日本泌尿器科学会雑誌
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83 巻, 2 号
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  • 中田 瑛浩, 沢村 俊宏
    1992 年 83 巻 2 号 p. 157-173
    発行日: 1992年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    カテコールアミンやその代謝物, ニューロペプチドY, ソマトスタチン, エンケファリン, ACTH, 成長ホルモン, VIP, 心房性Na利尿ホルモンが高濃度に褐色細胞腫に含まれていることが判明した. これらの物質の生物活性は未知の点が多い. これらの情報を述べるとともに本疾患の早期診断, 局在診断, MENの治療, 術前・術後の処置, 手術時の留意すべき点などについて記載した.
  • 荒川 孝, 久保 星一, 真下 節夫
    1992 年 83 巻 2 号 p. 174-182
    発行日: 1992年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1984年12月から1989年12月までの約5年間に, 11例の単腎サンゴ状結石に対し体外衝撃波結石破砕術 (以下ESWL) を中心とした結石破砕治療を試みた. 8例が結石にて対側の腎摘をうけたかまたは無機能となっており, 3例が腎結核にて腎摘をうけている. 男性6例, 女性5例で平均年齢はそれぞれ60.0歳, 48.6歳であった. 結石の大きさは, 最大がX線写真上85×44mm, 最小が30×30mmである. 11例中術前にシスチン結石の診断をえている1例に対してのみ経皮的腎結石破砕術 (以下PNL) を先行させたが, 他の10例はESWLから破砕治療開始とした. ESWLのみで治療しえたものは3例で, 他の8例中6例に経皮的腎瘻造設術 (以下PCN), 2例にPNLがそれぞれ併用となった. 3例では明らかな合併症は認めなかったものの, 他の8例中7例で38.5℃以上の発熱を見, 内2例では, 敗血症にまで及んだ. さらに5例では血清クレアチニン値が2.0mg/dl以上に上昇したが, いずれも治療終了後に正常範囲内に回復した. 死亡例の経験はなかった.
    以上のごとく単腎サンゴ状結石においてさえもESWLを中心とした結石破砕治療は可能と思われる. しかしながら, 当疾患においては破砕片の尿管への嵌頓が即, 急性腎不全, 敗血症に直結することが予測されるため, より一層の経過観察が必要と思われる.
  • BCG膀胱内注入療法研究グループ , 赤座 英之, 亀山 周二, 垣添 忠生, 小島 弘敬, 小磯 謙吉, 阿曽 佳郎, 新島 端夫
    1992 年 83 巻 2 号 p. 183-189
    発行日: 1992年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    表在性膀胱癌 (Ta, T1) および膀胱上皮内癌 (CIS) に対するBCG東京172株による膀胱内注入療法の抗腫瘍効果と再発予防効果の検討を行った. 本臨床試験の結果はBCGの臨床使用について厚生省の認可を得るための申請資料の一部となるものである. 全体で157症例 (Ta, T1125例, CIS32例) に対して, BCG 80mg/40ml生食水の膀胱内注入療法を週1回, 原則として8回施行した. この投与方法は, 以前に行った臨床第II相試験結果に基づくものである. 125例の表在性膀胱癌のうち, 83例 (66.4%) がCRを示し, PRは26例 (20.8%) であった. また, 32例のCISでは27例 (84.4%) がCRを, 2例 (6.3%) がPRを示した.
    治療注入によりCRを示した症例, およびPRを呈した後, TUR-Btで腫瘍を除去した症例のうち, 98症例が再発予防注入試験に移行した. これらの症例は無作為割り付けにより, 42例が予防注入施行例, 56例が無処置観察群となった. 予防投与は, BCG 40mg/40ml生食水の注入を月1回, 原則として12回, または再発を認めるまで行った. 投与継続中に再発した症例は3例であり, 副作用や患者の希望などで12回を終了できなかった症例は25例であった.
    1,050日まで両群の非再発曲線を投与回数の差を考慮に入れつつ比較したが, 統計学的な有意差を認めなかった. 即ち, 本研究で用いたBCGの治療注入の効果は著明であり, それのみで, その後の再発予防効果も十分期待できることが判明した.
  • 田代 博紹, 渡辺 賀寿雄, 滝沢 弘之, 柴崎 裕, 吉田 英機
    1992 年 83 巻 2 号 p. 190-196
    発行日: 1992年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    一般に乏精子症患者 (精子濃度20×106/ml未満) の精子凍結保存では, 健常者精子の凍結保存に比較して, 解凍後の精子運動率が高度 に低下する. 我々は凍結保存された精子の蘇生率を改善する目的で凍結保存液内に代謝活性物質といわれている kallikrein または caffeine を添加し, とくに乏精子症患者の凍結保存精子に及ぼす効果を検討した.
    凍結保存液として modified Ackerman 液を使用し, 凍結はプログラムフリーザーで行った. 解凍後の精子蘇生率 (解凍後の精子運動率から算出する) について精子濃度別および添加剤別に比較検討し, 以下の結果を得た.
    1) modified Ackerman 液単独では, 乏精子症患者精子は正常者精子に比較して明らかに精子蘇生率が低かった. これに対して両者の解凍後の精子エオジン活性率には有意な差がみられなかった.
    2) 保存液内に1KE/mlの kallikrein または7.5mM/final volume の caffeine を添加した場合には, 乏精子症患者精子の蘇生率は有意に改善され, 正常者精子の蘇生率とほぼ同等となった. kallikrein よりも caffeine でその効果が強く認められた.
    3) kallikrein および caffeine はとくに乏精子症患者の凍結保存精子に対して解凍後の活性非運動精子を賦活する作用のあることが強く示唆された.
  • 特にその分離背景と臨床経過について
    小六 幹夫, 広瀬 崇興, 田仲 紀明, 松川 雅則, 塚本 泰司, 熊本 悦明
    1992 年 83 巻 2 号 p. 197-204
    発行日: 1992年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1989年8月より1991年4月までに当泌尿器科外来33人および入院患者38人から分離された Staphylococcus aureus (S. aureus) 71株を対象にその中の Methicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA) 21株について検討した. 入院症例から分離された S. aureus 38株中47.4% (18株: 尿15株, 膿3株) がMRSAであり, 外来からは3株分離された. MRSA分離の背景としては糖尿病や分離前7日間に抗菌薬を投与された群, 複雑性尿路感染において分離頻度が高かった. 入院症例より分離された18株のMRSAのうちコアグラーゼ型が検査可能であった14株のうち9株がVII型であり, これはある時期に病棟内で outbreak したためであった. 臨床的にはMRSA 8例, MSSA 5例が38℃以上の発熱があったが感受性抗菌薬投与により治療可能であった. 以上より, 泌尿器科領域においてもMRSAの分離頻度は増加しており, その院内感染防止のために患者自身または同じ病室内の患者が compromised host である場合は積極的に化学療法による除菌が必要であると思われた.
  • 第1報 ストレス負荷による性行動変化の検討
    佐藤 嘉一, 熊本 悦明, 鈴木 伸和
    1992 年 83 巻 2 号 p. 205-211
    発行日: 1992年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    長期の心理的ストレスの性行動への影響をラットを用い検討した. ストレス負荷は小川らが考案した communication box を用い, 心理的ストレス群, 身体的ストレス群および対照群を設定した. ストレス負荷は1日1時間, 連続70日間行った. 性行動の観察は, ストレス負荷前, 負荷開始後2, 4, 6, 8, 10週後に行い, 30分間におけるマウント行動につき回数, 腔内挿入および射精の潜時を検討した. 性行動の変化は, 心理的ストレス群では一時的性行動の亢進を認めた. しかし, ストレス負荷が長期にわたると, 逆に性行動が抑制される傾向にあると考えられた. それに対し, 身体的ストレス群では, ストレス負荷が長期に亘っても性行動の抑制は生じず, 逆に若干の性行動の亢進が生じた. 長期の心理的ストレスは雄ラットの性行動を抑制することが示唆された.
  • 第2報 雄型性行動の神経回路における脳内 dopamine 動態変化の検討
    佐藤 嘉一, 熊本 悦明
    1992 年 83 巻 2 号 p. 212-219
    発行日: 1992年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    われわれは, 長期の心理的ストレスによりラットの性行動が抑制されることを報告してきた. その要因の一つとして, ストレスによる脳内アミン系の変化が考えられる. 特に性行動の発現に促進的な働きを担っている dopamine の変化が重要と思われる. そこで, 長期のストレス負荷を行ったラットの性中枢存在部位と考えられる内側視索前野と, 黒質, 線条体, 側坐核, 扁桃体, および大脳皮質における dopamine とその主要代謝産物である, 3,4-dihydroxyphenylacetic acid (DOPAC) 及び homovanillic acid (HVA) を高速液体クロマトグラフィーを用いて測定を行った. 長期の心理的ストレス負荷により性中枢である内側視索前野では, すべての測定項目において対照群に対し有意な含量低下を認めた (p<0.05). また扁桃体, 黒質においては dopamine と HVA の有意な低下を認め (p<0.05), 線条体, 側坐核においても代謝産物の有意な含量低下を認めていた (p<0.05). 一方, 大脳皮質では明らかな変化を認めなかった. これらの dopamine 及び代謝産物の含量低下は dopamine の合成, 放出の低下を推測させる変化であり, dopamine ニューロンの活動性低下が生じているものと考えられた. これらの変化が生じた部位は, 性中枢を中心とした雄ラットの性行動発現の重要な神経回路である. したがって, ここでの dopamine ニューロンの機能低下が雄ラットの性行動抑制を導いているものと考えられた.
  • 清水 俊寛, 土屋 清隆, 内田 達也, 川田 敏夫, 佐藤 仁
    1992 年 83 巻 2 号 p. 220-224
    発行日: 1992年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    初回治療前および後における尿細胞診所見により膀胱腫瘍の非再発率および生存率に差が生ずるか否かを中心に検討し, 尿細胞診が膀胱腫瘍の再発および生命予後にどの程度関与しているかを, そして経過観察上の意義を考察した. 1972年9月より1988年10月までに治療を行った膀胱移行上皮腫瘍患者のうち初回治療前または後に尿細胞診の行われた170例を対象とした. 年齢は24~92歳, 平均63歳であり, 表在性腫瘍 (T1以下) 107例, 進行癌 (T2以上) 60例, 不明 (TX) 3例であった. 表在性膀胱腫瘍においては初回治療前尿細胞診陽性例および初回治療後陽性例で再発が多く, 初回治療前および後の尿細胞診は表在性膀胱腫瘍の再発に関わる危険因子と考えられ陽性の場合は注意深い経過観察が必要と思われた. 初回治療前尿細胞診陽性例では生存率が低かったが, これは陽性例には進行癌が多く表在性腫瘍においても生存率が低かったことの反映によると思われた. 尿細胞診陽性例には生物学的悪性度の高い腫瘍が多い可能性が示唆された.
  • 大島 伸一, 小野 佳成, 絹川 常郎, 加藤 範夫, 佐橋 正文, 松浦 治, 藤田 民夫
    1992 年 83 巻 2 号 p. 225-229
    発行日: 1992年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    わが国では, 死体腎移植に提供される腎は諸外国と大きく異なり, 提供者の心停止後に摘出される. このような状況下での腎の摘出は, 阻血の遷延をはじめ問題が多い. 最近私共は, 腎の摘出時間を短縮する目的で腎摘出方法を以前より行っていた evisceration 法から変え良好な成績をおさめているので私共の行っている死体内灌流法及び腎摘出方法を述べ, その成績を報告した. 死体内灌流は従来から行っているダブル・バルーン・カテーテル法で施行している. 腎摘出方法は剣状突起から恥骨直上までの正中切開を行い, 盲腸付着部より Treitz 靱帯まで大血管前面の腹膜を切開し, 上行結腸外側を右結腸曲から下大静脈前面まで腹膜を切開し, 腸管を上方へ授動し, 右腎前面を露出した. 次に, S状結腸, 下行結腸の外側を左結腸曲を経て大動脈前面まで腹膜を切開し下腸間膜動脈を結紮切断し, 右側と同様に左腎前面を露出した. 尿管をそれぞれ血管交叉部の5cm以上下方, できるだけ膀胱の近くで切断した. 腎の後面を周囲組織をつけ遊離し, 灌流停止後, 下大静脈, 大動脈を切断し, 腎を一塊にして摘出した.
    1987年9月から1990年12月まで本方法にて19症例から腎の提供をうけ, 38腎を摘出した. 摘出時間は平均26分であり, 手術中の消化管損傷等の合併症はみられなかった. 3腎で副動脈の損傷をみとめたが, 2腎では損傷動脈の結紮, 他の1腎は主動脈への吻合による血管形成を施行した. 38腎すべてが腎移植に用いられた.
  • 高野 右嗣, 高原 史郎, 小角 幸人, 亀岡 博, 石橋 道男, 江 宏思, 奥山 明彦, 園田 孝夫
    1992 年 83 巻 2 号 p. 230-235
    発行日: 1992年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1988年11月から1991年5月までに大阪大学医学部泌尿器科にて施行された腎移植症例中, 12例の生体腎移植症例と3例の死体腎移植症例に生じた合計17回の拒絶反応に対して 15-deoxyspergualin を使用した. 投与量, 投与方法は3mg/kg/dayまたは5mg/kg/dayで5日間の点滴静注とした. 移植手術から6ヵ月未満に生じた把絶反応に対して 15-deoxyspergualin を使用した場合の有効性は7回中6回 (有効率85.7%) であり, 移植手術から6ヵ月以上を経てから生じた拒絶反応に対しての有効性は10回中10回 (有効率100%) であった. 副作用としては10回 (58.8%) で 15-deoxyspergualin 投与開始から10日目ごろに白血球数の減少が認められたがほとんどの症例は経過観察のみで軽快した. その他に重篤な副作用は認めなかった. 以上の結果から 15-deoxyspergualin は腎移植後の拒絶反応に対して極めて有効であることが示された.
  • 篠原 康夫, 今西 正昭, 西岡 伯, 植村 匡志, 神田 英憲, 松浦 健, 秋山 隆弘, 栗田 孝
    1992 年 83 巻 2 号 p. 236-242
    発行日: 1992年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    Deoxyspergualin (以下DSGと略す) は, 日本で新しく開発された免疫抑制剤で, 従来の免疫抑制剤とは作用機序が違う点からその有用性が期待されている.
    今回, 当院で発生した拒絶反応例17例にDSGを使用した. 拒絶反応の種類は急性拒絶反応6例, 慢性拒絶反応8例, 晩期急性拒絶反応3例である.
    投与方法は, 3~7mg/kg/日を5日間あるいは7日間3時間以上かけて点滴静注した.
    成績: 急性および晩期急性拒絶反応の全9例中, 著効4例 (44.4%) 有効3例 (33.3%) 無効2例 (22.3%) であった. また, 慢性拒絶反応においては, 血清Cr値の上昇を抑制できたものが多かった.
    副作用: 全17例中10例 (58.8%) に白血球減少, 血小板減少, 顔面のしびれ等みられたが, 投与を終了すれば速やかに消失した.
    以上の結果よりDSGは, 腎移植の拒絶反応に対して有効な免疫抑制剤で, さらに慢性拒絶反応にも有効であることが示唆された.
  • 三股 浩光, 谷川 龍彦, 今川 全晴, 高橋 真一, 野村 芳雄, 緒方 二郎, 葉玉 哲夫, 村本 俊一
    1992 年 83 巻 2 号 p. 243-246
    発行日: 1992年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は57歳男性. 頻尿, 排尿困難と直腸内不快感を主訴として受診. 骨盤部の外傷や手術の既往はない. CT, MRI, 血管造影にて先天性骨盤内動静脈瘻と診断し, 流入血管である右内腸骨動脈および外腸骨動脈の分枝を結紮した. 術後尿路症状や直腸内不快感は消失し, 現在外来にて前立腺肥大症に対して薬物療法を施行している.
  • 古川 敦子, 神田 和哉, 横関 秀明, 前林 浩次, 香川 征
    1992 年 83 巻 2 号 p. 247-250
    発行日: 1992年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は83歳, 男性. 主訴は無症候性肉眼的血尿. 初診時胸壁皮下腫瘤と左上腹部腫瘤を触知した. 末梢血液検査ではRBC737×104/mm3, Hb 17.9g/dlであり, radioimmunoassay (RIA) 法による血漿エリスロポエチン (EPO) 値は330mU/ml (8~30mU/ml) と異常高値を示した. 左腎細胞癌および転移性皮膚腫瘍と診断し, 摘出術を施行した. 術後ただちに血漿EPO値は正常域まで低下, 赤血球増多症も改善した. 腎細胞癌および皮膚転移巣の組織はともに renal cell carcinoma, alveolar type, clear cell subtype, grade 2であった. 摘出腎の腫瘍組織および正常組織抽出液中のEPO活性はそれぞれ2,430mU/g, 59.5mU/gであった. 術後4ヵ月目に肺, 肝, 骨転移をきたし, 血漿EPO値が再上昇し, 赤血球増多症をきたした. 自験例は赤血球増多を伴う腎癌例報告の23例目, RIA法によりEPO活性を測定しEPO産生腎細胞癌と確定診断した本邦3例目の症例である.
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