日本泌尿器科学会雑誌
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83 巻, 12 号
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  • 佐藤 一成, 加藤 哲郎, 守山 正胤
    1992 年 83 巻 12 号 p. 1957-1963
    発行日: 1992/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    尿路移行上皮癌32例 (腎盂癌1例, 尿管癌3例, 膀胱癌28例), 腎細胞癌15例ならびに前立腺癌14例を対象にしてint-2, c-erbB-2およびEGFR遺伝子の異常を Southern blot hybrization 法で検索した. 尿路移行上皮癌ではint-2遺伝子の増幅が4例 (12.5%) にみられ, その3例は筋層浸潤をともなったG3腫瘍で, 他の1例は後に多発性腫瘍が再発したG1, pTa腫瘍であった. c-erbB-2遺伝子の増幅は2例 (6.3%) で, G2, G3各1例, また2例ともpT2であった. int-2c-erbB-2の同時増幅癌はなく, またEGFRの増幅はなかった. 腎細胞癌と前立腺癌では, これら3種の遺伝子は増幅していなかった.
    int-2を含む染色体11q13領域とc-erbB-2遺伝子の増幅は, 泌尿器癌においては尿路移行上皮癌に特異的にみられ, かつ病理組織所見とは独立した予後規定因子になりうることが示唆された.
  • 郡 健二郎, 今西 正昭, 国方 聖司, 秋山 隆弘, 栗田 孝
    1992 年 83 巻 12 号 p. 1964-1969
    発行日: 1992/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    VURに対する内視鏡手術の成績を高める目的で不成功例の原因を検討した.
    施行した51例, 66尿管中, 1回の治療の成功例は50尿管, 75.8%で, 不成功の16尿管中8尿管は2回目の手術をし, その50%は成功し, 残り4尿管は経過観察中である. 2症例で Politano-Leadbetter 法逆流防止術をし, 残り6症例は, VURの grande の低下がみられたり, 膿尿や尿路感染症などの症状がないことから観察中である.
    小児では15例全例治癒したが, 成人女性の成績は57%と悪かった. Grade が高い症例や, 広く開大した尿管口でも成功率は低下せず, 神経因性膀胱などのVURの基礎疾患による差もほとんどなかった. 粘膜下のみに注入した4症例では術後テフロンペーストの偏位があり, 再発をみた. 再発例の大半は術後1ヵ月以内にみられたことなどからテフロコペーストを溶解しているオリーブ油の一部が吸収され, テフロンペーストの量を減らし尿管口閉塞を緩めるものと思われた.
    以上から膀胱三角部の粘膜下および筋層内に充分量のテフロンペーストを注入することが大切で, 本法は全てのVURに対し先ず行ってよい治療法と考えられた.
  • 急性拒絶反応と生着率に影響を及ぼす因子
    丹田 勝敏, 富樫 正樹, 竹内 一郎, 力石 辰也, 小柳 知彦, 金川 匡一, 平野 哲夫, 関 利盛, 坪 俊輔
    1992 年 83 巻 12 号 p. 1970-1977
    発行日: 1992/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    CYAの適正な投与法が移植成績の向上に重要と考え, 移植後早期3ヵ月間の急性拒絶反応とその後の graft の予後に影響を及ぼすと思われる諸因子について retrospective に検討した.
    対象は1986年3月から北大泌尿器科・市立札幌病院腎移植科及び関連病院にて, CYA中心の免疫抑制法 (2剤: CYA+PRD 10例, 3剤: CYA+PRD+AZAまたはMIZ 44例) で治療した生体腎移植患者54例である. 各症例を治療期間 (1期: 移植日~15日, II期: 16~30日, III期: 31~60日, IV期: 61~90日) に分け, 急性拒絶反応の有無とその後の graft の予後との関係を, CYAの副作用軽減を目的とした併用薬剤 (AZAまたはMIZ) の有無, CYAの初期投与量, CYAの血中 trough level の3項目を中心として検討した.
    各治療期間においてAZAまたはMIZの有無, CYAの初期投与量は急性拒絶反応出現頻度と有意な関係を認めなかった. しかしCYA trough level がI期で150ng/ml未満, またIII期で100ng/ml未満の場合に有意に急性拒絶反応の発症頻度が高かった (p<0.01).
    graft の予後については, CYAの初期投与量は有意な関係を認めなかった. また, AZAまたはMIZの併用も2剤治療群と比較して graft 生着率に有意差を認めなかった. 一方CYA trough level がI期で150ng/ml, III期で100ng/ml以上の至適レベル到達症候群の graft の生着率はそれ以外の群と比べ有意に高かった. (p<0;05).
    以上より特に移植後早期3ヵ月以内のCYA trogh level は移植成績の向上に重要と思われた.
  • 牧之瀬 信一
    1992 年 83 巻 12 号 p. 1978-1987
    発行日: 1992/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    compromised host における細菌の尿路上皮に対する付着性および付着性と血中ET濃度との関係について, マウス尿路感染症モデルを用いて検討した.
    尿路感染実験において, 作成した4つのマウス感染モデルのうち膀胱内異物モデルと排尿障害モデルにおける尿路の易感染性が確認された. 顆粒球減少モデルでは膀胱壁付着細菌数のみが有意な増加を示したが, 糖尿病モデルでは有意な易感染性は確認できなかった.
    E. coli 6株のマウス膀胱上皮に対する in vitro の付着性は, 各感染モデル群とコントロール群の間において明らかな差が認められなかった.
    receptor としての尿路上皮の変化を検討する目的で, マウスの腎, 膀胱上皮に対するレクチンと uromucoid の染色性を比較したが, 各感染モデル群と正常群との間で明らかな差が認められなかった.
    マウス感染モデルにおいて認められた尿路の易感染性は, マウス尿路上皮におけるレセプターの量的, 質的変化に伴う E. coli の付着性の増加によるものではなく, その他の宿主防御因子の変化によるものと考えられた.
    マウス膀胱上皮に対する in vitro の付着性は, type 1線毛保有株が非保有株より明らかに高かったが, in vivo における尿路内での存続性が強いのはP線毛を同時に保有するNo. 113株接種群であった.
    付着性と血中ETの検討では, 付着性の高い菌株でETレベルが投与後6h~24hで高度に上昇する傾向にあり, 付着性と血中ET濃度との関連性が示唆された.
  • 今井 利一, 高崎 悦司, 曽 振強, 細谷 吉克, 前田 節夫, 神部 清彦, 本田 幹彦, 鈴木 徹, 村橋 勲
    1992 年 83 巻 12 号 p. 1988-1993
    発行日: 1992/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    獨協医科大学泌尿器科及びその関連病院において自排もしくは切石術によって標本が得られた, 上部尿路のシスチン結石患者のうち純粋なシスチンと確認された4家系5人の11個の結石のX線透過性について検討した.
    これらの結石は初診時もしくは検査加療前の腎・尿管・膀胱部のX線単純撮影において容易に確認できた. また切石術が施行された標本においては, X線写真の結石の夫きさと標本の大きさを比較したが, 全てほぼ欠損なき陰影であった. また標本のシスチン結石と単純写真上類似しているいわゆる蓚酸塩または燐酸塩の結石を選び, 結石部と結石周囲の組織のコントラストを濃度計を用いて比較し, シスチン結石が, いわゆる蓚酸塩または燐酸塩の結石と同様に腎・尿管・膀胱部のX線単純撮影において radiopaque であることを確かめた.
  • 寺田 為義, 藤内 靖喜, 十二町 明, 岩崎 雅志, 風間 泰蔵, 片山 喬, 加藤 修, 高塚 亮三
    1992 年 83 巻 12 号 p. 1994-1998
    発行日: 1992/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    精巣上体管から直接精子を採取しそれを体外受精に供する方法を試みた. 対象患者は閉塞性無精子症14例, 高度乏精子症7例, 計21例であり, 25回の手術操作を行った. 手術は顕微鏡下に行い, 精巣上体管より直接穿刺吸引又は管に小切開を加え流出する液を吸引した. 採取された精子は3層パーコール法にて精製の後, Ham-F10液にて4~6時間の前培養を行い, 体外受精に供した.
    採取精子の状況; 実数で32×104~15,300×104の精子を得た. 精子運動率は0~82%, 平均25.0%であった. 精子前進運動性は25件中17件でかなり良好なものが見られた. 精子の条件が悪く媒精しなかったものが4件17%あった.
    受精率; 閉塞性無精子症症例では, 件数で53% (8/15), 卵数で63% (55/87) の受精率であった. 乏精子症症例では件数で40% (2/5), 卵数で5.9% (2/34) と低い値であった.
    妊娠; 閉塞性無精子症の2例で妊娠が成立した. いずれも精巣上体頭部から精子を採取した症例であり, 接合子卵管内移植法 (ZIFT) により母体に戻した. うち1例は1991年11月出産に成功, 1例は流産した.
    本法は重症男子不妊症に対する画期的治療法になると考えられた.
  • 藤田 公生, 松島 常, 宗像 昭夫, 国武 剛
    1992 年 83 巻 12 号 p. 1999-2004
    発行日: 1992/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    経尿道的前立腺切除術後の膿尿の消朱を遅延させる因子を395例について分析した. 術後の膿尿持続に影響をおよぼす因子としては, 術前カテーテルの留置, 尿路ないし前立腺の感染, あるいは前立腺ないし前立腺床の大きさなどの局所因子が主に考えられていたが, 今回の分析では意外に年齢や貧血状態, 術前の白血球増多といった全身的な因子, 侵襲に対する生体の抵抗力が大きな役割を占めていることが判明した. 前立腺重量と手術時間には密接な関係があるが, 前立腺重量自体よりも手術時間の方が重要な因子であった. 全例が抗菌剤投与によって管理されたので, 局所感染因子が重要な決定因子でなくなったのであろう.
  • 茂田 泰明
    1992 年 83 巻 12 号 p. 2005-2014
    発行日: 1992/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (1) ケタミン麻酔後除脳したイヌ21頭を用い, 迷走神経求心性刺激および消化管伸展の膀胱運動に対する影響を観察した.
    頸部迷走神経を切断後その中枢端を刺激すると膀胱は弛緩し, 骨盤神経膀胱枝の遠心性活動は抑制された. また食道, 胃, 十二指腸の伸展により膀胱運動は抑制された. この抑制効果は十二指腸伸展の一部の例を除いて両側迷走神経切断後消失した.
    (2) つぎに10頭の除脳イヌを用いて, 迷走神経求心性刺激の橋排尿中枢活動に対する効果を観察した, ガラス微小電極法を用いて橋吻側部の上小脳脚内側縁近くの部位に電極を刺入して, 骨盤神経膀胱枝の求心性刺激に応答する59ユニットを検出した. その中で骨盤神経膀胱枝の遠心性リズム2.2~2.5Hzと類似のリズムで発火するもの6ユニットが存在した. その誘導部位は橋背外側被蓋核とその直腹側部であった. この型の発射を示すニューロンは, 下降性の出力ニューロンと推測され, その活動は迷走神経前幹の求心性刺激によって抑制された.
    以上のことより食道・胃・十二指腸伸展刺激による膀胱抑制は, 主として迷走神経を求心路として骨盤神経活動を抑制することで発現すると推定される. 強い十二指腸伸展刺激によっては, 内臓神経を求心路としても膀胱抑制が発現する場合があると考えられる. また迷走神経を求心路とする膀胱抑制は橋排尿中枢活動を抑制することによって引き起こされると結論される.
  • 久慈 了, 近田 龍一郎, 折笠 精一, 太田 章三, 坂井 清英, 金田 隆志
    1992 年 83 巻 12 号 p. 2015-2021
    発行日: 1992/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    一側水腎の存在が対側腎発育にどのような影響をあたえるかについて, 実験的検討を行った.
    実験は, 腎の発育が1歳前後の幼小児と同等と考えられる生後3~4週の雄S-Dラット (体重80~90g) を用いて, 1) 左腎摘出群 (N群), 2) 左尿管結紮群 (H群), 3) sham ope 群 (S群) の3群にわけ, 各操作後1, 3, 5, 7, 14日目に bromodeoxy uridine (BrdU) を腹腔内投与. 1時間後に腎を摘出, 腎湿重量とBrdUの labelling index (LI) を求めた.
    この結果, N群右腎には1~3日目から尿細管の細胞増殖を伴う代償性腎発育が認められた. これに対し, H群右腎では代償性発育はN群とほぼ同時期から認められたが, 5日目までは hypertrophy を主体とし, 組織学的に水腎側の高度障害を認める7日目以降になると, 細胞の増殖が加わってくることが判明した.
    以上の結果, 一側水腎作製後対側腎に代償性腎発育が認められるが, 初期には hypertrophy を主体としたもので, 水腎側尿細管, 間質の障害が高度になると細胞の増殖を伴うようになることが判明した. この原因としては, ネフロンの減少が細胞増殖の引金になる, 水腎の存在が細胞増殖を抑制する要因となる, の2つが考えられた.
  • 山田 伸一郎, 出口 隆, 根笹 信一, 玉木 正義, 江原 英俊, 岡野 学, 河田 幸道
    1992 年 83 巻 12 号 p. 2022-2028
    発行日: 1992/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    細胞内ATP量を指標とする抗癌剤感受性試験 (ATP法) を開発し, その基礎的および前臨床的検討を行った. 基礎的検討では, HeLa細胞の細胞数と細胞内ATP量との間に有意の正の相関を認め, 103個の細胞数まで測定可能であった. 抗癌剤処理後の生細胞数と細胞内ATP量との間にも有意の正の相関を認めた. また, 時間依存性抗癌剤を含めた抗癌剤を評価するためには, 薬剤暴露時間は72時間を要した. 以上の基礎的検討に基づき, 臨床材料として腎細胞癌34例, 尿路上皮癌68例, 精巣腫瘍19例にATP法を行い, 評価可能率は, 腎細胞癌25例76%, 尿路上皮癌55例80%, 精巣腫瘍17例89%であった. 抗癌剤は, Adriamycin (ADM), Vincristine (VCR), Vinblastin (VLB), Methotrexate (MTX), 5-Fluorouracil (5-FU), Peplomycin (PEP), Mitomycin C (MMC), Cisplatin (CDDP) の8剤を使用した. 各抗癌剤 peak 濃度で処理した際のATP量が, 抗癌剤未処理のコントロール細胞のATP量の50%以下に減少したものを感受性有りとした. 腎細胞癌において感受性の比較的高かった薬剤はADM, MMCで, 尿路上皮癌ではADM, VLB, MMC, CDDPであった. 精巣腫瘍では, seminomatous tumor, non-seminomatous tumor ともADM, MMCに良好な感受性を認めた.
  • 塩見 努, 安川 元信, 吉井 将人, 高橋 省二, 山本 雅司, 百瀬 均, 末盛 毅, 山田 薫, 大園 誠一郎, 岡島 英五郎
    1992 年 83 巻 12 号 p. 2029-2036
    発行日: 1992/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    ボバース記念病院で332例の慢性期脳卒中症例の排尿管理を行った. 脳卒中の原因疾患は脳梗塞が178例 (53.6%), 脳出血が123例 (37.1%) で, くも膜下出血が31例 (9.3%) であった. 治療前自排尿は332例中124例で, うち29例はときどき尿失禁を認めた. 143例はおむつで, 64例は留置カテーテルで管理されていた. 1例のみが介助者によるCICを行っていた. 尿路感染症は108例 (51.9%) に合併し, 膀胱結石は7例に認めた. 合併した泌尿器科疾患の治療後に膀胱内圧測定を行ったところ, 過活動型膀胱を242例 (72.9%), 低活動型膀胱を65例 (19.6%), 正常型膀胱を25例 (7.5%) に認めた. なお, 前立腺肥大症97例中38例と膀胱頸部硬化症28例中16例に対してTURPを行った. TURP拒否あるいは poor risk でTURPを行わなかった24症例の残尿と残尿率を比較してみるとTURP施行群に有意な改善を認めた. 治療後は235例 (70.8%) が自排尿可能となった. 53例においてはおむつ管理あるいは集尿器による排尿介助が必要であった. 低ADL症例でも家族の協力が得られた39症例にはCICを指導して, おむつや留置カテーテルから解放することができた. 留置カテーテル管理は5例であった. 一般に, 脳卒中の排尿管理においては, ADLの良い症例はよく治療に反応し良い成績が得られるが, 低ADL症例や血管性痴呆を合併した症例は排尿の自立の獲得は困難であり, 介助者の存在が排尿方法を決定する大きな要因であった.
  • 発生母地について
    小林 裕, 橋本 紳一, 石川 真也, 石山 俊次, 徳江 章彦
    1992 年 83 巻 12 号 p. 2037-2043
    発行日: 1992/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    病理組織学的に下部尿路の内反性乳頭腫と診断された9症例について臨床的ならびに病理組織学的検討を行った.
    1. 臨床的検討
    性別では, 膀胱移行上皮腫瘍と比較して本研究においても文献的にも男性の頻度が圧倒的に高かった. 発生部位は, 膀胱頚部6時付近からが7/9症例に認められた. 内視鏡的所見では非乳頭状8/9症例, 乳頭状が1/9症例に認められた. またすべての症例が有茎性であった. この中の大部分をしめた非乳頭状の腫瘍の所見は前立腺上皮様尿道ポリープと類似していた. 治療は経尿道的切除術を施行したが, 不明の2例を除いて再発は認められなかった.
    2. 病理組織学的検討
    HE (hemotoxylin-eosin) 染色上, glandular typetrabecular type に分類され, それぞれ2/9症例, 5/9症例に認められ, また合併していたものは2/9症例であった.
    抗PSA (prostatic specific antigen) 抗体による免疫染色では3/9症例に陽性例が認められ, 陽性例はすべて glandular type を示していた. さらに抗ケラチン抗体による染色パターンでは bladder tumor pattern と urethral tumor pattern に分類され, urethral tumor pattern を示した症例はHE染色上 glandular type であり, また抗PSA抗体陽性症例もこの中に含まれていた.
    これらの結果は内反性乳頭腫の発生母地の1つとして前立腺組織が考えられることを強く示唆していた.
  • 柳沢 良三, 星野 嘉伸
    1992 年 83 巻 12 号 p. 2044-2049
    発行日: 1992/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1970年7月から1989年6月までの19年間に都立府中病院で前立腺全摘除術を施行した31例の前立腺癌症例の成績を検討した. 術式は会陰式25例, 会陰式と恥骨後式の合併術5例, 仙骨式1例でホルモン療法併用は23例, 放射線療法併用は13例であった. 出血量は平均762mlで, 輸血不要の15例はすべて会陰式であった. 術後合併症は手術死亡1例 (脳卒中), 膀胱直腸瘻1例, 膀胱頚部または尿道の狭窄9例 (軽度7, 高度2), 尿失禁20例 (軽度13, 中等度4, 高度3) であった. 尿失禁の頻度と程度は病理組織学的進展度が高いほど高い傾向を示した. 5年生存率は stage A (4例) とB (8例) の12例では83%, stage C (19例) は63%であった. 以上より会陰式前立腺全摘除術は侵襲が比較的少ない術式であり, stage A, Bでは根治術として, stage Cでは集学療法の1つとして意義があると考えられた.
  • 照射前の DNA ploidy と照射前後の DNA ploidy変化と治療効果及び予後との関係
    豊田 健一, 永森 聡, 柏木 明, 野々村 克也, 富樫 正樹, 小柳 知彦, 野島 孝之, 井上 和秋
    1992 年 83 巻 12 号 p. 2050-2057
    発行日: 1992/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    Flow cytometry (FCM) を用いて, 術前照射後, 根治的膀胱全摘術を施行した膀胱癌 (移行上皮癌) 30症例の照射前と全摘後の核DNA量を解析し, 照射前の DNA ploidy と照射前後の DNA ploidy 変化が治療効果と予後とを予測する指標となりうるか否かについて検討した.
    1) 照射前の DNA ploidy は DNA diploid (以下 diploid) 8例, DNA aneuploid (以下 aneuploid) 22例で, 照射前 diploid は照射後全て diploid を示し, 照射前 aneuploid は22例中18例が照射後 diploid に変化し, 4例は aneuploid で変化なかった.
    2) 照射前 diploid 症例は照射前 aneuploid 症例に比し, 照射後有意に高率に腫瘍が消失し (p<0.05), 8例全例NEDで生存していた.
    3) 照射前の ploidy に関わらず, 腫瘍消失例や diploid 腫瘍残存例は, 全例生存しているが, それに比較して, 照射後も aneuploid 腫瘍が残存した4例は有意に予後不良であった (p<0.01).
    4) 腫瘍残存例では, 照射前 aneuploid 17例中13例が照射後 diploid に変化したが, その内, 5例が癌死し, 必ずしも予後良好とはいえなかった.
    以上, 照射前 diploid は腫瘍の消失率も高く, 治療効果, 予後とも良好であり, 照射後 aneuploid 腫瘍の残存例と diploid に変化した例の一部は予後不良であることから, 照射前の DNA ploidy 及び照射前後の DNA ploidy 変化の解析によって, 術前照射例の治療効果および予後の予測はある程度可能な結果であることが示唆された.
  • 崎山 仁, 西 一彦, 菊川 浩明, 上田 昭一
    1992 年 83 巻 12 号 p. 2058-2061
    発行日: 1992/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    HTLV-1 associated myelopathy (HAM) の未加療の患者21例を対象として, 排尿状態および尿流動態の検討を行った. 排尿障害は, 90%にみられ, 閉塞症状のみ33%, 刺激症のみ19%, 閉塞症状と刺激症状の合併36%であった. 排尿障害とHAMの主症状である歩行障害との出現時期を比較してみると, 歩行障害が先行あるいはほぼ同じ頃に生じた症例が76%であったが, 14%に排尿障害が初発症状としてみられた. 膀胱内圧測定では, 過活動型が66%と大半を占めたが, 低, 無活動型も15%に認められた. また後者は前者に比し残尿, 初発尿意, 最大尿意とも有意に増加していた. 尿道機能としてUPP上は異常所見は認めなかったが, DSDが62%にみられた.
    以上の排尿障害は, HAMの主病変である胸髄側索変性に基づくものと推察されるが, 低, 無収縮膀胱を示す症例では腰仙髄が, 尿意が障害された症例では後索にも変性が及んでいる可能性が示唆される.
  • 溝口 裕昭, 野村 芳雄, 矢野 彰一, 中川 昌之, 寺田 勝彦, 高橋 真一, 今川 全晴, 奈須 伸吉, 緒方 二郎, 藤原 亨
    1992 年 83 巻 12 号 p. 2062-2069
    発行日: 1992/12/20
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    1983年4月から1991年9月までの8年6ヵ月間に当科にて二次性副甲状腺機能亢進症と診断し, 副甲状腺全摘出, 自家移植術を施行した27例について臨床的検討を加えた. 症例は男13, 女14例で, 31~61歳, 平均年齢43歳. 透析期間は60~202ヵ月, 平均126.4ヵ月であった. 臨床症状として骨痛19例, 関節痛18例, 身長低下7例, 皮膚掻痒3例, 筋肉痛, 眼球結膜の充血がそれぞれ2例, 腫瘤形成, 上顎骨の変形がそれぞれ1例にみられた. 骨X線所見として, 手指骨の骨膜下吸収像および頭蓋骨の salt and pepper をそれぞれ26例, rugger jersey spine 15例, 異所性石灰化11例, 病的骨折4例を認めた. 術前血液生化学検査では血清Ca10.6±0.9mg/dl, 血清リン7.7±1.9mg/dl, ALP1, 237±889IU/L, c-PTH42.6±19.3ng/mlといずれも上昇していた.
    全例全身麻酔下に副甲状腺全摘出術, 前腕への自家移植術を行った. 4腺摘出23例, 3腺摘出4例で, 全例術後24時間以内に血清カルシウム値は著明に低下した. 平均摘出総重量は4.48g. 術前局在診断率は超音波94%, CT90%. 術後2週目に対側に比べ移植側肘静脈血のPTH高値を検出, 移植片生着を確認した. 術後の自覚症状よりみた臨床的効果は著効12例, 有効11例, 不変4例. 術後1年以降で骨膜下吸収像よりみたX線学的効果は著効11例, 有効11例, 不変1例. 両効果はよく相関した. 病理組織学的には副甲状腺組織はび漫性過形成10例, 結節性過形成12例. 混在型4例. 骨組織像は線維性骨炎型16例, 軽度変化型5例, 混在型2例で骨軟化症型は見られなかった. 骨組織像から臨床的効果, X線学的効果を検討すると軽度変化型に比べ線維性骨炎型に著効例が多い傾向がみられた. 摘出副甲状腺総重量と術前c-PTHとの間に正の相関関係を認めた. 術前ALPは intact-PTH と相関し, 軽度変化型に比べ線維性骨炎型において有意に高値であった. 2例に移植副甲状腺組織の増殖を伴う再発を認め, 移植片亜全摘術を施行した.
    以上から二次性副甲状腺機能亢進症に対して副甲状腺全摘術による臨床効果を高めるためには, 1g以上の副甲状腺の過形成組織を認める症例を選ぶことが必要で, その補助診断としては術前c-PTH値が有用であるへ1さらに手術適応の決定においては線維性骨炎の程度をX線学的および組織学的に術前に正確に評価することも重要で, その補助診断としては術前ALP値が有用である.
  • 出口 隆, 米田 尚生, 兼松 江巳子, 岩田 英樹, 伊藤 康久, 多田 晃司, 斉藤 昭弘, 坂 義人, 河田 幸道, 山本 啓之, 江 ...
    1992 年 83 巻 12 号 p. 2070-2077
    発行日: 1992/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    男子尿道炎患者40例の尿道擦過物を検出材料として polymerase chain reaction (PCR) 法による尿道炎診断と淋菌培養法, クラミジア培養法および酵素抗体法 (Chlamydiazyme) による尿道炎診断との比較を行った. PCR法では, 淋菌検出用プライマーにて206bpのDNA断片の増幅を認めた場合に淋菌性尿道炎と, C. trachomatis 検出用プライマーにて242bpのDNA断片の増幅を認めた場合にクラミジア性尿道炎と診断した. 従来法では, 淋菌が培養された場合を淋菌性尿道炎とし, クラミジア培養法あるいは Chlamydiazyme のいずれか一方が陽性となった場合をクラミジア性尿道炎と診断した. PCR法による尿道炎診断は, 淋菌性クラミジア性尿道炎が8例, 淋菌性非クラミジア性尿道炎が10例, 非淋菌性クラミジア性尿道炎が14例, 非淋菌性非クラミジア性尿道炎8例であった. PCR法の従来法に対する一致率は, 淋菌性クラミジア性尿道炎において78% (7/9), 淋菌性非クラミジア性尿道炎において90% (9/10), 非淋菌性クラミジア性尿道炎において100% (12/12), 非淋菌性非クラミジア性尿道炎において89% (8/9) であり, 全体での一致率は90.0% (36/40) であった. 以上より, PCR法による尿道炎診断は従来の方法による尿道炎診断とよく一致し, 臨床上応用可能な方法と思われた. さらに, PCR法は, 尿道擦過物1検体から約6時間で淋菌とC. trachomatis の検出が可能であるなど, 従来法より優れた点をもち, さ体有用な尿道炎診断法となるものと思われた.
  • 出村 孝義, 大橋 伸生, 野々村 克也, 森 達也, 間宮 政喜, 関 晴夫, 榎並 宣裕, 小柳 知彦
    1992 年 83 巻 12 号 p. 2078-2084
    発行日: 1992/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    ヒト androgen recepotor (AR) に対する単クローン抗体, 5F4を用いて精巣, 精巣上体, 精嚢腺, 及び陰嚢皮膚におけるARの局在を免疫組織化学的手法により検討した. 組織は採取後, 液体窒素中で凍結し, 厚さ5μmの凍結切片を作製した. Indirect method により染色し, ヘマトキシリンによる対比染色をして鏡検した.
    1) 精巣ではLeydig細胞の核が染色された. テストステロンを合成する Leydig 細胞においてARの局在が認められた事は精巣における autocrine または intracrine 機構の存在を示唆する.
    2) 精巣上体では epididymal duct の上皮細胞の核が染色された. 精嚢腺においても腺上皮細胞の核が主に染色された.
    3) 陰嚢皮膚では有棘細胞層上層細胞の核が染色された. また, 上層に行くほど染色される細胞の割合が増し, 染色性の増強も認められた. この事はARが分化した細胞において強く発現される可能性を示唆するものと思われる. 毛根の outer root sheath の細胞も染色された.
    4) Androgen の標的臓器であってもすべての細胞が染色されるわけではなく, 同一の腺腔を形成する上皮細胞においても染色される細胞とされない細胞が混在していた.
  • 本宮 善恢, 佐々木 憲二, 丸山 良夫, 新井 邦彦, 大園 誠一郎, 平尾 佳彦, 岡島 英五郎, 宇治 義則, 岡部 紘明
    1992 年 83 巻 12 号 p. 2085-2089
    発行日: 1992/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    高カルシウム尿症を伴わない尿路カルシウム結石症40例において, 本症の背景に骨代謝異常が存在するか否かを検討するため, 骨コラーゲンに豊富に含まれるハイドロキシプロリン, 及び骨特異蛋白BGP特有のアミノ酸γ-carboxyglutamic acid (γ-gla) の尿中排泄量を測定した. その結果, 尿中γ-gla値は正常群に比し, 結石群で有意な高値を得たが, 症例個々での検討では明らかに高値を示した症例は40例中13例にすぎず, 大多数の症例においては正常群と差は無く, 尿中ハイドロキシプロリン値もほぼ全例において正常範囲内の結果であった.
    以上より本症の背景に骨代謝異常の存在は大多数の症例において否定的であると考えられた.
  • 佐々木 宏起, 戸塚 一彦, 山田 茂樹, 田中 修, 永井 純, 徳江 章彦
    1992 年 83 巻 12 号 p. 2090-2093
    発行日: 1992/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    27歳の女性で, 高血圧を合併した腎原発血管周皮細胞腫の1例を報告した. 患者な腹部腫瘤と高血圧により当院を紹介された. 腹部CT, 血管造影などで右腎の血管筋脂肪腫を疑い, 根治的右腎摘除術を施行した. 病理組織診断は, 腎原発血管周皮細胞腫であった. 手術後血圧は正常化し, 現在術後18ヵ月を経過しているが, 局所再発, 転移の所見は認められない.
    本症例は腎原発血管周皮細胞腫の本邦報告例として5例目に相当する.
  • Small Cell Lung Cancer-associated Ganglioside (Fuc GM1) antigen の発現について
    佐藤 信, 折笠 精一, 川村 貞文, 大山 力, 斎藤 誠一, 千葉 裕, 石川 博夫, 三上 芳喜, 一迫 玲, 箱守 仙一郎
    1992 年 83 巻 12 号 p. 2094-2097
    発行日: 1992/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    61歳男性, 1年前より持続する肉眼的血尿と膀胱刺激症状を主訴に来院. 膀胱鏡, U/S, MR, CTスキャンにて膀胱前壁を中心に広範な非乳頭状広基性腫瘍を認めた. 経腹的超音波ガイド下膀胱全層生検によりpT3a (Biopsy) と診断し, 生検標本より, 神経内分泌顆粒を有する膀胱原発小細胞癌と診断した. また免疫組織化学的に肺小細胞癌関連抗原であるFuc GM1の発現が認められた. 治療は, neoadjuvant therapy として50Gyの術前照射とCDDP, THPの動注化学療法を施行した. その後再度全層生検によりpTo (Biopsy) となったため膀胱全摘術を施行し, 摘出標本でも pathological CR であった.
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