日本泌尿器科学会雑誌
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87 巻, 8 号
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  • 鴨井 和実
    1996 年 87 巻 8 号 p. 1009-1017
    発行日: 1996/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景と目的) 3次元MR静脈造影法 (3D-MRV)によって診断された, 骨盤内静脈うっ滞症候群 (Intrapelvic venous congestion syndrome, IVCS) の診断における, 経直腸的超音波断層法と経会陰的カラードプラ法の有用性を検討した.
    (対象と方法) 臨床的に prostatodynia と診断された31例 (prostatodynia 群) と, 泌尿器科的に異常のない11例 (control 群) を対象とした. 3D-MRVによるIVCSの診断は, 前立腺被膜静脈の拡張・陰部静脈叢の拡張・膀胱後部静脈叢の拡張・内陰部静脈の途絶の有無によった. 経直腸的超音波断層法によって前立腺被膜外側のいわゆる“sonolucent zone”を観察し,その最大幅を計測した. 経会陰的カラードプラ法によって前立腺被膜静脈の血流信号を検出し, その sound spectrogram から最大血流速度の計測を行った.
    (結果) Prostatodynia 群では31例中27例 (87%) がIVCSと診断されたのに対し, control 群では11例中2例 (18%) のみがIVCSと診断された (p<0.0001). Sonolucent zone の最大幅は, 非IVCS症例の平均が2.4mmであったのに対し, IVCS症例の平均は4.4mmと有意に高値であった (p<0.0001). Valsalva 負荷時における逆行性静脈血流の最大血流速度は, 非IVCS症例の平均が7.1cm/sであったのに対し, IVCS症例の平均は14.4cm/sと有意に高値であった (p<0.05)
    (結論) 経直腸的超音波断層法と経会陰的カラードプラ法は, IVCSの簡便な screening 法として臨床的に有用であると考えられた.
  • 増井 則昭, 小林 聖二, 黒川 純, 青 輝昭
    1996 年 87 巻 8 号 p. 1018-1025
    発行日: 1996/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景と目的) エンドセリン (ET) は強力な血管収縮作用を有するペプチドで腎性高血圧や腎不全の進行に関与していることが報告されており, 血管内皮の病変, 虚血, 傷害などにより, 内皮細胞から分泌される. 我々はラット腎への体外衝撃波照射後のET-1の血中動態を測定し, 腎機能および血圧に対する影響を検討した.
    (対象と方法) 対象は雌 Wistar ラット (WKY) および高血圧自然発症ラット (SHR) で, 両腎に衝撃波を500発照射した. 血中ET-1濃度は sandwich enzyme immunoassay (EIA) 法により特異的に検出し, 照射前, 照射直後より30分毎に2時間, 12時間後, 24時間後の各時点で測定し, コントロール群と比較検討した. ラットの平均動脈圧 (MAP), 糸球体濾過量 (GFR) および腎血漿流量 (RPF) は照射後2時間まで同様に測定し, 抗ET-1抗体を投与した場合 WKYとSHRで検討した.
    (結果) 血中ET-1はWKYとSHRの両群で照射後に前値およびコントロール群と比較して有意に上昇した (p<0.05). SHRにおいて, GFRは照射後60分値での一過性の低下を認め, RPFの著しい低下と腎血管抵抗 (RVR) の上昇を30分値から120分値まで認めた. これらの変化は抗ET-1抗体を投与した場合に抑制され, GFRとRPFは逆に60分値から120分値で上昇した. WKYでは照射後に一過性のRPFの低下およびRVRの上昇を認め, これらも抗ET-1抗体を投与した場合に抑制された. MAPはSHRにおいて, 照射後30分値で軽度上昇したが, WKYでは変化を認めなかった.
    (結論) 以上の結果より, 衝撃波照射後にET-1濃度は上昇し, ラットの腎機能に影響を及ぼしていると考えられ, 特にSHRにおいてはET-1に対する感受性が高まっていると考えられた.
  • 山本 真也, 秋山 昭人, 伊藤 貴章, 三木 誠, 古里 征国, 藍沢 茂雄
    1996 年 87 巻 8 号 p. 1026-1031
    発行日: 1996/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 膀胱腫瘍の生物学的悪性度を知る目的で, イメージサイトメトリーにより癌細胞の核内DNA量を測定した.
    (対象と方法) 経尿道的膀胱腫瘍切除術 (TUR-Bt) を施行した移行上皮癌 (TCC) 37例, 39病巣を対象とした. それらについてイメージサイトメーターを使用し, 組織切片上で癌細胞の核内DNA量を測定し, ploidy pattern を決定した.
    (結果) 得られた Ploidy pattern を Diploid および Non-diploid pattern に大別して検討した結果, 39病巣中, Grade 1では50%, Grade 2では73%, Grade 3では100%と Grade が上がるにつれ, Nondiploid pattern の出現頻度が増加した. また, 内視鏡所見からみると乳頭状腫瘍の67%, 非乳頭状腫瘍の87.5%, 非隆起性腫瘍 (CIS) では100%が Non-diploid pattern を示した. 対象症例中, 再発の有無を検討したところ, Diploid pattern を示した Grade 1.7例中2例, Grade 2.4例中2例, また, Non-diploid pattern を示した Grade 1.4例中1例, Grade 2.10例中4例, Grade 3.6例中4例に再発を認めたが, どれも両群に有意差は認めなかった.
    (結論) 本測定法による癌細胞の核内DNA量の定量評価は, 膀胱腫瘍の生物学的悪性度の新たな評価法となる可能性が示された. TCCG1, 2において今回の検討では, ploidy pattern は明らかな予後因子となり得なかったが, 今後, 症例数を重ね検討する必要があると思われた.
  • 佐々木 隆聖
    1996 年 87 巻 8 号 p. 1032-1040
    発行日: 1996/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景と目的) 腎細胞癌における血管新生因子 vascular endothelial growth factor (VEGF), 血管内皮に存在する受容体 kinase domain receptor (KDR) の遺伝子発現と毛細血管密度の関連を検討した.
    (対象と方法) 腎細胞癌22例の摘出標本を対象として第VIII因子を用いた免疫組織染色を行い, 腫瘍組織内の毛細血管数を計測し, ノーザンブロット法を用いてVEGF遺伝子とKDR遺伝子の発現を検討した.
    (結果) 免疫組織染色を用いた腫瘍組織の毛細血管数は平均62.7 (13.7-133.1) コ/mm2であった. ノーザンブロット法でVEGF遺伝子の発現量を正常腎組織と腫瘍組織で比較すると, 22例中18例 (82.8%) で腫瘍部位に正常組織より過剰なVEGF遺伝子発現を認めた. このVEGFはRT-PCR法で可溶型VEGF蛋白に相当することが示された. VEGF遺伝子とKDR遺伝子の発現量を検討した結果, 両者には有意な相関を認めた (r=0.780, p=0.001). VEGF遺伝子の発現量と毛細血管密度にも有意な正の相関を認めた (r=0.636, p=0.001).
    (結論) 以上のことから腎細胞癌はVEGFを分泌し, そのVEGFは可溶型であることが示唆された.腎細胞癌では腫瘍の産生するVEGFとその受容体KDRが協調的に血管新生を促進していると考えられた.
  • 岡野 学, 川本 正吾, 根笹 信一, 玉木 正義, 江原 英俊, 山田 伸一郎, 出口 隆, 河田 幸道
    1996 年 87 巻 8 号 p. 1041-1047
    発行日: 1996/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景と目的) 腎細胞癌は一般に化学療法に充分な反応がみられないが, その原因としてP-glycoprotein (P-gp) の発現による多剤耐性が注目されている. 本検討で, われわれはP-gp耐性克服薬剤によるヒト腎細胞癌に対する制癌剤効果の増強を in vitro で検討した.
    (方法) P-gp高度発現ヒト腎細胞癌由来培養株ACHN/ADMおよび28例の腎細胞癌患者から手術的に摘出した臨床検体を対象として検討した. 制癌剤としては adriamycin (ADM) と vinblastin (VLB) を使用した. P-gp耐性克服薬剤としては verapamil (Ver) および cyclosporin A (CsA) を用いたが, それぞれの濃度はACHN/ADMの発育に影響を与えないVer2.5μg/ml, CsA0.5μg/mlとした. また, 制癌剤感受性試験はATP法にて行った.
    (結果) ACHN/ADM株に対してADMではVerおよびCsAによりそれぞれ1.5倍, 6倍の制癌効果増強を認めた. また, VLBにおいてもさそれぞれ7倍, 11倍と制癌効果の増強が同様にみられた. 臨床検体に対する制癌剤感受性試験ではP-gp耐性克服剤の併用の有無に関わらず制癌剤に接触後ATP法で50%以下の細胞活性を示した場合, その薬剤に対して感受性有りと判定した. Ver併用を検討した臨床検体14例に対して制癌剤は単独ではそれぞれADMで3例, VLBで1例の感受性しか示さなかったものの, Verを併用したところADMで6例, VLBで4例が感受性を示した. CsA併用を検討した他の臨床検体14例では制癌剤単独ではADMで3例感受性を示し, VLBでは感受性無しであったが, CsA併用でそれぞれ9例, 6例の感受性を示した.
    (結論) この検討により, 腎細胞癌においてはVerまたはCsAを併用することによりADMやVLBの制癌効果が増強すると考えられ, P-gpによる多剤耐性の腎細胞癌に対するこれらの臨床応用に期待が持たれた.
  • 宮武 竜一郎, 朴 英哲, 小池 浩之, 大西 則夫, 杉山 高秀, 栗田 孝, 江左 篤宣, 際本 宏
    1996 年 87 巻 8 号 p. 1048-1055
    発行日: 1996/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景と目的) 前立肥大症に対するα1遮断薬の効果をI-PSSおよび pressure-flow study を用いて詳細に検討した.
    (対象と方法) 未治療前立腺肥大症患者18人を対象に, α1遮断薬として塩酸タムスロシン0.2mg/日を4週間投与し, その前後でI-PSSを用いた自覚症状と pressure-flow study を含めた他覚所見の変化を観察した.
    (結果) I-PSSの合計スコアは投薬後, 有意に軽減したが, 最大尿流率・平均尿流率・残尿量には有意な改善はみられなかった. 一方, 排尿時の膀胱内圧は排尿開始時・最大尿流時・排尿終了時のいずれにおいても有意に減少した. 治療前後で排尿量・尿流率が変化しなかった代表的な1例について膀胱から排出されたエネルギーを公式W=∫(PQ)dtより求めたところ, 排尿筋の仕事, 膀胱の仕事 (排尿筋収縮と腹圧による仕事の合計) とも, 治療後著明に減少していた.
    (結論) 今回の結果から, α1遮断薬は尿流の改善がみられない症例においても, 排尿筋収縮や腹圧を含めたトータルな排尿エネルギーを減少させ, 結果的に排尿筋の過剰負担や症状の改善をもたらすと考えられた. また, 前立腺肥大症において pressure-flow study を含めた尿流動態検査を行うことは下部尿路閉塞の診断のみならず排尿筋の劣化や排尿筋の過剰負担を評価するうえで有意義であると考えられた.
  • 鈴木 規之, 森 偉久夫, 高尾 昌孝, 蓑輪 勝行, 山田 健人
    1996 年 87 巻 8 号 p. 1056-1059
    発行日: 1996/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    患者は64歳, 女性. 主訴は血尿. 1992年3月より両側萎縮腎による腎不全にて長期血液透析を受けていた. 1995年2月, 肉眼的血尿を認め受診した. 膀胱鏡検査にて右尿管口より膀胱内に突出する直径5mm程度の, 非乳頭状の腫瘍を認めた. 膿尿を認め, 尿培養の結果は大腸菌であった. 経尿道的に膀胱内に突出していた腫瘍を生検したところ悪性所見はなかったが, CT, 順行性腎孟造影で右尿管腫瘍を否定しきれず, 右腎尿管全摘兼膀胱部分切除術を行った. 尿管に隆起性で黄色色調の柔らかい腫瘤があり, 病理組織学的に Michaelis-Gutmann 小体を認め, 尿管 malacoplakia と診断した.
    尿管の malacoplakia は少なく, 調べ得た限りでは自験例は世界第21例目であった.
  • 仲田 浄治朗, 大石 幸彦, 小野寺 昭一, 五十嵐 宏, 西田 篤, 木下 知子, 望月 正武
    1996 年 87 巻 8 号 p. 1060-1063
    発行日: 1996/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    家族性の褐色細胞腫例で兄弟共に異所性に腫瘍がみられたのは稀であり報告する. 症例1.22歳, 男性. 発汗, 高血圧の精査で受診した. 家族歴は, 父に両側性褐色細胞腫の既往がある. 内分泌検査で血中ノルアドレナリンが高値であった. 腹部エコー, CT, MRIで両側副腎部に一致して腫瘤がみられ, 胸部CTで後縦隔に腫瘤がみられた. 123I-MIBGシンチグラフィーでも胸部および両側副腎部に集積像が認められた. 褐色細胞腫の診断で両側副腎摘出術を施行した. 症例2.20歳, 男性で症例1の弟である. 高血圧を主訴として受診した. 血中ノルアドレナリンが高値であり, CTでは腹部大動脈と左腎下極の間に球形の腫瘤がみられた. MRI, MIBGシンチグラフィーでも同部位に腫瘤が確認され異所性の褐色細胞腫と診断し, 腫瘍摘出術を施行した.
  • 野俣 浩一郎, 坂口 幹, 山下 修史, 金武 洋, 斉藤 泰
    1996 年 87 巻 8 号 p. 1064-1067
    発行日: 1996/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は43歳男性. 右精巣固定術, 左精巣欠損の既往あり, 左側腹部痛を主訴に来院した. 画像診断上多房性嚢胞を伴った大きな充実性腫瘤をみとめ, また血中AFP, β-HCGとともにCA19-9の上昇をみとめた. 腹部停留精巣より発生した精巣腫瘍と診断し, 術前にCEB化学療法を3コース行ったのち腫瘍摘出術を施行した. 摘出標本の病理組織学的所見では広汎な壊死と周囲に消化管, 軟骨, 筋, 神経組織より構成される奇形腫の成分をみとめ, 免疫組織学的にはその管腔上皮にCA19-9の局在を認めた. このように腹部停留精巣より発症する精巣腫瘍で複合組織型胚細胞腫瘍の組織型を示すものは少なくない.
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