(背景と目的) 蓚酸の腎内分布を解析するため,
14C標識蓚酸を用いて正常ラットのマクロおよびミクロオートラジオグラムを作成した. 同時に, 過蓚酸尿症ラットにおいて同様のオートラジオグラムを作成し, 蓚酸カルシウム結晶が腎内のどの部位に最初に付着するのかを検討した.
(対象と方法) 正常ラットに
14C-標識蓚酸を体重1kgあたり37MBq静注し, 経時的に腎部のマクロおよびミクロオートラジオグラフィーを施行した. 過蓚酸尿症はビタミンB
6欠乏食投与により誘発し, 正常ラットと同様の方法にてマクロおよびミクロオートラジオグラフィーを施行した.
(結果) 正常ラットにおける静注後15分の腎マクロオートラジオグラムでは, 腎全体に
14C-標識蓚酸の放射活性が認められ, ミクロオートラジオグラムでは, この放射活性は主に尿細管腔周囲に認められた. 90分後のマクロおよびミクロオートラジオグラムでは
14C-標識蓚酸の放射活性は腎皮質および髄質にはほとんど認められなかったが, 乳頭部の間質にのみ残存していた. 過蓚酸尿症ラットの腎マクロオートラジオグラムでは腎髄質から乳頭部に
14C-標識蓚酸の斑状の集積が認められた. ミクロオートラジオグラムで詳細に観察すると, この
14C標識蓚酸の斑状の集積は主に管腔周囲に存在していた.
(結論) これらの結果より正常ラットに静注された
14C-標識蓚酸は腎乳頭部, 特に集合管周囲組織に長時間停滞することが示唆された. また, 過蓚酸尿症ラットにおいては, この部位に
14C-標識蓚酸が蓚酸カルシウム結晶あるいは微小結石として存在しているものと考えられた. 結論として蓚酸カルシウム結石形成の最初の部位は集合管管腔周囲組織ではないかと推測された.
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