日本泌尿器科学会雑誌
Online ISSN : 1884-7110
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82 巻, 8 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
  • 小柴 健
    1991 年 82 巻 8 号 p. 1201-1205
    発行日: 1991/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
  • 形態学的変化と核DNA量変化の関係について
    斎藤 文志郎
    1991 年 82 巻 8 号 p. 1206-1210
    発行日: 1991/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    N-butyl-N-(4-hydroxybutyl) nitrosamine (以下BBN) 誘発によるC57BL/6系マウス (108匹) の膀胱発癌実験において, 経時的な形態学的変化と flow cytometry (以下FCM) による核DNA量の変化を検討し, 以下の結果を得た.
    1. 形態学的前癌状態とされる異型過形成はBBN投与開始7週目以降の96匹中28匹 (29%) に認められ, 発癌は9週目以降の84匹中62匹 (74%) に認められた.
    2. FCMの評価が可能であったのは全経過を通じて93匹であり, 核DNAの ploidy 変化の推移では, 異型過形成および発癌初期例は全て DNA diploid であり, DNA aneuploid は11週目以降の発癌例56匹中28匹 (50%) に認められた.
    3. 以上の結果よりBBN誘発マウス膀胱癌における核DNA量変化は発癌後の変化であると考えた.
  • 丸茂 健, 上野 宗久, 村木 淳郎, 橘 政昭, 出口 修宏, 田崎 寛
    1991 年 82 巻 8 号 p. 1211-1217
    発行日: 1991/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    9例の泌尿器科系悪性腫瘍患者に遺伝子組換えインターロイキン1 (IL-1) βを週2日間連続, 皮下注射で4週間投与した. 1回投与量は第1週目を1×104単位として一週毎に増量し, 最大4×104単位とした. 第2, 4週に末梢血単核球を分離して50単位/mlの遺伝子組換えインターロイキン2 (IL-2) と72時間培養し Daudi 細胞に対する lymphokine-activated killer (LAK) 活性を4時間51Cr遊離試験を用いて, またリンパ球のIL-2に対する反応性を3H-thymidine の取込みによって測定した. IL-1βの投与によって末梢血中の顆粒球とリンパ球の増加を認めたが, 単球と血小板は増加しなかった. IL-1βは in vitro でIL-2によって誘導されるLAK活性を有意に増強したがIL-2リセプター陽性リンパ球の増加とリンパ球増殖を伴わなかった. また, IL-1βは in vitro で末梢血単核球を刺激してもLAK活性を増強しなかったが, 患者に投与されることにより, 有意にLAK活性を増強し, 生体内でのLAK活性増強作用を有する他のサイトカインの誘導が関与していることが示唆された. 得られた結果から, IL-1は腫瘍に対する化学療法, 放射線療法など骨髄抑制をきたす治療との併用, またはIL-2との併用によって泌尿器科領域の悪性腫瘍の抗腫瘍免疫療法に有用であると考えられた.
  • 初期11例における諸問題
    野々村 克也, 柏木 明, 前野 七門, 永森 聡, 信野 祐一郎, 後藤 敏明, 富樫 正樹, 小柳 知彦, 南 茂正
    1991 年 82 巻 8 号 p. 1218-1226
    発行日: 1991/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    尿禁制保持の尿路変更術として, Mainz法を行ない, その手術適応・術式・成績について検討した. 過去2年間に11例 (男9例, 女2例) に行ない, 年齢は30~69歳 (平均54歳) であった. 疾患の内訳は神経因性膀胱1例, 間質性膀胱炎1例, 尿路上皮性腫瘍9例である. 術式は大略 Mainz 式の原法に沿って行なった. 消化器系の合併症は6/11例と高率であったが, 重篤な腹膜炎でパウチの使用ができず腎瘻となった1例以外は保存的に治癒した. 術式の異なる点として, (1) 5例目よりパウチの縫合に重ならないよう上行結腸3~4cm口側に hiatus を作成する粘膜下トンネル法で尿管新吻合を行なった. 全例逆流・狭窄なく吻合できた. (2) 尿道断端に吻合する盲腸終末は狭窄予防のために粘膜を翻転させてから行なう工夫を途中より行なったが, 3/5例でTURを必要とした. 結果としては膀胱拡大術の1例を含め, 全例失禁なく自排尿/自己導尿可能となった. (3) 女2例および尿道摘除を行なった男3例では尿禁制保持のために漿膜筋層剥離およびスティプラーにより安定化した回腸重積法による nipple value を作成した. 1例でカテーテル挿入困難となり修正が必要であった. パウチは術後3ヵ月で低圧・350ml前後の容量が得られ, 最終的に10例で当初の目的である尿禁制保持の生活が可能となった.
  • 岡根谷 利一, 井門 愼介, 小川 秋實
    1991 年 82 巻 8 号 p. 1227-1232
    発行日: 1991/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    40例の膀胱上皮内癌症例の経過を解析した. 内訳は原発性膀胱上皮内癌15例, 続発性膀胱上皮内癌8例, 随伴性膀胱上皮内癌17例であった. 頻尿, 排尿時痛などの膀胱刺激症状は, 原発性と随伴性の上皮内癌32例中21例 (66%) にみられたが, 続発性上皮内癌ではみられなかった. 肉眼的血尿は随伴性と続発性の上皮内癌のほぼ全例にみられたが, 原発性上皮内癌では15例中7例 (47%) にのみみられた. 全く無症状で尿細胞診によって偶然発見された上皮内癌が2例あった. 随伴性膀胱上皮内癌を伴う乳頭状腫瘍は17例全例で複数個みられ, その最も優位な組織学的異型度は grade 3が11例, grade 2が6例であった. 尿道および尿管にもそれぞれ46%, 74%で上皮内癌を合併していた. 膀胱上皮内癌症例14例 (35%) が経過中に浸潤性腫瘍へ進行し, 4例 (10%) が癌死した. BCG膀胱内注入療法は15例中13例 (87%) が有効であった. 原発性膀胱上皮内癌のなかには, ある時急激に浸潤性に増殖を始めるものと, 上皮内に留まり増殖性変化を示さないもの以外に, 表在性乳頭状腫瘍を頻回にしかも多発性に再発を繰り返すが, 膀胱刺激症状や尿細胞診陽性という, いわゆる上皮内癌に特徴的な所見に比較的乏しく, 当面浸潤性増殖をしないものがあると思われる. 短期間に多発性表在性乳頭状腫瘍の再発を繰り返す例については, たとえ尿細胞診が陰性であったり組織学的異型度の低い腫瘍であっても, 積極的に膀胱上皮内癌を疑って膀胱粘膜生検を行うべきである.
  • 大藪 裕司, 三原 典, 吉武 信行, 植田 省吾, 松岡 啓, 野田 進士, 江藤 耕作
    1991 年 82 巻 8 号 p. 1233-1240
    発行日: 1991/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    今回我々は, 久留米大学医学部泌尿器科学教室で, 1972年4月以降1990年10月までに経験した睾丸腫瘍78例の臨床的検討を行った. 年齢ではセミノーマが平均37.5歳, non seminomatous germ cell tumor (以下NSGCT) は平均24.5歳で, セミノーマが高かった (p<0.01). 病理組織学分類では, セミノーマが34例 (43.6%) と最も多く, 奇形癌16例 (20.5%), 奇形腫6例 (7.7%) の順であった. 全症例の5年生存率は76.7%で, セミノーマは90.3%, NSGCTは75.8%であった. セミノーマの臨床病期別生存率では, Stage IはStage IIb及びIIIに比べ, 生存率がよく (p<0.001), またNSGCTでも Stage Iは Stage IIIに対し生存率が良かった (p<0.001). 予後に与える背景因子に関し, 主訴発現より初診までの期間, 術前の血清AFP値, 血清LDH値, 血清HCG値, 血清β-HCG値と血沈を検討した. このうち統計的有意差を認めたのはNSGCTにおける血清LDH値と血清HCG値であった. CDDPを含む化学療法の生存率に与える影響についての検討では, CDDP群の方が生存率が良かった (p<0.01).
  • 特に前立腺の領域による分布の差異について
    小林 真也
    1991 年 82 巻 8 号 p. 1241-1249
    発行日: 1991/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    ヒト前立腺におけるα1-受容体の分布を明らかにするために, 標識化合物を用いた結合実験によりα1-受容体の同定を行い, autoradiography によりその局在を検討した. [3H]--prazosin を用いた結合実験では結合部位が単一で, 高親和性の結合が示され, 種々のα-受容体遮断薬の[3H]--prazosin 結合阻害順序からその結合部位はα1-受容体であることが示された. [125I]--HEATを用いた autoradiography により, α1-受容体の局在は, preprostatic sphincter (PS) および, central zone (CZ), peripheral zone (PZ) の線維筋性部分, さらにCZの腺上皮部分において認められ, periurethral gland (PG) およびPZの腺上皮部分には認めなかった. 局在の認められた部位間における単位面積当たりの特異的結合量を比較すると, CZの線維筋性部分およびPSはPZの線維筋性部分より多く (p<0.001, p<0.02), CZの腺上皮部分はPZの線維筋性部分より少ない (p<0.001) という結果であった. このようにヒト前立腺におけるα1-受容体の分布に領域による差異 (zonal difference) を認めたことは,前立腺の領域に機能的な差異の存在する可能性を示唆するものと考えられる.
  • 長谷川 総一郎, 加藤 兼房, 高士 宗久, 朱 遠源, 横井 圭介, 小林 弘明, 安藤 正, 小幡 浩司, 近藤 厚生, 三宅 弘治
    1991 年 82 巻 8 号 p. 1250-1255
    発行日: 1991/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    尿路結石に対するESWLによる腎組織損傷の有無について明らかにする目的で, 腎結石21例, 尿管結石18例で, ESWL前, 直後, 2時間後, 24時間後における血清中及び尿中S100a0 protein, creatine kinase isozymes (CK-B and CK-M) 濃度の測定をそれぞれ行った. ESWL前と比較して, 以下の時点で結果の有意な増加を認めた. (1)S100a0 protein: 腎結石群; 血清中の直後, 2時間後, 24時間後及び尿中の直後, 2時間後. 尿道結石群; 血清中の2時間後, 24時間後及び尿中の直後, 2時間後. (2) CK-B: 腎結石群; 血清中の直後, 2時間後及び尿中の直後, 2時間後, 24時間後. 尿管結石群; 血清中の直後及び尿中の直後, 2時間後, 24時間後. (3) CK-M: 腎結石群; 血清中の2時間後, 24時間後及び尿中の直後, 2時間後. 尿管結石群; 血清中の24時間後及び尿中の直後, 2時間後, 24時間後. S100a0 protein は骨格筋・心筋・腎近位尿細管に, CK-Bは脳神経・平滑筋・腎組織に, CK-Mは骨格筋・心筋にそれぞれ比較的高濃度で存在する. 腎組織内に低濃度で存在するCK-Mにおいて, 術後血中及び尿中濃度の増加が見られたことより, ESWLによる骨格筋損傷発生の可能性が示唆された. S100a0 protein 及びCK-Bにおいても術後血清及び尿中濃度の増加が見られたが, 腎結石群と尿管結石群で各時点において有意差が見られなかったことより, ESWLによる骨格筋・平滑筋・腎組織等の損傷発生の可能性が示唆された.
  • 塙篤 美
    1991 年 82 巻 8 号 p. 1256-1264
    発行日: 1991/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    Prostaglandin (PG) E1, E2, Fに対するウサギ膀胱尿道平滑筋の反応とその作用機序を検討した. 膀胱体部および底部の平滑筋切片は, PGE1, E2, Fのいずれの投与によっても収縮し, その反応は底部より体部の方が強かった. PGによって惹起される収縮反応の強さは, 体部, 底部ともF>E2>E1の順であった. 尿道平滑筋切片は, PGE1, E2によって弛緩し, Fによって収縮した. PGの作用機序を検討するため, atropine, phentolamine, propranolol, tetrodotoxin を前投与してからPGを投与したところ, PGE1, E2, Fによって惹起される膀胱尿道平滑筋切片の収縮弛緩反応は, これらの薬剤で全く影響をうけなかった. また verapamil の前投与により, PGE1, E2, Fによる膀胱体部および底部平滑筋切片の収縮反応は, ほぼ消失した. PGE1, E2, F投与前後で膀胱尿道平滑筋組織内の cyclic AMP (cAMP) 含有量を測定したところ, 尿道にPGE1を投与した場合のみcAMP含有量の有意な増加が認められた. これらの事実から, PGによる膀胱体部および底部平滑筋の収縮反応は主にCa2+influx に依存すること, PGE1による尿道平滑筋の弛緩反応にはcAMPが関与していることが示唆された.
  • 当科における137例の経験
    前野 七門, 信野 祐一郎, 野々村 克也, 小柳 知彦
    1991 年 82 巻 8 号 p. 1265-1272
    発行日: 1991/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    さまざまな患者背景が, 経尿道的前立腺切除術 (TUR-P) の長期術後経過にどう影響するかを調査するため, 1982年1月~1988年12月に北大病院泌尿器科においてTUR-Pを施行した191例に電話アンケート調査を施行し, 回答のあった137例 (71.7%) について検討を加えた. 患者平均年齢は70.2歳であり, 平均観察期間は4.8年で, 82例 (59.9%) がなんらかの合併症を有していた. 手術時膀胱内圧測定 (CMG) は84例に施行され, 53例 (63%) に異常所見を認めた. 全例が排尿障害の自覚症状を有し, 最終的に排尿困難の95.0%, 頻尿の91.7%, 尿失禁の95.2%に改善を認めた. 一方で経過観察中に各症状の新たな出現例があり, 手術後平均4.8年後の症状寛解率は排尿困難85.1%, 頻尿86.6%, 尿失禁90.3%であった. 手術時年齢・合併症の有無・CMG異常の有無等は, 排尿障害改善度に影響を与えていなかった. TUR-P後早期の死亡例は1例 (0.7%: 術後2週) であり, 手術時合併症の有無は長期生命予後に影響しなかった. 術後陰萎の出現例は12例 (19%) だった. 今回の検討から, TUR-Pの適応決定にさまざまな患者背景の与える影響は比較的小さいと思われ, 手術侵襲の許容範囲内で積極的に行う価値のある術式であると思われた.
  • 植村 天受, 大園 誠一郎, 林 美樹, 平尾 佳彦, 岡島 英五郎, 青山 秀雄, 佐々木 憲二, 小原 壮一, 橋本 雅善, 吉川 元祥 ...
    1991 年 82 巻 8 号 p. 1273-1280
    発行日: 1991/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1985年1月より1989年12月までの5年間に奈良医大泌尿器科およびその関連施設で治療した腎盂尿管移行上皮癌症例105例のうち, 根治手術を施行し得た症例は88例で, 性別は男66例, 女22例と3:1で男に多く, 年齢は34~82歳, 平均66.0歳であった. 腎盂尿管癌の Stage 分類は, 腎盂尿管癌取扱い規約に準じて行った. 全症例の1年および3年生存率は91.2%, 74.0%であった. Stage 別3年生存率ではTSが80.5%, TEが41.7%で両群間に有意差を認めた. Grade 別3年生存率ではG1 75.0%, G2 70.1%, G3 75.2%で各群間に有意差は認めなかった. 予後決定因子として stage が重要であると思われた.
    術後 cisplatin をベースとした補助化学療法施行群を group 1 (n=26), 非施行群を group 2 (n=62) として検討したところ, 3年生存率は group 1 63.3%, group 2 78.9%と group 2 の方が高かった. しかし, 両群の背景因子をみると年齢において group 2より group 1の方が有意に低かった. そこで, 年齢による差を是正するために age-matched trial を行ったが, 両群間の生存率には差はなかった. 副作用は, 嘔気, 嘔吐などの消化器症状が24例 (92.3%) に, 次いで全身倦怠, 脱毛の17例 (65.4%), 白血球減少15例 (57.7%) が多くみられたがとくに重篤なものはなかった. 以上より, 腎盂尿管癌における術後補助化学療法の効果を検討するには prospective randomize study の必要性が示唆された.
  • 中津 裕臣, 正井 基之, 岡野 達弥, 井坂 茂夫, 島崎 淳, 松嵜 理, 堀内 文男
    1991 年 82 巻 8 号 p. 1281-1285
    発行日: 1991/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    昭和55年1月より平成2年6月までに千葉大学医学部附属病院泌尿器科を受診した上部尿路結石症患者1,415例の内, 尿細胞診を施行した1,032例を対象とし, 尿路結石症患者の尿細胞診に関する検討を行った. これらは, 男性724例, 女性308例で, 平均年齢は44歳であった. 細胞診の平均施行回数は2.2回であった. 細胞診陽性は5例 (0.5%) にみられ, 内1例に腎盂癌の合併を認めた. 偽陽性は, 4例 (0.4%) で, これらの結石消失後の尿細胞診は全て陰性であった. 細胞診陽性の腎盂癌1例の他, 細胞診疑陽性の1例, 細胞診陰性の2例に腎盂癌を見い出し, 全てサンゴ状結石合併の水腎症で, 細胞診陰性例中1例は腎摘時, 他はPNLにより診断された. 以上より, 高度の水腎症を伴い結石における細胞診の重要性が強調された.
  • 石川 晃, 坂口 往子, 中野 優, 牛山 知己, 太田 信隆, 大田原 佳久, 田島 惇, 河邊 香月, 阿曽 佳郎
    1991 年 82 巻 8 号 p. 1286-1291
    発行日: 1991/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    シクロスポリン (以下Csと略す) 腎毒性による傍糸球体装置 (以下JGAと略す) の変化, レニン-アンギオテンシン-アルドステロン系 (以下RAA系と略す) の変化について実験的検討を行った.
    動物は, ICR系の成熟雄マウスを使用した. 実験群は, Cs 50mg/kg/日, 14日間経口投与群 (以下Cs群と略す) と, オリーブ油14日間経口投与群 (以下対照群と略す) の2群とした.
    Cs投与前, 7日目, 14日目にマウスの体重を記録するとともに24時間蓄尿し尿量, 尿中クレアチニン, カリウムを測定した. 15日目に屠殺採血し, 血中クレアチニン, カリウム, レニン活性, アルドステロン値を測定した. 組織学的には, ヘマトキシリン-エオジン染色. Bowie 染色標本を光学顕微鏡で観察するとともに電子顕微鏡による観察を行った.
    両群とも投与中の体重に有意な変化はなかった. Cs群で血清カリウム, レニン活性, アルドステロン値の有意な上昇, クレアチニンクリアランスの有意な低下を認めた. 組織学的検索では, Cs群で近位尿細管の focal な空胞変性と傍糸球体細胞内顆粒の増大を認めた.
    Cs群で傍糸球体細胞内顆粒は増大し, RAA系は活性化されていた. Csにより続発性アルドステロン症が惹起されると考えられた.
  • 高橋 悟, 森山 信男, 本間 之夫, 東原 英二, 阿曽 佳郎, 山崎 隆三郎, 奥山 茂
    1991 年 82 巻 8 号 p. 1292-1298
    発行日: 1991/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    α1-アドレナリン刺激剤は尿道のα1-アドレナリン受容体を介して尿道の筋緊張を高めることが知られている. 一方, 腹圧性尿失禁では尿道閉鎖圧の低下がその一因とされている. 今回, 雌の成犬における新しい選択的α1-アドレナリン刺激剤 (midodrine hydrochloride: 以下ミドドリン) の膀胱, 尿道に対する尿水力学的作用を検討し, 尿失禁においてα1-アドレナリン刺激剤が臨床的に有用性を期待しうるかを検討した. Chloralose 静脈麻酔下にミドドリン0.03, 0.1, 0.3, 1.0mg/kgの各用量を大腿静脈より投与し, 尿水力学的検査と外尿道括約筋筋電図測定を施行した. 尿道壁が主に平滑筋で構成される尿道近位部の最高閉鎖圧は, ミドドリン0.03mg/kg投与で既に上昇を認め, 以後用量依存的に有意な上昇を認めた. 機能的尿道長, 外尿道括約筋部尿道内圧, 最大膀胱内圧, 最大膀胱容量, 膀胱コンプライアンスは今回の投与量では有意な変化を認めなかった. 平均血圧はミドドリン0.3mg/kg投与時点以後, 有意な上昇がみられた. 外尿道括約筋はミドドリン投与により筋電図活動が一過性に増加したが, その活動は膀胱収縮と同期して停止した.
    以上, 選択的α1-アドレナリン刺激剤であるミドドリンは, 雌生体犬の主に尿道近位部の閉鎖内圧を特異的に高め, その作用は血圧上昇の認められる用量の1/10の投与量から出現することより, 臨床的に腹圧性尿失禁に有用である可能性が示唆された.
  • 安藤 正夫, 永松 秀樹, 谷沢 晶子, 大島 博幸, 高木 健太郎, 安島 純一, 水尾 敏之, 牛山 武久
    1991 年 82 巻 8 号 p. 1299-1304
    発行日: 1991/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    老人ホームの尿失禁患者の実態を解析した. 対象は老人ホーム入所者で尿失禁のある132名 (男子25, 女子107) で, 年齢は66~92 (平均78) 歳. 高度の痴呆・寝たきり者は含まれていない. 132名のうち泌尿器科受診者は49名 (37%) のみであるため確定的な事は言えないが, 男子では切迫性尿失禁が大部分を占め, 女子では切迫性, 腹圧性, 混合性が多かった. 漏れた時に下着を交換するだけの軽症例が多いが, おむつ・パッド・紙など予防手段をとっている例が36%あった. また, 尿失禁による社会的制約を感じていない人が多いが, 泊りの旅行ができないなど社会活動の制約を受けている人も少なからず認められた.
    尿失禁の背景因子は複雑で, 骨盤底筋群の脆弱化, 尿路感染, 脳血管障害, 神経疾患, 骨盤内手術後などが多く, 前立腺癌, 尿道狭窄も少数ながらあり, 利尿剤や向精神薬などの薬剤内服例もかなり認めた. 膀胱内圧測定は18例に施行したが9例は overactive type であった.
    以上, 尿失禁を抱えながら受療の意志のない人が多く, 患者のみならず施設スタッフへの啓蒙を含めた, 地道な努力が必要と考えられた.
  • 坂本 亘, 岸本 武利, 仲谷 達也, 河野 学, 前川 正信, 川村 正喜
    1991 年 82 巻 8 号 p. 1305-1308
    発行日: 1991/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は74歳, 男性. 意識障害にて救急入院. 生化学検査の結果, 高Ca血症 (7.8mEq/L), 低P血症, %TRPの低値, intact-PTH は測定限界以下, 腎性cAMP, 1.25(OH)2Dは正常, 骨芽細胞機能の指標である血清 Bone Gla Protein は低値, 破骨細胞機能の指標である血清酒石酸抵抗性 acid phosphatase, 尿中 hydroxyproline は高値を示した. CTにて左腎盂に腫瘤性病変を認め, 経皮的腎盂鏡での生検で扁平上皮癌と判明した. 骨シンチは正常であった. 以上より humoral hypercalcemia of malignancy (HHM) を伴った腎盂扁平上皮癌と診断し, 腎摘出術を施行した. 腎摘出術後, 血清Caは一時低下したが, 肺転移巣の出現と共に, 血清Caは再上昇した.
    HHM惹起因子の一つと考えられている PTH related protein (PTHrP) に関し, 摘出腫瘍組織中の含有量をRIA法で測定した. 本症例は, 湿重量gあたり13.0pmolであり, PTHrP産生腫瘍であると考えられた.
  • 村石 修, 小川 秋實, 加藤 晴朗, 岡田 昇
    1991 年 82 巻 8 号 p. 1309-1312
    発行日: 1991/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    子宮癌治療後の放射線性膀胱炎により膀胱腟瘻または大量膀胱出血を生じた69歳と62歳の女性2例に胃利用膀胱拡大術を施行した. 右胃大網動脈を栄養血管とする胃体部の楔状遊離胃壁弁を碗状に縫合, 頂部または後壁を切除した膀胱と吻合した. 1例では両側の尿管胃新吻合を行った. 術後10ヵ月と, 4ヵ月の現在1例でごく僅かな尿失禁があるが, 2例とも自排尿が可能で, 尿路合併症, 胃合併症はない. 膀胱拡大術に小腸・大腸と同様に胃の利用が可能と考える.
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