日本泌尿器科学会雑誌
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85 巻, 3 号
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  • 現状の問題点の分析と将来への対応
    田崎 寛
    1994 年 85 巻 3 号 p. 393-400
    発行日: 1994/03/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    泌尿器科領域における腹腔鏡下手術のわが国における現状について分析してみると, 特徴として副腎摘出術が多いこと, 腎摘出術の適応が腎細胞癌に拡大されつつあること, さらに後腹膜腔への直接のアプローチ方法が開発されていることに集約される. このような急速な発展にも拘わらず, 重篤な合併症の報告は少なく, その種類と頻度は諸外国の報告とほぼ同程度と推定される.
    手術時間, 在院日数については開腹手術より短縮するには至らず, 特に在院日数は諸外国の腹腔鏡下手術より延長している. この理由は主として医療制度と長年の習慣の差によると考えられる.
    一般にわが国における腹腔鏡下手術は, 適応の拡大, 手技の改良, 症例の累積には積極的であるが, 真の有用性や外科治療学の基本に関する検討が不足している傾向かある. 器械器具の改良と共に教育の充実によって学習曲線の改善をはかることが将来へ向けての重要な課題と考えられる.
  • 高松 正武
    1994 年 85 巻 3 号 p. 401-409
    発行日: 1994/03/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    膀胱腫瘍における細胞表面糖鎖抗原, 特に血液型抗原 (BGA) 検索の臨床的有用性については免疫組織学的手法を用いて, 種々の検討が行われている. 今回, Flow-Cytometry (FCM) を用い, 膀胱腫瘍細胞における細胞表面糖鎖抗原, 特に血液型抗原 (BGA) 定量化のための手法の開発を試みたので報告する. 1992年4月より1993年2月までの間に岡山大学泌尿器科およびその関連病院にて治療を受けた尿路移行上皮癌の22症例を対象とした. 手術により摘出した新鮮生標本を2分割し, 一方はホルマリン固定後, ABC法による免疫組織染色を行い, 他方はFCMによる解析に用いた. FCMによる解析法は, 検体を single cell suspension とし, 第1抗体として抗BGAマウスモノクローナル抗体 (DAKO) を加え, 次にFITC標識抗マウス抗体 (DAKO) と propidium iodide (PI) の混合溶液を加え, 30分間氷中で反応させた. この検体を FACStar (Becton Dickinson) により解析した. FSCとFL2 (PI) の dotplot 上で有核細胞集団に対し gating し陽性率を算出した. 同一症例における固形組織と浮遊細胞につき, 従来の免疫組織染色とFCMによる positive rate とを比較検討したところ, 免疫組織染色とFCMによる陽性率は, 高い相関関係が認められた. 検者の主観により染色程度を判断する従来の免疫組織染色と比較して, FCMを用いた場合, より客観的かつ定量的であり, 今後の細胞表面抗原の解析には, 大きな役割を果たすものと考えられた.
  • 井上 隆朗, 島谷 昇, 広岡 九兵衛, 守殿 貞夫
    1994 年 85 巻 3 号 p. 410-418
    発行日: 1994/03/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1984年より1991年までの8年間に当科で加療した膀胱癌のうち29例に対し, 高線量率腔内放射線療法を施行した. 全例, 移行上皮癌であり, その浸潤度は, CIS 12例, Ta 7例, T1 3例, T2 1例, T3 6例であった. 照射には, 3-way カテーテルを特別に作成し, 80~100mlの空気で膀胱を拡張させ, リモートコントロールにて60Coの線源を膀胱の中央に留置し照射を行った. 投与線量は, 一回5Gy, 計8~10回, 総線量として40~50Gyを標準した. CR率は, CIS 7/12 (58.3%), Ta 4/6, T1 1/3, T2 1/1, T3 1/6で, CISおよびTa, T1の表在性腫瘍では12/21 (57.1%) と高率であったのに対し, 浸潤性腫瘍では2/7と低率であった. 副反応は, 1例で強い膀胱炎症状がみられた以外, 重篤なものはみられなかった. 本療法は, 膀胱上皮内癌および表在性膀胱癌に有効な治療法と考えられた.
  • 西山 勉, 照沼 正博, 郷 秀人, 片山 靖士
    1994 年 85 巻 3 号 p. 419-423
    発行日: 1994/03/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    腹腔鏡下左腎, 副腎摘出術を十二指腸空腸曲左側の壁側腹膜 (十二指腸陥凹) からのアプローチでおこない, 手技的な点を検討した. 我々はまず最初に左腎静脈を処理した. 十二指腸空腸曲左側の壁側腹膜 (十二指腸陥凹) を切開する事により左腎摘出術の場合は左腎動静脈を確認でき, endoGIAを用いて安全に左腎動静脈を縫合切断できた. 左副腎摘出術の場合は左腎静脈を剥離後, 副腎静脈を結紮切断した. 最初に左腎静脈を処理することにより, その後の出血はほとんどなく, 手術を進めることができた.
  • 上水流 雅人
    1994 年 85 巻 3 号 p. 424-433
    発行日: 1994/03/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    マウス膀胱腫瘍 (MBT-2) を使った腫瘍移植系で, 担癌生体の細胞性免疫能を経時的に観察し, 免疫能低下の機序を検討した. すなわち脾臓 natural killer cells (NK), lymphokine activated killer cells (LAK) 及び脾臓 macrophage (Mφ) の細胞障害活性を測定した. NK活性は担癌初期の生体で増強していたが, LAK活性とMφ細胞障害活性は担癌中期の生体で増強していた. NK活性は担癌末期の生体で抑制されていたが, LAK活性とMφ細胞障害活性は保たれていた. 胸腺, 脾臓, 末梢血単核球表面抗原及び脾臓単核球の各種サイトカイン産生能を測定し, 細胞障害活性の変化との関係を検討した.
  • 増田 均, 山田 拓己, 永松 秀樹, 長浜 克志, 川上 理, 渡辺 徹, 根岸 壮治
    1994 年 85 巻 3 号 p. 434-439
    発行日: 1994/03/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    17名の女性尿禁制者 (正常群), 39名の女性腹圧性尿失禁患者 (腹圧性尿失禁群) で2個のマイクロチップトランスデューサーを用いて静的尿道内圧測定と腹圧下尿道内圧測定を施行し, 比較検討した. そして, 腹圧性尿失禁群のうちで, 膀胱頸部吊り上げ術により尿失禁が治癒した21名 (手術群) で, その術前後の尿道内圧測定値を比較した. 圧伝達率は機能的尿道長を4分割して, その各分割で計算した.
    正常群では, 腹圧性尿失禁群に比較して最高尿道閉鎖圧, 機能的尿道長の両方の値が有意に高かった. また正常群では, 41%の症例で腹圧時に膀胱頸部が開く所見 (膀胱頸部機能不全) が認められたが, 腹圧性尿失禁群に比較して, 尿道の遠位側からみて機能的尿道長の3/4の範囲で圧伝達率が高く, 全例で尿禁制が保たれていた. 一方で腹圧性尿失禁群では遠位尿道に向かうに従い圧伝達率は低下する傾向にあり, 遠位尿道の代償機能が欠損していると思われた. 膀胱頸部吊り上げ術後には, 最高尿道閉鎖圧や機能的尿道長には有意な変化を認めなかったが, 尿道の近位側からみて機能的尿道長の3/4の範囲で圧伝達率が有意に上昇した. 術後に, 膀胱頸部機能不全の所見を呈したのは1名にすぎなかった. 恥骨後式の膀胱頸部吊り上げ術の最大の目的は膀胱頸部の閉鎖性の回復にあるが, 腹圧時に膀胱頸部がかりでなく, 近位側からみて機能的尿道長の3/4の範囲までの閉鎖性を回復させていると思われた.
  • 中本 貴久, 井川 幹夫, 三谷 信二, 薄井 昭博, 碓井 亞
    1994 年 85 巻 3 号 p. 440-445
    発行日: 1994/03/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1985年から1992年の8年間に広島大学医学部附属病院泌尿器科において, 9例の下大静脈に進展した腎細胞癌に対して腫瘍血栓摘除術および根治的腎摘除術を施行した. 年齢は50歳から76歳 (平均63.6歳) で, 性別は男性6例, 女性3例, 右腎7例, 左腎2例であった. Novick の分類にしたがった腫瘍血栓の範囲は, レベル-1: 3例, レベル-2: 2例, レベル-3: 2例, レベル-4: 2例であり, 手術時に遠隔転移が2例に認められた.
    レベル-1の3例は下大静脈切開で腫瘍血栓を摘出でき, 手術時間は最短で出血量も少量であった. レベル-2および3の3例は, 肝の脱転操作が必要で手術時間の延長と出血量の増加がみられ, 1例が術中肺塞栓を併発し死亡した. レベル-4の2例は心肺バイパス, 超低体温, 循環停止の併用により手術時間は延長したが出血量はむしろレベル-2や3の症例より少なかった. 術後の合併症では腎機能障害が2例, 肝機能障害が2例に認められた.
    8例中5例 (62.5%) が平均34ヵ月 (8から95ヵ月) 生存し, 遠隔転移の認められた1例が術後4ヵ月で, 周囲脂肪織への浸潤が認められた2例が23ヵ月と24ヵ月で癌死し, 1年生存率は88%, 3年生存率は44%であった.
    下大静脈に進展した腎細胞癌に対する拡大手術は近代的な心臓外科技術の導入により安全に行えるようになったが, 適応となる症例を慎重に選んだ上で行う必要がある.
  • 増田 富士男, 山崎 春城, 吉越 富久夫, 今中 啓一郎, 牧野 秀樹
    1994 年 85 巻 3 号 p. 446-451
    発行日: 1994/03/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1984年4月より1993年3月までの9年間に, 腎細胞癌25例, 26腎に腎保存手術を行った. 25例中8例は imperative な適応で, 17例は elective な適応であった. imperative 群8例中5例は両側腎細胞癌 (同時性3例, 非同時性2例), 1例は1側が腎細胞癌で他側が腎盂癌, 2例は単腎であった. 同時性両側腎細胞癌3例中1例は両側の腎保存手術を行ったので, 8例9腎に腎保存手術を施行した. Elective な適応17例はすべて対側腎が正常な小腎細胞癌であった. Imperative 群8例9腎中, 4腎に腫瘍核出術を行ったが, のこりの5腎および elective 群17腎の計22腎には腎部分切除術を行った. 26腎の腫瘍の大きさは, imperative 群は0.9~7.0cm, 平均3.5cmであり, elective 群は0.8~3.0cm, 平均2.3cmと全例3.0cm以下であった. 組織学的異型度は grade 1が12例, grade 2が14例で, grade 3の症例はなく, 腫瘍の進展度は, 非同時性両側腎細胞癌2例は手術時に遠隔転移があり, pT1N0M1およびpT3aN0M1であったが, のこりの23例24腎はすべてpT1-2N0M0であった. Imperative 群8例中1例は術後11月で癌死したが, のこりの7例は再発無く生存しており, 3年生存率は87%であった. Elective 群17例の3年生存率は腫瘍死でみると100%であった. 腎保存手術は単腎や両腎細胞癌に対しては選ばれる治療法である. さらに対側腎が正常であっても, 症例を選んで施行してよいと考えられた.
  • 小松 秀樹, 田邊 信明, 多胡 紀一郎, 上野 精
    1994 年 85 巻 3 号 p. 452-459
    発行日: 1994/03/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1983年10月から1990年12月までの7年3ヵ月間に, 山梨医科大学において68例の原発性膀胱癌に対し, 根治的膀胱全摘術を施行した. 16例は表在癌で, あとの52例は浸潤癌であった. 浸潤癌52例中, 18例に補助療法が加えられた. 補助療法としては methotrexate, cisplatin 併用化学療法, 放射線療法, あるいはこの両者が用いられた. 2例で術前化学療法が施行された以外, 他のすべての補助療法は術後に施行された. 23例に再発を認め, 25例が死亡した. 20例は膀胱癌死であり, 5例は他因死であった. 膀胱癌死の20例中17例 (85%) は術後2年以内に死亡した. 5年生存率はpTa-pT1 92%, pT2 83%, pT3a 80%, pT3b 24%, pT4-T4 43%であった. pT3aとpT3bの生存曲線間に有意差 (p<0.05) を認めた. pT2-pT3aかつpN0の場合, 19例中18例で補助療法が施行されなかったにもかかわらず, 5年生存率は89% (95%信頼限界75~100%) と良好であった. 一方, pT3b-pT4かつpN0の5年生存率は低く (25%), 深達度にかかわらずリンパ節転移を有した症例の5年生存率 (35%) と同程度であった. 腫瘍が膀胱筋層内に限局している症例の多くは, 手術のみでほぼ根治でるように思われた. したがって, 重篤な副作用を有する補助化学療法は, こうした患者に対しては, 正当化できないように思われた. しかしながら, 腫瘍が膀胱壁を貫いたり, リンパ節転移を有する症例では, 有効な補助療法が必要であると考えられた.
  • 今井 強一, 小倉 治之, 一ノ瀬 義雄, 鈴木 孝憲, 山中 英寿, 登丸 行雄, 北浦 宏一, 高橋 修, 矢島 久徳
    1994 年 85 巻 3 号 p. 460-465
    発行日: 1994/03/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    超音波ガイド (TRUS) 下による6分割法による前立腺生検 (Six sextant biopsy, SS-biopsy) を114症例に行った. 直腸診あるいはTRUSで癌が疑われた症例で, SS-biopsyで不十分と判断された症例に対しては更に追加生検 (oriented biopsy, O-biopsy) を施行した. 前立腺集団検診 (集検) にて前立腺癌 (Pca) を疑った59例よりは12例, 外来でPcaを疑った47例からは17例, 再燃癌3症例からは全例に癌が発見された. 肥大症で偶発癌を否定するために行った5例からはPcaは発見されなかった. 追加生検でPcaが証明された9例は SS-biopsy にても癌が採取されており, 今回の症例において追加生検は癌発見率には貢献しなかった. SS-biopsy にて採取された癌組織数は病期 (T category) と相関性があった. 集検症例の癌組織数は外来症例に比べて少なく, 集検が前立腺局所においても早期癌を多く含んでいるものと思われた. 合併症は発熱と尿道出血の2例であったが, 後者は尿道近傍への追加生検によって生じた合併症と考えている.
  • 血清及び尿中のTNF-α, IL-2の変動について
    斎藤 文匡, 高島 徹, 呉 聖哲, 福士 実, 鈴木 唯司
    1994 年 85 巻 3 号 p. 466-472
    発行日: 1994/03/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    Bacillus Calmette-Gurein の膀胱移行上皮癌に対する作用機序を免疫学的な面より検討する目的でBCG膀胱内注入を施行した尿路移行上皮癌患者16名において, BCG膀胱内注入前後での血清および尿中の Tumor necrosis factor-α(TNF-α) 及び Interleukin-2 (IL2) の経時的変動を観察した. 血清TNF-α濃度は膀注前及び対照群と比較して多少の変動を認められるものの全体として正常以下で変動なく経過した. これに対し尿中TNF-α排泄量は対照群と比較して各時期とも高値を示したが, 膀注前後で変動は認めず, 膀注前より高値を示す例も多く膀胱内の炎症との係わりが示唆された. 血清及び尿中IL-2排泄量はBCG膀注前及び対照群との比較で有意の変動を認めなかった. BCG膀注の抗腫瘍効果にTNF-αの直接作用やIL-2による免疫細胞の活性化や直接作用の関与は証明しえなかった.
  • 九嶋 麻優美, 小西 平, 岡田 裕作, 友吉 唯夫, 九嶋 亮治, 服部 隆則
    1994 年 85 巻 3 号 p. 473-480
    発行日: 1994/03/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    腎細胞癌46症例49腫瘍のパラフィン包埋ブロック (平均2.4個) を組織学的所見により細分したものを検体とした. 顕微蛍光測光法と flow cytometry (FCM) にて核DNA量を測定し, 測定方法による違い, 核DNA量と組織学的所見, および核DNA量の腫瘍内 heterogeneity について検討した. 顕微蛍光測光法ではFCMと比べ多くの検体の核DNA量が測定できた. またFCMで認識困難な polyploid cell の有無や, diploid cell line が腫瘍細胞であるか否かの判定ができ, より正確にDNA量の腫瘍内 heterogeneity を認識できた. その結果, aneuploid 腫瘍は59%であり, grade 1では有意に少なかった. Diploid 腫瘍における polyploid cell の出現は, 組織学的異型度が高くなるほど多く認める傾向にあった. 核DNA量の腫瘍内 heterogeneity は55%の腫瘍で認められ, 組織学的異型度の上昇とともに増加した. また diploid cell line を94%の腫瘍がもっていた. 以上より Diploid 腫瘍の中でも polyploid cell を伴うものは, 分けて考えるべきと思われた. また diploidy の中での polyploid cell の出現は diploidy と aneuploidy の中間的存在と考えられた.
  • 吉田 雅彦, 平沢 潔, 粕谷 豊, 田中 良典, 本間 之夫, 東原 英二, 河邉 香月, 阿曽 佳郎
    1994 年 85 巻 3 号 p. 481-488
    発行日: 1994/03/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1981年より90年までの10年間に, 東京大学医学部泌尿器科で初回治療として内分泌療法が施行された stage D2前立腺癌48例について, 除痛効果を中心にその治療成績を検討した. 自覚的効果は pain score, narcotic score, performance status の3つの項目を検討した. 癌性疼痛を認めた21例 (43.8%) では認めないものに比較して, 有意に (p<0.01), 広汎な骨転移と不良なPSを有し, 非進行生存率が低かった. 初回内分泌療法の他覚的および自覚的奏効率 (PR以上) は75%および86%で, 1.25ないし54ヵ月 (中央値19ヵ月) に及ぶ除痛効果が得られ, 内分泌療法は癌性疼痛除去の観点からも高い有用性が認められた.
    初回内分泌療法に無効または再燃例に対する化学療法の他覚的および自覚的奏効率は共に25% (8例), 内分泌追加療法 (去勢術またはLH-RH agonist 既投与例に flutamide または diethylstilbestrol の追加投与) ではそれぞれ33%と100%であった (6例), 内分泌追加療法では, 効果持続期間は短いが全例に除痛効果を得られ, その観点から有用な治療法であると考えられた.
    癌性疼痛を有する stage D2前立腺癌では, 重篤な副作用がない LH-RH agonist や非ステロイド性抗アンドロゲン剤の開発により, 内分泌療法もしくはその追加療法が今後ますます主流になると考えられるが, これらの治療法がQOL向上の観点からも有用であることが示された. また, 癌性疼痛に対する全般的な取組みが必要であると考えられた.
  • 冨岡 進, 井坂 茂夫, 岡野 達弥, 島崎 淳, 松嵜 理
    1994 年 85 巻 3 号 p. 489-494
    発行日: 1994/03/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1975年4月より1991年3月までの16年間に千葉大学泌尿器科に於て治療を行った439例の膀胱移行上皮癌のうちリンパ節転移陽性の40例について臨床的検討を加えた. 40例のリンパ節転移の診断は膀胱全摘除術リンパ節郭清によるもの16例, リンパ節試験切除によるもの19例 (そのうち膀胱全摘術を施行したものは10例), CTによるもの5例であった. 一方同期間内のリンパ節転移陰性の399例 (内訳は膀胱全摘除術リンパ節郭清施行例95例, 臨床的にリンパ節転移陰性と診断したTURによる治療例304例) を比較対照とした.
    全膀胱移行上皮癌に占めるリンパ節転移陽性例の割合は9.1%であった. 異型度別の転移陽性率はG1 0%, G2 1.7%, G3 18.6%であった. T分類での転移陽性率は Tis Ta 0%, T1 4.0%, T2 3.4%, T3a 35.7%, T3b 32.1%, T4 46.2%であり, pT別では pTis, pTa, 0%, pT1 1.9%, pT2 4.5%, pT3a 11.0%, pT3b 31.8%, pT4 37.5%であった. なおpT1のリンパ節転移陽性例2例のうち, 1例は所属外リン節転移例であった. 膀胱全摘除術リンパ節郭清を施行しリンパ節転移陽性であった16例の転移リンパ節は, 所属リンパ節にとどまるもの8例 (50%), 所属リンパ節は陰性で所属外リンパ節へのいわゆるスキップ型転移を示したもの3例 (19%), 所属外リンパ節まで進展したもの5例 (31%) であった. 個別のリンパ節では閉鎖, 外, 内腸骨, 正中仙骨, 総腸骨とも30%前後の転移陽性率であった.
  • それらの分布と悪性度および予後との関連性について
    井上 啓史, 山下 朱生, 山下 元幸, 森岡 政明, 藤田 幸利, 寺尾 尚民
    1994 年 85 巻 3 号 p. 495-503
    発行日: 1994/03/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    膀胱移行上皮癌 (TCC) 90症例を対象とし, S-100蛋白陽性樹状細胞 (S100-DC) の腫瘍内浸潤, HLA-DRα陽性癌細胞 (DR-CC) および血液型抗原陽性癌細胞 (BGA-CC) の分布状況を免疫組織化学的に検討し, 悪性度や予後との関連性につき統計学的に解析した. S100-DCの分布は90例中47例 (52%) が高密度で, DR-CCは24例 (26%) に認め, 特に内16例は高密度であった. BGAなCCは49例 (54%) で認めた. 性別, 年齢および病理学的因子別にS100-DC数, DR-CC数, BGA-CC数を比較したところ, S100-DC数では, G, pT, ly, vで, BGA-CC数では, G, pT, INFで有意な差を認めたが, DR-CC数では, いずれも有意差を認めなかった. 全症例の10年生存率は, 60.4%であり, S100-DC, DR-CCおよびBGAなCCの出現数別での10年生存率は, S100-DCでは, 高密度群が77.7%, 低密度群が39.0%で有意差を認め, DR-CCは, 高密度群が85.7%, 低密度群が43.8%, 陰性群が56.9%で, 高密度群と陰性群, 高密度群と低密度群間で有意差を認め, BGA-CCは, 高密度群が74.3%, 低密度群が46.5%で有意差を認めた. 各因子別にCox比例ハザードモデルを用いて多変量解析を行ったところ, 予後への影響度の高い順に, m+n, S100-DC, BGA-CC, DR-CCが有意であった. 以上より, TCCにおけるS100-DC, DR-CCおよびBGA-CCは各々独立して予後に有意に良好な影響を与え, 特にS100-DC, BGA-CCは悪性度をも反映し, 新しい予後因子として重要であると考えられた.
  • 伊藤 哲二, 宮尾 洋志, 西島 高明, 鶴崎 清之, 坂本 亘, 岸本 武利
    1994 年 85 巻 3 号 p. 504-507
    発行日: 1994/03/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    精巣腫瘍の初発症状は, 大多数が精巣の無痛性腫大だが, 精巣は微小な病変のみで, 転移巣の症状を初発症状とする症例も認める. 一方精腺外胚細胞腫は稀な疾患だが, その中には精巣に微小な病変を伴う潜在性精巣腫瘍も含まれる.
    我々は41歳, 男子で主訴は頸部リンパ節の腫大だが, 正常大の精巣に腫瘍を認めた症例を経験した. CT上後腹膜に腫瘍を認め, HCG, AFPが異常高値であり頸部リンパ節生検で embryonal cell carcinoma と診断された. 左精巣は, 腫瘤を触知しなかったが圧痛あり摘出した. 精巣上体直下に約7mmの精細胞腫を認めた. 精巣腫瘍, Stage IIIa と診断し, VAB63クール施行し, PRを得た.
    精腺外胚細胞腫と考えられる症例においても, 精巣に微小な病変を伴う症例もあり, 精巣に対してエコーなどの診断法を用いて慎重な検索が必要と考えられた.
  • 友部 光朗, 今田 世紀, 宮永 直人, 内田 克紀, 赤座 英之, 小磯 謙吉, 矢沢 卓也, 小形 岳三郎
    1994 年 85 巻 3 号 p. 508-511
    発行日: 1994/03/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    41歳, 男性. 近医で肝障害の精査中に右腎腫瘍および左肺腫瘍を発見され, 1991年1月当料を受診した. 腎および肺生検の結果, それぞれ右腎細胞癌の疑い, 肺芽細胞腫の疑いと診断された. 患者は腎腫瘍の急速な増大を呈し, DICを併発して死亡した. 剖検にて, 成人型 Wilms 腫瘍およびその肺転移と診断されたが, 腎腫瘍は腎芽型大巣亜型, 肺腫瘍は上皮型とそれぞれ異なる組織像を呈していた. これは腎腫瘍が肺に転移した後に分化したものと考えられ, このような報告は検索し得た限りでは本症例が初めてと思われた.
  • 林 真二, 安本 亮二, 岩井 謙仁, 辻野 孝, 岸本 武利
    1994 年 85 巻 3 号 p. 512-516
    発行日: 1994/03/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    尿道注入用陰茎把持器を使用して患者自身が造影剤の注入を行い, 医師は隣室で造影状態を透視下て観察し撮影する逆行性尿道造影法 (以下, A-UGと略す) と, 医師が造影剤の注入を行う従来の逆行性尿道造影法 (以下, C-UGと略す) とを造影成功率, 疼痛, 尿道出血および extravasation に関して比較検討した. A-UGは年齢49歳から85歳 (平均年齢68.8歳) の前立腺肥大症の患者20例 (そのうち脳血管障害後遺症3例), C-UGは年齢61歳から86歳 (平均年齢69.4歳) の前立腺肥大症の患者20例 (そのうち脳血管障害後遺症2例) を対象とした. A-UGにおいては, 脳血管障害後遺症による功緻性低下のため技術的に困難であった1例を除き19例 (95.0%) で造影剤の注入に成功し, 正面および左前斜位38画像中37画像 (97.4%) が鮮明で解読可能であった. Extravasation は1例 (5.6%), 尿道出血は1例 (5.6%) で認めたが, 疼痛は全例で認めなかった. C-UGにおいては全例で造影剤の注入に成功し鮮明な画像を得たが, extravasation は3例 (15.0%), 尿道出血は18例 (90.0%), 疼痛は全例に認めた. 以上より, A-UGは, 技術的に容易, 安全, 簡便で, 疼痛や尿道出血および extravasation が少なく, 術者の被曝を防ぐなどの点で有用な検査法と考えられた.
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