3年以上経過観察が可能であった67名の膀胱癌患者から得られた腫瘍組織の平均核面積 (MNA), 平均核容積 (MNV) を測定し, 組織学的異型度, および患者の予後との関係について検討した.
計測は腫瘍組織を顕微鏡に400倍の倍率でセットし, コンピューター画面にスーパーインポーズさせてニコン画像解析システム“コスモゾーン1SA”を用いて行った. 平均核容積測定は stereology の理論により算定した. 計測に要した時間は, 面積, 容積を合わせて1症例につき約15分であった.
67名の組織学的異型度は, G1: 5名, G2: 40名, G3: 22名で, MNAの平均は, grade 1: 35±3μm
2, grade 2: 42±10μm
2, grade 3: 62±12μm
2で, 各 grade 間に有意差を認めた (p<0.01, t検定). MNVは grade 1: 282±46μm
3, grade 2: 371±148μm
3, grade 3: 644±182μm
3で, 同様に有意差を認め (G1&G2: p<0.05, G2&G3: p<0.01, t検定), grade の高い症例ほどMNA, MNVが大きかった.
MNAが40μm
2以上, MNVが370μm
3以上の症例では, それ以下の症例と比べて膀胱全摘が行われた症例や, 癌死した症例が多く, 生存率で比較してもMNA40μm
2, MNV370μm
3以上の症例は有意に予後が悪かった.
以上の結果より, 平均核面積, 平均核容積の測定が, 膀胱癌組織の悪性度を客観的に評価する指標となりうる可能性が示唆された.
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