日本泌尿器科学会雑誌
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87 巻, 6 号
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  • Image cytometry による精細胞PCNA発現に関する研究
    田中 宏和, 藤澤 正人, 岡田 弘, 荒川 創一, 守殿 貞夫
    1996 年 87 巻 6 号 p. 885-891
    発行日: 1996/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景と目的) 精索静脈瘤患者精巣における精細胞の動態を解析するために精巣組織を抗 proliferating cell nuclear antigen (PCNA) 抗体を用いて免疫組織化学的に染色し, 精細胞のPCNA陽性率を image cytometry にて測定, 精細胞のDNA合成を検討した.
    (対象と方法) 左精索静脈瘤患者28例および妊孕性の確認された正常男性5例を対象に, 精細胞のPCNA陽性率を image cytometry にて測定し, 精細胞のDNA合成を検討するとともに, HE染色にて組織学的検討を行なった.
    (結果) 左精索静脈瘤患者群の左右精巣別の精細胞PCNA陽性率は, 右11.3±4.1% (mean±S. D.), 左11.3±4.8%で, 正常精巣群の21.7%±3.1%に比べて, 両側とも有意に低く, かつ, 左右差を認めなかった. 精索静脈瘤の grade 別では grade IIIの患者の精細胞の両側PCNA陽性率は grade Iのものに比べてやや低い傾向を認めた. 精細胞の両側PCNA陽性率と術前の精液所見, 血中 hormone 値および術後精液所見の改善度との間には有意な相関は認めなかった. また, 精巣機能の評価法のひとつである Johnsen's mean score が高くても精細胞のPCNA陽性率は必ずしも高くなかった.
    (結論) 左精索静脈瘤患者では両側精巣における精細胞のDNA合成が低下し, これが造精機能障害の一因となっていることが示唆された.
  • 篠原 充, 井上 滋彦, 板倉 宏尚, 宗像 昭夫, 木下 健二
    1996 年 87 巻 6 号 p. 892-899
    発行日: 1996/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) G3表在性膀胱腫瘍の治療法を検討するために, 進行と予後因子に注目して臨床統計を行った.
    (対象と方法) 247例の表在性膀胱腫瘍が対象であった. pTaが196例, pT1が52例, G1が61例, G2が124例, G3が62例であった. 予後因子の重要度は多変量解析により, 各群の間の差は単変量解析にて検討した. 筋層浸潤あるいは遠隔転移を腫瘍の進行と判定した.
    (結果) G3群は他の2群と比較して予後不良で, かつ進行する例が多かった. 実測生存率に対しては年齢と異型度が重要な予後因子であった. 原因別生存率では異型度,次いで再発の有無と腫瘍の形態が関連する因子であった. 単変量解析では7項目中5項目でその他のG群との間に差を認めた. 再発率には差を認めなかった. G3の中で進行群と非進行群とで予後因子を比較すると, 逆に再発の有無にのみ有意差を認めた. 治療法を比較すると, G1・G2群は内視鏡で十分治療可能であった. 一方G3群では進行する例が多く, 全摘術を行った場合でも予後不良であった. さらにG3群は表在性であってもリンパ管浸襲が存在することがあり, この因子が予後不良と関係する可能性があった.
    (結論) 表在性膀胱腫瘍の予後因子として異型度が最も重要と考えられた. G3群は進行する頻度も高く再発や内視鏡治療で根治性が疑われる症例では, 早期に膀胱全摘術を考慮する必要があると考えられた.
  • 上川 禎則, 杉本 俊門, 金澤 利直, 石井 啓一, 米田 幸生, 飯盛 宏記, 山本 啓介, 岸本 武利, 船江 良彦
    1996 年 87 巻 6 号 p. 900-908
    発行日: 1996/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景と目的) 蓚酸の腎内分布を解析するため, 14C標識蓚酸を用いて正常ラットのマクロおよびミクロオートラジオグラムを作成した. 同時に, 過蓚酸尿症ラットにおいて同様のオートラジオグラムを作成し, 蓚酸カルシウム結晶が腎内のどの部位に最初に付着するのかを検討した.
    (対象と方法) 正常ラットに14C-標識蓚酸を体重1kgあたり37MBq静注し, 経時的に腎部のマクロおよびミクロオートラジオグラフィーを施行した. 過蓚酸尿症はビタミンB6欠乏食投与により誘発し, 正常ラットと同様の方法にてマクロおよびミクロオートラジオグラフィーを施行した.
    (結果) 正常ラットにおける静注後15分の腎マクロオートラジオグラムでは, 腎全体に14C-標識蓚酸の放射活性が認められ, ミクロオートラジオグラムでは, この放射活性は主に尿細管腔周囲に認められた. 90分後のマクロおよびミクロオートラジオグラムでは14C-標識蓚酸の放射活性は腎皮質および髄質にはほとんど認められなかったが, 乳頭部の間質にのみ残存していた. 過蓚酸尿症ラットの腎マクロオートラジオグラムでは腎髄質から乳頭部に14C-標識蓚酸の斑状の集積が認められた. ミクロオートラジオグラムで詳細に観察すると, この14C標識蓚酸の斑状の集積は主に管腔周囲に存在していた.
    (結論) これらの結果より正常ラットに静注された14C-標識蓚酸は腎乳頭部, 特に集合管周囲組織に長時間停滞することが示唆された. また, 過蓚酸尿症ラットにおいては, この部位に14C-標識蓚酸が蓚酸カルシウム結晶あるいは微小結石として存在しているものと考えられた. 結論として蓚酸カルシウム結石形成の最初の部位は集合管管腔周囲組織ではないかと推測された.
  • 島田 憲次, 細川 尚三, 松本 富美, 紺屋 英児, 松本 成史
    1996 年 87 巻 6 号 p. 909-914
    発行日: 1996/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景と目的) 膀胱尿管逆流 (VUR) に関する最近の話題の1つに, 疾患がこれまで以上に早期に発見されるようになったことが挙げられる. 私たちは新生児乳幼児に発見された高度の原発性VURに対し早期の逆流防止術を加えており, この年齢での手術治療の是非を検討した.
    (対象・方法) 私たちが取り扱った原発性VUR350例の内, 1歳未満の乳幼児期に逆流防止術を加えた51例86尿管の臨床事項と治療経過を検討した.
    (結果) 発見のきっかけはUTIが80%を占めており, その1/4は新生児期に初発していた. 出生前に水腎症が指摘されたのは7例, 新生児期のエコースクリーニングで発見されたのが2例あった. VUR-grade をみると, grade-IV~Vの高度逆流が79%を占めていた. 腎実質病変は手術時には既に74%の腎に認められ, とくに高度逆流では87%と高率であった. 逆流防止術は早い子供では生後1ヵ月から加えており, 平均すると5.6ヵ月であった. 患者の体重が最も軽かったのは2,500gであった. 術式は Cohen 方を多用しており, 75/86尿管 (87%) に施行した. その他, Hutch 憩室を合併した症例や逆流が軽い場合にはPL法や Glenn-Anderson 法を適宜応用している. 術後6ヵ月以上経過が追われている49例では逆流の再発は認められず, 軽い吻合部通過障害が1尿管に認められるのみであった. 術後に有熱性UTIを発症したのは2例であった.
    (結論) 小児泌尿器科医の熟練した技術と管理により, 新生児・乳児期に発見された高度VURに対しても安全かつ確実な逆流防止術が行い得ると考えられる.
  • 古賀 寛史, 内藤 誠二, 長谷川 周二, 玉田 耕治, 黒岩 顕太郎, 原 律子, 原野 正彦, 古川 学, 熊澤 淨一
    1996 年 87 巻 6 号 p. 915-922
    発行日: 1996/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1984年から1993年までに当施設で副腎腫瘍と診断された105例を診断過程にて symptomatic tumor 群 (74例, 平均年齢43.0歳), incidental tumor 群 (31例, 平均年齢53.2歳) に分け臨床的特徴を明らかにするために検討を行った. 年齢では incidental tumor 群は symptomatic tumor 群より有意に高齢であった (p=0.001). 診断法のうち超音波検査 (US) で発見された腫瘍は両群とも右側が多かった. また incidental tumor 群の腫瘍径は symptomatic tumor 群のそれに比べ有意に大きかった (p=0.0001). 臨床診断は symptomatic tumor 群では71例 (95.9%) が functioning tumor であり, 原発性アルドステロン症が44例 (62.0%) と最も多かった. incidental tumor 群では19例 (61.3%) は nonfunctioning tumor, 12例 (38.7%) は functioning tumor であり, pheochromocytoma が7例 (58.3%) と最も多かった. 治療は両群とも functioning tumor は摘出が第一選択であった. 一方 incidental tumor 群のうち nonfunctioning tumor では腫瘍径30mm以上を摘出対象とした. incidental tumor 群に対する内分泌学的検査の適応や nonfunctioning tumor と診断された場合の手術適応についてさらに検討の余地があると考えられた.
  • 水永 光博, 宮田 昌伸, 金子 茂男, 谷口 成実, 八竹 直, 千葉 薫, 小山内 裕昭, 藤沢 真
    1996 年 87 巻 6 号 p. 923-927
    発行日: 1996/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 頻尿改善剤の内服では効果が不十分な高齢者の切迫性尿失禁に対し, 小児例で有効であった塩酸オキシブチニン溶解液の膀胱内注入を行い, その臨床効果を検討した.
    (対象と方法) 対象は, 膀胱内圧測定上利尿筋の無抑制収縮を認める13名の高齢者 (平均年齢75歳) である. 注入前の膀胱内圧測定を行ったのち, 塩酸オキシブチニン5mgを含む10mlの溶解液を膀胱内に注入し, 1時間後に再度膀胱内圧測定を行った. 3名については1日2回の膀胱内注入を継続し, 長期成績を検討した.
    (結果) 塩酸オキシブチニン溶解液膀胱内注入1時間後の膀胱内圧測定所見では注入前と比べ, 改善以上を示したのは13例中2例 (15.4%) であり, 急性試験の効果は不十分であった. 同意が得られた4例に対し, 1日2回の塩酸オキシブチニン溶解液の膀胱内注入を継続した. この4例は急性試験では全例効果不十分であったが, 慢性試験では3例において尿失禁が消失し, 残尿量の軽度増加はみたものの自排尿も可能であった. 効果のみられた3例については, 1年以上塩酸オキシブチニンの膀注療法を継続中で, 尿失禁はほとんどなく, 副作用もみられていない.
    (結論) 本療法は, 自己導尿あるいは介助者による導尿が必要であるため, その適応が限られるが, 治療の一つの選択肢となりうることが示唆された.
  • リンパ球サブセットによる検討
    柳谷 仁志, 工藤 誠治, 高橋 伸也, 鈴木 唯司
    1996 年 87 巻 6 号 p. 928-936
    発行日: 1996/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景と目的) 腫瘍浸潤リンパ球 (TIL) と, 末梢血リンパ球 (PBL) の性状の違いおびよインターフェロンα, γ併用投与の及ぼす影響を明らかにすべく, 腫瘍局所と末梢血のリンパ球サブセットにっいて検討した.
    (対象と方法) インターフェロン治療を行った腎細胞癌13例と治療を行わなかった11例で, TILとPBLの性状を two color flowcytometry で検討した. インターフェロン投与群では, 根治的腎摘除術の1週間前からインターフェロンα300万単位筋注およびインターフェロンγ100万単位点滴静注を隔日で行った.
    (結果) 両群においてTIL, PBL, 共にCD3陽性細胞が約70%を占めたが, そのうちHLA-DR陽性細胞 (活性化T細胞) は, PBLに比べTILで有意に多くみられた. CD4陽性細胞は, PBLに比べTILで少なかったが, CD4+Leu8- (helper T細胞) はむしろTILで多かった. インターフェロン投与群のみで, PBLに比べTILでCD8陽性細胞, 特にCD8+CD11b- (cytotoxic T細胞) が多くみられ, また非投与群TILに比ベインターフェロン投与群TILでCD16陽性細胞 (NK細胞) が多くみられた.
    (結論) インターフェロンα, γ併用による抗腫瘍効果が, 腫瘍局所におけるNK細胞, cytotoxic T細胞に関連している可能性が示唆された.
  • 前立腺癌におけるDNA Heterogeneity の検討
    道永 成, 有吉 朝美, 金城 満, 鷺山 和幸
    1996 年 87 巻 6 号 p. 937-941
    発行日: 1996/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 前立腺癌におけるDNA ploidy pattern と病理組織学的所見・臨床病期およびDNA heterogeneity との関係について検討した.
    (方法) 前立腺癌42例に対して針生検を施行しフローサイトメトリーでDNA量解析を行った.
    (結果) 臨床病期は Stage B (B1が1例, B2が6例) が7例, Stage Cが14例, Stage Dが21例で, 病理組織学的には高分化腺癌が18例, 中分化腺癌が12例, 低分化腺癌が12例であった. DNA ploidy pattern では20例が diploid で, 22例が aneuploid であった. 42例中22例はDNA ploidy pattern に heterogeneity を認めず, 14例に1種類の aneuploid と diploid が混在した Type A heterogeneity を認め, 残り6例は異なるD. I. 値の aneuploid が複数混在した Type B heterogeneity を示していた. 分化度別には高分化腺癌の28%, 中分化腺癌の58%, 低分化腺癌の67%にDNA heterogeneity を認めた. また臨床病期別にはStage Bの14%, Stage Cの50%, Stage Dの57%にDNA heterogeneity に認めた.
    (結論) DNA heterogeneity を示す前立腺癌は, 分化度の低い癌と臨床病期が進行した例に多いと思われる.
  • 今田 世紀, 塚本 定, 服部 一紀, 宮永 直人, 内田 克紀, 赤座 英之, 倉本 憲明
    1996 年 87 巻 6 号 p. 942-945
    発行日: 1996/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    泌尿器癌の肺転移に対し集学的療法の一つとしてBAI療法を施行し, 良好な効果が得られた3例を経験したので報告する. 症例1: 52歳男性. 右腎腫瘍による右腎摘除術3ヵ月後に発生した多発性肺転移に対し, 全身化学療法施行するも効果なく呼吸不全を来した. 気管支鏡による切除やレーザー凝固施行するも効果は一時的であったため, BAI療法2回と放射線療法を併用した. その後, 呼吸症状の悪化は認めなかったが, 術後8ヵ月目に局所再発の進行のために死亡した. 症例2: 53歳男性. 右腎腫瘍および多発性肺転移の診断で右腎摘除術施行. 術後の全身化学療法で肺転移巣に対する効果が不十分であったためBAI療法に変更した. 2回目施行時からα-IFNを併用し術後3年で死亡したが, BAI療法後の2年間は単純X線で腫瘍は指摘されなかった. 症例3: 69歳男性. 左尿管腫瘍による左腎尿管全摘および膀胱部分切除術1年後に発生した多発性肺転移に対し, 全身化学療法3回施行するも効果に限界を認めた. BAI療法および放射線療法の併用に変更したところ, 腫瘍はさらに縮小しその後7ヵ月間最増殖を認めていない. 泌尿器癌の肺転移巣に対するBAI療法は手術適応のない症例のみならず, 全身療法が無効であった症例にも効果が期待できる治療法であると思われる.
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