日本泌尿器科学会雑誌
Online ISSN : 1884-7110
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84 巻, 10 号
選択された号の論文の21件中1~21を表示しています
  • 島 博基, 生駒 文彦
    1993 年 84 巻 10 号 p. 1747-1758
    発行日: 1993/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
  • 和久本 芳彰, 坂本 善郎
    1993 年 84 巻 10 号 p. 1759-1767
    発行日: 1993/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    腎細胞癌55症例の腫瘍内浸潤リンパ球について, 抗パーフォリンモノクロナール抗体を用いた免疫染色を行い, パーフォリン発現の有無を検討した. その結果, 55例中54例 (98%) で, リンパ球内にパーフォリンの発現を認めた. 対照とした正常腎組織では, 浸潤リンパ球内にパーフォリンはほとんど認められなかった. また, 腫瘍内浸潤リンパ球サブセットでは, CD4+T細胞, CD8+T細胞の浸潤が多く見られ, NK細胞,γ/δT細胞の浸潤は前2者に比して少なかった. パーフォリンとリンパ球膜表面抗原との二重染色では, パーフォリンは4種のサブセットすべてに認められ, CD4+T細胞, CD8+T細胞により強い反応が見られた. これらから, パーフォリンが, 癌免疫におけるエフェクター分子として機能している可能性が示唆されたが, CD8+T細胞ばかりでなく, CD4+T細胞にもパーフォリンの反応が認められた点は大変興味深く, 今後更に, その意義の詳細な検討が必要と思われる.
  • 伊藤 晴夫, 小竹 忠, 鈴木 文夫, 林 裕子, 山口 邦雄
    1993 年 84 巻 10 号 p. 1768-1775
    発行日: 1993/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    蓚酸の良い測定法を見出すために, 高速液体クロマトグラフィーによる方法についての検討を行った.
    高速液体クロマトグラフィーによる方法は茶, ビールに対しては, これらの成分に蓚酸と retentiontime の近い物質が少ないので, ピークの分離がよく, 操作も複雑で無いので, きわめて良い方法である. 尿においては測定の直線性, 希釈試験, 回収率では良い結果が得られたが, 再現性においてはやや問題がある. 本法は, 研究用に少数の検体を測定するには向いているが, 測定に時間がかかること, カラムが高価なため, ルーチンの臨床検査には適していない.
    本法により測定した12人の健康対照人の一日尿中の蓚酸量は16~47mg (平均±標準偏差: 25.4±9.0) であった. 体格の違いを補正するために蓚酸量を尿中クレアチュン, 体表面積, あるいは体重で割ると, 後者の変動係数がもっとも小さかった. したがって, 体格の違いを補正するには蓚酸量を体重で割るのが良く, この場合の正常範囲は体重 (kg) あたり0.6mg以下とするのが良いと思われた.
  • 牛山 知己, 栗田 豊, 伊原 博行, 影山 慎二, 上田 大介, 大田原 佳久, 鈴木 和雄, 河邉 香月, 鈴木 明彦, 塚田 隆, 田 ...
    1993 年 84 巻 10 号 p. 1776-1782
    発行日: 1993/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1991年11月より1993年1月までに, 浜松医科大学泌尿器科及び関連施設では10例の腹腔鏡下骨盤内リンパ節切除術を経験した. 対象は, 膀胱癌3例, 前立腺癌7例で, 病期決定のためにおこなった. すべて男性で, 年齢は54歳~77歳であった. 全例全身麻酔下に濟下部より気腹後, 4ヵ所にトロッカーを挿入し, 左右の閉鎖リンパ節を切除した. 手術時間は, 2時間7分から5時間25分であった. 採取できたリンパ節数は, 右3~9個, 左0~10個であった. 術中の出血量は, 最高で180mlで, 輸血を必要とした症例はなかった. 術中合併症は, 1例で尿管損傷があったが, 腹腔鏡下に修復可能であった. 術後合併症として, 皮下気腫2例, 38℃以上の発熱2例, 右肩痛・左腕痛1例, イレウス1例がみられた. 1例を除き術翌日から歩行可能となり, 2例を除き食事の開始もできた. 今回の検討では, 腹腔鏡下骨盤内リンパ節切除術は手術侵襲が少なく, 治療方針の決定に有用であった. この手術手技は, まだおこなわれ始めたばかりであり, 手技的な問題をはじめ, その適応, 郭清範囲も含めたその方法など今後解決されなければならない問題が残されている.
  • 馬場 克幸
    1993 年 84 巻 10 号 p. 1783-1790
    発行日: 1993/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    陰茎海綿体平滑筋に対する testerone の効果を検討するため, 家兎陰茎海綿体を用いて Magnus 法による実験を行った. 実験群は, 1. 対照群, 2. testosterone propionate (TP) 群, 3. 去勢+TP群の4群に分け, 各種 vasoactive drug の収縮弛緩反応について検討し, 次のような結論を得た. Norepinephrine, phenylephrine, clonidine を用いた収縮反応は, 対照群と比較してTP群と去勢+TP群で有意に増大し, 去勢群で有意に減少した. Acetylcholine と vasoactive intestinal polypeptide を用いた弛緩反応は, 対照群と比較してTP群と去勢+TP群で有意に増大し, 去勢群で有意に減少した. すなわち, 血中 testosterone 濃度上昇により陰茎海綿体平滑筋の収縮弛緩反応が増強し, 濃度低下によりその反応が減弱することが判明した.
    以上の結果より, testosterone は陰茎海綿体に直接作用して勃起機能に関与していることが示唆された.
  • 川上 理, 河合 恒雄, 山内 民男, 米瀬 淳二, 上田 朋宏, 石橋 啓一郎
    1993 年 84 巻 10 号 p. 1791-1796
    発行日: 1993/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1970年から1992年までの期間に癌研究会附属病院でホルモン不応性あるいは抵抗性となった前立腺癌23例に骨転移の疼痛に対して対症的放射線治療を行った. 疼痛の生じた骨転移巣に linear accelerator を用い外照射を行った. 照射部位数は1, 2, 3部位がそれぞれ6例, 4部位3例, 5および7部位が各1例であった. 照射前および照射1ヵ月後の照射部位の落痛の強さと頻度を定量的に測定し, 照射部位の疼痛緩和を評価した. 症例毎に全照射部位の評価を総合して対症療法としての効果を判定した. 60の照射部位における照射効果は全部位に認められ, minimal releief が10%, partial relief が15%, complete reliefが75%であった. 有意な線量効果関係を認めなかったが, 照射前の疼痛が強いほど疼痛の消失が得られにくい傾向であった. 症例毎の効果判定では, minimal palliation が9%, partial palliation が17%, complete palliation が74%であった. 骨転移の程度が高いほど, 照射部位数, 照射骨数が多いほど complete palliation の得られる頻度が低くなる結果であった. 照射部位の疼痛再燃は1部位のみで認められ, 他の59部位でに観察終了時点まで持続し, 最高51ヵ月, 中央値で9ヵ月間観察し得た. 再燃前立腺癌の骨転移による落痛に対する放射線外照射は有効な対症療法であり, 終末期医療で重要な役割を果たすものと考えられる.
  • 戎野 庄一, 大川 順正, Cheryl Schied, Mani Menon
    1993 年 84 巻 10 号 p. 1797-1803
    発行日: 1993/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    豚の近位尿細管由来のLLC-PK1細胞において〔14C〕に標識された蓚酸を用いて, 蓚酸の細胞内への取り込みが, 細胞外液の酸塩基平衡の変化, 利尿剤および有機酸の投与などでどのように変化するのかを詳細に検討し, 以下の結果を得た.
    (1) 反応液 (細胞外液) のpHの変化では, 蓚酸の取り込みは酸性側で増加し, アルカリ側で減少した.
    (2) 細胞内への蓚酸の取り込みはDIDSによって, 10μMから明らかに阻害され, また, 利尿剤 (フロセミドおよびクロロチアジド) によっても濃度依存的に阻害された. また, その利尿剤の中ではフロセマイドが最も阻害活性が強かった.
    (3) アセタゾラミドは高濃度で僅かにその取り込みの抑制がみられ, プロベネシドは低濃度では抑制効果はみられないが, 500μM以上では濃度依存的な抑制効果が示された.
    (4) アロプリノールおよびジカルボン酸 (マロン酸, コハク酸およびフェニルコハク酸) を含む有機酸 (尿酸およびパラアミノ馬尿酸) は蓚酸の細胞内への取り込みに全く影響がみられなかった.
  • 米瀬 淳二, 河合 恒雄, 山内 民男, 上田 朋宏, 川上 理, 石橋 啓一郎
    1993 年 84 巻 10 号 p. 1804-1810
    発行日: 1993/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    癌研究会附属病院泌尿器科において1985年4月より1991年10月までの間に31例の stage Iと診断された精巣腫瘍に対し, 高位精巣摘除術後に surveillance policy に則り経過を観察した. 組織型はセミノーマ22例, 非セミノーマ9例であった. 再発は7例 (22.5%) にみられ再発までの期間は2.5~9.3ヵ月であった. セミノーマについては22例中5例 (22.7%) が再発し非セミノーマでは9例中2例 (22.2%) が再発した. 再発例には全例シスプラチンを含む化学療法を中心とした治療を行い治療完了後5~48ヵ月の現在癌なし生存中である. 今回正常と異常の境界をさぐる意味で経過観察とした画像上軽度の異常所見をもつ症例のうちセミノーマで3例中2例, 非セミノーマで2例中1例に再発を認めた. 今後このような画像所見をもつ症例に対しては予防治療を考慮する必要があろう. しかしその他の臨床病期Iの精巣腫瘍に対しては慎重な病期診断と確実な経過観察を前提として surveillance policy は適応可能と考えた.
  • 河内 明宏, 渡辺 泱, 中川 修一, 三好 邦雄
    1993 年 84 巻 10 号 p. 1811-1820
    発行日: 1993/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    一般の小学生と幼稚園児2,033名を対象として, 正常児および夜尿児の膀胱容量, 夜間尿量と夜尿を含む夜間の排尿行動を, 質問紙法により調査した. 正常児の朝, 昼の膀胱容量と夜間尿量は, 年齢との間で直線回帰式にて表せる, 有意な相関関係を示した. また体の成長との関係においては, 身長, 体重および体表面積の3者の内で, 体重との間で最も良い相関関係を示した. 夜間尿意覚醒時の膀胱容量と朝, 昼の膀胱容量を比較すると, 朝の膀胱容量が夜間の膀胱容量に近い値を示し, 夜尿を論じる際の膀胱容量は朝起床時の膀胱容量を重視すべきであると思われた. 夜尿児の朝の膀胱容量は, 正常児と比較して, 6歳までは小さいが, 7歳以上では逆に大きいと考えられた. 正常児の間でも10~15%に夜間多尿であると思われる児童が存在し, これらは覚醒機能が正常で, 夜間尿意覚醒するために夜尿とならないと考えられた. 夜尿児の頻度は全体で14%であり, 9歳までは男が多かったが, 10歳以上ではほぼ同じ頻度であった. 過去に夜尿があった児童の調査結果より, 夜尿の平均自然消失年齢は7.3歳であり, このことより8歳以降持続する夜尿は積極的治療の対象になると考えられた.
  • 近藤 俊, 森田 隆
    1993 年 84 巻 10 号 p. 1821-1827
    発行日: 1993/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    前立腺肥大症のある患者とない患者 (前立腺肥大症群 (PH) と非前立腺肥大症群 (NPH)) とで, 膀胱 (体部, 低部) と前立腺 (腺腫, 被膜) のエンドセリン-1 (ET-1) の結合部位を125I-ET-1を用いて定量した. また, 前立腺肥大症腺腫の切片におけるET-1結合部位の局在を autoradiography を用いて検討した. 125I-ET-1を用いた飽和結合実験から, 膀胱 (体部, 底部) と前立腺 (腺腫, 被膜) の細胞膜には, 125I-ET-1に対する飽和可能な単一の結合部位が存在することが判明した. 膀胱と前立腺での解離定数 (KD) にはPH群とNPH群とで有意差は見られなかった. 膀胱 (体部, 底部) での最大結合部位数 (Bmax) はPH群で有意な減少が見られた. 一方, 前立腺 (腺腫, 被膜) でのBmaxはPH群で有意な上昇が見られた. 前立腺肥大症腺腫での autoradiogram から, 125I-ET-1の結合部位は, 間質の平滑筋や腺上皮に存在することが判明した. 以上のことから, エンドセリンが膀胱や前立腺のエンドセリン受容体濃度の変動を介して, 前立腺肥大症の病態生理に影響を及ぼしていることが考えられた.
  • 免疫細胞化学的検討
    田部 茂, 韓 榮新, 仲谷 達也, 岸本 武利, 鈴木 盛一, 雨宮 浩, 上田 真喜子
    1993 年 84 巻 10 号 p. 1828-1834
    発行日: 1993/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    ヒト移植腎の腎内動脈枝に認められる閉塞性動脈病変の構成細胞成分や平滑筋細胞のフェノタイプについて, 免疫細胞化学的に検索した. 対象は拒絶反応のために摘出された3移植腎で, これらの腎組織をメタノール・カルノア液で固定後, パラフィン包埋標本を作製した. 免疫細胞化学的検索に用いたモノクローナル抗体は, 抗筋細胞アクチン抗体 (HHF35), 抗平滑筋細胞アクチン抗体 (CGA7), 抗ビメンチン抗体, 抗デスミン抗体, 抗マクロファージ抗体 (HAM56), 抗内皮細胞抗体 (抗第VIII因子関連抗原抗体) の6種である. 3例の腎移植から腎摘出までの期間は2ヵ月, 5ヵ月, および4年9ヵ月であった. 3移植腎の腎内動脈枝には, 内膜の著明な肥厚による高度の内腔狭窄が認められた. 移植後2ヵ月例では, 内膜肥厚部の主たる構成細胞はマクロファージと平滑筋細胞であったのに対し, 同5ヵ月例と同4年9ヵ月例の内膜肥厚部にはマクロファージは少なく, 主として平滑筋細胞が認められた. また, 増殖平滑筋細胞のフェノタイプについて検索したところ, 移植後2ヵ月例では, 内腔側にHHF 35陽性・CGA7陰性の平滑筋細胞の存在が認められたが, 同5ヵ月例および同4年9ヵ月例では平滑筋細胞のほとんどがHHF 35陽性・CGA7陽性を示していた. 以上より, ヒト移植腎の閉塞性動脈病変においては, その経時的推移に伴い, 構成細胞成分や増殖平滑筋細胞のフェノタイプに変化がもたらされることが示唆された.
  • 増田 富士男, 山崎 春城, 今中 啓一郎, 小針 俊彦, 長谷川 倫男, 岸 大輔
    1993 年 84 巻 10 号 p. 1835-1838
    発行日: 1993/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    25例の腎盂移行上皮癌のCT診断について検討した. 25例中24例 (96%)はCTで腫瘍が認められた. 24例中15例は腎盂腎杯内の腫瘤として, 8例は腎実質内の浸潤性腫瘤として認められた. CTによる腫瘍の浸潤度は, 25例中18例 (72%) に正しく診断された. 腫瘍が腎盂粘膜内に限局していると診断した10例中3例 (30%) は, 腎盂筋層あるいは腎実質まで浸潤していたのに対し, 腫瘍が腎盂壁内に留まっているか (pTa~pT2), あるいはより浸潤しているか (pT3~pT4) の診断は25例中22例 (88%) に可能であった. リンパ節転移がみられた7例中6例は, CTで腫大したリンパ節が診断できたが, これら7例はすべてpT3またはpT4の浸潤性腎盂移行上皮癌であった. 以上の成績から, CTは腎盂移行上皮癌の診断について価値が高く, さらに腫瘍が腎盂壁を越えて浸潤しているか否か, すなわち表在性か浸潤性かの診断に有用であり, 治療方針を決定する一助となると考えられた.
  • 東海地方会腫瘍登録611例の解析と治療成績の変遷に関して
    栗山 学, 小幡 浩司, 林 秀治, 島谷 政佑, 加藤 次朗, 小野 佳成, 朴木 繁博, 加藤 雅史, 米田 勝紀, 増田 宏昭, 北川 ...
    1993 年 84 巻 10 号 p. 1839-1844
    発行日: 1993/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1980年から1989年までの10年間に日本泌尿器科学会東海地方会腫瘍登録委員会に48施設から登録された腎盂尿管腫瘍611例について解析を行うとともに, 前後半各5年間毎に分けて治療成績を比較検討した. 腎盂腫瘍は347例, 尿管腫瘍264例であり, 性別は男女各々273:74例, 189:75例であった. また, 患側は右: 257, 左: 337, 不明: 13例であり, 腎盂腫瘍3例, 尿管腫瘍1例が両側性であった. 臨床的深達度は, Ta: 11.9, T1: 31.8, T2: 14.4, T3: 24.3, T4: 17.6%, 病理学的異型度は, G1: 10.5, G2: 49.3, G3: 33.0%であり, いずれも後半5年間の方が有意に進行病期・低分化の傾向であった. 409例に腎尿管全摘除術が施行されておゐ, 前半の28.3%, 後半の49.6%の症例に化学療法が併用されていた. 全体の5, 10年相対生存率は各々57.0, 47.7%であり, 腎盂・尿管腫瘍間に差を認めなかった. 5年相生存率を前後半別に比較すると, 腎盂腫瘍では55.7対51.5%, 尿管腫瘍でも63.7対60.7%と治療成績の改善は認められない成績であり, 診断・治療法の更なる改善の必要性が痛感された.
  • 17年間の変遷
    本間 之夫, 佐々木 幸弘, 押 正也, 簑和田 滋, 東原 英二, 阿曽 佳郎, 森山 信男, 田島 惇
    1993 年 84 巻 10 号 p. 1845-1850
    発行日: 1993/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    進行腎細胞癌の臨床的特徴の経時代的変化を明らかにするため, 1975年から1991年までの17年間に経験した94例を前期 (48例) と後期 (46例) に分けて比較検討した. その病型は, 遠隔転移を有する症例が80例 (85.1%) と大部分を占めた. 症例の男女比, 年齢, 診断時に既に進行癌であったもの (診断時進行癌) と腎摘後に進行癌になったもの (腎摘後進行癌) の割合も同様で,前期と後期での病像に大きな差はなかった. 治療法では後期で interferon (IFN) やUFTが頻用されるようになり, 逆にその他の抗癌剤, 放射線療法, 内分泌療法の使用頻度は低下していた. 前期と後期の生存率の比較では全体の予後の差を認めなかった. しかし腎摘後進行癌においては後期は前期に比して有意に予後は良好で,この現象は診断時進行癌には見られなかった. また5年以上の長期生存例は前期に2例, 後期に5例あり, これらはいずれも外科的切除, IFN, UFTなどの併用療法を受けていた. 以上の結果より, 進行腎癌は前期と後期ではその病像や予後に明らかな変化は認められないものの, 外科的手術, IFN, UFTなどの集学的治療が治療成績の向上に寄与することが示唆された.
  • 絹川 常郎, 服部 良平, 大島 伸一, 松浦 治, 竹内 宣久, 藤田 民夫, 西山 直樹, 小野 佳成, 佐橋 正文, 山田 伸
    1993 年 84 巻 10 号 p. 1851-1856
    発行日: 1993/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    腎移植後に発症する急性拒絶反応の治療において, モノクローナル抗体OKT3の投与が移植腎の長期予後に有用か否かを検討した. 対象はシクロスポリン, ALG, ステロイド3剤による同じ初期免疫法を用いた79例の死体腎1次移植例であり, この内34例はOKT3治験施設の症例であり, 他の45例は非治験施設の症例であった. OKT3治験群では, 移植後3ヵ月以内に急性拒絶反応が14例に発症し, 7例がOKT3により治療され, 6例が拒絶反応より回復した. OKT3非治験群では23例に3ヵ月以内の急性拒絶反応が発症し, すべてステロイドにより治療されたが, このうち3例が拒絶反応が直接または間接的に原因となって移植腎機能を喪失した. 移植腎生着率はOKT3治験群で1年91.2%, 2年82.4%であり, OKT3非治験群で1年79.1%, 2年74.4%であったが, 両者間に統計学的有意差は認められなかった. 以上より, OKT3をステロイド抵抗性急性拒絶反応へ応用した場合, 長期成績に関しても有用性がある可能性が示唆されたが, これを証明するには更に症例の積み重ねが必要なことが示唆された.
  • 高原 史郎, 高野 右嗣, ムタバリク アブデルハキム, 亀岡 博, 小角 幸人, 石橋 道男, 奥山 明彦, 園田 孝夫
    1993 年 84 巻 10 号 p. 1857-1864
    発行日: 1993/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    FK506を使用した腎移植症例における血中本濃度の再現性と臨床症状との関連を検討した. 血中濃度は, 全血と血漿それぞれの trough 値とAUC値をモニタリングした.
    再現性は, 全血検体と血漿検体ともに, trough 値とAUC値で有意差は認めなかった.
    臨床症状については, 腎移植後の拒絶反応時には全血 trough 値とAUC値ともに低値を示した. 血漿ではAUC値のみが低値であった.
    高血糖, 高カリウム血症, 神経症状の発症時では, やはり全血 trough 値とAUC値そして血漿AUC値が高値であった.
    腎毒悔症例では全血 trough 値のみが高値を示した.
    FK506を使用する腎移植症例においては, 特に全血 trough 値を頻回にモニタリングし, 拒絶反応と副作用を予知することが重要であることが判明した.
  • 後藤 修一, 福井 巌, 木原 和徳, 北原 聡史, 小林 剛, 大島 博幸, 山田 拓巳, 根岸 壮治, 関根 英明, 横川 正之, 当真 ...
    1993 年 84 巻 10 号 p. 1865-1871
    発行日: 1993/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    修1983年より1988年の間にT2以上17例を含む20例 (A群) の膀胱癌症例にCDDP 150~200mg/bodyの1回動注療法を内腸骨動脈より行い, その後1991年までにT2以上24例を含む28例 (B群) にCDDP 100mg/m2+THP-ADM 40mg/m2の2回動注療法を行った. 臨床的効果 (CR+PR) はA群で39%, B群で62%であったが, 組織学的効果 (大星, 下里grade3, 4) は両群とも17%と同一であった. 引き続き膀胱全摘術を行ったA群17例, B群22例の cancer specific な2年生存率はそれぞれ75%, 59%で有意差はなく, A群の5年生存率は75%と変化はなかった. うちpT3以上のA群8例, B群10例の cancer specific な2年生存率はそれぞれ63%, 54%と有意差はなく, A群の5年生存率も63%と変化はなかった. また膀胱部分切除術を行ったA群3例, B群6例計9例の3年実測生存率は86%であった. 血清クレアチニン値はA群で45%に可逆性の上昇をみたが, 白血球減少, 貧血はB群でそれぞれ93%, 33%にみられ, 副作用としてはA群のほうが軽微であった. 以上より術前治療としてのCDDP単独1回動注療法は副作用も軽微で, 臨床的効果および長期成績の面からもCDDP+THP-ADM併用2回動注療法に比べ遜色ないものと考えられた.
  • 國保 昌紀, 吉貴 達寛, 濱口 晃一, 岡田 裕作, 友吉 唯夫, 樋口 佳代子
    1993 年 84 巻 10 号 p. 1872-1878
    発行日: 1993/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    c-erbB-2遺伝子産物は乳癌, 卵巣癌などの腺癌において発現しており, その予後因子としての意義が注目されている. 今回われわれは, この10年間に滋賀医科大学泌尿器科で加療した前立腺癌52症例を対象として, C末端部分の合成ペプチドを免疫原として作製された抗c-erbB-2遺伝子産物ポリクローナル抗体 (株式会社ニチレイ) を用いて免疫組織化学的にc-erbB-2産物の発現を観察し, その臨床的意義について考察を加えた. 52症例中40症例 (76.9%) にc-erbB-2産物の発現を認めた. 組織学的には低分化癌症例が, 臨床病期としては stage D2症例が, それぞれ最も陽性率が高かったが, 統計学的有意差はなかった. 内分泌実療法を施行された Stage D2 33症例において, c-erbB-2陽性群では probability without progression が治実療開始後5年の時点で陰性群に比べて有意に低かった (p<0.05). cause-specific survival rates を Kaplan-Meier 法にて算定すると, 陽性群は治療開始後3年6ヵ月の時点で陰性群に比べて有意 (p<0.001) に不良な転帰を示した.
    以上の結果から,前立腺癌におけるc-erbB-2産物の発現は,その予後を推定する因子のひとつとなりうることが示唆された.
  • 岡田 弘, 林 晃史, 田中 宏和, 藤澤 正人, 松本 修, 守殿 貞夫, 大家 角義
    1993 年 84 巻 10 号 p. 1879-1882
    発行日: 1993/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    男性不妊患者の精液検査において, 精子運動性を認めないが, Eosin Yによる生体染色でそのほとんどが生存精子である症例を時に経験する. 本論文では, このような, いわゆる immotile spermatozoa 症例の, 精子尾部微細構造を透過型電子顕微鏡で観察したので報告する.
    神戸大学医学部泌尿器科不妊外来患者のうち, 精液検査上, 精子運動率1%末満で生存精子が90%以上であった5例を対象とした. 患者背景上, 1例で同胞に不妊の者を認めた. 全例右胸心, 気管支拡張症, 慢性副鼻腔炎等の Kartagener 症候群に合致するものはなかった. Immotile cilia syndrome に認められるような, 気道粘膜腺毛異常による慢性上気道炎の合併症はなく, 電顕上精子鞭毛微細構造異常のみであった.
    2例は inner dynein arm の部分欠損を, 2例は, central microtublar doublet を欠く“9+0”構造を, 1例は10対の microtubular doublet の配列が無秩序な amorphous type とでも呼ぶべき帯構造を呈していた. 治療は, AIDが主たる方法であるが, Kartagener 症候群の患者精子にハムスター侵入性を認めたという報告もある事より, ハムスター卵に microinjection した精子の染色体分析で異常がなければ, 今後配偶子操作を含めたIVF-ETに期待がかけられる.
  • 藤田 公生, 植木 哲雄, 松島 常
    1993 年 84 巻 10 号 p. 1883-1886
    発行日: 1993/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    54歳の女性の左腎に不整形の嚢胞が発生し, 腎盂腎杯系を圧迫し, 出血によると思われる側腹部痛を繰り返した. 左腎摘除術を行ったところ, 問題の嚢胞は腎内部から発生し, 肉眼的には単房性であったが, 顕微鏡的検索では multilocular cystic nephroma の所見と一致した.
  • 富樫 正樹, 渡井 至彦, 出村 孝義, 大橋 伸生, 力石 辰也, 平野 哲夫
    1993 年 84 巻 10 号 p. 1887-1890
    発行日: 1993/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は13歳男児. 主訴は右陰嚢内腫瘤. 触診で右精巣上体頭部に約7mm大の硬い無痛性腫瘤を触れ, 超音波検査で同部に hyperechoic mass を認めた. 入院時胸部レ線で縦隔リンパ節腫大と肺野の網状陰影を認め, 精巣腫瘍を疑ったが, 病巣が精巣上体のみと思われたので精巣上体部分切除術を行った. 病理組織学的には非乾酪肉芽腫であり, 後に行った肺および縦隔リンパ節生検にても同様の病理所見を得たのでサルコイドーシスと診断した. 術後の呼吸機能検査で異常を認めたためステロイド投与を行い, 術後4ヵ月の現在再発をみていない. 陰嚢内サルコイドーシスはまれであるが, 同時に胸部レ線に異常所見を伴うことから特に進行性精巣腫瘍との鑑別が重要と思われた. 本症例は陰嚢内サルコイドーシスの本邦5例目である.
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