日本泌尿器科学会雑誌
Online ISSN : 1884-7110
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82 巻, 7 号
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  • 折笠 精一
    1991 年 82 巻 7 号 p. 1027-1044
    発行日: 1991/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    The recent development in the treatment of the urinary stones has much to do with underwater shock waves. And urologists have become more agressive in using this modality in the treatment of the complicated stone patient.
    However, contoversy persists regarding the extent to which the applied voltage and shock wave number interact to induce both cellular injury and stone fragmentation and also the appropriate timing of repeat lithotripsy treatments.
    It is very short time since underwater shock wave has been initially applied to human body. The effects of the shock wave on the microstructure of the tissues are pooly understood. The questions, what happens at the F2 focus and what happens to the energy after arriving at the F2, remain unclear. The bioeffects of ESWL should be more and more scrutinized.
  • 越智 淳三
    1991 年 82 巻 7 号 p. 1045-1052
    発行日: 1991/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    CDDP耐性機序解明を目的として, まず親株T24 (CL-7) にCDDPを持続接触させ, 濃度を漸増させることによりCDDP耐性膀胱癌培養細胞株CL-7/CDDPを樹立した. ついでこのCL-7/CDDPと親株CL-7それぞれの生物学的特性・生化学特性を検討した.
    CDDP耐性膀胱癌培養細胞株CL-7/CDDPは, 親株CL-7に対し2.7倍のCDDP耐性を示した. 両株の doubling time および plating efficiency に差はなかったが, 染色体数のモードにおいて若干の差を認め, 耐性発現は mutation→selection あるいは selection のいずれかによるものと思われた. 細胞内CDDP量に差はなかったが, 細胞内GSH, MTはCL-7/CDDPが高値を示した. CDDP耐性発現は, 細胞外への efflux の亢進ではなく, 細胞内不活化に依存すると考えられた.
    CDDP耐性膀胱癌培養細胞株と親株の生物学的・生化学的相違点が示された. この細胞株を用いた実験をさらに進めることによりCDDP耐性克服も可能と思われる.
  • 計画的多施設共同研究
    赤座 英之, 亀山 周二, 金村 三樹郎, 北島 清彰, 本間 之夫, 河村 毅, 岡田 清己, 村橋 勲, 河邊 香月, 岩動 孝一郎, ...
    1991 年 82 巻 7 号 p. 1053-1058
    発行日: 1991/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    16施設の共同研究により, ヒトリンパ芽球性インターフェロンαとUFTの併用投与の進行性腎細胞癌に対する臨床効果の検討を行なった.
    インターフェロンαの投与量は300万IU, UFTの投与量はFT量として1日300~600mgとし最低8週間以上併用投与することとした. 臨床効果の判定は腎癌取り扱い規約 (日本泌尿器科学会, 病理学会), 固形癌化学療法直接効果判定基準 (癌治療学会) に準じて行った. 登録された28例中, 不適格例0例, 不完全例3例, 完全例25例であった. 25例のうちCR 3例, PR 2例, MR 2例, NC 5例, PD 13例で奏効率は20.0%であった. 奏効を得るまでの平均期間は122日であった. また25例全体の50%生存期間は716日 (約23.9ヵ月) であった.
    副作用は27例で検討されたが自他覚的副作用では発熱, 食欲不振が, 臨床検査値異常ではヘモグロビン減少, 赤血球数減少, 白血球数減少, が主であった. このうち2例が副作用の為9日間でUFTの投与を中止された.
    進行性腎細胞癌の治療においては, Biological Response Modifier と化学療法剤の併用療法が有望であると考えられた.
  • 岩崎 雅志, 布施 秀樹, 風間 泰蔵, 片山 喬
    1991 年 82 巻 7 号 p. 1059-1066
    発行日: 1991/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    ラットにシクロスポリン (Cs) を投与し, その造精機能への影響について検討した. 精巣上体尾部の精子数は, Cs投与終了後6週において dose dependent に低下傾向がみられた. 精子運動率は, 投与終了時にいずれの投与群においても有意に低下しており, 以後6週まで低下傾向をみた. また, 投与終了後6週において40mg/kgおよび60mg/kg投与群で軽度の精細管の障害を示す組織像を認めた. 血中LHおよびテストステロン値はいずれの時点においても各群間に差を認めなかった. 血中FSH値は投与終了時に有意に高値を示し投与終了後4週まで高い傾向を示した.
    以上より, ラットにおいてCsが造精機能に障害を与えることが示唆されたが, 本実験では軽度であった. 一方, 投与終了時の精子運動率の低下よりCsの精巣上体への影響も考えられた.
  • 平沢 潔
    1991 年 82 巻 7 号 p. 1067-1073
    発行日: 1991/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    前立腺全摘出術が施行された前立腺癌症例18例につき, 経尿道的超音波断層法により, 前立腺癌の浸潤度判定を行い, 経尿道的超音波断層法の前立腺癌における有用性につき検討を行った. 超音波検査による前立腺癌の被膜浸潤は, 被膜の不整, 突出像, 前立腺の変形, 低エコー領域の被膜近接像により判定した. 精嚢浸潤は, 精嚢の変形, 左右非対称性, 前立腺の低エコー領域との連続性の有無により判定した. 次に, 全摘出術により得られた標本につき, 被膜の貫通, 精嚢浸潤を病理組織学的に検討し, 超音波検査による病期と病理組織学的病期を比較検討した. 病理組織学的病期のうちわけは, 18例中4例が Stage Bで, 14例が Stage Cであった. 超音波検査による病期のうちわけは, 5例が Stage B, 13例が Stage Cであった. 超音波検査の浸潤度判定における sensitivity は93%, specificity は100%, accuracy は94%であった. 経尿道的超音波断層法は, 特に前立腺の被膜の描出に優れ, 前立腺癌の浸潤度判定に有用であると思われた.その理由としては前立腺部尿道にプローブを挿入するため, プローブと前立腺の間に介在するものがないこと, 超音波ビームが被膜に対しほぼ直角に入ること, 経直腸的断層法で必要なゴムカフによる圧排なしに前立腺が観察できること, 恥骨面の被膜までの距離が短く結石などの影響を受けにくいことなどによるものと思われる.
  • 北見 一夫
    1991 年 82 巻 7 号 p. 1074-1083
    発行日: 1991/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    糖尿病に合併した膀胱尿道機能障害の病態を明らかにするため, 非糖尿病コントロール群17例, 糖尿病群173例 (男78例, 女95例) の Urodynamicstudy, IVP, 尿所見を検討した. 糖尿病群では初発尿意量の増加, 排尿筋収縮力の低下に加え排尿筋外尿道括約筋協調不全が31.7%, 低コンプライアンス膀胱が11.0%にみられ多彩な機能障害を示した. 糖尿病群の膀胱尿道機能を初発尿意量, 最大尿意量, 最大膀胱内圧, 残尿量, 膀胱コンプライアンス, 排尿筋無抑制収縮の有無により以下の5型に分類した. Type 1正常な膀胱機能を示す型, Type 2膀胱機能に障害を認めるが残尿の少ない型, Type 3膀胱機能に障害を認め残尿の多い型, Type 4低コンプライアンス膀胱を示す型, Type 5過活動膀胱を示す型とした. 膿尿は59.8%, 水腎は10.9%, 下部尿管の拡張は17.8%にみられた. 膿尿および上部尿路の異常の頻度はType 4が最も頻度が高く次いでType 3, Type 2の順であった. 排尿筋外尿道括約筋協調不全はType 3, Type 4で 高頻度に認められた. 慢性尿路感染を合併したType 4は膀胱壁の肥厚, 線維化など質的変化の結果上部尿路の拡張を生ずると考えらえた. Type 3とType 4の一部は薬物療法が有効であったが, 残尿が減少しない症例には間歓導尿法を併用した. 残尿の多い男性例にはTURが適応となると考えられる.
  • 高羽 秀典, 中野 洋二郎, 三宅 弘治
    1991 年 82 巻 7 号 p. 1084-1090
    発行日: 1991/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    Chlamydia trachomatis (以下C. trachomatis と略す) 感染症において, 血清中の抗 C. trachomatig IgA, IgG抗体価測定の意義と男性における不顕性感染の抗体価測定の診断的価値について検討するために, 妻またはパートナーが C. trachomatis 感染を疑われた無症状の男性45例の抗体価を, Indirect immunoperoxidase assay (IPAzyme kit, Savyon. Diagnostics Ltd., Beer, Shova. Israel) を用いて測定し, 健常者群, 非淋菌性尿道炎 (NGU) 患者の抗体価と比較した. また治療中のIgA抗体価の推移を検討した. 健常者群における陽性率は, 男性ではIgA抗体陽性率2.4%, IgG抗体陽性率11.9%, 女性ではIgA抗体陽性率4.8%, IgG抗体陽性率18.1%であった. 妻またはパートナーがC. trachomatis 抗体陽性の男性患者では, IgA抗体陽性率42.2%, IgG抗体陽性率75.6%と高値を示した. NGU患者ではIgA抗体陽性率56.3%, IgG抗体陽性率62.5%, 妻またはパートナーが抗体陽性の男性患者のIgAとIgG抗体陽性率は健常者群の男性および女性の抗体陽性率とそれぞれ有意差 (p<0.01) を認め, NGU患者の抗体陽性率とは有意差を認めなかった. 治療中のIgA抗体価の推移を検討すると, 治療しても抗体価の低下しない症例が認められた. 血清の C. trachomatis 抗体価の測定結果より, 不顕性の男性患者が多数認められ, 彼らが感染性を有していることが示唆された. 血清 C. trachomatis IgAおよびIgG抗体価の測定は, C. trachomatis による不顕性感染の補助診断に有用であると考えられた.
  • 角谷 秀典, 始関 吉生, 小竹 忠, 高原 正信, 島崎 淳
    1991 年 82 巻 7 号 p. 1091-1096
    発行日: 1991/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    内分泌異常による性機能障害19例について臨床的検討をおこなた. 性腺機能低下症によるものは, 低ゴナドトロピン性13例, 高ゴナドトロピン性3例の16例であり, 高プロラクチン血症6例 (うち3例は, 低ゴナドトロピン性性腺機能低下症合併) であった. 主訴は, 性欲低下11例, 勃起不全12例, 射精障害14例であった. 性腺機能低下症では射精の障害されている例が多く, 一方高プロラクチン血症では射精の保たれているものが比較的多かった. 性腺不全症における血清テストステロン値は200ng/dl以下であり, 100ng/dl以下になると, 性欲低下を高率にみとめ, 勃起は保たれている例をみたが, 1例を除く全例で射精障害をみた. 低ゴナドトロピン性性腺機能低下症例のゴナドトロピン療法の効果は, hCG負荷試験の反応良好なもの, 精巣容積の保たれている例では, 良好であった.
  • 後藤 敏明, 浅野 嘉文, 野々村 克也, 富樫 正樹, 小柳 知彦, 松野 正
    1991 年 82 巻 7 号 p. 1097-1104
    発行日: 1991/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    過去26年間に経験し半年以上経過観察可能であった後部尿道弁21症例について, 上部尿路・下部尿路の形態と機能の推移を中心に検討すると共に本症治療上の問題点について考察を加えた.
    (1) 初診時年齢は生後0日から13歳まで (1歳未満8例), 主訴は尿路感染が最も多いが, 年齢層毎の特徴がみられた. 弁は全て Young 分類のI型で7例が高度弁であった. 軽度弁の発見には内視鏡検査が重要であった. (2) VURは16例28尿管に認めた. IV度VURが13尿管と最も多く左に多いのも注目された. 腎の瘢痕性変化はVURの程度に並行していた. 矮小腎の大部分は低・異形成腎と思われた. (3) 1期的弁切開が17例に, 2期的弁切開が4例に施行された (1歳末満での弁切開8例). VURは保存的経過観察で軽度例や1歳未満での弁切開例では高率に軽快~消失した. しかし, 尿管口の上外側偏位例では消失率は極めて低く腎機能の回復もなかった. 弁切開と同時に逆流防止術を施行した1例を別にすると, 結局5例で逆流防止術が追加された. VUR以外の上部尿路拡張は2尿管にみられたが弁切開後速やかに消失した. (4) 弁切開後の尿道狭窄発生はないが, 5歳を過ぎて尿禁制に問題がある例は5例ありうち1例に排尿筋括約筋協調不全, 3例に無抑制膀胱を認めた. 経過中に腎機能低下を示した4例のうち2例が思春期以後腎不全となった.
  • 田口 勝行, 折笠 精一, 桑原 正明, 神部 広一, 斎藤 敏典, 白井 修一
    1991 年 82 巻 7 号 p. 1105-1110
    発行日: 1991/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    東芝製ピエゾ型ESWL機を用いた体外衝撃波結石破砕術の臨床治験を施行した. 本機の特徴は, 腎組織への衝撃波照射を防ぐための誤照射防止装置を装備していること, オーバーヘッド型アプリケーターであり結石の位置合わせが容易であることなどである.
    1989年10月から1990年3月までに東北大学泌尿器科を受診した尿路結石患者40名を対象とした. 治療は原則として無麻酔で施行した. 治療後3ヵ月後のレントゲン撮影で23例 (57.5%) が残石なし, 10例 (25.0%) が4mm以下の残石を認めた. 自然排石が期待できる4mm以下の残石を認める症例を有効と判定すると, 本砕石術の有効症例は82.5%であり, 他機種のピエゾ型ESWL機と遜色の無い結果であった. 本機による副作用としては, 全例に血尿がみられたが, その他の重篤な合併症は認めなかった. 誤照射防止装置は, 焦点が結石に一致した場合のみ衝撃波が発生するもので, 本装置を使用した症例では治療後の肉眼的血尿の改善を認め, ESWLによる腎障害が軽減していることが推測された.
    以上, 本機によるESWLは, 十分な破砕効果を保ちつつその操作性, 安全性がさらに向上したものと考えられる.
  • 特に多嚢胞化萎縮腎との合併
    津川 龍三, 江原 孝, 池田 龍介, 卞 在和, 鈴木 孝治
    1991 年 82 巻 7 号 p. 1111-1117
    発行日: 1991/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1978年, 透析歴7年の24歳男子に両腎に多発した嚢胞と, さらに右側に腎癌を発生した例を経験し, 調査の結果 Dunnill の報告した acquired cystic disease と判明した. 以後現在までに計8例を経験した. 平均年齢は1例を除き32歳と若く, 透析歴は8年, 男女比は7:1である. うち2例は両腎摘除後に腎移植を行い, 1例は生着生存中であり, 1例は拒絶反応により再透析となり, 子宮体癌+卵巣癌による癌性腹膜炎で死亡した. また1例は腎移植後良好な機能を有しつつ8年後に固有腎に腎癌が発見され摘除した. これらの症例を病理学的にみると, 病変は1~3cmの球形で腎内に限局し, Robson-1 (わが国の腎癌取扱い規約T-1) に相当し, 組織学的に多くは淡明細胞癌であった. 興味深い所見は, 癌病変以外の同側, さらには他側の嚢胞壁上皮に多層化, 乳頭状増殖をみることである. 治療としては, 腎摘除を行った. 2例を除いて6例は腰部斜切開とした. 副腎は含めず, いわゆる単純摘除とした. 全例再発転移はない. acquired cystic disease と腎癌の合併の原因は不明であるが, 1) ある種の代謝物の蓄積による発癌性, 2) 免疫監視能の低下が考えられ, いずれも透析例に該当する考え方であり, 免疫抑制剤が使用される移植は, 2) が該当しよう. 慢性腎不全患者については透析, 移植を問わず, 固有腎にも常に注目し, 定期的にCT, 超音波検査を実施し, 早期発見, 早期摘除が重要である.
  • 松岡 啓, 江藤 耕作, 吉武 信行
    1991 年 82 巻 7 号 p. 1118-1124
    発行日: 1991/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    芳香属化合物の製造や取り扱い経験者を検診対象者として, 職業性尿路上皮腫瘍の発生状況と, それにかかわる問題点について検討した.
    検診対象者398名のうち, 膀胱腫瘍を主体とした尿路上皮腫瘍患者は25名にみられ, 発生率は6.3%であった. 発症時平均年齢は61歳で, 平均暴露期間は7.2年, 平均潜伏期間は30年であった.
    暴露期間の長い従事者や喫煙者は, 統計学的に有意ではないものの, 腫瘍発生率が高かった. また, 暴露開始年齢が高くなるほど, 潜伏期間は有意に短かった. 暴露物質では, 複数暴露経験者の発病率が高く, ついでベンジジン, α-ナフチルアミンの順で,β-ナフチルアミンからの発病者は認められなかった.
    深達度が明らかな膀胱腫瘍の94%が表在性腫瘍で, 初期治療として主に経尿道的電気切除術を施行した. 治療後の膀胱内再発は39%と一般膀胱腫瘍と同程度であったが, 上部尿路への再発は26%と高率であった.
    尿細胞診の陽性率は, 初発腫瘍で60%, 再発腫瘍では74%と高く, いずれも腫瘍発見の端緒となった.
    職業性尿路上皮腫瘍患者の5年生存率は92%, 10年生存率は72%, 20年生存率は47%と予後は比較的良好であったが, 癌死8名中重複癌による死亡は3名に認められ, また検診対象者における尿路上皮以外の癌発生は20例, 5.7%であり, 他臓器癌発生にも注意が必要であることが示唆された.
  • 特に腹腔鏡検査の評価を中心に
    妹尾 康平, 岩川 愛一郎, 上村 哲司
    1991 年 82 巻 7 号 p. 1125-1132
    発行日: 1991/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1984年4月から5年間に, 初診時精巣を触知しなかった56例 (62精巣) のうち, 平均10ヵ月の追跡期間の後の手術時まで非触知性であったものは48例 (51精巣) であった. 手術前の精巣探索の方法としては, CTが超音波法に幾分優っていたが, 麻酔下での入念な触診による探知率の方がさらに高率であった. 麻酔下の触診でも触知出来なかった36例に腹腔鏡検査を施行し, 気腹に失敗した2例をのぞき他の全てに有用な所見を得ることが出来た. 最大の利点は, 腹腔内精巣の発見のみならず, 精索血管と精管の走行を知ることにより, ひきつづき行なわれる手術への適切な情報提供であり, 過剰な手術操作を防ぐことである. 精巣固定術では陰のう底まで十分下降出来ない例もかなり存在した. 肉眼的に精巣を認めなかったものは31側, そのうち完全欠損は9側, cicatrical process を有するものが13側であった.
  • 菅谷 公男, 西沢 理, 能登 宏光, 鈴木 隆志, 塚田 大星, 小浜 丈夫, 下田 直威, 土田 正義
    1991 年 82 巻 7 号 p. 1133-1141
    発行日: 1991/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    排尿筋括約筋協調不全 (DSD) を呈する脊損ネコ5頭と神経因性膀胱患者8例の尿道内に lidocaine hydrochloride を注入して尿道麻酔し, 排尿時の排尿筋括約筋協調運動 (DSS) が得られるのか検討した.
    DSDを呈する脊損ネコでは尿道麻酔後にDSSとなり, 最大膀胱収縮圧は上昇し, 残尿量は減少した. DSDを呈する神経因性膀胱患者では尿道麻酔後にDSSとなるか, または排尿時の外尿道括約筋活動が減弱し, 最大尿道閉鎖圧の低下と残尿量の減少傾向があった. 蓄尿に伴う外尿道括約筋活動の増強は, 脊損ネコ, 臨床例とも麻酔前後でとくに変化はなかった.
    以上から, 尿道麻酔は尿道尿道収縮反射を遮断し, 結果として膀胱尿道弛緩反射を作動させることが示唆され, 尿道の知覚神経の遮断はDSDの治療法となる可能性があると考えられた.
  • 効果発現のための至適CDDP量の設定
    松山 豪泰, 山本 憲男, 島袋 智之, 吉弘 悟, 和田 尚, 酒徳 治三郎
    1991 年 82 巻 7 号 p. 1142-1149
    発行日: 1991/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    浸潤性膀胱癌11例に対し, 術前に両側内腸骨動脈よりCDDPを含む抗癌剤動注療法を施行し, 腫瘍組織内Pt濃度を測定した. この値と組織学的効果と比較した結果, 以下の結論と展望が得られた.
    1) 骨盤内血管造影時の血管径より血管の断面積を算出し, 分岐した血管の血流比を推定することにより腫瘍の feeding artery へ流入するCDDPの量を計算し, 腫瘍血管分配CDDP量とした. この理論値は組織学的効果判定の有効群 (n=5, 大星, 下里分類の Grade IIb以上) が無効群 (n=6, 同, Grade IIa以下) に比べ, 有意に高値であった (p<0.02, Student t).
    2) 腫瘍内Pt濃度を1) でもとめた腫瘍血管分配CDDP量で補正した値 (単位CDDP量当たりの腫瘍内Pt濃度) と動注から腫瘍摘出までの期間との間に有意の逆相関 (r=-0.098, p<0.001) を認め, 腫瘍内Pt濃度が半減期約12週で減衰することが判明した.
    3) 2) でもとめた直線の外挿値より動注直後 (day 0) の腫瘍内Pt濃度を計算し, 理論的腫瘍内Pt濃度とし, 組織学的に有効群と無効群で比較した. その結果, 有効例は無効例より同濃度が有意に高値であった (p<0.01). 一方, 実測値による腫瘍内Pt濃度では有効例と無効例との間に統計学的な有意差認められなかった.
    4) 理論的腫瘍内Pt濃度と腫瘍血管分配CDDP量の間には有意の相関 (r=0.86, p<0.001) が認められた.
    5) 理論的腫瘍内Pt濃度が5μg/g以上の症例では6例中5例が組織学的に有効であり, 同濃度に対応する腫瘍血管分配CDDP量は31mgであった.
    6) 以上の結果より腫瘍 feeding artery の明らかな症例では血管造影所見をもとに有効な治療効果を得るためのCDDP投与量設定の可能性が示唆された.
  • 山中 望, 西村 隆一郎
    1991 年 82 巻 7 号 p. 1150-1156
    発行日: 1991/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    ヒト絨毛性ゴナドドロピン (hCG) のβ-Subunit 様免疫活性 (IR-hCGβ) の認められた3例の膀胱腫瘍患者の血清と尿中のIR-hCGβを質的に分析するとともに, その腫瘍内局在を検討した. IR-hCGβに関与する3種の分子種 (whole hCG, free hCGβ, β-core fragment) にそれぞれ特異的な測定系を用いて, 患者血清および尿中に含まれる分子量を分別測定した. その結果, 患者血清中のIR-hCGβの主因は whole hCGではなく, hCGのβ-subunit 部分である free hCGβと判明した. 一方尿中では少量の free hCGβとともに, その代謝産物と考えられるβ-core fragment (β-CF) が大量に含まれていた. しかも全症例の尿中で検出されたβ-CF活性は, 血清中 free hCGβ活性の数倍から数十倍高いものであった.
    免疫組織化学的検討では, 3症例ともにIR-hCGβの腫瘍組織内局在が観察されたが, その陽性像はそれぞれ異なっていた. すなわち, 1例では移行上皮癌細胞に混在する合胞体様巨細胞の一部にIR-hCGβが観察されたが, 他の2例では合胞体様巨細胞は認められず, 移行上皮癌細胞自体にIR-hCGβが局在した.
    以上の成績から, 今回検討した3例の膀胱腫瘍患者の血中で認められたIR-hCGβは, 腫瘍由来と推定される free hCGβによるもので, さらにその血中濃度が極めて低値である場合でも, 尿中には相当量のβ-CF活性が検出されることから, これが膀胱腫瘍の新しいマーカーとなる可能性が示唆された.
  • 志村 哲, 内田 豊昭, 設楽 敏也, 西村 清志, 村山 雅一, 本田 直康, 小柴 健
    1991 年 82 巻 7 号 p. 1157-1160
    発行日: 1991/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    頚胸椎の椎体, 硬膜外へ転移をともなった睾丸原発カルチノイド腫瘍の1例を報告する. 症例は53歳男性, 1986年4月左肩から小指にかけてビリビリ走る疼痛を認めた. 1987年7月突然歩行障害が出現し脳神経外科を受診した. 脊髄造影とCTにてTh1よりTh2の椎体内および硬膜外腔に腫瘍を認め, C7よりTh2まで椎弓切除術施行した. 術中に, 右陰嚢部に腫脹を認め泌尿器科へ依頼され同時に右高位除睾術を施行した. Grimerius 染色や Fontana-Masson 染色を含む顕微鏡検査にて頚胸椎へ転移をともなった睾丸原発カルチノイド腫瘍と診断された. 術後の血中 5-hydroxytryptophan 値および尿中 5-hydroxyindoleacetic acid 値は高値を示したが, PVB療法にて腫瘍マーカーは一時低下した. しかし, 全身骨への転移は消失せず, 定期的に化学療法を施行されている. 除睾術後27ヵ月で現在外来通院中である. われわれが調べた限り遠隔転移を有する睾丸原発カルチノイド腫瘍は本邦第1例目である.
  • 野俣 浩一郎, 鈴 博司, 湯下 芳明, 金武 洋, 斉藤 泰
    1991 年 82 巻 7 号 p. 1161-1164
    発行日: 1991/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    成人T細胞白血病の原因ウイルスであるHTLV-I (human T lymphotropic virus, type I) の淫浸地として西南九州がある. このウイルスによって起こる孤発性痙性脊髄麻痺は, HTLV-I associated myelopathy (HAM) として知られており, その診断指針の参考事項のひとつに膀胱直腸障害をしばしば伴うことがあげられている. 我々の教室においても, HAMに随伴した神経因性膀胱患者は現在総計35名に達しており, この中で3名に臨床上比較的急速に進行する萎縮膀胱と病理組織上膀胱間質に強いリンパ球を主体とした細胞浸潤をみとめた. 今回は詳細に検討しえた2例について報告する.
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