日本泌尿器科学会雑誌
Online ISSN : 1884-7110
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85 巻, 10 号
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  • 川村 壽一
    1994 年 85 巻 10 号 p. 1439-1463
    発行日: 1994/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
  • 鈴木 謙一, 折笠 精一, 星 宣次, 吉川 和行, 斉藤 誠一, 大山 力, 佐藤 信, 川村 貞文
    1994 年 85 巻 10 号 p. 1464-1473
    発行日: 1994/10/20
    公開日: 1996/04/01
    ジャーナル フリー
    マウス膀胱癌 (MBT-2) を皮下に移植し, 高エネルギー水中衝撃波 (HESW) と抗癌剤を併用して治療効果を検討した. HESWの発生源に piezoceramics, 焦点部最大圧力100MPaで1,000発照射した. 治療は1群を除き1回のみ行った. 抗癌剤との併用は, pirarubicin (THP) (5mg/kg) あるいは carboplatin (CBDCA) (40mg/kg) をそれぞれ腹腔内投与15分後にHESWを単独群と同じ条件で照射した.
    照射直後には腫瘍内に著しい出血が出現し, 1日後には癌細胞の崩壊がみられはじめ, 3日後には境界明瞭な広範囲の壊死が生じた. 治療時腫瘍体積<10mm3では, 14日後の腫瘍相対増殖率はHESWを照射した群が無治療群に比べて平均値で約1/2の値を示したが, 統計学的有意差を認めなかった. 治療時腫瘍体積10~35mm3の14日後の腫瘍相対増殖率は, CBDCAとHESW併用を1回施行群と1週後に2回施行した群で有意な腫瘍増殖抑制効果が認められた. HESW単独群, THP単独群, CBDCA単独群, THPとHESW併用群では有意な増殖抑制はみられなかった. 累積生存率は, CBDCAとHESW1回併用群と2回併用群においてのみ有意に高く認められた. 治療後死亡したマウスの転移は肺のみにみられ, 出現頻度はHESWを用いた群と用いない群で差はみられなかった.
  • 血管および神経学的検査を中心とした検討
    山口 康宏, 熊本 悦明
    1994 年 85 巻 10 号 p. 1474-1483
    発行日: 1994/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    糖尿病における器質的勃起障害の成因を調べるため, 簡便法で得られたNPT値および勃起に関する血管系や神経系そのものを直接検査しえた62症例 (32~78歳) を中心に検討した.
    1. NPT値の低下を示す例は, 勃起障害のないもの (8例) にはみられなかったが, 完全勃起障害例 (34例) では28例 (85%) にみられ, 糖尿病の勃起障害は器質的な関与が大きいと考えられた.
    2. PBPI, パパベリンテストによる反応, 陰茎背神経伝導速度, 球海綿体反射伝導時間を調べた結果, 陰茎の血管系障害を有するものが62例中42例 (67.7%) 存在し, さらに高度の血管障害例は高齢のものに多く偏っていた. 勃起に関する神経系障害を有するものも62例中38例 (61.2%) と多く存在した. さらに両者の合併も多く, これら障害はNPT値の低下に大きく関与していた.
    3. 多変量解析の結果, NPT値の低下に最も大きく寄与しているのは血管障害 (寄与率30.8%), 続いて神経障害 (寄与率6.9%) であり, この2因子が糖尿病の器質的勃起障害の説明因子として重要であった.
    4. 血管障害のNPT値低下に対する寄与率は, 60歳未満での18.8%から60歳以降での45.1%と, 高齢群においてより高率となった. 一方, 神経障害の関与は60歳未満での7.7%から60歳以降での4.7%と低下していた.
  • 夏目 修, 山田 薫, 山本 雅司, 塩見 努, 安川 元信, 吉井 將人, 百瀬 均, 大園 誠一郎, 平尾 佳彦, 岡島 英五郎
    1994 年 85 巻 10 号 p. 1484-1493
    発行日: 1994/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    二分脊椎症例を適切な排尿方法で管理するための指標として, 膀胱内の尿が外尿道括約筋部を越える時の膀胱内圧を urethral opening pressure (UOP) とし, 低活動型膀胱を呈する63例125腎・尿管を対象に測定を行った. その結果, UOP値35cmH2O以上の症例は, 上部尿路に何らかの形態的あるいは機能的変化が認められた45腎中37腎 (82.2%) を占めていた. 同様に Grade 2以上のVURが認められた41尿管中32尿管 (78.0%), 膀胱変形が認められた36例中26例 (72.2%) を占めていた. そこでUOP値35cmH2O以上を高圧群 (28例), 35cmH2O未満を低圧群 (35例) の2群に分類した. 排尿方法は, 高圧群では23例 (82.1%) がおもに清潔間歇導尿, 低圧群では24例 (68.6%) が手圧あるいは腹圧排尿にて管理されていた. 3年6ヵ月の追跡評価結果で, 清潔間歇導尿群では尿路の形態あるいは機能に関して予後良好であった. 一方, 手圧あるいは腹圧排尿群では悪化を示した割合は高圧群 (80.0%) で低圧群 (9.1%) に比較して有意に高い結果を示した (p<0.005). 以上より, 35cmH2O以上の高UOP値症例には早期より清潔間歇導尿を導入するのが望ましい. 一方, 35cmH2O未満の低UOP値症例でもより低圧排尿が可能な清潔間歇導尿を行うのが良いが, 手圧あるいは腹圧排尿による管理も可能であると考えられた. UOP値は二分脊椎症例の尿路の形態的あるいは機能的予後を早期に把握するのに役立ち, より risk が少ない排尿方法を選択する時の有用な指標の一つになると考える.
  • TOSOH II PAによるPSA測定の臨床的有用性
    新家 俊明, 宮井 將博, 澤田 佳久, 大川 順正
    1994 年 85 巻 10 号 p. 1494-1501
    発行日: 1994/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    血清前立腺特異抗原 (PSA) 測定キットである2接のモノクロナル抗体を用いた酵素抗体法TOSOH II PAを使用し, 病理組織学的に確認された未治療前立腺癌患者および前立腺肥大症患者の血清PSAを測定し本法の臨床的意義を検討した. PSA陰性対照である膀胱前立腺全摘除症例のTOSOH II PAによる血清PSAはすべて測定感度以下であった. 他方, 血清PAPでは測定感度以下となったものは1症例 (6%) にすぎなかった. TOSOH II PAと本邦で広く用いられている Markit-F および Markit-M との比較では強い相関 (r=0.90) をみとめたが回帰係数に大きな差がみられた. 特に, 低濃度領域においてTOSOH II PAは Markit PA と比較して測定精度および感度の点で優れていた. 前立腺癌患者39症例の血清PSAはいずれの Stage においても全例TOSOH II PAの基準値2.3mg/ml以上であった. しかし, 前立腺肥大症患者32症例でもこの基準値を越えるものが75%みられた. Stage B の5症例においてPSAはすべて基準値2.3ng/mlを越えていたのに対し, PAPでは基準値1.6ng/mlを越えるものは4例中1例にすぎなかった.
    結論として, TOSOH II PAによる血清PSAは血清PAPよりも前立腺に限局する前立腺癌の発見に高い感度を示した. また, TOSOH II PAによる前立腺肥大症と前立腺癌との鑑別において診断感度, 特異性, 診断効率は満足すべきものであり, これを Stage B に限っても診断効率は良好であった. 今後, 被膜内に限局する初期前立腺癌検出のための腫瘍マーカーとしてのTOSOH II PAによるPSAの臨床的有用性をさらに完全なものにするためにはさらに多数の症例による検討が必要であろう.
  • 加齢性変化の検討
    堀田 浩貴, 熊本 悦明
    1994 年 85 巻 10 号 p. 1502-1510
    発行日: 1994/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    夜間睡眠時勃起現象 (nocturnal penile tumescence: NPT) は, ほとんどの健康男子に認められる生理現象である. NPTの指標を測定することで性機能評価が可能であることから, NPTは臨床応用されてきているが, その基本となるべき年齢別正常値がこれまで整理されていなかった. そこで健康男子189例を対象にNPTの各指標を測定し, 日本人のNPTの加齢性変化について検討した.
    NPTの各指標は10歳を過ぎる頃急激な増加を示したが, この増加には思春期前後で劇的な変化を遂げる視床下部, 下垂体そして精巣系の加齢性変化の関与が考えられた. またNPT時間, 一回あたりのNPT持続時間のピーク以後の減少傾向にも androgen の低下の関与が考えられた. 陰茎周最大増加値 (一晩の最大陰茎周変化値), 陰茎周最大増加率 (陰茎周最大増加値の弛緩時の陰茎周値に対する割合) は50歳代後半からその減少傾向が強まったが, これには androgen の低下とともに陰茎血管系および陰茎海綿体の加齢性変化が関与している可能性が考えられた.
    NPTの各指標は加齢性変化を示すことが明らかとなり, 男性の性成熟あるいはその衰退を表す可能性が示唆された. また本邦におけるNPTの各指標の基準値が形成され, 今後の性機能の臨床において意義深いものと考えられた.
  • 血中 free testosterone 値との関連性についての検討
    堀田 浩貴, 熊本 悦明
    1994 年 85 巻 10 号 p. 1511-1520
    発行日: 1994/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    3歳から84歳までの健康男子123例を対象として夜間睡眠時勃起現象 (nocturnal penile tumescence: NPT) と血中 free testosterone (以下FT) を測定し, その関連性を検討した. また6例の原発性低ゴナドトロピン性類宦官症例にも治療前後で同様の検討を行った.
    全年齢を通じ, 血中FT値と相関を認めたNPTの指標はNPT時間, 一回あたりのNPT持続時間, 陰茎周最大増加値そして陰茎周最大増加率であった.
    NPTの各指標毎にピークとなる年代で対象例を2群に分け検討すると, ピークとなるまでに血中FT値との相関を認めたのは, NPT時間, NPTの回数, 一回あたりのNPT持続時間, 弛緩時の陰茎周値, 陰茎周最大増加値, 陰茎周最大増加率の6項目全てであった.
    また6例の類宦官症例では, 治療後にNPT時間, 一回あたりのNPT持続時間, 陰茎周最大増加値, 陰茎周最大増加率が有意に増加した. これらのNPTの指標の増加に血中FT値の増加が重要なことがわかった.
    ピーク後もNPT時間, 一回あたりのNPT持続時間そして陰茎周最大増加値, 陰茎周最大増加率は血中FT値と相関を認め, これまで陰茎血管系の加齢性変化が主な原因とされた陰茎周最大増加値の減少傾向に, 血中FT値の低下も関与していることがわかった.
    今回の検討から, 勃起能を表すNPTが androgen の影響を強く受けていることがわかった.
  • 前立腺癌骨転移例における有用性
    竹内 信一, 吉田 謙一郎
    1994 年 85 巻 10 号 p. 1521-1527
    発行日: 1994/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    最近, 骨吸収のマーカーとして同定されたコラーゲン架橋因子である尿中Pyr, D-Pyrが前立腺癌において骨転移の指標になり得るか否かを検討する目的で, 従来の骨代謝のマーカーである血中BGP, ALPと前立腺癌骨転移 (+) 群, 骨転移 (-) 群, および同年齢の前立腺肥大症との間で比較検討した. 尿中Pyr, D-Pyrの測定は高速液体クロマトグラフィーで行い, 尿中クレアチニン量で補正した. 対象は23例の前立腺癌症例; 16例: 骨転移 (+) 群, 7例: 骨転移 (-) 群と23例の前立腺肥大症であった.
    前立腺癌骨転移 (+)群 の尿中Pyr, D-Pyrの平均値は65.02±38.16pmol/μmol of creatinine, 8.87±7.01pmol/μmol of creatinini であり, 骨転移 (-) 群: 27.43±10.29pmol/μmol of creatinine, 4.42±1.88pmol/μmol of creatininc, 前立腺肥大症: 25.58±7.54pmol/μmol of creatinine, 3.52±1.07pmol/μmol of creatinine, のそれより有意に高値を示した. これら3群間において尿中Pyr, D-Pyrともに統計学的に有意差を認めた (Pyr: P=0.0001, D-Pyr: P=0.001). 前立腺癌骨転移 (+) 群の血中ALPの平均値は266.50±147.46IU/Lであり, 骨転移 (-) 群: 135.14±20.32IU/L, 前立腺肥大症: 144.52±30.95IU/L, のそれより有意に高値を示した (p=0.0001). 前立腺癌骨転移 (+) 群においては,尿中Pyr, D-Pyrどちらも血中ALPと有意な相関を認めた. これらに比して, 血中BGPは3群間において有意差を認めなかった. 以上の結果より, 尿中Pyr, D-Pyrの測定は前立腺癌において骨への転移の拡がりを知る有用な指標になり得ると思われる.
  • ATP-法による抗癌剤感受性試験の有用性について
    山田 伸一郎, 藤本 佳則, 磯貝 和俊, 出口 隆, 根笹 信一, 川本 正吾, 西田 泰幸, 玉木 正義, 江原 英俊, 高橋 義人, ...
    1994 年 85 巻 10 号 p. 1528-1533
    発行日: 1994/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    進行膀胱癌15例において動注化学療法前に施行した in vitro 抗癌剤感受性と動注化学療法の組織学的効果との関係を検討した. 抗癌剤感受性試験は細胞内ATP量を指標としたATP法により行い, 動注化学療法は内腸骨動脈より methotrexate (MTX), adriamycin (ADM), cisplatin (CDDP) の one-shot 動注にて行った. 抗癌剤で処理した腫瘍の細胞内ATP量が抗癌剤未処理の腫瘍の細胞内ATP量の50%以下であった場合を感受性有りとし, 動注化学療法後の組織学的効果の判定は, 膀胱癌の組織学的治療効果判定基準で grade 2以上の変化を認めたものを有効とした. ADMに感受性のある9例中8例で化学療法が組織学的に有効であり, ADMに耐性である6例すべてで化学療法が無効であった. ADMに対する感受性と組織学的効果との一致率は93%であった. CDDPに感受性のある12例中7例で化学療法は有効であり, CDDPに耐性である3例中2例で化学療法が無効であった. CDDPに対する感受性と組織学的効果との一致率は60%であった. ADMとCDDP2剤に感受性のある8例中7例で化学療法が有効であり, 少なくとも1剤に耐性である7例中6例で化学療法が無効であった. 両剤に感受性のある腫瘍は少なくとも1剤に耐性を示す腫瘍に比較して有意に良好な反応を示した. 以上より今回のATP法による感受性試験は化学療法の効果の予測に有用であることが示された.
  • 頭尾側方向の部位別に見た構成筋線維比率の相違について
    藤井 敬三, 徳中 荘平, 岡村 廉晴, 宮田 昌伸, 金子 茂男, 八竹 直
    1994 年 85 巻 10 号 p. 1534-1542
    発行日: 1994/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    成雄家兎6頭を用いて, 松雄家兎外尿道括約筋の長軸方向での部位別の構成筋線維比率の違いを, 筋収縮蛋白ミオシンのサブユニットであるミオシン軽鎖とミオシン重鎖の生化学的解析により検討した. 後部尿道を矢状断し, ミオシン軽鎖用, 重鎖用に分けた. 矢状断した標本を, さらに頭尾側方向で前立腺部, 前立腺尖部, 前立腺下部, 尿道球腺部の4部位に分け, グリセリン処理後, 外尿道括約筋を単離して電気泳動用の試料とした. 個体別の検討には単離筋肉収量が少ないため, 6頭の筋肉を合わせて試料を調製した. ミオシン軽鎖の解析には O'Farrell の二次元電気泳動を行い, ミオシン重鎖の解析には40%グリセリン加SDSポリアクリルアミドスラブ電気泳動を行い, 部位別の速筋型と遅筋型ミオシン軽鎖ならびに速筋型と遅筋型ミオシン重鎖の量比についての定量的解析を行った. 遅筋型ミオシン軽鎖比率は前立腺部 (33.4%), 前立腺尖部 (26.3%), 前立腺下部 (18.5%), 尿道球腺部 (11.0%) で, 遅筋型ミオシン重鎖比率は前立腺部 (20.3%), 前立腺尖部 (16.1%), 前立腺下部 (7.2%), 尿道球腺部 (5.0%) であり, いずれも頭側から尾側になるほど遅筋比率が低くなる傾向を認めた. 雄家兎外尿道括約筋は全体では速筋優位の横紋筋であるが, 部位別にみると近位側では比較的遅筋線維が豊富であり, 安静時の尿禁制保持には主に括約筋の近位側が関与し, 腹圧などのストレス時の尿禁制保持には括約筋全体が関与している可能性が示唆された.
  • 頴川 晋, 大堀 理, 宋 成浩, 川上 達央, 宇田川 博文, 内田 豊昭, 横山 英二, 小柴 健
    1994 年 85 巻 10 号 p. 1543-1551
    発行日: 1994/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    前立腺癌の腫瘍マーカーとその前立腺体積比が癌の診断上どれほど有用であるかを, 173症例の前立腺生検結果を基にROC解析を用いて検討した. 前立腺癌は173例中70例 (40.5%) に検出された. 全例を対象とした場合, ROC曲線下面積で表される癌の診断能は prostate specific antigen density (PSAD) が最も高く, ガンマセミノプロテイン density (GSMD), ガンマセミノプロテイン (GSM), 前立腺酸性フォスファターゼ (PAP) を有意に上回ったが (p<0.05), PSAとは差がなかった (p>0.05). PSADの癌診断能は, PSAの値が2.0~10.0ng/mlであった場合にはPSAよりも優っていたが (p<0.05), 2.0~5.0ng/mlと中間域であった場合や直腸診上癌を示唆する所見を認めなかった場合はPSAとの間に有意差はなかった (p>0.05).
    栄研二抗体法で測定したPSAのカットオフ値を2.0ng/mlとすると, 3.0ng/mlとした場合に比較して特異性はやや減少したが感受性は高まり, 5例の見逃し例を減らすことができた. また, PSADのカットオフ値を0.15とすると, 感受性は81.4%, 特異性は87.4%, 正診率は85.0%となり最も診断能のバランスが良かった. しかし, 実際には, PSAD<0.15であっても根治可能な早期癌を含む多数の見逃し例が存在していた. 従って単独で前立腺癌を診断するためにはPSADの診断能はなお不十分であるため, 生検の適応は従来通りPSAの値により判断されるべきであるものと思われた.
  • 井口 厚司, 平田 祐司, 市木 康久, 真崎 善二郎
    1994 年 85 巻 10 号 p. 1552-1557
    発行日: 1994/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    3年以上経過観察が可能であった67名の膀胱癌患者から得られた腫瘍組織の平均核面積 (MNA), 平均核容積 (MNV) を測定し, 組織学的異型度, および患者の予後との関係について検討した.
    計測は腫瘍組織を顕微鏡に400倍の倍率でセットし, コンピューター画面にスーパーインポーズさせてニコン画像解析システム“コスモゾーン1SA”を用いて行った. 平均核容積測定は stereology の理論により算定した. 計測に要した時間は, 面積, 容積を合わせて1症例につき約15分であった.
    67名の組織学的異型度は, G1: 5名, G2: 40名, G3: 22名で, MNAの平均は, grade 1: 35±3μm2, grade 2: 42±10μm2, grade 3: 62±12μm2で, 各 grade 間に有意差を認めた (p<0.01, t検定). MNVは grade 1: 282±46μm3, grade 2: 371±148μm3, grade 3: 644±182μm3で, 同様に有意差を認め (G1&G2: p<0.05, G2&G3: p<0.01, t検定), grade の高い症例ほどMNA, MNVが大きかった.
    MNAが40μm2以上, MNVが370μm3以上の症例では, それ以下の症例と比べて膀胱全摘が行われた症例や, 癌死した症例が多く, 生存率で比較してもMNA40μm2, MNV370μm3以上の症例は有意に予後が悪かった.
    以上の結果より, 平均核面積, 平均核容積の測定が, 膀胱癌組織の悪性度を客観的に評価する指標となりうる可能性が示唆された.
  • 透過型電子顕微鏡による観察
    斎藤 敏典, 折笠 精一, 星 宣次, 鈴木 謙一, 庵谷 尚正, 田口 勝行, 白井 修一, 稲葉 康雄, 桑原 正明
    1994 年 85 巻 10 号 p. 1558-1562
    発行日: 1994/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    VX2癌細胞の水中衝撃波による影響を細胞レベルで明らかにするために, VX2癌細胞を家兎の膀胱に移植し, ピエゾ素子より発生させた衝撃波を照射した (1,000 shots, 100MPa, 5/sec). 照射後の細胞では大きく3つの変化が観察された. 1つは孤立細胞を惹起した細胞間接合の破綻であり, 2つめには破壊された細胞内小器官が形成したと思われる空胞が観察されたことであった. 3つめには虫喰い像を伴った被照射細胞も観察された. これらの結果より, VX2移植膀胱癌細胞においては, 水中衝撃波照射は致命的な損傷を惹起するものと考えられた.
  • 阿部 俊和, 川村 繁美, 青木 光, 久保 隆, 門間 信博
    1994 年 85 巻 10 号 p. 1563-1566
    発行日: 1994/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    患者は56歳, 男性. 左側腹部痛を主訴に来院した. 超音波検査では左腎上部に hyperechoic な腫瘤を認め, CTでは low density area に加え isodensity area がみられた. 左副腎腫瘍, 骨髄脂肪腫を疑がったが肉腫等も否定出来ず左副腎摘除術を施行した. 摘出標本の病理組織学的所見では腫瘍は成熟脂肪組織より構成されており, 副腎組織と連続していた. 造血細胞は見られず, 副腎脂肪腫と診断した.
  • 溝口 裕昭, 福永 良和, 笠木 康弘, 緒方 二郎
    1994 年 85 巻 10 号 p. 1567-1570
    発行日: 1994/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    精管結紮術後に発生した非常に希な両側性精液瘤の1例を経験したので報告する. 症例は47歳, 男性. 陰嚢内容の両側性腫脹を主訴に来院した. 超音波検査で両側陰嚢内容には多房性または隔壁を有する嚢胞性腫瘤部分が認められたため, 手術を施行した. 腫瘤は両側とも精巣上体頭部から発生していたため, 両側精巣上体摘出術を施行した. 嚢胞内溶液に多数の精子を認めたため, 精液瘤と診断した.
    本例は17年前に施行された精管結紮術後, 長期にわたる活発な性活動が精巣上体管内圧を上昇させたために発生したものと考えた.
  • 六車 光英, 松田 公志, 小山 泰樹, 小松 洋輔
    1994 年 85 巻 10 号 p. 1571-1574
    発行日: 1994/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    乳糜尿症の手術は本邦では腎周囲リンパ管遮断術が広く行われているが, 最近中国より鼠径リンパ節-大伏在静脈吻合術や精索あるいは下肢といった表在部でのリンパ管-静脈吻合術が紹介されている. 我々も, フィラリア性乳糜尿症の50歳女性に鼠径リンパ節-大伏在静脈吻合術および同部位でリンパ管-静脈吻合術を行ったところ, 術後5ヵ月目に乳糜尿が消失した. 鼠径リンパ節-大伏在静脈吻合術および精索または下肢でのリンパ管-静脈吻合術は, 吻合を表在部で行うので手技的に容易で, 手術侵襲も小さく, 合併症も少なく, 成績も比較的良好なので, 乳糜尿症に対して先ず試みられるべき術式であると考えられる.
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