日本泌尿器科学会雑誌
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83 巻, 1 号
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  • 治療の現況について
    守殿 貞夫
    1992 年 83 巻 1 号 p. 1-15
    発行日: 1992年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    陰茎癌は先進国で少なく, 発展途上国において比較的多いとされてきたが, 現在ではそれらの間に極端な差はない. 本症も治療後のQOLが問われる時代に来ており, とくに性機能は男性にとって極めて重要である. しかし, 本症ではまだ病期別の定まった治療様式がない状態である. そこで本項では陰茎癌の病理, とくに Queyrat 紅色肥厚症と Bowen 病が陰茎の上皮内癌であること, 本症と human papillomavirus との関連, Jackson 分類よりTNM分類を用いるべきこと, 腫瘍マーカーとしてのSCC抗原, BLMと放射線療法の併用療法の有用性, Mohs microscopically controlled surgery の有用性および modified groin disection の有用性について強張したい. 本症は稀な腫瘍のため一研究機関の症例数は20年間で50例前後と少ない. したがって, 体系的な臨床研究が前述の如くなされるに至っていない. 各研究者の少数例の検討では本症への対応は不充分なものとなる. 今後は何らかの形でのグループ研究がなされ, 本症の諸問題が遂次解決されていくことを期待する.
  • 安本 亮二, 浅川 正純, 福井 淳一, 和田 誠次, 岸本 武利, 前川 正信
    1992 年 83 巻 1 号 p. 16-22
    発行日: 1992年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    実験的膀胱癌誘発剤である N-butyl-N-(4-hydroxybutyl) nitrosamine (以下BBN) の0.025%水溶液をラットに経口投与し, 投与5週目からラット interferon-α(以下IFN-α) を0.1ml (5×105units/kg/ml) 筋肉内注射し, 以後発癌に至るまでの膀胱の肉眼的変化と病理組織学的変化及び Natural Killer 活性 (以下NK活性) の変化を経時的に検討した.
    1) BBN+IFN-α群の膀胱重量は, 膀胱粘膜に肥厚や血管増生などの肉眼的変化を認めるBBN投与10~14週の時期 (A期) ではBBN群の膀胱重量と差は見られなかったが, 腫瘍が観察されるBBN投与15~19週 (B期), 及び20~30週 (C期) では, 前者重量は後者重量に比へて有意に小さかった.
    2) A期, C期における発癌率はBBN+IFN-α群の方がBBN群より低かった.
    3) B期, C期における膀胱癌の悪性度及び浸潤度は, BBN+IFN-α群の方がBBN群に比べて低かった.
    4) NK活性はA期では両群間に差は見られなかったが, B期ではBBN+IFN-α群の方がBBN群に比べて上昇していた.
    5) 以上の結果より, IFN-αはBBN誘発ラット膀胱癌の実験系において発癌過程から抗腫瘍的に作用していることが想定された.
  • 超微細構造からの観察
    斎藤 敏典, 折笠 精一, 庵谷 尚正, 神部 廣一, 桑原 正明, 田口 勝行, 白井 修一, 目時 利林也
    1992 年 83 巻 1 号 p. 23-32
    発行日: 1992年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    水中衝撃波の腎組織細胞への直接作用を細胞の超微細構造から検討した. ピエゾ素子より発生させた衝撃波 (1,200bar) を, 家兎腎皮質に照射した. 20回照射後, 500回照射直後, 500回照射1週間後に電子顕微鏡で観察した. いずれの条件でも, 細胞障害は近位尿細管において最も変化が著しかった. 20回照射では infolding に囲まれた大きな空胞が観察され, 刷子縁の脱落, 細胞の膨化・管腔内への突出がみられた. 近位・遠位尿細管腔内に, 核やミトコンドリア等破壊された細胞小器官の流出が認められた. 500照射群では上記の変化は顕著となり, 遠位尿細管でも細胞小器官の破壊がより高度になって認められた. 照射1週間後では主に瘢痕組織が観察され, その中に萎縮した尿細管が, わずかに認められた. 細胞は基底膜から剥離し, 変形した核, 破壊されたままの細胞小器官が認められた. これらの変化は, コントロールとして行った1時間阻血腎の尿細管障害とは明らかに異なったものであり, 水中衝撃波の腎細胞への直接作用と考えられた.
  • CT, 131I-MIBG, 尿中カテコールアミン値, 手術所見との比較
    武田 正之, 片山 靖士, 高橋 等, 照沼 正博, 西山 勉, 佐藤 昭太郎, 木村 元政, 小田野 幾雄
    1992 年 83 巻 1 号 p. 33-39
    発行日: 1992年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    16名の褐色細胞腫患者に対して, MRI, CT, 131I-MIBGシンチグラフィーを術前に施行し, 手術所見と比較して以下の結論を得た.
    1. 正常副腎はT1強調画像 (T1WI) では肝と比べて低信号強度, プロトン密度画像 (PDI), T2強調画像 (T2WI) では低ないし中程度の信号強度に描出された.
    2. 褐色細胞腫で尿中ノルアドレナリンが高値を呈するものはすべてT1WIで低信号強度, T2WIで高信号強度に描出され, 131I-MIBGシンチグラフィーでも集積を認めた. 尿中ノルアドレナリンが正常範囲の場合には, T2WIでも中程度の信号強度であった.
    3. 局在診断の正診率はCT81.3% (13/16), MRI93.8% (15/16), MIBG90% (9/10) とMRIが最も高かったが, 多発例や転移再発例の局在診断にはやはりMIBGが必要と思われた.
  • 武井 孝
    1992 年 83 巻 1 号 p. 40-47
    発行日: 1992年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    シクロスポリン投与時の腎機能障害について, リチウムクリアランス (CLi) 法を用いてその腎機能障害を早期発見できるかどうか, この腎機能障害を生理食塩水の飲水により予防できるかについて検討した. ラットを, (1) コントロール群, (2) シクロスポリン12.5mg/kg/day 7日間投与群, (3) シクロスポリン25mg/kg/day 7日間投与群とし各群をそれぞれ, (A) H2O飲水と, (B) 生理食塩水飲水にわけて合計6群とした. クレアチニンクリアランス (Ccr) はH2O飲水でも生理食塩水飲水でもシクロスポリン12.5mg/kg/day投与では低下せず, シクロスポリン25mg/kg/day投与により低下が見られた. また, CLiは, H2O飲水時はシクロスポリン12.5mg/kg/day投与で, すでに有意な低下が認められたが, 生理食塩水飲水時は, シクロスポリン12.5mg/kg/day投与ではその低下は抑えられ, シクロスポリン25mg/kg/day投与により有意な低下が認められた. 以上からCcrに変化が現れるより前に, CLiにより近位尿細管機能の障害を知ることができ, シクロスポリン投与時の腎機能障害の早期発見が可能であると考えられた. また尿中NAG排出量は6群間に有意な差は見られなかった. 従って, この障害は器質的なものではなく, 近位尿細管における膜透過性の変化か, 腎血管の攣縮の可能性が考えられた. また, この腎機能障害は, 生理食塩水の飲水で予防できる可能性があると考えられた.
  • 年齢階級別での病理組織学的検討
    上村 博司, 藤本 健吉, 川崎 千尋, 藤井 浩, 北島 直登, 木下 裕三, 穂坂 正彦, 三浦 猛, 近藤 猪一郎, 原田 昌興, 福 ...
    1992 年 83 巻 1 号 p. 48-52
    発行日: 1992年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1984年から1988年の5年間に, 横浜市内の関連7施設で前立腺偶発癌67症例について検討した. 経尿道的前立腺切除術 (以下TUR-P) あるいは被膜下前立腺摘除術 (以下SCP) を施行された1,377例中, 病理組織学的に前立腺癌と診断されたのは66例 (4.8%) であり, そのうち stage A1は36例 (2.6%), A2 30例 (2.2%) であった. 術式別の頻度ではTUR-P施行1,315例中, 偶発癌は59例 (4.5%) であったが, SCP施行62例中では7例 (11.3%) とSCPのほうが発見率が高く認められた.
    年齢階級別の stage A1, A2の頻度をみると, 高齢になるにつれ発見率の上昇がみられ, とくに80歳以上では stage A2の頻度がA1より多くみられた.
    組織学的分化度では, 高分化型48例 (72.7%), 中分化型13例 (19.7%), 低分化型5例 (7.6%) であり, 高分化型が過半数を占めた. stage A2での年齢階級別の組織分化度をみると, 70歳代までは高分化型の占める割合が高かったが, 80歳以上では中分化・低分化型の増加がみられた. ラテント癌については, 年齢の上昇とともに中分化・低分化型の割合の増加がいわれていたが, 今回われわれの報告において偶発癌でも同様の傾向があると思われた.
    今後, 高齢者の増加につれて前立腺癌の増加が予想されるが, とくに高齢者に対する手術適応の拡大とともに stage A2など偶発癌の発見頻度の増加が十分に予想される.
  • 板倉 宏尚, 木下 健二, 宗像 昭夫, 高本 滋, 簑和田 滋, 阿曽 佳郎
    1992 年 83 巻 1 号 p. 53-58
    発行日: 1992年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    副腎腫瘍38例および正常副腎組織9例のパラフィンブロックを検体として, flow cytometry (FCM) により DNA histogram の検討を行った. 副腎腫瘍38例の内訳は adrenocortical carcinoma 3例, adenoma 20例, pheochromocytoma 15例であった. DNA-ploidy 判定可能であったのは38例中33例 (87%) であった. 正常副腎はいずれも DNA diploid pattern を示した.
    DNA-aneuploidy の出現率は副腎皮質腫瘍では adenoma 0% (0例/17例), carcinoma 100% (2例/2例) であり, pheochromocytoma では29% (4例/14例) であった. DNA-ploidy と臨床経過の関係では副腎皮質腫瘍においては DNA-diploidy を示した17例 (いずれも adenoma) はすべて臨床的に良性の経過をたどっている. 一方, DNA-aneuploidy を示した2例 (いずれも carcinoma) は臨床的にも1年以内に死亡した. 以上より, 病理組織学的診断と DNA-ploidy および臨床経過が良く相関した. pheochromocytoma では全例病理組織学的に悪性のものは見られず, 臨床的にも悪性化の徴候は出ていない. したがって, 今回の検討により DNA-aneuploidy が14例中4例 (29%) に出現したが予後との関連は見いだせなかった.
  • 高橋 敦, 熊本 悦明, 塚本 泰司, 宮尾 則臣, 小谷 典之, 柳瀬 雅裕, 舛森 直哉
    1992 年 83 巻 1 号 p. 59-65
    発行日: 1992年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1975年1月から1990年5月までに当科で腎細胞癌と診断し, 初診時遠隔転移が認められなかった115例 (M0症例) において再発に関する検討を行った. 115例のうち経過観察中再発 (転移) が認められたのは23例 (20.0%) であり, 5年, 10年非再発率はそれぞれ70.6%, 56.5%であった. 再発の認められた23例中22例は3年以内の再発であった. 再発に関与する因子を Cox の比例ハザードモデルによる多変量解析を用いて検討した. その結果, 115例 (M0症例) の検討では再発に影響を及ぼす因子としてリンパ節転移, 原発巣の進展度, 術前の acute phase reactant (発熱, 赤沈, α2-globulin) の順でこの3因子が重要であることが示された.
    次に, リンパ節転移を認めずかつ腎静脈あるいは大静脈浸潤を認めない, より限局した88例 (pN0pV0-1a) についても同様に再発因子を検討した. その結果, 88例の多変量解析を用いた検討では術前の acute phase reactant のみが有意に再発に関して影響を与えていることが示され, 再発の重要な risk factor であることが示唆された.
  • 宮内 武彦, 長山 忠雄, 丸山 孝士
    1992 年 83 巻 1 号 p. 66-74
    発行日: 1992年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    前立腺癌は経会陰的針生検採取9例, 病理解剖時採取1例, 前立腺肥大症組織は観血的に採取した. 組織の一部を初代培養した後, G-band 染色を行った. 頚部リンパ節転移巣の2例は直接遊離した細胞について検索した.
    前立腺癌は病理組織学的に高分化型4例, 中分化型2例, 低分化型6例であり, stage Bが4例, stage D2が8例であった. 前立腺癌7例は hyperploidy を示す細胞があった. 前立腺肥大症組織は2例を除き diploid であった. 前立腺癌は16の異常が4例, Yの欠損3例, 7, 14, 15, 18, 19の異常が各2例, 3, 4, 12, 17, 21の異常が各1例あった. 頚部リンパ節転移巣の2例にはいずれにも異常がみられた. 前立腺肥大症組織には+7及び+16の症例が各2例みられた.
    前立腺癌の stage Bの4名についてみると, 多数の染色体構造異常を示している3名は3年以上たった現在でも生存しているのに反し, 染色体構造異常の乏しかった1名は2年で死亡している. さらに8名の stage D2の症例をみると, 構造異常の少ない2名は3年たった現在でも生存しているが, 構造異常の多い6名は死亡している. この事実は染色体の構造異常は前立腺癌に多くみられ, 前立腺肥大症組織にはみられず, また癌の組織学的分化度が低く, stage が高いほど染色体構造異常が多様化していることを示している.
  • 橋本 紳一
    1992 年 83 巻 1 号 p. 75-84
    発行日: 1992年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    Wistar 系雄ラットに0.1% EHEN 添加食を2週間投与後, 25週目より以下の3群に分類した. 第I群: 基本食投与群. 第II群: 2%コレスチラミン添加食投与群. 第III群: 0.02%コンパクチン添加食投与群. 40週目にラットを屠殺して, 組織学的に異型細胞増殖巣 (DF), 腎細胞性腫瘍 (RCT) の発生頻度について検討した. 40週目における血中総コレステロール値は第I, II, III群で各々108.9±23.4mg/dl, 78.8±12.5mg/dl, 95.6±43.4mg/dlであり, 第I群に比較して第II, III群で有意に低値を示した (p<0.01, p<0.05, Wilcoxon test). DFの腎臓の単位面積あたりの発生頻度は, 第I, II, III群で各々4.5±4.1/cm2, 1.3±0.3/cm2, 2.3±2.0/cm2であり, 第I群に比較して第II群で有意に少なかった (p<0.025, Wilcoxon test). 第II, III群間には有意差はなかった. RCT発生腎は, 第I群で9/34 (26%) であったのに対して, 第II群で2/18 (11%), 第III群で1/20 (5%) と, 第III群で第I群と比較して有意に低い発生率を示した (p<0.05, qui-square test). RCTを肉眼的病変と顕微鏡的病変に分類すると, 肉眼的病変は第I群にのみ4個認められた. 顕微鏡的病変は第I群で5個, 第II群で3個, 第III群で1個認められた. 第I群で1個の腎切片においてRCTが認められたか, または10個以上のDFの発生が認められた群とそうでない群に分類すると, 総コレステロール値は前者で120.8±21.8mg/dl, 後者で94.1±19.6mg/dlであり, 前者で有意に高値を示した (p<0.025, Wilcoxon test). 血中コレステロールはDF, RCTの発生, 進展におけるプロモーターであると示唆された.
  • 寺沢 良夫, 福田 陽一, 鈴木 康義, 森田 昌良, 加藤 正和, 鈴木 騏一
    1992 年 83 巻 1 号 p. 85-92
    発行日: 1992年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1987年4月から1991年3月までの4年間で, 当院健診センターにおける腹部超音波検査受診者は延人数19,933人で, このうち腎細胞癌と診断し, 手術した症例は16人であった. 超音波検査での腎細胞癌の検出率は, 0.08% (1,245人に1人の割合) であった. 男女比は15:1, 左右比は9:7, 年齢は38~64歳 (平均50.8歳) であった. 摘出腫瘍径は, UICCのTNM分類でT1が7人 (44%), T2が9人 (56%), 最小腫瘍径は1.2×1.3cmで, 小腎細胞癌が多く, 全例生存している. 腎細胞癌の早期診断には健診センターにおける腹部超音波検査が最も有効な検査法と考えられた.
  • 田代 和也, 鳥居 伸一郎, 古田 希, 岩室 紳也, 冨田 雅之
    1992 年 83 巻 1 号 p. 93-97
    発行日: 1992年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    ESWL治療は, 結石が破砕できても完全に排石されないことがしばしばみられる. このため, ESWL後の排石経過を観察し, いつ併用療法や追加療法が必要かを検討した.
    対象は神奈川県立厚木病院で最近20ヵ月にリソスター®を用いてESWL単独治療を施行した200例の上部尿路結石症例であった. 治療開始から結石の完全排石までの期間を累積残石率で求め, 結石部位, 大きさにもとずいて検討した.
    全200例の治療成績は, 治療回数1.67±0.97回 (M±SD), 衝撃波数6,742±5,545発で3ヵ月判定では完全排石148例 (74%), 残石≦4mm 32例 (16%) であった. 経時的残石率は1遇目90.5%, 3週目66.5%, 6週目39.1%, 12週目26.9%, 20週目17.9%であった. 部位別の排石率は, 下部尿管>UPJ>上部尿管>腎実質・憩室>腎盂・腎杯の順で良好であった. 大きさ別では, 大きいほど完全排石率は低下し, 21mm以上の群はそれ以下の群に対して有意に不良であった (p<1%).
    ESWLの単独治療後の排石経過は6週目まで漸次完全排石するが, その後の排石はきわめて少ない. それゆえ, 追加治療や併用療法を行う決定は6週間をめどに行えばよいと思われた. 残石率は, 21mmを越えるもの, 腎盂腎杯のものが高かった. さらに完全排石率を向上させるためには, 排石運動の開発や Endourology の併用が必要と思われた.
  • 柏木 明, 佐藤 聡秋, 町野 倫太郎, 力石 辰也, 出村 孝義, 野々村 克也, 富樫 正樹, 小柳 知彦
    1992 年 83 巻 1 号 p. 98-101
    発行日: 1992年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    幼児期に高位回腸導管となり16年余りになる19歳男子に対し腸管の cecoileal segment を用いて undiversion を施行した. 術式は上行結腸15cmの segment の前壁を切開し, ここに detubularize した回腸を patch することにより pouch を作製した後, 回腸末端部を pouch 内に重積させ逆流防止機構としここに回腸導管を端々吻合する一方, pouch の盲腸部を残存していた前立腺部尿道に吻合した. その結果低圧かつ十分な容量を持ち, 腎への逆流がなく尿禁制が保たれ, かつ自排尿が可能な reservoir が作製可能であった.
  • 水谷 一夫, 佐橋 正文, 山田 伸, 上平 修, 小野 佳成, 大島 伸一
    1992 年 83 巻 1 号 p. 102-105
    発行日: 1992年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    腎外傷に合併した動静脈瘻に対し経皮的塞栓術を施行した症例を経験したので報告する.
    症例は58歳, 男性. 1989年12月10日階段より落ち, 左側頭部骨折, 腎外傷をおこし来院. 左腎外傷 (中部に裂傷) と診断, 保存的治療にて血尿は消失するも, 12月28日突然, 肉眼的血尿が出現した. 1月4日左側腹部痛出現, CTにて左腎盂のタンポナーゼと診断した. 以後肉眼的血尿が持続したため1月10日左腎血管造影を施行, 左腎動静脈瘻による出血と診断し, 金属コイルにて塞栓術を施行した. 以後肉眼的血尿は消失し, 4ヵ月後, 排泄性腎盂造影にて左腎に水腎もなく腎盂尿管の描出あり, またTcDMSAレノシンチにて左腎中部に defect を認められたのみであった. 腎外傷に続発した腎動静脈瘻に対して経皮的塞栓術が有効であると考えられる.
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