東京慈恵会医科大学で1983年以後に解剖された日本人男性症例500例について前立腺ラテント癌の病理組織学的特性と, 腫瘍体積を検討した.
検討方法は, 解剖時に前立腺を全摘出し, 数日間ホルマリン固定した後, 3mmの厚さ Step-Section を作成して顕微鏡で観察した. ラテント癌症例については, 同じ倍率で写真撮影して, 一定倍率に引き伸ばし, デジタイザーで癌部分の面積測定した. 得られた面積に3mmの厚さをかけて体積とし, 各切片の値を換算して癌体積とした.
前立腺ラテント癌の出現率は, 500例中104例 (22%) であった. 出現率は年齢階層毎に増加し, 80歳以上では44%にラテント癌が認められた. また前立腺肥大症とラテント癌の合併は, 統計学的にみる限り各々独立した事象と考えられた. 病理組織学的分類では高分化型が64%, 混合型が27%, 低分化型が9%であり, 低年齢層では高分化型が, 高年齢層では混合型が多く出現した.
ラテント癌の腫瘍体積は全体で平均231mm
3と小さかった. 高分化型では平均体積で103.9mm
3と小さいものが多く低分化型では平均体積で642.2mm
3と大きなものが多かった. 統計学的に腫瘍体積200mm
3を境界にして, それより小型の群とそれより大型の群との間に組織構成分布の差が認められた.
この結果を Stage Aの臨床癌にあてはめて考えると, 体積200mm
3という値は治療の必要性を考えるうえの診断基準として重要と考えられた.
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