Wistar 系雄ラットに0.1% EHEN 添加食を2週間投与後, 25週目より以下の3群に分類した. 第I群: 基本食投与群. 第II群: 2%コレスチラミン添加食投与群. 第III群: 0.02%コンパクチン添加食投与群. 40週目にラットを屠殺して, 組織学的に異型細胞増殖巣 (DF), 腎細胞性腫瘍 (RCT) の発生頻度について検討した. 40週目における血中総コレステロール値は第I, II, III群で各々108.9±23.4mg/dl, 78.8±12.5mg/dl, 95.6±43.4mg/dlであり, 第I群に比較して第II, III群で有意に低値を示した (p<0.01, p<0.05, Wilcoxon test). DFの腎臓の単位面積あたりの発生頻度は, 第I, II, III群で各々4.5±4.1/cm
2, 1.3±0.3/cm
2, 2.3±2.0/cm
2であり, 第I群に比較して第II群で有意に少なかった (p<0.025, Wilcoxon test). 第II, III群間には有意差はなかった. RCT発生腎は, 第I群で9/34 (26%) であったのに対して, 第II群で2/18 (11%), 第III群で1/20 (5%) と, 第III群で第I群と比較して有意に低い発生率を示した (p<0.05, qui-square test). RCTを肉眼的病変と顕微鏡的病変に分類すると, 肉眼的病変は第I群にのみ4個認められた. 顕微鏡的病変は第I群で5個, 第II群で3個, 第III群で1個認められた. 第I群で1個の腎切片においてRCTが認められたか, または10個以上のDFの発生が認められた群とそうでない群に分類すると, 総コレステロール値は前者で120.8±21.8mg/dl, 後者で94.1±19.6mg/dlであり, 前者で有意に高値を示した (p<0.025, Wilcoxon test). 血中コレステロールはDF, RCTの発生, 進展におけるプロモーターであると示唆された.
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