日本泌尿器科学会雑誌
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86 巻, 6 号
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  • 執印 太郎, 矢尾 正祐
    1995 年 86 巻 6 号 p. 1073-1087
    発行日: 1995/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
  • 質問紙法による性機能調査
    鈴木 伸和, 熊本 悦明
    1995 年 86 巻 6 号 p. 1088-1097
    発行日: 1995/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    男性透析患者に性機能障害が起こることはよく知られている. 透析患者の性機能障害を詳細に検討するため, われわれは札幌医大式性機能質問紙を用いて性機能調査を行った. 対象は外来透析をうけている男性205例であり, 糖尿病症例および重度貧血症例 (ヘモグロビン濃度8g/dl未満の症例) は今回の検討から除外した. 質問紙の性機能評価にあたって, 当教室ですでに同質問紙を施行していた, 3462例の健康男性のデータをコントロール群として比較検討した. 男性透析症例のうち, 性欲は33.7%が健康男性の下方10%領域に, 勃起能は44.4%が健康男性の下方10%領域に含まれており, いずれも加齢とともに著しい低下を認めた. 射精能は自覚的勃起機能と連動した動きをみせており, 加齢とともに低下する傾向を認めた. 性交頻度を透析症例と健康男性とで比較したが, 性交渉を有していないものが, 30歳代では透析症例12.9%に対して健康男性3.5%, 同様に40歳代では22.4%に対して3.0%, 50歳代では52.2%に対して7.5%, 60歳代では89.3%に対して18.0%と, 透析症例では, 各年代とも健康男性に比べて性交頻度が低下しており, しかも加齢に伴う低下が著しかった.
  • 勃起障害の原因分析
    鈴木 伸和, 熊本 悦明
    1995 年 86 巻 6 号 p. 1098-1107
    発行日: 1995/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    透析症例の勃起障害の原因として, 神経系, 血管系, 内分泌系など様々な要因が挙げられている. 今回, 透析患者の勃起障害に最も寄与する因子を同定すべく検討を行った. 調査対象は糖尿病, 高度貧血 (ヘモグロビン濃度8g/dl未満) を有さない透析症例であり, これらの症例に対して, NPT値の測定および陰茎神経系の検討 (陰茎背神経伝導速度と球海綿体反射潜時の測定), 陰茎血管系の検討 (PBPIの測定), 内分泌学的検討 (透析前の血中遊離テストステロンと血中プロラクチンの測定) を行った. NPT値については, 50歳代, 60歳代で透析症例のNPT値が健康男性に比べ, 有意に低下しており, 透析症例の勃起障害は器質的なものであると考えられた. 陰茎神経系, 陰茎血管系, 内分泌学的検討では, プロラクチンを除いてすべて勃起障害への関与が示唆された. そこで, 透析患者の勃起障害に何が最も関与しているかを検討するため, 上述の因子に年齢, 透析期間, 貧血を加えて多変量解析を行った. その結果, 神経障害が最も寄与率が高く, 30.7%であった. 次が, 内分泌異常 (遊離 testosterone 値の低下) で11.6%, 続いて血管障害 (PBPIの低下) 4.2%であり, 陰茎神経系の障害が透析患者の勃起障害に最も関与していると考えられた.
  • 頴川 晋, 桑尾 定仁, 宋 成浩, 大堀 理, 川上 達央, 内田 豊昭, 横山 英二, 小柴 健
    1995 年 86 巻 6 号 p. 1108-1116
    発行日: 1995/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    直腸診や画像診断では癌巣を同定できない前立腺癌 (T1c癌) の特徴と意義を明らかにする目的で, 根治的前立腺摘除術標本を基に臨床的, 病理学的検討を行った. 16例のT1c癌と, T2b癌11例を比較してみると, 年齢, 術前の血清前立腺酸性フォスファターゼ値, 前立腺重量, 前立腺内の個別の腫瘍の数, 総腫瘍体積, index cancer の体積, 悪性度には有意差を認めなかった (p>0.05). 術前の血清前立腺特異抗原 (PSA) の値はT1c例で有意に低かった (p<0.05). 組織学的に腫瘍が腺内限局性であったものはT1c癌では86.7%を占め, T2b癌での45.5%よりも有意に多かった (p<0.05). また, 臨床上重要であると考えられるものは, T1c癌では75.0% (12/16), T2b癌では90.9% (10/11) であった.
    T1c癌の多くは腺内限局性かつ臨床上重要であり, その臨床病理学的特徴はT2b癌に近いものと思われた. しかし, T1c癌の25%は微小腫瘍であり overtreatment されてしまう可能性がある. 現状では, 前立腺癌の検出率を高めようとすればする程, 臨床的に重要でない癌まで検出し治療してしまうという二律背反は避けられない. 今後はこのジレンマが克服できるような, 腫瘍の生物学的活性を区別しうる術前診断法の確立が望まれる.
  • 西山 勉, 照沼 正博
    1995 年 86 巻 6 号 p. 1117-1122
    発行日: 1995/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    前立腺癌患者42例に対してQOL調査を実施した. 対象者に高齢者が多く, 身体的快適度の低下などは前立腺癌以外の要因によるものが多いように思われた. 増悪例で頻尿, 排尿困難, 血尿, 下肢のむくみがあると答えた症例が多く, 病状との関連を示唆させた. 特に疼痛に関しては, まだ我々の疼痛処置が不十分で, 今後疼痛からの解放を積極的に行わなければならない. 女性ホルモン投与症例で乳首の違和感を訴える症例が多かった. 病気になった事により性に対する興味を失ったと答えるものが多く, また性生活が可能であるものは3例しかなく, 性生活面での障害が著明であった. 前立腺全摘除術を受けた患者で身体機能が良好であると答えているわりには社会生活での障害が大きく現れていた. これには術後の尿失禁が大きく影響していると思われた. 高齢者だけで生活している家庭も多く, この点も考慮した患者管理が重要であると思われた.
  • 南部 明民, 熊本 悦明, 新田 俊一, 赤樫 圭吾, 伊藤 直樹, 塚本 泰司
    1995 年 86 巻 6 号 p. 1123-1131
    発行日: 1995/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    精巣腫瘍症例51例に対し, 治療前および抗癌剤を中心とした化学療法前後での精巣機能, 特に精子形成能について検討した.
    精巣腫瘍症例では治療開始以前に, 49例中22例 (44.8%) の症例で, 精子濃度が20×106/ml未満に低下していた. そのうち8例 (16.3%) は無精子症であった.
    化学療法前での精子濃度は29.0±29.1×106/mlであったが, 化学療法直後では3.86±10.6×106/mlと有意な (p<0.05) 低下を認めた. 19例中15例 (73.3%) は無精子症であった.
    精子濃度の低下は化学療法の回数が多い症例ほど強く, また回復までの期間も長い傾向を示した. 3コース以上の化学療法を施行した症例では, 化学療法直後ではいずれの症例も無精子症であった.
    2年以上の長期観察を行なった結果, 3コース以上の化学療法剤が投与された症例でも無精子の状態から精子数の回復を認めた症例が存在した.
    血清のFSH値は, 化学療法前値は5.62±3.43mIU/mlであったが, 化学療法直後には19.70±17.06mIU/mlと有意 (p<0.05) に増加しており, 精子形成能障害を反映していた. 精子数の回復がみられない症例では血清のFSH値は高い傾向にあった.
  • 南部 明民, 熊本 悦明, 三熊 直人
    1995 年 86 巻 6 号 p. 1132-1136
    発行日: 1995/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    Sertoli 細胞機能に対する抗癌剤の直接的な影響を検討する目的で, 培養 Sertoli 細胞を用い, 実験を行った.
    18日齢のラットから得られた精巣より, Sertoli 細胞を分離して, 5日間の短期細胞培養を行った. この培養細胞に対して, 抗癌剤を添加した. 抗癌剤としては cis-diamminedichloroplatinum (CDDP), adriamycin, vinblastin を用いた. Sertoli 細胞機能の指標として培養液中の transferrin 濃度を測定した. CDDP 0.5μg/ml添加により Sertoli 細胞培養液中 transferrin 濃度は抗癌剤無添加群 (対照群) の54.9%に低下した (p<0.05). さらに1.0μg/ml添加群では57.5%, 2.0μg/ml添加群では46.2%と有意な低下を認めた (p<0.05). Adriamycin 0.4μg/ml添加では35.2%, vinblastin 0.5μg/ml添加では31.3%と同様に, 培養液中の transferrin 濃度は有意な低下を示した (p<0.05).
    今回の結果から, 抗癌剤は Sertoli 細胞機能への直接的な障害作用を有することが示された.
  • “through and through drainage”の有用性
    渡邊 紳一郎, 木村 文宏, 喜屋武 淳, 鈴木 智史, 中島 史雄, 早川 正道, 中村 宏
    1995 年 86 巻 6 号 p. 1137-1141
    発行日: 1995/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1991年から1994年の間に経験した Fournier's gangrene 患者5名について, 年齢, 基礎疾患, 誘因, 病変の範囲, 検出された細菌, 治療法及び予後について検討した.
    患者の平均年齢は47歳で, 基礎疾患として糖尿病2名, 全身性エリテマトーデス1名, 慢性アルコール中毒1名, 末期の多発性骨髄腫1名であった. 発症の誘因は創感染が2名, 尿道留置カテーテルが2名であり, 1名では明らかなものはなかった.
    外科的処置として, 2名に広範囲のデブリードマンを施行し, 後に分創植皮術を要した. 3名では, 最小限の壊死組織除去後に罹患部皮下に多数のペンローズ・ドレーンを留置し, 消毒液で洗浄した. このうち2名は病変の発赤, 腫脹が急速に軽減し, 皮膚欠損を残さずに治癒した. 1名は末期の多発性骨髄腫患者で全身状態は極めて不良であり, ドレーン留置後, 炎症所見は軽減傾向にあったが, 敗血症, DICを併発して死亡した.
    外科的処置として広範囲のデブリードマンが一般的に施行されているが, 皮膚欠損を生じることが多く, 皮膚移植の必要性や二次的創感染等の欠点を有する. 壊死組織の限局的な除去と皮下への多数のドレーンの留置の組み合わせは, 皮膚欠損も最小限で済み, 治療効果も広範囲のデブリードマンと比べて遜色がなかった. 本法は, 広範囲デブリードマンに変えて選択しうる有効な治療法であると思われた.
  • 超音波入射角度の重要性について
    川西 泰夫, 木村 和哲, 奈路田 拓史, 山中 正人, 松下 和弘, 沼田 明, 湯浅 誠, 田村 雅人, 香川 征
    1995 年 86 巻 6 号 p. 1142-1149
    発行日: 1995/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    カラードプラ超音波装置を用いた海綿体動脈の血流測定における超音波入射角度と測定値の関係を検討し, 誤差の発生を小さくするための測定条件について検討した.
    方法: プロスタグランディンE120μgの海綿体投与で10分以内に完全勃起を示す症例63例を対象とした. 126本の海綿体動脈の超音波入射角度と peak systolic velocity (PSV), end diastolic velocity (EDV), resistance index (RI) の関係を検討した. 装置は日立製EUB515, プローブは7.5MHzでビーム幅は約1mm, サンプル幅は1mmで施行した.
    結果: PSV値は超音波入射角度の異なる各群でも有意な差はなかったが, 超音波入射角度が55度以上になると測定値のばらつきが大きくなった. EDVの平均値は超音波入射角度が大きい測定条件でも類似した結果であったが, 超音波入射角度が50度以上になると測定値のばらつきは大きくなった. RI値は超音波入射角度の変化により差が見られなかったが, 超音波入射角度が50度より大きい場合, 測定値の分散は有意に大きくなった.
    結論: 陰茎海綿体動脈をカラードプラ超音波装置で評価する場合には超音波ビームの入射角度に留意する必要がある. PSVの測定に関してはそれが55度以上の超音波入射角度で得られた場合にのみ信頼できる. EDVとRI値に関しては超音波検査が50度以下の超音波入射角度で施行する必要性が示唆された.
  • 大道 雄一郎, 辻 明, 小田島 邦男, 中島 史雄, 早川 正道, 村井 勝, 中村 宏, 荒井 恒憲, 菊地 眞
    1995 年 86 巻 6 号 p. 1150-1155
    発行日: 1995/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    細径内視鏡の画像を明るく鮮明にする目的で, 新しいリアルタイム画像補正装置が開発された. この方法はファイバーの出射端で画素のコア中心部に集中した光を, その周囲の暗いクラッド部分にリアルタイムで補完する補正方法である. 我々はこの画像補正装置を併用した細径内視鏡を用いて, 静脈性尿路造影で水腎症を有する患者6名, 腎盂・腎杯に陰影欠損を有する患者2名の計8名に対して逆行性尿路造影施行時又は手術時に上部尿路の観察を行い, 8名中7名で目的とする部位を観察することができた. 補正装置により現画像では観察できない遠位まで明るく鮮明で色彩に富む画像が得られ, 尿路上皮の微細な変化を観察することができた.
  • 進行性腎細胞癌患者の quality of life の改善効果の検討
    渡辺 潤, 服部 智任, 佐藤 三洋, 秋元 成太
    1995 年 86 巻 6 号 p. 1156-1163
    発行日: 1995/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    interferon-α(IFN-α), recombinant interleukin-2 (rIL-2), lymphokine-activated killer (LAK) 細胞の3種類の biological response modifier (BRM) を併用した免疫療法による, 進行腎癌患者10例の quality of life (QOL) の改善効果を検討した. 患者は平均60.2歳, 平均 performance status (PS) 77%, 代表的な転移臓器は肺8例, 骨3例であり, 10例中8例が評価可能であった. 3種類のBRM併用免疫療法は第1-7日, 15-21日の1×106IU/body のrIL-2静脈内投与および6×106IU/body のIFN-α筋肉注射, 第15, 21, 29, 35日にLAK細胞静脈内投与から構成される治療スケジュールで平均4.13サイクル施行した. 安全性が確認された4例に, 第1, 8, 15, 22, 29日に前述の投与法でIFN-α, rIL-2を, 第15, 29日にLAK細胞を投与するスケジュールで外来維持療法を平均4.25サイクル追加した. 従属標本に対するt検定による解析の結果, PSは導入時78.8±8.95 (平均値±標準誤差)%, 1ヵ月後92.5±4.12% (p=0.054), 3ヵ月後90.0±4.23% (p=0.122) と軽度改善を認め, 1例で治験導入時30%から3ヵ月後80%までの著明な改善を示し, 外来維持療法でも4例中3例でPSは維持された. 副作用は全てWHO分類グレード2以下, 外来維持療法ではWHO分類グレート1以下で, 奏効率は25% (PR2例, NC1例, PD5例) であった. 以上から, この併用療法は進行性腎癌患者のQOLの改善を期待しうる, 一つの有効な選択肢と考えられた.
  • 辻野 進, 大野 芳正, 山本 真也, 続 真弘, 三木 誠, 相澤 卓, 松本 哲夫, 山内 民男
    1995 年 86 巻 6 号 p. 1164-1171
    発行日: 1995/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    新しいレジメンであるIV-COMPA療法を, 尿路上皮癌24例に対し施行した. その治療成績, 副作用について検討し, 本法の臨床的有用性, 安全性を見極めることを目的とする.
    1989年10月より1993年10月にIV-COMPA療法を施行し, 1994年6月まで経過観察が可能であった尿路上皮癌24例 (男性20例, 女性4例) を対象とした. 年齢は29~73歳, 原発巣は腎盂尿管10例, 膀胱11例で, 両者の合併は3例であった. 薬剤は, CDDP 30mg/m2 (4, 5日目), VCR (Oncovin®) 0.6mg/m2 (1, 2日目), MTX 5mg/m2 (2, 3日目), PER 5mg/m2 (1, 2, 3日目), ADM20mg/m2 (4日目) を1コースとし, 3週毎に投与した.
    24例を術後再発予防投与群 (A群15例), 初発時有転移群 (B群6例), 術後再発群 (C群3例) に分けて検討した. A群では術後IV-COMPA療法を2~3コース施行し, 観察期間8~57ヵ月において14例が生存中であり, 1, 3年累積生存率は, 100, 90.9%であった. B, C群では, 3~7コース施行し, CR 1例, PR 5例, NC 1例, PD 2例で, 奏効率は66.7%であつた. 全身倦怠感・食欲不振 (100%), 悪心・嘔吐 (87.5%), 白血球減少 (83.3%), 脱毛 (79.%) などが高頻度にみられたがいずれも一過性であり, 1コースの薬剤投与量を減じた例はなかった.
    IV-COMPA療法は, 術後再発予防投与群の予後改善に寄与し, かつ評価可能病変のある症例に対する治療効果も高いことから臨床的に有用と考えられる. また副作用も少なく安全に施行できる1レジメンである.
  • 執行 雅紀, 高橋 敦, 小谷 典之, 塚本 泰司, 熊本 悦明
    1995 年 86 巻 6 号 p. 1172-1176
    発行日: 1995/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    術前M-VAC (methotrexate, vinblastine, doxorubicin and cisplatin) 療法を施行した浸潤性膀胱癌症例の, 原発巣への直接効果ならびに根治的手術施行後の臨床経過に関して検討した. 1986年1月より1992年12月までに札幌医科大学医学部泌尿器科において2コース以上のM-VAC療法を施行した後, 根治的膀胱摘除術を施行した浸潤性膀胱癌症例21例を対象とした. 臨床病期は全例T2以上であり, 明らかなリンパ節転移, 遠隔転移は認めなかった. 原発巣への直接効果はCR3例, PR12例であり, 奏効率は71.4%であった. 治療後2年非再発率は有効症例 (CRあるいはPR症例) で80.0%, 無効症例 (NCあるいはPD症例) では50.0%と有効症例に高い傾向が認められた. 治療後2年生存率 (disease specific survival) においても前者で87.5%, 後者では50.0%と有効症例に高い傾向が認められた. 特に, 根治的手術施行時の病理組織学的検索にて癌細胞の消失を認めた症例および粘膜下層のみに残存していた症例 (pT1b以下) では, 1例を除き5例において15~79ヵ月 (平均58.8ヵ月) の経過観察期間中, 再発を認めなかった. 術前M-VAC療法により浸潤癌を表在癌にまで限局できた症例では, その臨床経過が良好である可能性が示唆された.
  • 関戸 哲利, 樋之津 史郎, 河合 弘二, 赤座 英之, 小磯 謙吉
    1995 年 86 巻 6 号 p. 1177-1180
    発行日: 1995/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    患者は68歳女性で13年前に広汎子宮摘出術と放射線治療を施行された. 1992年と1993年に腹膜炎で入院し, 2回目の入院時の腹水の生化学所見が尿の組成に近かったため尿路系からの溢流を疑われ泌尿器科を受診した. IVP上, 上部尿路に異常はなく, 膀胱造影, 膀胱鏡上も明らかな膀胱破裂は認められなかったが, 尿流動態検査上, 多量の残尿と尿意の異常, 低コンプライアンスが認められた. これらの結果から, 広汎子宮摘出術による神経因性膀胱と放射線照射による膀胱障害を基盤とした自然膀胱破裂が腹膜炎の原因として強く疑われた.
  • 野口 良輔, 友部 光朗, 赤座 英之, 小磯 謙吉
    1995 年 86 巻 6 号 p. 1181-1184
    発行日: 1995/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    腎機能の低下した腎細胞癌症例に対して, 腎部分切除術を施行した後にα-インターフェロン療法を施行し, α-IFNの血中濃度や, 免疫学的パラメーターを測定した. 腎機能については腎部分切除術によりCCRが32.6から28.5ml/mに低下した. 初回投与におけるIFNの血中濃度は12時間後にピークが生じ, 24時間後も10.4IU/mlであり, わずかな蓄積傾向が認められた. 4週間連日投与では, 血中濃度は徐々に上昇したが, 投与量の加減は必要としなかった. NK活性やADCCは連日投与では返って, 活性がそれぞれ, 6, 28%に低下したが, 維持療法では26, 73%に上昇した.
  • 紺屋 英児, 原 靖, 池上 雅久, 西岡 伯, 秋山 隆弘, 栗田 孝, 郡 健二郎, 松浦 健
    1995 年 86 巻 6 号 p. 1185-1188
    発行日: 1995/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    近畿大学医学部泌尿器科学教室において, 1984年から1991年までの間に施行した腎移植105例のうち腎移植後6例の尿路結石症を経験し, その発生頻度は5.7%であった. これら6例のうち移植腎結石の1例に対してESWLを施行した. 症例は37歳女性, 死体腎移植後1年8ヵ月を経過し移植腎機能は安定していたが移植腎内に結石の発生を認めたためESWLを施行した. 砕石は良好で, 一旦完全排石となったものの退院後約1ヵ月目のIVPにて移植腎内に結石の再発を認めたため再度ESWLを施行した. また, 遷延する上皮小体機能亢進症に対して上皮小体全摘除術および前腕自家移植術を施行し, 良好な経過が得られた.
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