日本泌尿器科学会雑誌
Online ISSN : 1884-7110
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84 巻, 4 号
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  • 名出 頼男
    1993 年 84 巻 4 号 p. 625-641
    発行日: 1993/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
  • 阿部 功一, 正井 基之, 井坂 茂夫, 島崎 淳, 松嵜 理
    1993 年 84 巻 4 号 p. 642-649
    発行日: 1993/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1985年から1990年までの6年間に千葉大学泌尿器科において腎摘出術を施行した腎細胞癌96例のAgNORs数を計測し, これと病理学的所見や臨床経過との関係, 及び予後因子としての意義について検討した. 銀コロイド染色方法は Ploton らの one-step 法に従い, AgNORs数の算出法は Crocker らに準じて出来る限りのAgNORsを計測した.
    腎細胞癌のAgNORs数は異型度が高くなるに従い増加した. 細胞型との関係では通常型に比べ多形・紡錘細胞型及びベリニ管癌においてその数が増加していた. pTとの関係では, 全異型度でpT1・pT2とpT3bの間に差を認めたが, 同一異型度内においては各pT間で差を認めなかった. 静脈浸潤度との関係でも, 全異型度でpV0とpV1a及びpV1bとの間で差を認めたが, 同一異型度内では各pV間で差を認めなかった. 摘出腫瘍の最大長径とAgNORs数は相関を示した. 原発巣, 肺転移巣, 後腹膜再発巣のいずれかを画像上で経時的に観察出来た22例において腫瘍倍加時間を求め, 原発巣のAgNORs数との関係を検討した結果, 両者は逆相関を示した. 生存率はpTの進んだ例や高異型度例では低かったが, AgNORsでは全症例でその数の多い群で生存率に低い傾向がみられたものの, 死亡数の多いG3症例ではその差を認めなかった. 以上よりAgNORsは腎細胞癌において独立した予後因子というよりはむしろ組織所見や増殖速度に関連する補助的因子と考えられた.
  • 佐藤 三洋, 服部 智任, 西村 泰司, 秋元 成太
    1993 年 84 巻 4 号 p. 650-655
    発行日: 1993/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    進行性腎細胞癌患者より4種の培養細胞株HANKS, 即ち原発巣由来のHANKS-Pr, 肺転移巣由来のHANKS-Lu, 肝転移巣由来のHANKS-Li, リンパ節転移巣由来のHANKS-LNを樹立し, その性状を分析した. それぞれは上皮様形態を示し, 多層化がみられた. 現在までに36ヵ月以上が経過し, 継代数も100代を超えている. 核型分析では4細胞株に異常染色体であるt(3;18)(p13;q21) が共通していた. 軟寒天培養ではHANKS-Prが有意に発育が悪かった. 細胞倍加時間はHANKS-Prが20.1時間, HANKS-Luが29.5時間, HANKS-Liが20.1時間, HANKS-LNが22.1時間であった. クラスI主要組織適合抗原はHANKS-PrおよびHANKS-Luで陽性率が高く, クラスII主要組織適合抗原は全ての細胞株においてほとんど発現されていなかった. ヌードマウスへの異種移植性はHANKS-LNのみにみられた.
    以上のように元来同じ由来である4種の細胞株は異なった生物学的性状を有していた.
  • 橘 政昭, 中村 聡, 実川 正道, 出口 修宏, 馬場 志郎, 畠 亮, 田崎 寛
    1993 年 84 巻 4 号 p. 656-661
    発行日: 1993/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    膀胱癌再発予防としてのBCG膀胱内注入 (BCG膀注) 療法の有用性について, 平均観察期間57ヵ月における長期観察結果の成績ならびに再発危険要因につき検討した. BCGは Tokyo 172 strain (日本BCG製造株式会社) 80mgを使用した. 週1回, 6週連続のBCG膀注を行い, 以後の膀注を施行しない群 (weekly 膀注群) と, その後月1回のBCG膀注を1年間にわたり継続した群 (monthly 膀注群) とに乱数表による割り付けを行った. 脱落あるいは不適確症例14例を除く102例における Kaplan-Meier 法による3年, 5年, 7年の腫瘍非再発率はそれぞれ77.3%, 68.5%, 60.6%であった. BCG膀注方法の差による検討では50例の weekly 群の5年腫瘍非再発率は58.4%に対し, 52例の monthly 群では74.4%であったが, 統計学的には有意な差を認めなかった. これを腫瘍非存在期間で検討すると weekly 群では41.7±18.7ヵ月, monthly 群は53.1±21.3ヵ月と monthly 群に有意な腫瘍非存在期間が認められた (P<0.01). これら要因の Cox 比例ハザードモデルによる腫瘍再発率に対する重みを検定すると, 腫瘍悪性度のみが統計学的に有意な再発危険因子として認められた (リスク比9.694, p<0.05).
  • 恩村 芳樹
    1993 年 84 巻 4 号 p. 662-667
    発行日: 1993/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    慢性片側性完全尿管閉塞腎におけるPAHクリアランスを測定し, さらに閉塞期間によるPAHクリアランスの推移を究明するため, 以下の実験を行った.
    実験方法: 雑種成犬30頭を用いて左側尿管を膀胱近位で完全結紮して閉塞期間3, 5, 10, 20, 40日の水腎症を作成した. 各閉塞期間終了後, 腎盂内尿を生理食塩水に置き換えた状態でPAH (p-amino hippurate, 以下PAHと略す) を一定速度で持続静脈内投与し, 腎盂内に排泄されるPAHを経時的に測定した. さらに腎盂容量, 血漿PAH濃度を測定しPAHクリアランス値を推定した.
    結果: 1) 慢性完全尿管閉塞腎においてもPAH排泄能の存在することが確認された. 2) PAHクリアランス値は閉塞3, 5, 10, 20, 40日でそれぞれ26.3, 13.6, 1.0, 0.9, 0.9ml/hr/kg b. w. であった. 3) PAHクリアランスは閉塞10日まで急激に減少し, 以後一定化する傾向が認められた. 4) 本実験に応用したPAHクリアランス測定法は, 慢性完全尿管閉塞時の腎クリアランス能を評価するのに適していると思われた.
  • 中薗 昌明, 村木 淳郎
    1993 年 84 巻 4 号 p. 668-673
    発行日: 1993/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    手術治療に焦点を置いて, 我々の経験した腎盂尿管癌18症例について検討した. 腎不全を伴った尿管CIS症例と膀胱癌同時発生例で浸潤癌であった2症例をのぞいて全例に腎尿管全摘術および膀胱部分切除術を行った. 腎不全例には尿管部分切除術のみ施行し腎は保存した. また膀胱浸潤癌症例は膀胱全摘出術を行った. リンパ節郭清を全例に行い, 郭清範囲を患側腎茎部, 傍大動脈又は傍大静脈, 大動静脈間リンパ節, さらに総腸骨, 内腸骨, 外腸骨リンパ節および閉鎖節とした. リンパ節転移を4症例 (22%) に認め, 2症例は原発巣に近接したリンパ節に認めたが, 2症例はいわゆる skipped lesion であった. Skipped lesion は稀な現象ではなく, 手術治療の面より考えれば今回行ったリンパ節郭清は必要な手術操作と考えた.
  • 山口 誓司, 小出 卓生, 宇都宮 正登, 吉岡 俊昭, 奥山 明彦
    1993 年 84 巻 4 号 p. 674-679
    発行日: 1993/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    遠位型腎尿細管性アシドーシス (dRTA) に伴う尿路結石症に対する治療としてはアルカリ剤が一般的によく使われているが, 我々は長期アルカリ剤投与による結石再発予防効果について検討したので報告する. 対象は大阪大学泌尿器科で経過観察中のdRTAに伴う尿路結石症患者のうちアルカリ剤投与を開始してから3年以上経過している症例を対象とした. 対象症例は9例で完全型5例, 不完全型4例であり, 評価は治療前後の腹部レントゲン検査により, 結石増大の有無, 結石形成の有無について検討した. 9例中5例に結石の増大や, 形成を認めず有効であったが, アルカリ剤が無効であった4例のうち3例は服薬が不規則な症例であり, 残りの1例は尿路感染の繰り返しにより, 感染結石の形成を来たした症例であった.
    dRTAに対するアルカリ剤の投与は尿中クエン酸排泄量の増加, 尿中カルシウム排泄量の低下等により有効であるとの理論的背景は明確にされているが臨床上もdRTAに伴う既存尿路結石の増大予防や新たな結石形成を長期にわたり予防しうることが証明された.
  • 岡根谷 利一, 鶴田 崇, 庭川 要, 川上 雅子, 小林 晋也, 小川 秋實
    1993 年 84 巻 4 号 p. 680-685
    発行日: 1993/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    膀胱腫瘍あるいは尿管腫瘍に対する化学療法23コースと, 精巣腫瘍に対する化学療法10コースを施行する際, granulocyte colony stimulating factor (G-CSF) を投与した. 膀胱腫瘍あるいは尿管腫瘍のM-VAC療法では約半数が第11日までに末梢総白血球数が3,000/μl未満になり, その時点でG-CSFを投与しても速やかな白血球増加がみられなかったが, 第8日から5日間, G-CSFを予防的に投与することで速やかに白血球数が増加した. 同様に精巣腫瘍に対するEP療法では第9日目から5日間G-CSFを投与することで白血球数は速やかに増加し, 最低値は平均2,500/μl, また3,000/μl未満であった期間は平均1.2日のみであった. 従ってこれらの化学療法時には, 白血球減少が明らかになる前から, G-CSFを短期間計画的に投与することで, 骨髄抑制に伴う感染症の危険が軽減できると思われる. 今後泌尿器科領域においてもG-CSFが癌治療の安全性を高め, ひいては治療成績の向上に結び付くことが期待される.
  • 小野 佳成, 大島 伸一, 藤田 民夫, 絹川 常郎, 加藤 範夫, 佐橋 正文, 松浦 治
    1993 年 84 巻 4 号 p. 686-693
    発行日: 1993/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    105例の腎盂尿管腫瘍例を1982年から1991年までに私共の施設で治療した. うち, 81例が移行上皮癌で外科的治癒切除が可能であり, 57例は根治的腎盂尿管摘出術で24例は腎盂尿管全摘出術で, 原発巣の切除を施行し, また, 66例はリンパ節郭清術を, さらに, 高浸潤度腫瘍症例やリンパ節転移症例26例では, adjuvant chemotherapy を施行した. 61例が男性で, 20例は女性であり, 年齢は36歳から86歳, 平均62歳であった. 経過観察期間は4ヵ月から114ヵ月, 平均31ヵ月であった. 81例の5年生存率は67%であった. 深達度別5年生存率はpTis+pTa群で70%, pT1群で91%, pT2群で88%, pT3群で53%, pT4群で27%であった. また, 悪性度別の5年生存率は grade 1群で100%, grade 2群で74%, grade 3群で26%であった. 52例のリンパ節転移なし群で78%, 15例の転移あり群で27%であった. 51例 (61%) では再発はみられておらず, 17例 (21%) では膀胱内再発が手術後中間値8ヵ月でみられ, 15例 (19%) に後腹膜, 肝, 肺, その他の膀胱以外の再発が手術後8ヵ月で観察された. 今回の検討の結果は過去の他の報告と変わらないものであった. 腎盂尿管腫瘍の治療におけるリンパ節郭清や adjuvant chemotherapy に有用性に関する結論は得られなかった. randamization を行った clinical trial の必要性が示唆された.
  • 夏目 修, 山田 薫, 三馬 省二, 大園 誠一郎, 平尾 佳彦, 岡島 英五郎
    1993 年 84 巻 4 号 p. 694-699
    発行日: 1993/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    高齢者の尿失禁の実態を把握するために奈良県下の8つの特別養護老人ホームに入所者している57歳から101歳までの748例 (男性183例, 女性565例) を対象に個人および施設に対するアンケート調査を行い, 以下の知見を得た. (1) 尿失禁例は422例 (56.4%) で, 男性94例 (51.4%), 女性330例 (58.4%) に認められた. (2) 尿失禁を有する割合は加齢に伴い増加する傾向にあった. (3) また, その割合と痴呆の程度や介助量あるいは移動能力との間に高い相関が認められた. (4) 施設医をはじめ医師の診察を受けたことがあるのは69例 (16.4%) で, そのうち薬物治療を受けていたのはわずか20例 (4.7%) であった. (5) 行動療法に積極的に取り組んでいる施設では入所者の尿失禁の割合は低かった.
    以上より尿失禁を有する入所者の生活の質を改善するために介助力の増強のみならず, 泌尿器科医を含めた専門医の積極的な参加が必要であると考えられた.
  • 山中 望, 川端 岳, 森末 浩一, 羽間 稔, 西村 隆一郎
    1993 年 84 巻 4 号 p. 700-706
    発行日: 1993/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    膀胱腫瘍患者尿中に含まれる hCGβ-core fragment (β-CF) を測定し, その腫瘍マーカーとしての意義を検討した. Cut off 値を0.1ng/mg・Crとすると61.2% (30/49例) が陽性であった. 異型度別に検討した陽性率はG1=25.0% (2/8例), G2=33.3% (4/12例), G3=82.8% (24/29例) と異型度が高いほど高率であった. しかも, 尿中β-CF濃度も異型度に伴って高くなる傾向がうかがわれた. また, 遠隔転移を有する症例では100% (3/3例) の陽性率を示した. 腎盂尿管腫瘍では71.4% (5/7例) の陽性率であった. また, 根治術後の変化を検討し得た13例では, 腫瘍の再発を来した1例を除きすべて陰性化した. 一方, 前立腺癌および良性疾患群ではすべて陰性であり, 尿中β-CFは膀胱腫瘍および腎盂尿管腫瘍の腫瘍マーカーとして有用と考えられた.
  • 石川 悟, 佐々木 明, 鶴田 敦, 樋之津 史郎, 小磯 謙吉
    1993 年 84 巻 4 号 p. 707-710
    発行日: 1993/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    表在性膀胱腫瘍は, 頻回に再発するという問題点があり, 頻回のTUR-Btによって, 尿道狭窄などの合併症を起こす症例も少なくない. 比較的完全な軟性膀胱鏡とNd:YAGレーザーを使って, 表在性膀胱腫瘍の外来治療を行った. 対象は16例 (延べ21回) であり, 粘膜麻酔のみで行った. 15~19wで照射を行い, 3例は生検による出血などのため不完全な治療であったが, 他は完遂できた. 硬性鏡では比較的照射の難しい膀胱頚部の照射も容易であった. 合併症はなく, 照射部位の局所再発はなく, 他の部位の再発率はTURと比べて変化ないと思われた. レーザー治療は軟性鏡と組合せ, 症例を選べば, 安全に外来で治療可能である. 今後も治療法の確立のための研究が必要であると思われた.
  • 高橋 徳男
    1993 年 84 巻 4 号 p. 711-719
    発行日: 1993/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    除脳イヌ28頭を対象として, ミドドリン, ノテラゾシン, クロニジンおよびヨキンビンの投与前後に生理的食塩水の膀胱内注入により反射性排尿を起こし, ウロダイナミックパラメーターの変化を検討した.
    α1刺激剤のミドドリンを投与後, 最大膀胱収縮圧が有意に増加し, 閾値圧および帯最大尿道内圧も増加する傾向を示した.
    α1遮断剤のテラゾミンを投与後, 閾値圧, 最大尿道内圧および最大膀胱収縮圧が有意に低下した.
    α2刺激剤のクロニジンを投与後, 閾値圧および最大尿道内圧が有意に低下し, さらに外尿道括約筋筋電図の電気的活動が減弱する傾向を示した.
    α2遮断剤のヨヒンビンを投与後, 膀胱容量および最大尿道内圧が有意に増加した.
    以上の実験成績より, 交感神経α1作用は, シナプス後受容体を介しておもに尿道平滑筋の活動を亢進させて蓄尿に働き, α2作用は, シナプス前受容体を介してその作用を発現することが推察され, 両作用のいずれも下部尿路機能に重要な役割を果たすことが明らかとなった.
  • 前立腺癌組織における分化度と免疫染色態度との相関性について
    藤野 淡人, 石田 裕則, 大堀 理, 宋 成浩, 西村 清志, 遠藤 忠雄, 小柴 健, 桑尾 定仁
    1993 年 84 巻 4 号 p. 720-728
    発行日: 1993/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    著者らが作製した抗γ-Smモノクローナル抗体を用いて免疫染色を行い, 未治療前立腺癌38症例を対象に, 染色態度と組織学的分化度との関係について検討した. また, 同時に抗PAPポリクローナル抗体および抗PSAポリクローナル抗体による免疫染色も行い, 比較検討した. 染色態度の評価に際しては, 独自の半定量法を試み, 染色スコアとして算出し各分化度群の平均値を検定した.
    抗γ-Sm抗体を用いた免疫染色における染色スコアおよび陰性率 (%Negative) はそれぞれ, 高分化型で6.8±1.8 (M±SD) および0%, 中分化型で4.4±2.4および14%, そして, 低分化型で1.8±2.3および54%であった. 染色スコアに関して, 各分化度群間に有意な差が観察され (p<0.05), 分化度の低下に伴う染色スコアの低下を認めた. 一方, 抗PAP抗体を用いた場合の染色スコアおよび陰性率はそれぞれ, 高分化型で7.1±1.5および0%, 中分化型で6.1±2.5および9%そして, 低分化型で4.3±3.2および30%であった. 染色スコアに関して, 各分化度群間に有意差は認められなかった. 抗PSA抗体を用いた場合での染色スコアおよび陰性率はそれぞれ, 高分化型で7.1±1.5および0%, 中分化型で5.9±2.5および9%, そして, 低分化型で3.8±2.2および10%であった. 染色スコアに関して, 高分化型と中分化型との2群間にのみ有意差 (p<0.05) を認めた.
    抗γ-Smモノクローナル抗体は, 前立腺癌の免疫組織化学的評価に際して, 特に中分化型と低分化型の判別能に関して優れていた.
  • 松岡 則良
    1993 年 84 巻 4 号 p. 729-737
    発行日: 1993/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    実験的膀胱癌誘発剤である N-butyl-N-(4-hydro-oxybutyl) nitorosamine (以下BBN) 0.05%水溶液をラットに経口投与し, BBN発癌ラットの膀胱被蓋細胞の腔面細胞における糖鎖の発癌過程での経時的変化を種類のレクチン (ConA, UEA-I, PNA, DBA) を使用した電顕免疫組織化学的方法で検討した.
    1) BBN投与により, 膀胱腔面細胞膜は8週目より稜部と斑部の区別が困難となり微絨毛の出現を認め, 16週目には多数の徴絨毛が出現した.
    2) 正常膀胱粘膜上皮におけるレクチンの結合は, Con Aにおいては不連続な結合パターンを示し, UEA-I, PNA, DBAでは腔面細胞膜の全域にわたり結合が認められた.
    3) BBN投与によるレクチン結合は, Con A, PNAでは癌化が進むにつれレクチン結合の増加を認め, Con Aの正常粘膜でみられた不連続な結合パターンは消失していた (極性の消失). UEA-I, DBAではBBN投与による結合パターンの変化は確認できなかった.
    以上の結果により, BBN投与による癌化としての細胞膜の形態的変化に加えて, 極性の変化という機能的変化をレクチン結合能より明らかにすることができた.
  • 吉田 一博
    1993 年 84 巻 4 号 p. 738-746
    発行日: 1993/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    成犬の摘出陰茎海綿体の phenylephrine および高K+ (30mM) 拘縮に対する papaverine の弛緩反応に与える諸種薬物の影響から papaverine の作用機序を検討した. Phenylephrine (10-6M) 誘発拘縮海綿体は papaverine (10-6~3×10-5M) の累積投与によって濃度依存性に弛緩した. Papaverine の前処置よって phenylephrine 拘縮では tonic 相のほうが強く抑制された. 高K+ (30mM) 液誘発拘縮海綿体は papaverine (10-6~3×10-5M) の累積投与により濃度依存性に弛緩した. さらに papaverine (5×10-6M) による中等度弛緩反応はCa++増加により濃度依存性に元の拘縮状態にもどった. Papaverine 前処置によりCa++除去加1mM EGTA高K+ (30mM) 液でCa++投与による拘縮発現は著明に抑制された. Ca++除去加1mM EGTA液下で, ryanodine によって消失する norepinephrine 誘発 phasic 収縮は papaverine (10-4M) 前処置により抑制された. Phenylephrine および高K+誘発拘縮海綿体の isoproterenol (10-8~10-6M), dibutyryl cyclic-AMP (10-5~10-3M) による濃度依存性弛緩反応は papaverine (10-6M) 前処置により増強された. 以上の結果より成犬摘出陰茎海綿体に対する papaverine の弛緩作用機序として, 1) 電位依存性Ca++チャネルに基づく細胞内Ca++流入阻止作用, 2) 受容体制御Ca++チャネルに基づく細胞内Ca++流入阻止作用, 3) 細胞内Ca++貯蔵部からのCa++遊離の減弱作用, 4) 細胞内 cyclic-AMP レベルの増加作用が示唆される.
  • 閉塞解除後の腎発育の変化
    太田 章三, 近田 龍一郎, 折笠 精一, 久慈 了, 坂井 清英, 金田 隆志, 池田 成徳, 阿部 優子
    1993 年 84 巻 4 号 p. 747-756
    発行日: 1993/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    水腎の存在が対側腎発育にどのような影響を及ぼしているかを明らかにするため, 腎が成熟過程にある幼若ラット (体重80~90g) を用いて以下の実験を行った. 一側完全尿管閉塞を作製し, 3日後に閉塞解除, 閉塞腎接摘出, 閉塞継続の3群に分け, その後の対側健腎の発育について腎湿重量, bromodeoxy-uridine (BrdU) labeling index (尿細管細胞増殖の指標, L. I.) を用い観察した. 尚, 0日と3日に sham ope のみを行った群をコントロールとした.
    対側健腎の湿重量は, 各群とも閉塞3日目以降の観察期間で, コントロール群より有意な大きさを保ったまま推移した.
    閉塞腎摘出群では, 対側腎皮質のL. I. は腎接摘4日 (閉塞7日) 後より急激に上昇した. 閉塞継続群では, 対側腎のL. I. は水腎摘出群より遅れて上昇し, 血流が完全に消失する時点で水腎摘出群と同値になった. 閉塞解除群では, 対側腎のL. I. は水腎の消失にもかかわらず閉塞解除4日目以降コントロール群に比し有意に高値となり, 18日目まで同程度に有意差を保ったまま推移した.
    閉塞期間の長さによる対側腎への影響をみるために, 閉塞5日後に同様な検討を行った. この結果, 閉塞5日群は, 閉塞3日群に比べ細胞増殖の程度が低かった.
    以上より, 水腎の存在が対側腎の細胞増殖を抑制し, 閉塞期間が短いほうが閉塞解除後の対側健腎の発育 (特に細胞増殖) が良好になることが示唆された.
  • 大西 哲郎, 町田 豊平, 増田 富士男, 飯塚 典男, 白川 浩, 波多野 孝史, 牧野 秀樹
    1993 年 84 巻 4 号 p. 757-762
    発行日: 1993/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    腎被膜内に限局した腎細胞癌 (stage 1) 症例221例を, 術後再発例45例 (他病死1例を除く) と, 術後未再発症例175例に分け, 再発および再発後の生存期間に影響を及ぼす因子に関して解析した.
    その結果, 腫瘍側因子中, 再発の危険因子としては, 腫瘍径や組織学的悪性度 (grade) があげられた. さらに, grade に関しては腎摘後の生存率との関連も認められた. また, 患者側因子としては, 体重減少が再発症例に多く認められ, かつ予後との関連が体重減少, 貧血, 赤沈亢進, およびCRPの陽性化に認められた. また, 再発状況からの分析結果, 根治的腎摘後の非再発率は再発後癌死例が, 再発後生存例に比較して低い傾向であったが有意差は認められなかった. また, 転移部位およびその転移個数からの解析結果, 単一臓器, 特に肺転移例において3個以内の転移個数例は, 再発後生存期間が長い傾向であり, しかもこれら症例は原発巣の grade が低い例 (grade I) が多くを占める傾向が認められたことから, grade は術後の転移進展状況, および生存期間にも影響を及ぼす因子と考えられた.
  • 和田 英樹, 丸田 浩, 笹村 啓人
    1993 年 84 巻 4 号 p. 763-766
    発行日: 1993/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    Pseudolymphoma とは反応性のリンパ球増殖症であり, 組織学的にリンパ球の異型性は極めて低く基本的には良性疾患である. 症例は68歳女性で左腰部痛と下腹部痛を主訴に初診. 腎部造影CTにて左腎に表面平滑で腎実質よりもやや low density の mass を認めた. 同様に眼窩部CTにて左眼窩内に mass を認めた. 諸検査においても悪性腫瘍を否定しきれないため開放性左腎生検術および左眼窩内腫瘍生検術を施行した. 病理組織学的所見にて pseudolymphoma と判明した. 術後プレドニゾロンの内服にて左腎腫瘍は縮小した. 現在なお経過観察中である.
  • 永野 哲郎, 前田 修, 細木 茂, 木内 利明, 黒田 昌男, 三木 恒治, 宇佐美 道之, 中村 麻瑳男, 古武 敏彦, 小林 亨
    1993 年 84 巻 4 号 p. 767-770
    発行日: 1993/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は57歳の男性で, 無症候性肉眼的血尿を主訴に来院した. 諸検査にて右腎静脈から肝静脈流入部におよぶ下大静脈内腫瘍血栓を伴う右腎細胞癌 (T3N0M0V2) と診断した. 心筋梗塞の既往及び狭心症を合併していたため経皮的冠動脈形成術を施行後, シメチジン併用にて天然型インターフェロンαを投与した. IFNを計3億6千万単位投与した4ヵ月後でのCTにて, 右腎は著明に縮小しCT上明かな腫瘍は認めず, また腫瘍血栓は腎静脈分岐部より約5cm頭側まで縮小し血栓に対する縮小率は70%で, 臨床的治療効果総合判定はPRであった. 体外循環下に根治的右腎摘除術及び下大静脈壁部分切除を伴う腫瘍血栓摘出術を施行した. 摘出標本は右腎, 腫瘍血栓を併せて10×10×12cm大, 重量180g. 病理組織学的には原発巣, 腫瘍血栓ともに clear cell subtype, grade 2>grade 1であった. 腎下極, 腫瘍血栓とも広範囲に出血壊死を認め, 炎症細胞浸潤が著明であった. 腎癌の組織学的治療効果判定基準では腎は Grade 1b, 腫瘍血栓は Grade 3であり, IFNの効果と思われた. 腎摘除後13ヵ月後の現在転移, 再発の徴候もなく健在である. IFNが原発巣に対しPR以上の効果を示したのは, 我々の調べ得た範囲では, 本邦でこれまで3例に過ぎず, かついずれも腎は摘除されておらず病理組織学的検索はなされていない. 本例の経験から原発巣に対するIFNの効果も今後検討の余地があると思われた.
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