日本泌尿器科学会雑誌
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88 巻, 1 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 臨床病理学的病態と今後の展望
    大西 哲郎
    1997 年 88 巻 1 号 p. 1-23
    発行日: 1997/01/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
  • 柳澤 直子
    1997 年 88 巻 1 号 p. 24-34
    発行日: 1997/01/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景と目的) 臨床分離株である Staphylococcus epidermidis KK3-75株, Enterococcus faecalis SMU-14株, Escherichia coli TF6-27株を用い, 膀胱定着性の違いを検討した.
    (対象と方法) マウス実験的膀胱炎は, 各菌液を経尿道的に接種して作製し, 病理組織像を光学顕微鏡, 共焦点レーザー顕微鏡および電子顕微鏡にて観察した. また, 菌体画分とマウス膀胱粘膜画分ならびに細胞外マトリックスの相互の結合性は Western blotting により検討した.
    (結果) 実験的膀胱炎組織での炎症反応の程度は, Enterococcus faecalis SMU-14株の場合では他の2菌株の場合に比べて弱かった. Staphylococcus epidermidis KK3-75株, Escherichia coli TF6-27株には厚い莢膜様構造が観察された. 菌体のマウス膀胱組織における分布は, 各菌株で異なり, それぞれの菌体画分と細胞外マトリックスとの結合性の違いに相関した. すなわち, I型コラーゲンには Enterococcus faecalis SMU-14株, Escherichia coli TF6-27株, フィブロネクチン, IV型コラーゲンには Staphylococcus epidermidis KK3-75株, Enterococcus faecalis SMU-14株が結合性を示した. 菌体の表層画分と膀胱粘膜画分との結合様式は, 各菌株により異なった. さらに各菌体表層画分の膀胱粘膜画分への結合には, 細胞外マトリックスにて阻害されるものを認めた.
    (結論) これらの結果より, 各菌株の膀胱組織への定着の差は, 菌体表層の成分と膀胱粘膜画分および細胞外マトリックスとの結合の違いに基づくことが示唆され, 各菌株による尿路感染症の発症進展の違いに関与すると考えられる.
  • 岩室 紳也, 古田 昭, 岩永 伸也, 野田 賢治郎, 波多野 孝史, 中條 洋, 田代 和也
    1997 年 88 巻 1 号 p. 35-39
    発行日: 1997/01/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景と目的) 新生男児の大半は包茎であるが, 包茎に関しては明瞭な治療指針がない. われわれは新生児期から包皮を翻転し, 包皮内の清潔を保つ指導をすることで亀頭部を露出できる可能性について検討した.
    (対象と方法) 1994年1月より1995年10月の間に当院で出生した男児の母親に対して新生児期からパンフレットとビデオで包茎と包皮翻転指導の有用性について説明した後に泌尿器科医が母親に対して包皮翻転指導を実施した. 指導内容は1) 無理のない範囲で包皮を翻転し, ガーゼ等で包皮内面や亀頭部を陰茎根部に向かって拭く, 2) 包皮の翻転はおむつを替える度と入浴時に行う, 3) 操作後は包皮を戻すを原則とした. 包皮翻転の進捗状況は1ヵ月健診時に泌尿器科医がチェックし, 亀頭部が完全に露出できる状態を完了とした.
    (結果) 初診時の亀頭部の用手的露出度を不可 (0)~亀頭部中間 (III)~完全 (VI) の7段階に分類した. 新生児538例中, 亀頭部を完全に露出できるVI度の症例はなかった. しかし, 包皮翻転指導を行った結果, 継続的に経過観察し得た372例は埋没陰茎の2例を含め全例亀頭部を完全に露出することができた. 亀頭部が完全に露出できるまでに要した期間は, 0度は平均2.94月, III度は1.78月, V度は1.22月, 全体の平均2.32月であった. 指導に伴う特記すべき合併症はなかった.
    (結論) 新生児期から包皮を翻転し亀頭部を露出する指導を徹底することで, 真性包茎状態の新生児でも経過観察できた全例が仮性包茎となり, 手術を回避することが可能になると思われた.
  • 増田 均, 山田 拓己, 永松 秀樹, 長浜 克志, 川上 理, 渡辺 徹, 根岸 壮治, 森田 隆
    1997 年 88 巻 1 号 p. 40-45
    発行日: 1997/01/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 我々は, 尿禁制女性と腹圧性尿失禁女性で測定した静的及び腹圧下尿道内圧測定値の尿道壁の測定方向による差を比較し, 尿禁制メカニズムの検討を行なった. また, 膀胱頸部吊り上げ術の前後で同様の検討を行い手術のメカニズムを検討した.
    (対象と方法) 21名の尿禁制者 (正常群), 38名の尿失禁患者 (尿失禁群) で, 2個のトランスヂューサーを用いた尿道内圧測定を, 圧センサーを尿道の前方, 側方, 後方の各方向に向けて施行し, MUCP, FUL, 圧伝達率 (PTR) を測定した. 各群内での方向間の比較及び各方向別に正常群と尿失禁群の比較検討を行なった. また, 尿失禁群のうち手術で治癒した19名 (手術群) で, 術前後に同様の測定をし比較検討した.
    (結果) 全群で, MUCPは尿道の前方で最も高値で, FULには方向差は認めなかった. 全方向で, MUCP, FULは正常群が尿失禁群に比して高値で, また術前後では有意差は認めなかった. PTRは, 正常群では方向による有意差は認めず, 尿失禁群では後方, 側方のそれが前方に比し有意に低かった. また, 尿失禁群の側方及び後方のPTRは, 正常群のそれより有意に低かった. 術後には, 尿道の側方と後方のPTRが, 前方のそれに近似していた.
    (結論) 腹圧性尿失禁患者では, 後方の尿道支持装置が破綻している事が示唆され, 膀胱頸部吊り上げ術は, 破綻した支持装置の代用物を提供し, 尿禁制を獲得させていると言えよう.
  • 星 宣次, 折笠 精一, 吉川 和行, 鈴木 謙一, 石戸谷 滋人, 伊藤 明宏, 近藤 丘, 今井 克忠, 木崎 徳, 鈴木 康義, 加藤 ...
    1997 年 88 巻 1 号 p. 46-52
    発行日: 1997/01/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景と目的) 腎癌肺転移切除例を検討し, その有用性と手術適応を明らかにする.
    (対象と方法) 1981年より1994年末までに腎癌肺転移の切除術を行った17例 (男性14例, 女性3例) を対象とした. 肺転移手術時の年齢は, 45歳から73歳で平均年齢61歳. 原発巣術後に肺転移が出現したのが11例, 6例は腎癌診断時肺転移があり, 3例は肺手術を, 3例は腎摘を先行した. 他臓器転移が4例に見られ, 脳転移摘出, 対側腎転移に対する腎部分切除, 胸壁と肋骨転移部切除, 対側副腎転移の切除がそれぞれ行われた. 肺の片側手術例14例, 両側手術例が3例であり, 12例に肺部分切除が行われ, 5例に肺葉切除術が行われた.
    (結果) 肺手術後生存期間は10ヵ月から10年9ヵ月で, 肺手術による合併症は認められなかった. 疾患特異的生存率, 無病生存率はそれぞれ5年で55, 48%, 10年で27, 14%であった. 癌なし生存例はすべて10個未満の肺転移例であった.
    (結論) 腎癌の肺転移切除により長期生存例が得られ, 症例によっては大変有用であった. 肺転移数が10個未満の症例に予後良好例が認められた.
  • 浅野 友彦, 中島 史雄, 小田島 邦男, 辻 明, 早川 正道, 中村 宏
    1997 年 88 巻 1 号 p. 53-58
    発行日: 1997/01/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景と目的) ネオプテリンは, 活性化されたT細胞から分泌されるγ-インターフェロンの刺激によりマクロファージから放出が増加することが知られており, T細胞-マクロファージ系の活性化の指標とされている. そのため, ネオプテリンは, 拒絶反応, ウイルス感染症, 自己免疫疾患, 癌患者で上昇することが報告されている. 今回, 尿路性器悪性腫瘍患者の尿中ネオプテリンを測定し, 腫瘍マーカーとしての有用性について検討を加えた.
    (方法) 尿路性器悪性腫瘍患者90名, 泌尿器科良性腫瘍患者28名, 正常健康人34名における尿中ネオプテリン濃度を高速液体クロマトグラフィーを用いて測定した.
    (結果) 尿路性器悪性腫瘍患者の52%, 泌尿器科良性腫瘍患者の7%において尿中ネオプテリン値は増加していた. 陽性率は, 腎細胞癌患者68%, 腎盂尿管癌患者80%, 膀胱癌患者44%, 前立腺癌患者47%, 精巣腫瘍患者30%であった. low stage 群と high stage 群を比較すると, 腎細胞癌患者 (stage I, II vs. stage III, IV) 及び膀胱癌患者 (Tis-1 vs. T2-4) で両群間の尿中ネオプテリン値に有意 (p<0.0005) に差を認めた. 腎細胞癌患者及び前立腺癌患者では, 尿中ネオプリテン値と異型度との間に相関を認めた.
    (結論) 今回の検討の結果, 尿中ネオプテリン値は, 尿路性器悪性腫瘍患者における腫瘍の進展度の把握や経過観察に有用であると思われた.
  • 松本 富美, 島田 憲次, 細川 尚三, 紺屋 英児
    1997 年 88 巻 1 号 p. 59-62
    発行日: 1997/01/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は8歳, 女児. 生後総排泄腔外反症と診断され, 小腸瘻, 結腸導管の double stoma で経過していた. 尿禁制獲得を希望し来院. 導管造影およびIVP, 腎シンチグラムにて右側は高度な腎盂腎杯の拡張を伴う無機能骨盤腎であることが判明した. これまで導管として使用していた結腸成分を脱管状化したものと右無機能骨盤腎の巨大腎盂をもちいて urinary reservoir を作成した. 禁制導尿路の作成は, 拡張した腎盂前壁を用い Mitrofanoff 法を応用して行なった. 術後経過は良好で, 1年半後膀胱容量は350mlまで増加し, 1日5回の間欠的自己導尿にてほぼ禁制が保たれている. 一般に膀胱容量の増大を目的とした手術には消化管が用いられているが, 拡張した上部尿路は選ばれた症例においては有効な生体材料であると思われた.
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