癌組織が確認された新鮮前立腺癌62例である.
    細胞異型性の軽度な例は, 組織所見も分化型ないし中等度分化型が, 逆に分化型の組織例に細胞異型性が軽度な例が多かった. 一方, 細胞異型性の高度な例ではほぼ全例において組織所見も未分化型で, 未分化組織例では細胞異型の高度な例が多かった.
    また, 組織分化度が軽度なほど, 細胞異型性が高度なほど進行期例および癌死例も多く見られた.
    すなわち, 本細胞診における異型性は組織分化度とよく関連 (χ2=35,441, p<0.001) し, この異型性の程度は組織分化度におとらず癌悪性度のよい指標となった.
  • ホルモン剤投与中止の可能性をさぐる
    上村 博司, 里見 佳昭, 菅原 敏道, 山口 豊明, 岸田 健, 石橋 克夫, 原田 昌興
    1991 年 82 巻 2 号 p. 260-267
    発行日: 1991年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    10年以上経過をみた前立腺癌症例70例を対象として, その予後調査を行った. 治療は内分泌療法を施行した. また, 除睾術を70例中54例 (77%) に施行した. 生存10例, 死亡60例で, 癌死は31例と半数を占めた.
    stage A, Bでは, 癌死は少なく, stage C, Dは癌死が10例と18例で高率にみられた. 一方, 長期生存例は, stage A11例, A22例, B1例, C4例, D2例とどの stage においても存在した. 病理組織別では, 高分化型群に癌死がみられず, また stage A, Bでは高分化・中分化型群に同様に癌死がなかった. ホルモン剤中断例では, 高分化型群で癌死は存在せず, 中分化型群で stage C, Dに癌死がみられた. 低分化型群は予後が悪く, とくに中断後は短期間内に癌死した.
    高分化型群では癌死がいないこと, stage A, Bでは高分化・中分化型群で癌死はなく, またホルモン剤中断後も癌死がないことより, 除睾術施行後の高分化型腺癌で stage A, Bの症例では, ある一定期間の継続的内分泌療法を施行後に, ホルモン剤の中断・中止の可能性が推察され, 一定の条件下でホルモン剤の中止ができるのではないかということを提唱した.
  • 小関 清夫, 入沢 千晴, 白岩 康夫
    1991 年 82 巻 2 号 p. 268-273
    発行日: 1991年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    表在性膀胱腫瘍に対する膀胱内注入療法時の薬剤のスクリーニングを目的として, trypan blue 染色を用いた dye exclusion assay による各種制癌剤の感受性試験を試みた.
    マウス可移植膀胱腫瘍細胞 (MBT-2) を用い, in vitro で各種東濃度 adriamycin (4, 40, 400, 1,000μg/ml) 存在下に, 5%CO2, 37℃で2時間インキュベートし, cellular viability 算定後マウス大腿皮下に移植した. cellular viability と腫瘍生着率, 腫瘍発育抑制, 生存期間延長とはよく相関し, adriamycin 処理群では濃度依存性が認められた. 一方, verapamil 高濃度処理群 (100, 500μg/ml) でも, cellular viability の低下, 腫瘍発育抑制, 生存期間延長が認められた.
    表在性膀胱腫瘍症例を対象として, 生検により得られた腫瘍細胞を用い, adriamycin, 4′-0-tetrahydropyranyladriamycin, mitomycin C, pepleomycin 各々1,000μg/ml存在下に同様に処理し, cellular viability を算定した. また, 症例によっては verapamil を500μg/mlの濃度で単剤処理, または併用した. 臨床例においては制癌剤の種類により cellular viability にかなりの差が出る事, また, verapamil 単剤でも高濃度で用いた場合, MBT-2と同様に cellular viability が低下する事が確認された.
    本法により, 膀胱内注入療法時の薬剤選択において, 迅速, 簡便なスクリーニングが可能であり, 有用と思われる.
  • 感染の特徴, 尿中分泌型IgAおよび尿の性状について
    加藤 慎之介, 折笠 精一, 福士 泰夫, 豊田 精一, 伊藤 晋, 鈴木 康義
    1991 年 82 巻 2 号 p. 274-281
    発行日: 1991年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1977年7月より1989年3月までに, 尿路に腸管を利用した24例 (以下, 腸管利用群と省略) の尿路感染の特徴と, 尿中分泌型Ig濃度, 尿の性状について, 通常の複雑性尿路感染症26例 (以下, 対照群と省略) と比較検討した. 単独, 複数菌感染の頻度には, 両群間に有意差はなかったが, 分離菌種は, 腸管利用群で Streptococcus 属, Providencia 属が高率に分離され, 逆にP. aeruginosa の分離頻度は低かった. 腸管利用群のカテーテル留置例にみられた複数菌感染では, E. faecalis と Providencia 属を含む組み合せが高頻度にみられた. 腸管利用群, 対照群の尿中分泌型IgA濃度の平均はそれぞれ94.0μg/dl, 25.0μg/dlと腸管利用群で有意に高い値を示した (p<0.0001). 尿pH, 尿素窒素濃度の平均は両群間に有意差はなかったが, 浸透圧の平均は, それぞれ370,500mOsm/kgと腸管利用群で有意に低い値を示した (p<0.005). 以上のように, 腸管を利用した尿路では通常の尿路とは異なった感染, 及び感染防御機構が存在する可能性が考えられた.
  • 佐藤 健, 河合 弘二, 岩崎 明郎, 石川 博通, 小磯 謙吉, 菅間 博, 小形 岳三郎
    1991 年 82 巻 2 号 p. 282-289
    発行日: 1991年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1978年1月から1989年8月までに筑波大学付属病院で経験した腎細胞癌105例について, 病理組織学的診断と予後との関係を統計学的に分析した.
    1. pTNM分類では, pT2以下とpT3aとの間には生存率の有意差はなく, pT3aとpT3b以上との間には有意差が認められた.
    2. 組織学的異型度別の生存数は, G1群がG2群より, G2群がG3群より有意に良好であった.
    3. 組織学的細胞型別の検討では, 淡明細胞亜型群が顆粒細胞亜型群および混合亜型群より有意に予後良好であったが, 顆粒細胞亜型群と混合亜型群との間には有意差はなかった.
    4. 組織学的浸潤増殖様式別の検討では, INFα群がINFβ群に比して有意に予後良好であった.
  • 薮崎 昇, 小松 秀樹, 多胡 紀一郎, 山田 豊, 上野 精
    1991 年 82 巻 2 号 p. 290-296
    発行日: 1991年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1985年6月から1988年10月の間42例の初発表在性膀胱腫瘍 (pTa, pT1) 患者に再発予防目的にBCG膀胱内注入を行い prospective randomized trial によってBCG維持注入の有用性を検討した. BCGの注入はTUR-BT後5日間連日 mitomycin C 20mg 膀胱内注入に引き続き, Tokyo strain 80mg を週1回計6回, 維持注入はその後3ヵ月ごと4回行った. 42例は randomization で非維持群22例, 維持群20例と分けられたが, 副作用のため非維持群の2例, 維持群の1例で6回のBCG注入が施行できなかった. また, 経過観察が1年以下で途切れた症例が非維持群1例に対し維持群で5例と多く, 維持群の除外症例が多くなった. 以上BCGを6回以上注入し, 1年以上経過観察ができたのは33例であった. これら33例について平均28ヵ月の観察の結果, 再発は6例, 3年累積非再発率は82%と良好であった. BCG採用以前に当院でTURと mitomycin C のみで治療した症例の3年累積非再発率は58%であり, BCGの再発予防効果が高いと考えられた. 再発した6例の初発時腫瘍の深達度はすべてpT1bで, pTa+pT1a群に比べてpT1b腫瘍の非再発率は有意に低かった. 次に, 6回のBCG注入後初回の膀胱鏡検査で非維持群, 維持群それぞれ1例に再発があったため, これら2例を除外した非維持群18例, 維持群13例の比較をした. 3年非再発率は各83%, 94%で, 両群の非再発率に有意差はなく, 維持注入療法の有用性はほとんどないと考えられた.
  • 氏家 隆, 門間 信博
    1991 年 82 巻 2 号 p. 297-304
    発行日: 1991年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    精巣原発の胚細胞腫瘍44例において, 抗NSE抗体を用いて免疫組織化学的染色を行なった. また, 本症例中7例では腫瘍摘出前後に, 2例では摘出前に血清NSE濃度を測定した.
    単一組織型 seminoma 20例では spermatocytic seminoma の1例を除く, typical および anaplastic seminoma の19例全例がNSE陽性であり, seminoma を含む複合組織型9例では全例で seminoma の部分に陽性であった. seminoma 以外では, 複合組織型で embryonal carcinoma を含む15例中13例で embryonal carcinoma の一部に, また, yolk sac tumor では21例中8例で一部の腫瘍細胞に陽性であった. mature あるいは immature teratoma では14例中10例で神経系の細胞, 軟骨細胞, 腺上皮などがNSEが陽性であった.
    対照としての正常精巣5例ではいずれもNSEが精祖細胞に陽性であった.
    本症例中術前に血清NSE濃度を測定した9例のうち, 単一組織型の seminoma 5例中4例と複合組織型で seminoma を含む2例のうち1例の, 計7例中5例で, NSEが術前に高値であったが, 腫瘍摘出後に低下した. 血清NSEの上昇を認めた症例は病期の進行した例, もしくは腫瘍の大きいものであった.
    これらの結果から, 精巣胚細胞腫瘍において, 抗NSE抗体を用いた免疫組織学的検査は seminoma の病理組織診断上有用であり, さらに, 血清NSE値は seminoma の診断と臨床経過を観察するのに有用であると考えられた.
  • 木暮 輝明, 原田 忠, 西沢 理, 宮形 滋, 高 大輔, 下田 次郎, 吉田 公基, 佐藤 良延, 塚田 大星, 土田 正義, 小林 満 ...
    1991 年 82 巻 2 号 p. 305-311
    発行日: 1991年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    前立腺癌に対して遠隔操作による経尿道的コバルト照射を施行し, その局所効果, 副作用などについて検討した. 対象症例は12例で, うち8例は再燃例, 4例は初回治療例であった. 前立腺癌取扱い規約による病期分類はStage B2, 3例, stage C, 3例, stage D1, 3例, stage D2, 3例であり, 観察期間は13ヵ月から33ヵ月 (平均20.6ヵ月) であった. 経尿道的照射療法による前立腺被膜部の総照射線量は, 平均41.2Gyであった. また, Stage D1 の3例および Stage C の1例には骨盤内に外照射40Gyを追加した. 照射後の前立腺触診, 超音波検査では, 前立腺の縮小効果が認められた. また, 経時的生検から本法の制癌効果が病理組織学的にも確認された. 副作用としては一過性の頻尿が7例に認められたが, 重篤な合併症は認められなかった.
  • 奥野 哲男, 増田 光伸, 山崎 彰, 広川 信, 松下 和彦, 朝倉 茂夫
    1991 年 82 巻 2 号 p. 312-315
    発行日: 1991年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は, 59歳男性, 血尿で来院した. 血尿は高度で多くの輸血を必要とした. CTで膀胱左後壁に腫瘍が認められ, 膀胱壁外浸潤も疑われた. 膀胱生検では移行上皮癌と考えられたが, 膀胱全摘術を施行したところ, 腫瘍は5.5cm×4.0cm×4.5cm大, 比較的境界明瞭な半球状で, 組織学的には悪性線維性組織球腫 (炎症型) であった. 著明な静脈内浸潤が認められ, 不良な予後が推察されたが, 後療法としてアドリアマイシン (100mg, day 1)・ダカルバジン (400mg, day 1~5) 併用化学療法を計5クール追加し, 24ヵ月後の時点で, 再発・転移は認められていない.
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