日本泌尿器科学会雑誌
Online ISSN : 1884-7110
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ISSN-L : 0021-5287
83 巻, 3 号
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  • 中原 満, 碓井 亜
    1992 年 83 巻 3 号 p. 289-297
    発行日: 1992年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
  • 泉 博一, 塩川 英史, 黒川 純, 村田 晃一郎, 真下 節夫, 小柴 健
    1992 年 83 巻 3 号 p. 298-304
    発行日: 1992年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    MRIは衝撃波による腎の微細な変化を観察する上に有用性の高い画像診断法である. しかし, MRIの形態学的所見が必ずしも腎機能を反映するとは言いがたい. 今回の研究は衝撃波の腎機能に及ぼす影響を明確にする目的で, ESWLを施行した腎結石患者16例 (16腎) に対し, GdDTPAを使用した高速イメージングMRIを用いて形態的ならびに相対的腎機能を評価した.
    画像検査は横断像が全例にESWL前後で撮像された. さらに, ダイナミックMRIが5例に対しESWL前後で行われ, 残りの11例にはESWL後に施行された. その結果, T1強調画像では8例の患者に形態的異常所見を示し, その内の4例が皮髄境界消失を示した. さらに, ダイナミックMRIでは照射部領域の信号強度低下を皮髄境界消失症例の2例 (12.5%) だけに認めた. しかし, ESWL6ヵ月後の再検査では, その2症例ともMRI画像に明らかな異常所見は認められなかった. 次に, GdDTPA投与前後の信号強度差を皮下脂肪に対する割合 (増強指数) としESWL前後で比較した. その結果, ESWL前後の増強指数には有意差を認めず, またESWL後に著しい増強指数の低下を示した症例も認めなかった.
    以上の結果より, ダイナミックMRIの画像診断による腎機能低下は僅か2例 (12.5%) に認められたのみであり, 衝撃波によるMRIの皮髄境界消失が必ずしも腎機能低下を反映する所見ではなかった. さらに, 腎機能低下は一過性所見であり衝撃波が腎に対し重大な影響を及ぼすものでないと考えられた.
  • 白井 尚, 池本 庸
    1992 年 83 巻 3 号 p. 305-314
    発行日: 1992年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    アルコール性精巣障害の機序を観察するために前実験として45日齢, 体重約200gの雄性SD系ラットを用い, Lieber 処方にもとづいたエタノールを飼料総カロリーの36%含有する合成液体飼料で7週間飼育したが精巣萎縮は作製できなかった. そこでアルコール性肝障害患者の栄養学的背景にもとづいた高脂肪, 低蛋白食でエタノールを飼料総カロリーの46%含有する合成液体飼料を与えたところ精巣萎縮が作製できた.
    実験的精巣萎縮に伴う組織学的, 生化学的変化は次の通りであった. 1) 精細管直径, 精細管内総細胞数は減少したが, 精細胞の変性は見られなかった. 2) 精細管壁で基底膜の屈曲, 蛇行, 陥入, 基底膜緻密層の多層化が見られ, 固有層では膠原繊維の増生が見られた. 3) Sertoli cell の細胞質に巨大な脂肪滴沈着, ミトコンドリアの重層化が見られ, ランタン・トレーサー法では Sertoli cell tight junction の透過性が亢進した. 4) 血清および精巣内テストステロン値は低下した. 5) 精巣内 lactate dehydrogenase-X (LDH-X) 活性が低下した. 6) 精巣間質に局在する Low Km alcohol dehydrogenase (ADH) 活性が上昇した.
    以上から, アルコール性精巣障害の機序には三大栄養素の組成とアルコール濃度が重要な要素であり, 障害は精巣間質, 精細管の両者におこり, 精細管障害の主体は Sertoli cell と精細管壁であると考えられた. また, 精巣内ADHは精巣間質でアルコール代謝に関与していることが示唆された.
  • 和田 鉄郎, 大石 幸彦, 田代 和也, 川島 禎男, 浅野 晃司, 町田 豊平, 古里 征国, 伊藤 貴章, 加藤 弘之, 藍沢 茂雄
    1992 年 83 巻 3 号 p. 315-320
    発行日: 1992年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    東京慈恵会医科大学で1983年以後に解剖された日本人男性症例500例について前立腺ラテント癌の病理組織学的特性と, 腫瘍体積を検討した.
    検討方法は, 解剖時に前立腺を全摘出し, 数日間ホルマリン固定した後, 3mmの厚さ Step-Section を作成して顕微鏡で観察した. ラテント癌症例については, 同じ倍率で写真撮影して, 一定倍率に引き伸ばし, デジタイザーで癌部分の面積測定した. 得られた面積に3mmの厚さをかけて体積とし, 各切片の値を換算して癌体積とした.
    前立腺ラテント癌の出現率は, 500例中104例 (22%) であった. 出現率は年齢階層毎に増加し, 80歳以上では44%にラテント癌が認められた. また前立腺肥大症とラテント癌の合併は, 統計学的にみる限り各々独立した事象と考えられた. 病理組織学的分類では高分化型が64%, 混合型が27%, 低分化型が9%であり, 低年齢層では高分化型が, 高年齢層では混合型が多く出現した.
    ラテント癌の腫瘍体積は全体で平均231mm3と小さかった. 高分化型では平均体積で103.9mm3と小さいものが多く低分化型では平均体積で642.2mm3と大きなものが多かった. 統計学的に腫瘍体積200mm3を境界にして, それより小型の群とそれより大型の群との間に組織構成分布の差が認められた.
    この結果を Stage Aの臨床癌にあてはめて考えると, 体積200mm3という値は治療の必要性を考えるうえの診断基準として重要と考えられた.
  • 遠隔転移・静脈腫瘍血栓・リンパ節転移に関与する因子の統計学的評価
    高士 宗久, 坂田 孝雄, 中野 洋二郎, 長井 辰哉, 高羽 秀典, 田中 純二, 岡村 菊夫, 高村 真一, 金井 茂, 佐橋 正文, ...
    1992 年 83 巻 3 号 p. 321-327
    発行日: 1992年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    腎細胞癌における近年の臨床病理学的特徴を明らかにし, 転移・静脈腫瘍血栓に影響を及ぼす因子を同定するために, 1980年から1989年までの間に治療を施した腎細胞癌99例について検討した. Robson 分類では stage I: 48例, stage II: 9例, stage III: 16例, stage IV: 26例であった. 近年, 検診や他疾患検索中に発見される症例が増加する傾向にあった. grade 1腫瘍に stage I症例, α型浸潤 (INFα) 症例が多かった. ロジスティクモデルによる単変量および多変量解析により, 静脈腫瘍血栓と組織学的異型度の2因子が遠隔転移に有意に関与していることが示された. 遠隔転移に対する静脈腫瘍血栓 (pV1b-pV2対pV0-pV1a) の相対危険度 (単変量解析) は4.7であり, 組織学的異型度 (grade 2, 3対 grade 1) の相対危険度は8.5であった. また静脈腫瘍血栓には, 腫瘍の局所浸潤 (pT3対pT2a-pT2 b: 相対危険度7.5) と浸潤増殖様式 (INFβ, γ対IFNα: 相対危険度11.5) が有意に関与していた. リンパ節転移に関与する因子は腫瘍の局所浸潤 (pT3対pT2a-PT2b: 相対危険度6.6) のみであった. 全症例の5年生存率は60.0%であった. stage 別では stage IとIIの5年生存率はそれぞれ91.8%, 64.8%であり, stage IIIとIVの3年生存率はそれぞれ32.8%, 23.6%であり, 静脈腫瘍血栓とリンパ節転移・遠隔転移が予後に関与していることが示唆された. 後期症例 (1985年~1989年) は前期症例 (1980年-1984年) に比べて生存率が高い傾向にあった.
  • 肥大症前立腺と正常前立腺との比較
    森田 隆, 近藤 俊
    1992 年 83 巻 3 号 p. 328-333
    発行日: 1992年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    ヒト正常前立腺および肥大症前立腺の被膜, 腺腫, 尿道のα1, α2-receptor を測定した. 正常群, 肥大症群いずれにおいてもα1, α2-receptor は共に腺腫で最も多く, 被膜, 尿道の順であった. また, いずれの部位のα1, α2-receptor でも正常群より肥大症群で多かった. 正常群, 肥大症群のいずれにおいても腺腫ではα1-receptor とα2-receptor がほぼ等量に存在したが, 被膜と尿道ではα2-receptor よりα1-receptor の方が多く存在した.
    これらの事実は, 前立腺には元来α1-receptor だけでなくα2-receptor も多く存在し, 肥大症前立腺ではそれらが共に腺腫, 被膜, 尿道のいずれの部位でも有意に増加することを示唆している.
  • 森田 隆, 近藤 俊
    1992 年 83 巻 3 号 p. 334-337
    発行日: 1992年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    6名の前立腺肥大症患者から摘出した前立腺腫において3H-prozosin と3H-yohimbine を用いた飽和結合実験によりα1, α2-receptor を定量した. 肥大前立腺腫にはα1-receptor だけでなくα2-receptor も相当量含まれていることが判明した. 肥大前立腺腫と3H-prozosin, 3H-yohimbine の binding に対する選択的α1-blocker の抑制効果を調べた. α1-blocker としての効果は prazosin>bunazosin>alfuzosin>urapidil>terazoin の順に強く, α2-blocker としての効果は urapidil>alfuzosin>terazosin>bunazosin>prazosin であった. これまで前立腺肥大症に非選択性のα1-blocker である phenoxybenzamine が有効であるとの報告があるが, 本実験結果は urapidil, alfuzosin および terazosin は phenoxybenzamine のように使用できる可能性を示している.
  • 腎癌に対する基礎的・臨床的検討
    吉弘 悟
    1992 年 83 巻 3 号 p. 338-347
    発行日: 1992年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    IFNの間接作用を含めた感受性試験の開発を試み, 腎癌に対する基礎的, 臨床的検討を行った.
    基礎検討では標的細胞としてヒト腎細胞癌ACHN株を用い, 間接作用による抗腫瘍効果を検討するために軟寒天培養の下層に単球 (5×104/dish) とリンパ球 (5×105/dish) を加えた colony 形成法による感受性試験を行った. in vitro でのIFN-αの抗腫瘍効果は濃度依存性であり, 間接作用による有意な抗腫瘍効果の増強が50IU/ml以上で認められた. なお培養上清のサイトカインではTNFαのみが高値を示した.
    臨床検討としては31例の腎癌患者の手術検体を用い, 19例 (61%) で有効な colony 形成を認めた. そのうち25例で術前, 術後の血清サイトカインを測定し以下の結果を得た.
    1) colony survival rate は培養上清のTNFα値と有意に逆相関した (r=-0.90, p<0.01).
    2) IFN-α投与後の血清TNFαは20例中15例 (75%) で上昇し, 投与前より有意に高値であった (p<0.05).
    3) IFN投与群では培養上清と血清TNFα値の間に, 有意の関連性を認めた.
    4) 評価可能病変を有した7例のうち, 培養上清中およびIFN投与中の血清TNFα値が低値を示した3例はいずれもPD症例であった. 一方TNFαが高値であった4例中3例は1年以上NCの状態であった.
    以上より本法はIFNの間接効果を含めた感受性の評価が可能で, TNFα値が抗腫瘍効果と臨床効果の判定材料となりうる可能性が示唆された.
  • 藤原 英祐, 田戸 治, 佐々木 宏, 林 雄三
    1992 年 83 巻 3 号 p. 348-351
    発行日: 1992年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    腎盂癌のために右腎尿管摘出術を受けた45歳の女性が, 術後10日目に発熱, 紅斑を生じ, その後, 肝障害, 汎血球減少症を示し, 術後18日目に敗血症にて死亡した. 剖検より, 全身骨髄の低-無形成像, 全身リンパ組織の萎縮が見られた. この症例の特徴的な臨床経過と, 各臓器の病理組織所見は, 骨髄移植後あるいは免疫不全の患者に対する輸血後に見られるGVHDの病態に酷似しており, 本症例も, 手術時に受けた輸血に起因するGVHDによる術後紅皮症であることが強く示唆された.
  • 西山 勉, 笹川 亨, 谷川 俊貴, 片山 靖士, 川上 芳明, 冨田 善彦, 照沼 正博, 木村 元彦, 佐藤 昭太郎, 中村 章, 大沢 ...
    1992 年 83 巻 3 号 p. 352-357
    発行日: 1992年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    進行尿路上皮癌患者で評価対象病変のある患者20例を対象に Methotrexate (MTX)/5-Fluorouracil (5Fu) 時間差投与, Doxorubicin (ADM), Cisplatin (CDDP) 多剤併用化学療法 (MFAP療法) を行った. 症例により抗癌剤投与終了後から Dypyridamol の投与を行った. 性別は男14例, 女6例で年齢は39~86歳で, 平均66.0歳であった. 原発腫瘍は膀胱癌が15例, 腎盂尿管癌が5例であった. 組織型は腺癌が1例で, 他の19例は移行上皮癌であった. 組織学的悪性度は移行上皮癌ではG2が4例, G3が15例であった. 腺癌は低分化型腺癌であった. 進行膀胱癌の術前化学療法として行われたものが7例, 原発巣摘除後の再発が3例, 転移巣を有する症例または手術不能症例が10例であった. 施行回数は1回から4回で平均2.8回であった. 治療成績は奏功度ではCR 7例35%, PR 7例35%, NC 6例30%であった. PR以上の奏功率は70%であった. 投与量を減量しなかった症例では奏効率80%と高率であった. 臨床的効果と病理組織学的効果とは相関を認めた. 生存率では投与量を減量しなかった群で生存期間が延長する傾向が認められた. 副作用は貧血, 白血球減少, 血小板減少, 悪心嘔吐, 下痢, 脱毛, 呼吸器障害, 口内炎, 耳鳴, 難聴などであった. MFAP療法は進行性尿路上皮癌に対していままで報告されている療法以上に有用な化学療法と思われる.
  • 水尾 敏之, 大橋 英行, 寺尾 俊哉, 谷澤 晶子, 奥野 哲男
    1992 年 83 巻 3 号 p. 358-367
    発行日: 1992年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    神経因性膀胱を含む種々の疾患患者499例 (男子393例, 女子106例) に対しバルーンカテーテルのバネぼかり牽引による膀胱三角部頚部の知覚 (以下 sensation 値) の測定と膀胱内圧測定を行った. Sensation 値の疾患, 年齢, 膀胱内圧曲線のパターンとの関係および初発尿意 (以下FDV) や最大膀胱容量 (以下MCC) との関連に付いて検討した.
    正常男子 (19例) の sensation 値は334.2±159.7g (mean±S. D.) でFDVと強い相関性 (r=0.88) を示し, y=3.75x-189.4の直線性を示した. しかし正常女子 (24例) では sensation 値は377.3±199.5gであり, FDV (r=0.35) およびMCC (0.21) と相関性を認めなかった. 男子のその他の末梢神経障害群の sensation 値 (557.3±314.5g) は正常, 頻尿と慢性前立腺炎, 前立腺肥大症, 頚胸椎疾患群, 腰椎疾患, 脳疾患に比較し有意に大きい値を示した. 女子ではその他の末梢神経障害群 (571.7±279.7g) と正常および腰椎疾患群との間にのみ有意差を認めた. 膀胱内圧曲線のパターン別の sensation 値は男子では normal bladder と overactive bladder に比較し underactive bladder で有意に高値を示し, 各パターン内で sensation 値とFDVは相関性を認めた. 一方 sensation 値とMCCは正常と前立腺肥大症 (男子), 腰椎疾患群 (女子) でのみ有意の相関性を認めた.
    男子では膀胱内圧曲線のパターンに関わらず, 女子では normal bladder 例で膀胱知覚は加齢により低下した.
    バルーンカテーテル牽引による sensation 値の測定は, 簡便に行え underactive bladder の有無や膀胱の知覚低下のスクリーニングとして有意義と考えられた.
  • 田中 聡, 工藤 誠治, モーリック アスラフ・ウッデイン, 工藤 達也, 古川 利有, 鈴木 唯司
    1992 年 83 巻 3 号 p. 368-373
    発行日: 1992年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    膀胱移行上皮癌 (膀胱癌) に対する Bacillus Calmette Guerin (BBN) および Adriamycin (ADM) 膀胱内注入 (膀注) による組織学的変化を実験的膀胱癌を用いて比較検討した. ラットにN-butyl-N (4-hydroxybutyl) nitrosamine (BBN) を飲料水として与え, 投与開始16および17週目にBCG, ADM, または対照群として生食を膀注し, 18週目に屠殺し, それぞれにおける腫瘍の組織学的変化を光顕および電顕的に観察した. その結果, BCG膀注群では表層癌細胞において細胞間隙の開大が認められ, 電顕的には細胞接着装置の減少, 消失が認められた. 細胞間隙が開大しているのみの表層癌細胞になお変性, 壊死は認められず離脱してはじめて変性, 壊死となるように思われた. また腫瘍間質への細胞浸潤は癌細胞の脱落が著しいところでのみ認められた. ADM膀注群では表層細胞より細胞質が泡沫状となり, 電顕的には細胞質の空胞変性が認められた. しかしADM膀注群および生食膀注群では表層癌細胞に細胞間隙の開大は認められなかった.
    以上の結果よりADMが癌細胞そのものを崩壊させるのに対して, BCGは癌細胞の細胞接着装置に作用し, 細胞間隙を開大させ表層よりの癌細胞脱落を誘起し, 浸潤細胞は脱落していく癌細胞に反応して浸潤してくるのであって, 一次的に癌細胞の脱落には関与していないことが推察された.
  • 吉井 慎一, 藤井 徳照, 斉藤 隆, 山本 隆次, 石田 規雄, 細井 康男, 田原 達雄
    1992 年 83 巻 3 号 p. 374-382
    発行日: 1992年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    前立腺肥大症 (全症例35, 年齢は45歳から88歳, 平均67.5歳) に対して, プロスタサーマーを用いた局所温熱療法を施行した. 治療中止2例と, 治療前カテーテル留置例3例を除いた30例で, 治療効果判定を行った. 治療は1回1時間, 週2回, 計6回施行した. その結果自覚症状の改善が認められ, 特に夜間頻尿, 残尿感の改善率がそれぞれ70.0%, 70.7%と比較的良好であった. 排尿回数は夜間, 昼間とも, 治療後に統計学的に有意に減少していた (P<0.01). 他覚的所見では, 残尿率が30例中19例で改善しており, 尿流量試験において最大尿流量率が治療後に統計学的に有意に上昇していた (P<0.05). 合併症は尿道出血3例, 精巣上体炎1例, 膿尿1例の5例で認められたが, それらはカテーテル挿入によるものと思われた. 自覚症状を中心に他覚的所見を加味した有用性を検討したところ, かなり有効以上が17例 (約57%), やや有効以上が25例 (約83%) であった. 以上より本治療法は, 前立腺肥大症の治療の1つとして有用であると考えられた.
  • 森 義則, 島 博基, 井原 英有, 藪元 秀典, 生駒 文彦
    1992 年 83 巻 3 号 p. 383-389
    発行日: 1992年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1986年から1991年までの間に兵庫医科大学泌尿器科において23例の浸潤性膀胱癌患者に対して自己導尿型の Mainz pouch 尿路変向術を施行したが, そのうち12例に臍ストーマを形成した. ストーマ脚として10例で回腸を, 2例で虫垂を用い, 漏斗状になっている臍の底部の皮膚と腹壁筋膜を別々に円く切り取り, 腹壁筋膜の孔を通してストーマ脚を通し, 皮膚とストーマ縁を縫合した. 回腸のストーマ脚が太すぎる時には plication を行い細くした. 治療成績は満足すべきものであり, 臍ストーマの利点としては以下の諸点がある.
    1) 外観上, ストーマが目立ちにくく body image が良い.
    2) Marlex collar のような異物を使ってストーマ脚を筋膜に固定する必要がない.
    3) 導尿径路の屈曲が少なく自己導尿を行いやすい.
    4) 傍ストーマ・ヘルニアや nipple valve の prolapse のような合併症がおこりにくい.
  • 小野 佳成, 佐橋 正文, 末永 裕之, 大島 伸一
    1992 年 83 巻 3 号 p. 390-394
    発行日: 1992年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    最近, 泌尿器科の分的においても腹腔鏡観察下手術が精索静脈瘤根治手術や前立腺癌のリンパ節試験切除術に応用されている. 私共は繰り返す腎盂腎炎により萎縮したと考えられる腎臓を腹腔鏡下手術にて摘出したので報告する. 施行症例は2例で, 56歳女性, 右腎で大きさは7×4×3cm, 56歳男性, 左腎で大きさは7×4×3cmであった. 全麻下に腹腔穿刺, 41CO2による気腹後, 臍下操作孔に腹腔鏡を挿入し, 直視下に同側上腹部に4ヵ所の操作孔を造設した. 同側結腸曲より腹膜を下方, 内側へ切開し, 結腸を対側へ授動し, 腎前面を露出した. 尿管を腎下方で遊離, 切断. 腎静脈, 腎動脈を露出し, clip をかけ切断. 腎上極を剥離, 副腎との間を遊離し, つづいて腎後面を剥離, 腎を遊離した. 臍下操作孔を切開し, 腎を摘出した. なお, 手術前日に腎動脈塞栓術を施行した. 手術時間はそれぞれ221分, 346分, 推定出血量は400ml, 400ml, 摘出腎重量は60g, 約40gであった. 合併症は皮下気腫が両例にみられた. 両例とも12, 14術後日に退院, 社会復帰した. 本術式は現時点では技術的未熟さから生ずる問題もあり, 従来の腎摘出術に比べて優れた方法とは言い難い. しかし, 本術式はいわゆる minimally invasive surgery となる可能性がある方法であり, 今後, 症例をかさね技術的確立をめざす価値があると考える.
  • 動物実験及び臨床的応用
    東原 英二, 亀山 周二, 田中 良典, 堀江 重郎, 佐山 孝, 狩野 宗英, 朝蔭 裕之, 奴田原 紀久雄, 本間 之夫, 簑和田 滋, ...
    1992 年 83 巻 3 号 p. 395-400
    発行日: 1992年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    腹腔鏡による腎摘除術を臨床的に行うことを目的として, 雌豚6匹を用いて, その手技と器具の検討を行った. その結果, (1) 後腹膜腔からのアプローチは困難である. (2) トロカールは1cm径のものが4~5本必要であり, 各トロカール間の距離は最低5cm離す必要がある. (3) 腎茎部へのアプローチは, 腎周囲の腹膜を切開した後, 尿管の結紮・切断を行い, 尿管内側に沿って剥離を行う. (4) 鉗子類は開創手術においては使用する器具に対応するものは原則として全て必要であり, それを内視鏡的に使用できる様にする必要がある. (5) その他に, 結紮用器具, 摘除した腎を体腔外に取り出す為の工夫などが特殊に必要であることが判った. 以上の経験に基づき臨床応用を行った.
    臨床例は, 34歳男性で右の先天性腎盂尿管移行部狭窄による無機能腎であった. 4本の外径1cmと1本の0.5cm径のトロカールを用いて腎摘除を行った. 腎周囲の脂肪組織が豊富なこと, 拡張した腎盂が大きかったこと, 安全を期して手術を行ったこと, などの為に手術時間は7時間を要したが, 出血量は110mlで腎を摘除しえた.
    本術式は, 適応を十分に検討すれば器具と手技の改良により, 一般化しうる術式であると考えられた.
  • 小原 健司, 西山 勉, 武田 正之, 高橋 等, 木村 元彦, 畠山 勝義
    1992 年 83 巻 3 号 p. 401-404
    発行日: 1992年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    骨盤内臓器全摘除術を施行した2症例に対して, 自然排尿排便機能を温存し良好な結果を得た. 症例1は19歳男性. 松果体腫瘍兼膀胱直腸窩播腫. 肛門挙筋を温存した骨盤内臓器全摘除術後, Mainz pouch を造設し尿道に吻合した. 糞路は J pouch を造設し肛門に吻合した. 症例2は39歳男性. 骨盤内全体を占める巨大膀胱後部腫瘍. 骨盤内臓器全摘除術後, S状結腸直腸吻合の後, 終末回腸と上行結腸で U pouch を造設し虫垂断端を尿道に吻合した. 術後2症例とも夜間のみ少量の尿失禁を認めるものの, ウロダイナミック検査にてほぼ満足のいく結果を得た.
  • 北角 嘉徳, 佐藤 稔, 原 啓, 桑原 孝, 高波 真佐治, 柳下 次雄, 石井 延久, 三浦 一陽, 白井 将文, 亀田 典章
    1992 年 83 巻 3 号 p. 405-408
    発行日: 1992年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    著者らは多房性腎嚢胞像を呈する両側性腎細胞癌の1例を経験した. 症例は42歳の女性で, 健康診断の超音波検査で偶然右腎に嚢胞性の変化を認められ, 精査を目的に当院を受診した. CT-scan, 腎動脈造影などから右腎腫瘍と診断し, 右腎摘出術を施行した. 病理学的には多房性嚢胞状腎細胞癌であった. 1年後, 左腎に小さい嚢胞性変化を認めた. 左腎腫瘍の診断で左腎部分切除術を施行した. 病理学的には右腎と同様に多房性嚢胞状腎細胞癌であった. 多房性嚢胞状腎細胞癌はその成因から数種類に分類される. その内, 多房性嚢胞状に発育した両側性腎細胞癌は著者らが調べ得たかぎりでは本邦においては本症例が第1例目である.
  • 鈴木 正泰, 黒田 淳, 中内 憲二, 町田 豊平
    1992 年 83 巻 3 号 p. 409-412
    発行日: 1992年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    57歳の男性が, 持続する強度の腰痛, 肉眼的血尿を認め当科受診した. 直腸診で膀胱に一致して超手拳大の軟部組織様腫瘤を触知し, 膀胱鏡で膀胱内腔を占める非乳頭状の腫瘍を認めた. 腫瘍マーカーは, CEA, IAP, TPA, CA19-9, NSEが異常高値を示した. 骨盤部CTで膀胱前壁より生ずる大きな polypoid tumor を認めた. 胸部X線写真, 頭頚部, 胸部, 腹部CTで異常を見られなかったが, 骨シンチで全身骨に異常集積を認めたため, 根治的治療を諦め, 経尿道的生検を施行した. 病理組織所見では, 比較的均一な円形細胞のシート状充実性の増殖が見られ, Grimelius 染色陰性, 抗NSE染色および抗NF染色陽性であった. 以上より, 内分泌細胞癌の特徴を有するいわゆる小細胞癌で, 膀胱原発と思われた. 全身状態が安定せず, 積極的治療ができないまま死亡した.
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