膀胱移行上皮癌 (TCC) 90症例を対象とし, S-100蛋白陽性樹状細胞 (S100-DC) の腫瘍内浸潤, HLA-DRα陽性癌細胞 (DR-CC) および血液型抗原陽性癌細胞 (BGA-CC) の分布状況を免疫組織化学的に検討し, 悪性度や予後との関連性につき統計学的に解析した. S100-DCの分布は90例中47例 (52%) が高密度で, DR-CCは24例 (26%) に認め, 特に内16例は高密度であった. BGAなCCは49例 (54%) で認めた. 性別, 年齢および病理学的因子別にS100-DC数, DR-CC数, BGA-CC数を比較したところ, S100-DC数では, G, pT, ly, vで, BGA-CC数では, G, pT, INFで有意な差を認めたが, DR-CC数では, いずれも有意差を認めなかった. 全症例の10年生存率は, 60.4%であり, S100-DC, DR-CCおよびBGAなCCの出現数別での10年生存率は, S100-DCでは, 高密度群が77.7%, 低密度群が39.0%で有意差を認め, DR-CCは, 高密度群が85.7%, 低密度群が43.8%, 陰性群が56.9%で, 高密度群と陰性群, 高密度群と低密度群間で有意差を認め, BGA-CCは, 高密度群が74.3%, 低密度群が46.5%で有意差を認めた. 各因子別にCox比例ハザードモデルを用いて多変量解析を行ったところ, 予後への影響度の高い順に, m+n, S100-DC, BGA-CC, DR-CCが有意であった. 以上より, TCCにおけるS100-DC, DR-CCおよびBGA-CCは各々独立して予後に有意に良好な影響を与え, 特にS100-DC, BGA-CCは悪性度をも反映し, 新しい予後因子として重要であると考えられた.
抄録全体を表示