1988年4月から1992年10月までに市立札幌病院泌尿器科または北海道大学医学部附属病院泌尿器科において生検またはTUR-Pにより病理組織学的診断を行った221例 (no cancer (NC) 130例, 前立腺癌 (CaP) 91例) に対し, 術前に血清PSA値とγ-Sm値を測定し, その比率 (P/S Ratio) を求める事により前立腺癌の診断が可能かどうかを検討し, 以下の結論を得た.
1) 130例のNC群のP/S Ratio は0.919±0.563 (mean±SD) であり, 一方, 91例のCaP群のP/S Ratio は12.447±44.353, PSA≦10.0ng/mlのCaP群39例のP/S Ratio は2.052±0.751であり, いずれもNC群より有意に高かった (Wilcoxon; p<0.0001).
2) P/S Ratio の cutoff 値を検討したところ, cutoff 値1.45のときに最も高い efficiency 83.4を示し, そのとき sensitivity は91.2%, specificity は91.5%であった.
3) P/S Ratio≧1.45であったのは臨床病期A1では6例中3例, A2では6例全例, B1では19例中17例, B2では11例中10例, Cでは13例中12例, D1では3例全例, D2では33例中32例であった.
4) P/S Ratio が1.2未満の症例は111例中5例 (4.5%) のみがCaPであった. P/S Ratio が上昇するに従ってCaPの割合は増加し, 2.0以上の症例は71例中67例 (94.4%) がCaPであった.
5) PSAが10.1ng/ml以上のCaP群ではP/S Ratio はPSA値の上昇と共に増加し, 両者はよく相関した (相関係数0.7585) が, PSA値が10ng/ml以下のCaP群およびNC群では両者は相関しなかった (相関係数; CaP群: 0.1305, NC群: 0.1502).
抄録全体を表示